織斑日記   作:青いカンテラ

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『天才☆天災☆大天才!!』

『天才☆天災☆大天才!!』

 

【5月◆◆日/ハレンチ】

 

 事件です。

 

 いつものように放課後特訓を終えて自室に戻った俺の目に飛び込んできたのは、テーブルの上に並べられた数冊のエロ本。

 

 きゃー! 一夏さんのエッチー!

 

 可及的速やかに迅速に的確にベッドの下にシュゥゥゥゥゥ!! エキサイティン!!

 一体誰だ俺の秘密を暴露しやがったのは! 部屋に鍵は掛かっていた。電子ロックだからそうそう破れることはない。というか電子鍵の前で怪しげな機械を使っている人間がいたら確実にそいつがクロだ。オシオキ確定である。窓にも防犯措置が講じられているから外部犯の可能性はないはず。というか外部犯だったらそれはそれでヤバいんだけどな。

 電子ロックのマスターキーは寮長の姉さんしか持っていない。寮長室が半ば魔界化しているとはいえマスターキーを無くすような失態はまず起こさないだろう。・・・起こさないよね。起こさないはずだ。たぶんきっとメイビー。人間が住んでいるとは思えない惨状だったけど、寮生のプライバシーに直結する電子ロックのマスターキーをなくすなんてこと姉さんに限って・・・うぅむ。あの人あれで抜けてるところあるからなあ。

 

 まあ無くしたのなら無くしたで、そのまま放置するなんてことはありえないだろうからその線はないな。姉さんが俺の部屋のロックを解除してエロ本並べた可能性も無きにしも非ずだが。いや待て、俺はあの人のダメな部分を知っている。仕事はできるが家のことになるとまるっきりポンコツなことをよく知っている。掃除=破壊だからな。俺がいない間に探し出したのなら戦場もかくやという有様になっているはずだ。ならそれもないな。

 

 いったい、いったい誰なんだ・・・。犯人はこの学園の中にいる!? 真実はいつも一つだと思う! じっちゃんの名に賭けてみる!! じっちゃん知らないけど!!!!

 

 

 

 昨日整理しようと出しっぱなしだったのを忘れていた模様。ダメじゃん。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

【5月◆◆日/晴れ】

 

 我が名は織斑一夏。悪を断つ剣なり!!

 

 うん、久しぶりにあのゲームやったんだ。ゼ●ガーさんカッコいいよな。惚れる。俺の白式も武器が参式斬艦刀みたいのだったらなあと思ったりしている。シルエット的にはディスカッターの方が似合いそうだけど。ハイ・ファミリアとか欲しい。

 

 一刀両断! っていうのなら姉さんの方が似合いそうだ。俺はどう頑張ってもディスカッター霞斬りが関の山だろうし。零落白夜は一撃必殺級だが、その代償はかなり大きい。俺は姉さんのように一撃必殺を決めるタイプじゃないし、白式持ち前の機動性で撹乱する方が性に合っている。・・・と思う。

 

 どちらにせよ瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使いこなせるようにならないとな。武器が雪片弐型しかない白式じゃあ、近づいて斬るしかできないんだから。ただでさえ少ない手札だ。一つでも使えるようにしておかないといざって時に困る。

 んー、でもチャージに時間が掛かるんだよな。ブースト消費量も大きいし。なんとかならんものか。

 

 お、メールだ。誰から・・・って束姉!? あの人にメアド教えた覚えないっていうか機種変したのになんでこのメアド知ってんだあの人。怖いわー。

 

『今度会いに行くかもー♪ ぶいぶい♪』

 

 へー、今度会いにねえ。えっ、今度?

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

【5月◆◆日/曇りのち晴れ】

 

 篠ノ之束。箒の実姉にしてISを世に送り出した張本人にして自他共に認める天災である。誤字にあらず。

 

 6、7年くらい前に突如姿を消して一時話題になってたけど、元気そうで何よりである。前々から気になってたんだけど、頭のそのメカメカしいウサミミと不思議の国のアリス風ファッションは趣味なの? あ、マイブーム。そうなのか。へー。・・・って

 

「何平然と朝食食べてるのさ束姉(たばねえ)

「いやー、インスタントばかりじゃさすがに飽きるでしょ? たまには人のぬくもりっていうのを感じたくてさー。それにしてもここの料理は美味しいね。束さんびっくりだよ。数年前に食べたったきりの母上様の手料理を思い出させる懐かしい味だねえ。そうそう、そうだよ、こういうのでいいんだ」

「・・・姉さん」

「・・・束」

「おお! 箒ちゃんにちーちゃんじゃないか久しぶりだねえ。こうして顔を合わせるのは何年振りかな。6年? 7年くらい? まあそんなことはいいんだよ。あれだ、些細だ。たかだか数年離れたくらいじゃ束さんのラヴは薄れないからね。あっはっはっ!!」

