虎杖弟の地獄旅   作:悪魔さん

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実は先日、「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」を見たんです。(入村が正しいかも)
妖怪ウォッチより鬼太郎派である自分として、凄い圧倒されました。
ああいう古い村に関する任務、いつか悠香君にやらせようと思いました。(笑)


第9話:宿儺再臨

 帳が降ろされた里桜高校。

 悠香は校内に潜入し、屋上を目指していた。

(屋上にいた二人組……明らかに高校関係者じゃない。現場に来たんだ)

 階段を駆け上がり、屋上へ続く扉の前で立ち止まる。

 そしてガラスに自分の姿が映らないよう身をかがめ、音を立てないようにゆっくりと開ける。

 視線の先には、皮膚が継ぎ接ぎだらけの青年姿の呪霊と、彼と言葉を交わす黒衣を着こなした謎の人物がいた。

「悪いね真人。私の残穢を残すわけにはいかないから。帳の効果は?」

「内からは出られない。外からは入れる。あくまで呪力の弱い人間はだけど」

「住宅地での事前告知のない帳。すぐに窓が通報するだろ。君の考えている絵図が描けるといいね」

(……あの長髪が真人か。もう一人は一体……?)

 身を隠して様子を伺う悠香。

 いつでも攻撃が来てもいいよう、木刀を強く握り締める。

「それじゃ私はお暇させてもらうよ」

「えっ? 帰っちゃうの? 夏油も見てけばいいのに。きっと楽しいよ。愚かなガキが死ぬところは」

(額の傷の男は夏油……状況的には、呪霊と手を組む呪詛師かな)

 今回の一件は呪霊だけでなく、そのバックに強力な呪詛師が絡んでいた。

 想像以上の大ごとになりそうな雰囲気に、思わず舌打ちした。

(断片的にだけど、貴重な情報だ。でも今の俺達じゃあキツすぎる……) 

 あの呪詛師の暗躍に関しては、高専なら何か知ってるだろうか。

 一縷の望みを抱きつつ、悠香は息を殺しながら下の階へと降りて行った。

「……真人、()けられてたね」

「えっ」

 その動きを感づかれてしまったことを、悠香はまだ知らない。

 

 

 一方、校舎の廊下では順平と悠仁が戦いを繰り広げていた。

「引っ込んでろよ呪術師! 関係ないだろ!」

「それはお前が決めることじゃねぇ!」

 クラゲの式神「(おり)(づき)」を操る順平と、拳に呪力を纏わせる悠仁。

 しかし、式神の中に入ってしまった順平に打撃が通じるはずもなく、戦いは拮抗していた。

(悠香みたいな遠当て技はないんだよな……!!)

 弟みたいに濃密な呪力を飛ばす技があれば、十分な距離を保ちながら強力な一発を叩き込めるのに。

 歯がゆい思いを抱きながら拳を振るう悠仁の様子を、屋上から降りて急行した悠香は隠れて見ていた。

(派手にやってるなぁ……こうも上手く行くとは思わなかった)

 悠香は昨夜のことを思い返した。

 

 

           *

 

 

 順平の母・凪を救助し、偽装工作をしようとした時だった。

「虎杖悠香、俺の指をそのまま置け」

「宿儺!」

 悠仁の左頬に口が、目の下の傷から別の瞳が現れる。

 呪いの王である両面宿儺だ。

「……指、置いてって大丈夫ですか?」

「少なくともこの件の黒幕とやらは、今ここで小童が死んでしまうのは本意ではない。手を出される前に回収するとなれば、俺達が回収した方が怪しまれるぞ。それに俺の指を置いておけば、雑魚の仕業であろうとなかろうと指の影響で死んだと思い込むはずだ」

「……だとすると、敵の狙いはやはり……」

「ケヒッ……お前の考えている通りだ」

 息子の友達が化け物を体内に宿している状況に呆然とする凪を無視し、悠香と宿儺は話し合う。

「では、ひとまず悠香君の作戦通りに工作し、指はあえて回収しないということで?」

「そういう訳です。なので伊地知さん、工作を手伝ってください」

「宿儺……お前って悠香には妙に協力的だよな」

「お前と違って面白いからなぁ……!!」

 ケヒケヒと悪い笑みを浮かべながら、宿儺は悠仁の中へと戻っていった。

 

