織斑日記   作:青いカンテラ

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『これから毎日日替わり頼もうぜ』

【4月◆日/晴れ】

 

 ルームメイトが幼なじみだった。

 

 これなんてエロゲ?

 

 いや、なんか見たことある人がいるなーとは思ってたよ。思ってたけども、まさかその人が6年前に別れてそれっきりだった幼なじみの女の子だったとは誰も思うまい。人の縁というのは不思議なものだ。

 

 幼なじみの名前は篠ノ之箒(しののの ほうき)という。俺が昔通っていた篠ノ之道場の子で、幼い頃は互いの腕を競い合って切磋琢磨したものだ。あの頃はまだ小さかったのに、いつの間にか大きくなって・・・うん、色々と大きくなった。6年だからな、俺も箒もいつまでも小さな子どものままじゃないってことだな。うんうん。

 

 本来は昨日のうちに追記しておくべきだったのだが、俺が自室として割り当てられた部屋に入った瞬間、風呂上りなのかバスタオル一枚を巻いただけの箒と第三種接近遭遇。パニックレベルが一気にMAXまで跳ね上がった箒が放った一撃によって俺の意識は綺麗に刈り取られ、そのまま翌朝の早朝までぐったりとしていた・・・らしい。それでよく死ななかったな俺・・・。ちなみに初日から俺の意識を火星までぶっ飛ばしてくれた下手人の箒は俺をベッドに寝かせた後は普通に就寝したのだとか。薄情すぎるだろおい。

 

 まあ、さすがにそんな薄情な箒さんも悪いと思ったのか、朝食に俺を誘ってくれた。・・・それだけで許すほど俺は軽くも安くもないぞ! あ、焼きプリンくれるのか。ありがとう。今回は焼きプリンに免じて許そう。焼きプリン一個360円也。我ながら軽くて安い男だった。

 

 ちなみに箒と朝食を取っている間も例のレーザービームが飛んできたのだが、いい加減に慣れてしまったので無視した。昨日は朝早くから視線のレーザービームを全身に受けてたからな、一々気にしてたら精神が持たない。高校生活二日目にして視線恐怖症とかなりたくない。その目誰の目?

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 午前中の授業は相変わらずだった。理解不能! 理解不能! やべえ、頭がおっついていない。単語はある程度わかるがそれから先になるともうわからない。日本語でおk。

 

 IS学園・・・どうやら俺は想像以上に恐ろしいところに来ちまったようだぜ・・・。ちょうどいいから俺が今置かれている状況を整理してみよう。例の自己紹介長子さん(仮名ならぬセシリア・オルコット氏)がまた長々と話をしているのだ。

 

 

 

 IS学園というのは主にインフィニット・ストラトス、通称ISの操縦者を育成するための教育機関である。国連主導で設立され、日本が管理・運営しているこの学校は巨大な人工浮島(ギガフロート)の上に建っている。

 

 主要な施設としては生徒たちが日々勉学に励む学び舎である校舎、IS実機を使った訓練や行事などで使われる専用アリーナ、学年別に分けられている学生寮。他にも学生街やレジャー施設なども学園敷地内に併設されている。IS学園と日本国本土の間には定期運行されるリニアレールが走っていて、俺もそれに揺られてやってきた。当然のごとく女子率99%で正直息苦しかったけどな。

 

 さて、ではISとは何か。ISはいまから約十年ほど前に発表された、次世代型船外活動用強化外骨格・・・早い話が全天候全領域対応型の飛行パワードスーツである。発表当初はそれほど注目されなかったらしいが、それから数ヵ月後に起こった『白騎士事件』を皮切りにISは世界の注目を浴び始めた。

 

 ただ、ISには重大な欠点がある。それは女性にしか扱えないこと、だ。男としては俺が現状で唯一、ISを動かすことができる・・・らしい。もしかしたら他にも動かせるやつがいるかもしれない。まあ、いまのところ俺以外には見つかっていないようだが。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 昼食なう。今日は日替わり定食を選んでみた。昨日も日替わり定食だったが、気にしてはいけないのだ。日替わり定食はいいぞ。日替わりだから色々な味を楽しめるし、値段もリーズナブルだ。まあ、この学園の学食は基本無料なんだけどな。無料万歳である。

 

 ちなみに俺の隣では幼なじみA子こと篠ノ之箒が俺と同じ日替わり定食を食べている。一人で食べるのは寂しかったのでぼっちな雰囲気を漂わせていた箒を誘ったのだ。箒は人の輪に入っていくのが苦手だったからな、

 

 そんなことを考えていたのがバレたのか、箒に睨まれた。怖い。元々目つきが鋭い方なので睨まれるとかなり怖い。幼なじみが言うに食事中に端末を弄るな。とのこと。そうだな、食事の後でもできるものな。というわけで一端ここで切ることにしよう。