 

 相変わらずテンション高ぇなあ。一夏くんついていけない。とりあえず束姉の正面に座る。今日の朝食は鮭の塩焼き定食である。絶妙な焼き加減の鮭の塩焼きが食欲をそそるぜ。

 同じく朝食を取りに来たのだろう箒と千冬姉さんも席に座る。手にトレイを持っていなければ頭に手をやって「はぁ」とため息をついてそうな顔してるけど大丈夫? バ○ァリンならあるけど。

 

「久しぶりの再会で積もる話もあるだろうけど、それは後にしようか。束さんお腹ぺこぺこだったんだあ。実に一週間ぶりの食事だからね味わって食べないと。・・・ふぃー、わかめと豆腐のお味噌汁が五臓六腑に染み渡るぜえ。おお、このふっくら炊き上がった白米もいいね。これだけでご飯三杯いけちゃう勢いだよ。ごはんをおかずにごはんを食べるってよくわからないけど」

「束、食事時くらいは静かにできないのか」

 

 姉さんに言われ、束姉は「りょーかいちーちゃん」と敬礼。それきり一言も発さなくなった。ほんと、姉さんの言うことだけはよく聞くよねこの人。二人は中学時代からの仲らしいけど『天災』こと束姉を制御できるのは姉さんくらいなのだろう。まあ、その姉さんでも手綱を握れないのが篠ノ之束という人物なのだが。

 

 

 

 朝食を終えると、束姉は「箒ちゃんの授業風景とか見てみたいなー。あ、これって俗に言う授業参観ってやつだね。束さん憧れてたんだー。束さんのやってみたいことリストにまた一つチェックが入るね。イェイ!! やっほーみんなー、わたしが噂の篠ノ之束だよー♪ はーい、声援ありがとうありがとう束さんも君たちに会えて嬉しいなー」「煽るな、バカ。お前たちも静かにしろ。授業は始まっている」『はーい』「それじゃあ束さんは後ろで見てようかなー。あ、そうだ写メって父さんと母さんにも送ろうっと。箒ちゃんが元気に学校生活してると知ったらきっと喜ぶぞー♪」「ね、姉さん・・・」といって教室の一番後ろでニコニコと授業風景を眺めていた。時々後ろでカシャカシャと音がしたのは箒を撮影していたのだろう。たぶん。

 

 

 

 昼時はいつも賑わっている学食だが、今日はその二割り増し・・・いや四割り増しで騒がしかった。

 その原因はもちろん、束姉である。ISの生みの親にして現在世界中から絶賛逃走中の天災・・・そんな人物がのんきに学食で昼食を取っているのである。しかも妹の箒と親友の千冬姉さん、世界で唯一ISを使える男、織斑一夏、そして最後にIS学園生徒会長更識楯無と一緒のテーブルで。一体何が始まるんです?

 

「IS学園の学食は美味しいね。うん。みんなこんなに美味しいものを毎日食べてるのかー。束さん嫉妬しちゃいそうだよ。食事は機械任せでもいいんだけど、やっぱり人間が調理したものを食べるのが一番だね。これぞ幸せってもんだよ。だから好き嫌いせずにしっかりと味わって食べなきゃダメなんだ。作ってくれた人にも失礼だし、何より命を頂いているわけだからね。だから食事の前には『いただきます』食事の後には『ごちそうさま』と言われなきゃいけない。束さんみたいな一人逃走者生活をしているとそんな当たり前のこともついつい忘れてしまいそうになるのだけどね。・・・あ、いまは一人じゃなくて二人だったな」

 

 相変わらずよく喋る人だった。朝姉さんに「静かにしろ」と言われたのをもう忘れている。まあ、俺は別にいいんだけど。ずるずるとざる蕎麦をすする。うん、うまい。

 いつもならセッシーと鈴ちゃんもいるのだが、いまは遠くの席で眺めるばかりだ。二人ともこの怪人物にどう接していいのかわからないのだろう。それが正しい判断だな。うん。

 

「・・・ところで、篠ノ之博士。一体どんなご用件でこのIS学園に?」

「どんな、と聞かれても困るけど。強いて言うなら箒ちゃんの顔を見にきたってところかな。ついでに美味しいと評判のIS学園の学食を食べにね。いやー、それにしても学食のおばちゃんはいい人ばかりだね。サービスってみかん貰っちゃった。束さん、みかん大好物なんだあ。冬はコタツにみかんとか定番でしょ? ここ数年はコタツすら出したことないけど。いつも合成食品ばかりだとフルーツも食べたくなるよね。こういう心遣いが日本人の美徳だよほんと」