 

           *

 

 

(まあ、真人とやらは程々に消耗させて、あとは宿儺さんの依頼を達成すれば終わりだ)

 ――七海さんが応援に来れば、あとはどうとでもなる。

 順平を兄に任せ、自分は真人を引き付けるべく階段を降りようとした時だった。

「むやみな救済に何の意味があるんだ……命の価値を履き違えるな。霊長ぶってる人間の感情、心は全ては魂の代謝。まやかしだ!」

「順平……!!」

「まやかしで作ったルールで僕を縛るな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 順平のその言葉を聞き、悠香は前世の最期をフラッシュバックした。

 

 走る激痛に、赤黒く染まる視界。

 阿鼻叫喚の言葉が似合う程の、目撃者の相次ぐ悲鳴。

 馬乗りになって刃物を執拗に振るう、狂気に呑まれた犯人の醜悪な笑み。

 そして意識が完全に暗転するまで、心の内に沸き上がった世界に対する憎悪。

 

 今でも魂に巣食う、惨たらしい最期を遂げた忌まわしき前世。

 その記憶は無意識に人格に影響を与え、価値観の衝突や不信感を始めとした弊害を生じさせた。

 たとえ記憶喪失になっても残り続ける、魂に深く刻まれた〝古傷〟を強引に抉られた悠香は、順平の言葉を許すことができなかった。

「ふざけるな……俺に対する嫌味かよっ……!」

 全ての負の感情を押し殺したように呟く悠香は、階段を下りて外へ出る。

 するとそこへ、長髪の青年が姿を現した。

 一連の事件の黒幕――呪霊の真人だ。

「こんばんは、宿儺の器の弟」

「……!」

 ――まさか本人が来るとは。

 意表を突かれた悠香は、木刀を強く握り締めて呪力を流し込む。

「お前だろ、順平君の家に指を置いたのは」

「正解! ――でも質問があるのは俺もだよ。……君だろ、順平の母親を助けたの」

「……偽装工作に穴があったか……」

 悠香は舌打ちをした。

 おそらくだが、あの場に自分の残穢が微かに残っており、そこから何者かの介入があったと察したのだろう。順平が気がつかなかったのは、やはり気が動転していたからだろうか。

 一応、凪は伊地知の保護下だが、改造人間を送り込んで殺しに行く可能性がゼロではないため、ここで食い止めねばならない。

「君ってさ、どこまで知ってるのかな? コソコソしてたでしょ?」

「大よその見当はついてたさ。でも黒幕が二人だったのは予想外だった。もう片方の夏油が何者かはまだ知らないけどね」

「! ……へー、そこまで知っちゃったかぁ」

 きょとんとした表情の後、口角を歪める真人。

 次の瞬間、真人は一瞬で悠香の眼前に迫った。

「よくあるじゃん。お前は知り過ぎたってヤツ」

「!」

 真人は悠香の胸に手を添えた。

「〝()()(てん)(ぺん)〟」

 ――人間としての彼を殺し、自身の手駒とする。

 真人の手が、悠香の魂に触れた。

 しかし、何も起きなかった。

「……え?」

 あまりにも想定外な事態に、真人は呆然とした。

 実はこの時、真人は致命的なミスを犯していた。

 真人が触れたのは、確かに悠香の魂だが、それで悠香の魂を弄れることはできない。

 なぜなら、真人は悠香の魂を()()()()()()()からだ。

 

 虎杖悠香は転生者である。

 そして前世の名は藤枝晴登であり、それが真名――すなわち「魂の名」である。

 言い方を変えれば、悠香の魂は二重構造だ。虎杖悠香の魂の中に藤枝晴登という核があり、悠香を改造人間に変えるのであれば〝魂の核〟に触れなければならない。それは「虎杖悠香の真名は藤枝晴登であると知覚する」という前提条件があり、それをクリアすることでようやく魂の核を触れられるようになり術式が通る。