 

 

 

 そうそう、昼食の時に一悶着というか一騒動というか、とりあえずイベントを回収したので書いておこう。

 

 食後の一杯で一息ついていた俺は、ふと来週行われる予定の勝負を思い出した。そう、例の自己紹介長かったですねオルコットさんとのクラス代表と祖国の誇りを賭けた大勝負である。

 

 祖国の誇りうんぬんはなかったように思うが、とにかくそれくらい気合が入っているのだ。・・・その割には今の今まで忘れてただろ、というツッコミはやめていただきたい。

 

 クラス代表の座に興味はないが勝負事で手を抜くつもりのない俺はISに関してまったくのトーシロである。正式なIS学園生と違って俺は一般人レベルの知識しか持ち合わせていないのである。

 

 このままでは勝つとか負けるとか以前の問題になってしまう。そんなわけでそれとなく幼なじみの箒に助力を乞うてみたのだが・・・なんとこの幼なじみ、完全スルーである。ガン無視である。俺の味方はどうやらいないようだ・・・と俺の心が絶望の青色に塗りつぶされそうになったその時、救世主が手を差し伸べてくれた。

 

「オリムライチカってーノハ、オマエだロ?」

「え、はい。そうですけど」

「オレはアイリス・ヴェル・カークウッド。リボン見ればワカルだろうが、二年ダ。オマエらの一個上ダナ」

 

 その救世主というのは学年が一つ上の上級生、アイリス先輩。目元を隠すほどに長い赤っぽい金髪。髪の隙間から見える赤い瞳。ジャケット風に改造しているIS学園の制服を下から大きく突き上げる豊満なバスト。喋る度にチラチラと見える鋭い犬歯。おまけに一人称は「オレ」。属性の盛り合わせかな? 何でも、俺が代表候補生とISバトルをすると噂で聞きつけてやってきたらしい。おお、世の中には親切な人もいたものだ。ほうれん草のおひたしを食ってる幼なじみにも見習ってほしいものだ。

 

「オマエ、候補生とヤり合うんだっテ? ・・・コレうまそうだな。一個クレ」

「えっ」

 

 俺の隣にどつかりと腰を下ろすアイリス先輩。俺の食べていた定食についてきた玉子焼きを返事を待たずに一切れ口に放り込むと、指をぺろりと舐める。暴君系先輩・・・ありだな・・・。

 

「IS稼働時間はドレくらいダ?」

「え、えーと・・・20分くらいですかね」

「フム。それじゃあ無理ダナ。代表候補生ってんなら、軽く300時間は乗ってるゾ」

「さ、300時間・・・」

 

 ISに限らずだが、積み重ねてる時間というのはそれだけ習熟度に差が出る。もちろん単純に時間を掛けていればすごい! という話でもないけどな。

 

「そこで、ダ。オレがISのことを教えてヤるヨ。オマエにとっても悪い話じゃあないダロ」

 

 俺の返事はもちろん「はい」か「イエス」しかないわけだが、そこで今の今まで黙りこくっていた箒が口を挟んだ。

 

「結構です。私が教えることになっていますので」

 

 箒が言うにはそうなのだろう。箒の中ではな。だが俺の中では「いいえ」か「No」とかない。俺が頼んだ時にはガン無視したくせにどういう風の吹き回しなのだろうか。

 

 ちなみに言葉と共に箒は肉食動物も裸足で逃げ出しそうな勢いでアイリス先輩を睨みつけていた。さっきはガン無視したのに、今度は自分が教えることになっていると言い出すなんて、どういう風の吹き回しなのか。

 

 それはともかく、相手は上級者なので「ダメじゃないか箒、先輩を睨んだりしたら」と言ったら箒はさすがに悪かったと思ったのか素直に謝った。アイリス先輩も「カカカッ、コレくらい跳ねッ返りな方がカワイイものダロ」と返してくれたのでその場はひとまず収まった。

 

 その後、なんやかんやがなんやかんやあり、俺とついでに箒もアイリス先輩にISのことを教えてもらうことになった。これから休日を除く放課後、IS訓練機を使っての特訓である。アイリス先輩が言うには「トーシロには口でアレコレ説明するよりも、ISを直接動かした方が早い」とのこと。百聞は一見にしかずとも言うし、何より時間がない俺にとっては非常にありがたい。

 

 そんなわけで訓練機の貸し出し許可が下りる明日が特訓初日となった。ISスーツは体のラインがはっきり出るらしい。今から楽しみだ・・・いや、別に下心なんてないよ? 本当本当。イチカウソツカナイ。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

【4月◆日/晴れ】

 

 アイリス先輩がやってきたぞ!