「は、はあ・・・」

 

 惚れ惚れするほどの営業スマイルが僅かに歪む。相手の一言を十にも二十にもして返す束姉のお喋りっぷりにじゃっかん引いているようだ。ちなみに千冬姉さんは黙々と箸を進めている。箒も右に同じ。

 

「あ。そうだいっくんISみして」

「え、いいですけど・・・いまですか?」

「いまじゃなくてもいつでもいいよ。いっくんの都合がいいときで束さんは全然いいさ。束さんも規則の一つや二つは知ってるからね。それに学食はみんなが食事をする場所であってISを展開するようなところじゃないでしょ? 常識じゃないか」

「そ、そうですね」

 

 この人にだけは常識がどうとか言われたくないが・・・言ってることはその通りなので何とも言えない。

 

 

 

 束姉は午後の授業も午前中と同じく教室の後ろでずっと見ていた。束姉様が見てる。いや、なんか違うな。忘れよう。

 

 時間は放課後。場所は第三アリーナ。いつもなら俺の特訓に付き合ってくれている箒、セシリアさん、鈴ちゃんにたまにアイリス先輩と、時々見物しに来るギャラリーが数人いるだけなのだが、今日はその十倍近い人数がやってきていた。お目当てはもちろん束姉である。アリーナ脇の退避スペースでなにやら話しているのがハイパーセンサーで確認できる。会話の内容は・・・聞く気がないのでカット。

 

「それじゃさっそく、ぷすっとな♪」

 

 どこからか取り出した端末から伸ばしたコードを白式の装甲に刺すと、空間投影式のディスプレイが浮かび上がった。

 

「ふむふむ。なんとも摩訶不思議かつ複雑怪奇にして奇想天外なフラグメントマップを構築しているね。束さんも見たことないパターンだよ。いっくんが男の()だからかな?」

「なんかニュアンス違いませんか?」

「いっくんは女装が似合うと束さんの中では評判です」

「そんな評判いらない!!」

 

 あと脇で見てるお嬢さん方、聞こえてるからな。「一夏の女装・・・いいかも」って聞こえてるからな!!

 ちなみにフラグメントマップというのは各ISがパーソナライズ・・・搭乗者毎の最適化設定を行うことによって独自に発展していくその道筋のことらしい。人間でいうところの記憶や経験がそれに当たる。これによって厳密な意味でのまったく同じ機体、というのは存在しないのだとか。人に個性があるようにISにもまた個性が生まれる。それを目に見える形でわかりやすくしているのがフラグメントマップなのだ。

 

「面白いものを見せてもらったお礼に、白式改造してあげようか?」

「・・・具体的にはどんな方向で?」

「超絶機動の装甲紙なリアル系と機動性なんて飾りです! 重装甲&高火力&超パワーを突き詰めたスーパー系のどっちか」

「却下で」

「えー?」

 

 両極端すぎるでしょうが。なんですか装甲紙って。あれか、当たらなければどうということはないとでも言うつもりですか。スーパー系はいまの白式ちゃんと正反対だし。

 

「むー。ロケットパンチとかドリルとかアイソリッドレーザーとかゲッ○ービジョンとか組み込みたかったのになー」

「白式が別の機体になっちゃうでしょうが」

 

 束姉は俺の白式を一体どうしたいんだ。

 

「そういえば、白式の拡張領域が空いてないのはなんでですか?」

「んー? そりゃあれだよちみ、第一形態から単一仕様能力(ワンオフ・オビリティー)が使えるからだよ。本来なら第二形態から発現させるものを無理やり第一形態から使えるようにしてるから、システム面に多大な負荷が掛かってるんだね。拡張領域が少ないのはその皺寄せ」

「なるほど。ちなみに形態移行して拡張領域が増えたりは・・・」

「さあ、どうだろうね。いっくんが望めばこの子は応えてくれるかもだけど、基本は第二世代型だからねえ。さすがの束さんでもそこまでは手を加えられないよ」

「え、白式って束さんが作ったんですか?」

「作ったというか元々倉持が試作してた機体にちょちょいって手を加えただけだよ。束さん自慢のOSは役に立っているようだね」

 

 明かされる衝撃の事実! いやまあ元々第二世代機だったらしい白式ちゃんを第三世代型相当にまで性能アップさせてる時点でそうじゃないかとは思ってたけど。ちなみに総合スペックはセシリアさんや鈴ちゃんの専用機を上回っている。

 

 

 

 一通り見て満足したのか、束姉は「また遊びに来るよー」と無邪気な子どものような笑顔を残して去っていった。・・・いったい何しに来たんだあの人。

 

 

 

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