 そして悠香の本来の魂を知覚している者は、生得領域で視認することができた両面宿儺ただ一人。前世があることを知る悠仁が弟の魂の構造を知るはずもなく、術式・呪力を視覚情報として詳細に認識できる六眼を持つ五条悟ですら、天与呪縛の影響で完全に知覚することはできないのだ。

 

「お前……何なんだよ……!?」

 嫌な汗をダラダラと垂らしながら、真人は問う。

 夏油から、悠香のことは「エラーに次ぐエラーを起こして生まれた突然変異体」「関心の湧かない失敗作」だと聞いていた。そんな突然変異体(ニンゲン)の魂はどんなものか……真人は楽しみで仕方がなかった。彼の魂を弄り人質にとれば、宿儺優位の縛りを科しやすくなると安易に考えたりした。

 だが蓋を開けてみれば、初見殺しとも言える自らの術式が通用しないという異常事態。話が全然違うじゃないか、どこが関心が湧かない失敗作なんだと、夏油に怒りすら覚えた。

「……俺は虎杖悠香。それ以上でもそれ以下でもないよ」

 

 ドゴォッ!!

 

「!?」

 悠香は何の躊躇いもなく、真人の顔面に木刀を叩き込んだ。

 

 

 その頃、悠仁の戦いも終わりを迎えていた。

 想いをぶつけ合った末に順平と和撲……ではなく和睦を果たし、この事態を引き起こした黒幕を共に倒すために立ち上がったのだ。

「悠仁の弟君が、僕の母さんを……!?」

「悠香が動いてなかったら、順平の母ちゃんは死んでた。今は高専の方で保護してくれてんだ」

 初めて悠仁の弟の存在と働きを知り、驚く順平。

 考えてみれば、順平は悠香と一度も接触をしていないので、無理もない反応であった。

「今は早く、あいつの応援に行かないと――」

 

 ガシャアァッ!

 

「「!?」」

 突如、窓ガラスを突き破って悠香が転がった。

 重傷……ではないが、手負いの身であり苦戦しているようだ。 

「悠香!!」

「いつつ……に、いさん……」

「ホントさ、やってくれたよね」

 そこへ、悠香と攻防を繰り広げていた真人が殴り込む。

 顔面がへこみ、左腕があり得ない方向に折れ曲がり、右の脇腹が大きく抉れた禍々しい姿だ。再生を始めている分、その不気味さが際立っているように思えた。

「ストックの改造人間、みんなやられちゃったじゃん」

「真人さん……いや、真人……」

「やあ、順平。俺を呼び捨てにしてるってのは、どうやら気づいちゃったようだね」

 順平に対して朗らかな笑みを向けるが、その目は氷のように冷たい。

 自分は恐ろしい存在と関係を結んでしまった――その事実に、順平は凍りついた。

「そしてはじめましてだね。宿儺の器」

「お前が……!!」

 順平を陥れ、凪を手にかけようとした呪霊に怒りを露わにする悠仁。

 すると悠香は立ち上がり、木刀を構えて悠仁に告げた。

「兄さん、あいつの兵隊は片付けたけど、想像以上に学習能力が高い……短期決戦じゃないと持ってかれる」

「マジかよっ……」

「順平君と連携して、俺の援護をして。消耗戦で追い込むしか……」

 

 ドクンッ!

 

「がはっ!?」

 ふと、悠香は突然走った痛みに顔を歪め、膝を突いて吐血した。

「悠香!?」

「? ……あっ! もしかして君、宿()()()()()()()()()完全な無効じゃないんだね」

 悠香の体質を察した真人は、悪意に満ちた笑みを浮かべた。

(俺の〝無為転変〟で魂を弄ることはできずとも、()()()()()()()()()はできる。そういう天与呪縛なんだ。完全な拒絶ではなく耐性なら、限界がある!!)