 

 放課後の第三アリーナにて、俺と箒はアイリス先輩に特訓をしてもらった。まあ、訓練機は一機しか空きがなかったんですけどね。箒も「私よりも一夏の方が大事だろう」と言ってくれたので、初日はほぼ俺が乗り回して終わった。

 

 それにしても、アイリス先輩は実に良いものをお餅だった・・・。山田先生はどたぷーんって感じだったが、先輩はたぷんって感じだな。なんというかこう、大きすぎないほどよいサイズ感というかな。(ろくろを回すポーズ)

 

 ISスーツは体のラインがはっきり出るとは聞いていたが、想像以上にぴっちりフィットしていた。まだISスーツを持っていない俺は体操服を着ていたんだが・・・そのうち俺もあれを着ることになるのか・・・。あのファイティングスーツばりのぴっちりなやつを。男のぴっちりスーツって、一体どこに向けての需要があるんだろうな?

 

 ふと気になったので箒に話を振ってみたところ「し、知らん!」とそっぽを向いてしまった。頬が少し赤くなっていたので、何かよからぬことでも妄想したんだろうな。箒のむっつりさんめ。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

【4月◆日/雨】

 

 夜、妹に電話かけたら「俺だよ、俺俺」といった瞬間に切られた。

 

 泣きたい。どうも、織斑一夏です。世界で唯一ISを使える男やってます。女の園なIS学園で毎日必死に知識詰め込んでます。少しでもみんなと同じレベルにならないといけないから、毎日が戦場です。

 

 昼はIS関係の授業を受けつつ放課後は山田副担任の補習授業&アイリス先輩とISの特訓、夜は自室で予習復習に余念なし。睡眠時間はいまのところ削っていない。寝不足で体調崩したりしたら本末転倒だからね。

 

 今日もいいところで一区切りつけて寝ることにします。おやすみー。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

【4月◆日/晴れ】

 

 廊下になぜか捨てられていたバナナの皮を山田副担任が踏み、見事に転んで俺を押し倒した。

 

 神の双丘が当たって・・・すべて遠き理想郷はここにあったのだ・・・。IS学園、素敵な出会いをありがとう。

 

 その後千冬担任&幼なじみの箒コンビに学園中追い回された。俺は全身全霊全力全開で逃げ回った。人を超えた悪鬼羅刹と化した世界で一番おっかない女と二番目におっかない女に追われるのはとても恐怖だった。

 

 ちなみにバナナの皮を設置したのは俺である。

 

 良い子も悪い子も学校でバナナを食べた後に皮なんて捨てるんじゃないぞ! 危険だからな! もし誰かが間違って踏んだりしたらどうするんだ? しかも女の子だったら? と親友に言ったら「全力で覗きにいくね!」と言われた。引くわー。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

【4月◆日/曇り】

 

 自己紹介長いですだよオルコットさん! とのクラス代表の座を賭けた勝負まであと二日である。

 

 今日はアイリス先輩が休日のお出かけに行っているので朝から訓練機を借りて自主練をすることにした。

 といってもIS学園の訓練機『打鉄・雅』で武器展開や飛行の練習をするだけなんだが。模擬戦をしようにも相手がいないし、箒は訓練機の使用許可が下りなかった。

 

 なので今日は一人で特訓なのだ。だだっ広い第四アリーナで一人だけど寂しくなんかないやい。

 

 

 

 昼まで一人黙々と訓練をした後、午後から箒と二人で道場に行った。目的は剣道の稽古を付けてもらうことで、軽く打ち合った後試合形式で戦ったがぼこぼこにされた。

 

 ちなみに箒は剣道の全国大会優勝者である。そりゃ相手になるわけない。こちとら中学時代はバイトで忙しくて竹刀を振ってなかったからな・・・。山田副担任の補習授業が月水金なので火曜と木曜は箒に剣道の稽古を付けてもらっているのだが、やっぱり二日くらいじゃどうにもならない。朝練にも顔出すしかないな。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

【4月◆日/晴れ】

 

 いよいよ自己紹介長かったけど姉さんのインパクトには勝てなかったオルコットさんとの勝負まであと一日。

 

 今日はアイリス先輩と訓練機の使用許可が下りた箒と三人で模擬戦をした。美少女二人と模擬戦なんですか? やったー! 二対一なんですか!? やだー!

 

  か ゆ

 

 う ま

 

 特訓という名のイジメを受けました。イジメいくない。

 あ、でも打鉄を纏った箒が動くたびに揺れる夢と希望を見れたから良かったかもしれない。

 

 そういば、俺の専用機の件はどうなっているのだろうか。姉さんに聞いても「もう少しかかる」としか答えてくれないし。・・・まさか試合直前に来るなんてことはないよな。そんなバカな話があってたまるかっての。・・・まさか、なあ?

 

 

 

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