 そう、それが悠香の弱点だった。

 全ての術式に対する耐性……一見は初見殺しも通じないとんでもない能力ではあるが、同時に完全な無効化ではないため影響自体は受けるという欠点もある。

 無為転変で悠香を改造人間にすることはできないが、魂の干渉を続けることで肉体に負荷を与えることは可能であり、耐性の限界を超えれば無事では済まないはず――そう思い至った真人は、順平を殴り飛ばしてから右腕を肥大化させて悠仁を押さえつけ、自身の肉体を変形させて新たな腕を作り悠香を拘束した。

「ぐあっ!」

「がっ……!!」

「順平!! 悠香!!」

(虎杖悠仁は自らの命を顧みない。でも弟の窮地と順平が無力な状況なら話は違うはず。宿儺に縋る以外に方法がないとなれば、宿儺をこちらに引き入れるためのに縛りを科すのは不可能じゃない)

 肉親を利用して宿儺を引き入れるのを画策すると、真人は左腕で悠香の魂に触れた。

「うあぁ……!!」

「このまま魂に触れ続けていれば、いつかは壊れるよね? 俺の呪力が尽きるのが先か、君が壊れるのが先か、勝負しようじゃないか!!」

 ミシミシと嫌な音が悠香の体から鳴り始める。

 真人の術式と悠香の天与呪縛による拒絶が、拮抗している。

 この均衡が崩れれば……悠香は無事でいられるのだろうか。

(マズい! 順平は今ので気を失ってるし、悠香もヤバい!)

 自分は、友も弟も守れないのか。

 己の不甲斐なさと真人の冷酷な本性に怒りを募らせる。

「ぶっ殺す!」

「ははははっ! 〝祓う〟の間違いだろ、呪術師」

「うっ……ぐううっ!」

「……しぶといなぁ」

 激昂する悠仁を嘲笑う真人だが、想像以上に耐える悠香に眉をひそめる。

「おい、小僧」

『!!』

 その時、悠仁の頬に宿儺の口が浮き出た。

 声色は不機嫌そうだ。

「何をしている、このまま虎杖悠香を見殺しにする気か? 俺の唯一の〝楽しみ〟だぞ」

「そんな訳ないだろ! 俺の弟だ! それとお前のおもちゃじゃねぇ!!」

「…………仕方あるまい、非常に癪だが助けてやる」

 その言葉に、悠仁と真人は目を見張った。

 渋々協力すると言った様子にも思えたが、その口角は上がっている。

「宿儺、どうすればいい!?」

「簡単だ、一分間俺と代われ。その間は()()()()()。そこの呪霊にも用があるしな」

(……?)

 宿儺の言葉に、真人も困惑した。

 呪いの王が誰も殺さないと言ったことにもだが、何より自分に用事があるというのだ。

 その言葉の真意を汲み取ろうと思考を巡らせるが、その間にも話は進み……。

「……信じていいのか」

「ハァー…………縛りは制約だと言ったはずだぞ。本来なら先程の毒を使う小僧も殺すところだが、虎杖悠香に免じて手は出さないでやる」

 悠仁は順平にも手を出さないと告げた宿儺に、半信半疑ながらも目を閉じた。

 すると、悠仁の顔に紋様が浮かび上がり、両眼の下にもう一対の眼が開眼し、爪が黒くなって尖った。

 宿儺が肉体の主導権を握ったのだ。

「やっと出てきてくれたね……!」

 右腕を放し、真人が満面の笑みを向けた瞬間。

「やかましい」

 不愉快だと言わんばかりの表情で宿儺は指を動かすと、目に視えぬ斬撃で真人は両腕を斬り飛ばされた。

 激痛に顔を歪める真人を他所に、宿儺は徐に服を破り胸に右手を深く刺した。

 そして抉ったのは……どういう訳か鼓動している悠仁の心臓だ。

「さて……始めよう」

 左手で反転術式をかけ、あっという間に抜き取られた心臓を再生させ、胸に空いた穴も塞ぐ。

 そして右腕の心臓に呪力を流すと、禍々しい渦が発生し、生々しく嫌な音と共にそれはあっという間に人の体となった。

 宿儺が自由な肉体――分身を手に入れた瞬間だった。さりげなく生得領域で着ている着物も再現しているあたり、さすがと言えよう。

「……は?」

 その光景を間近に見ていた真人は、言葉を失った。

 宿儺優位の縛りを科せるつもりが、宿儺が縛りの抜け穴を利用して自ら器を作り出したのだ。

 想定外の事態が重なり、困惑するしかなかった。

「……ちょ、ま、ええっ!? 何で!?」

 一分が経過したところで悠仁は意識を取り戻した。

 が、目の前にいる宿儺に驚愕し、腰を抜かした。

「ケヒッ……! いい表情(かお)だなぁ、小僧」

「……!?」

「種明かしをするとすれば、お前との縛りである「誰も殺さない」には己自身が含まれてなかった。おかげで俺は完全とは言い難いが自由な肉体を手に入れられた」

 宿儺の言葉に、悠仁は血の気が引いた。

 呪いの王が、器である自分から解き放たれてしまったのだ。秘匿死刑とかで済む話ではなくなった以上、五条が来るまで誰の手にも負えない。

 安易に縛りを結び、肉体の主導権を渡したことを後悔したが……。

「お前には感謝するぞ。虎杖悠香」

「ゲホ、ゲホ……一応、約束は破らない男のつもりなので……」

「「!?」」

 ここで衝撃の事実が発覚。

 宿儺の爆弾発言に、二つの視線が悠香に向けられる。

 器の弟と宿儺がグルだったなど、夢にも思わない展開だ。

「……ここまで働いたんです。無下にしないでくださいよ」

「対価に応えると言ったのは俺だからな。望み通り、不要な殺しは控えてやろう」

「……何で?」

 その時、真人は不機嫌そうに立ち上がった。

 すでに斬り飛ばされた腕は再生済みだ。

「意味わかんないんだけど。これから呪いの世界が始まるってのに、呪いの王のあんたが何でそんなガキの肩を持つ?」

「お前如きになぜ言わねばならん。分を弁えろ」

 悠香に計画を邪魔された上、その邪魔に加担した宿儺が人間に与することに、真人は顔を歪めた。

 宿儺はその理由を明かさない。明かす必要もなく、その義理もない。

 そんな中、悠仁は真っ直ぐな眼差しで宿儺に問う。

「宿儺」

「……何だ小僧」

「悠香を騙したわけじゃないよな?」

 その言葉に、背を向けたまま宿儺は「そんな訳なかろう」と即否定した。

「これは虎杖悠香との縛りだ。俺は身に余る私益は貪らん」

「……そっか」

 悠仁はぐったりとした悠香を抱える。

「悠香は昔から頭いいからよ……それなりに考えて動く。宿儺と縛り結んだのも、俺やみんなの立場を考えてるはずなんだ……だから今はお前を信じる」

「……」

「でも、こんなにお前に気を遣った悠香を裏切ったら……死んでも呪い続けるからな」

「愚問だな。俺としても虎杖悠香が消されるのは本意ではない。それでも死んだらそれまでの男だが」

 悠仁は宿儺の言葉に、思わず笑みを浮かべた。

 何だかんだ言って、呪いの王も人間臭いところがあるのだ。

 素直じゃない奴――悠仁の中で、宿儺はそんな存在に見えてきた。

「さて……分身の肉体を手に入れたとはいえ、もう少し〝慣らし運転〟だ」

 口角を上げる宿儺に、真人は本能的に危険を察知したのか、逃げようとした。

 が、突如として真人の胴体は真っ二つになった。

「どうした呪霊。先程言ったはずだ、お前に用があるのだと」

 ――お前を実験台にするという意味でな。

 宿儺の嗜虐的な笑みに、真人は己の運命を悟ったのだった。




メロンパンが悠香君を「突然変異体」と称しつつ「失敗作」と評価したのは、悠香君の天与呪縛のせいで器として欠陥品だと気づいたからです。
それと「エラーに次ぐエラーを起こして生まれた」……これを必ず憶えておいてください。

そしてついに宿儺降臨。
悠香君が宿儺に好意を寄せすぎではという意見もありましたが、いざという時の優先順位は悠仁ですのでご安心ください。
宿儺も宿儺で「死んだり殺されたりすれば、虎杖悠香はその程度の男」と割り切ってます。ただ「自分の好奇を奪った落とし前はつける」つもりのようですが。


次回は順平君の後始末です。
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