虎杖弟の地獄旅   作:悪魔さん

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呪術廻戦の原作本編がそろそろ終わる……!
最後はどうするんだろう……?


第30話:渋谷事変・その4

 虎杖悠香と真人。

 里桜高校以来の両者は、互いに呪力を帯びて睨み合う。

「……沙奈ちゃん。こいつは能力の相性上、俺の方が都合がいい。俺がこいつの相手するから、君は他の連中を」

「っ……でも」

「目の前の敵に集中させて」

 鋭い目つきで真人を見据えながら、悠香はそう告げる。

 沙奈は信仰する少年の意思を尊重し、小さく頷く。

「……必ず帰ってきて。私の神様」

 沙奈は悠香の右手を取り、優しく口づけする。

 当の本人は「戦場なんだけどここ……」とジト目で受け入れている。中学時代からやられてきたのだろうか。

 そして沙奈は、悠香の手を離してその場を去っていった。

「……さて、俺もやるかな」

 悠香が一歩前に出て木刀を構えると、それに反応した真人が口を開く。

「悠仁じゃなくて悠香だったとはね。まぁ、どっちでもいいや。殺すことに変わりはないし」

「あっそ。俺もお前を祓うだけだ」

 悠香と真人、互いに呪力を練り上げながら睨み合う。

 先に動き出したのは、悠香だった。

「〝威虎(インドラ)〟!!」

 木刀を振るい、帯びさせた高濃度の呪力を弾丸のように射出。強烈な衝撃波が真人に迫る。

 対する真人は、体内に仕舞った縮小した改造人間を吐き出し、元のサイズに戻して盾とした。が、衝撃波は容易に肉の盾を貫通したため、術式を応用して肉体変化させ、どうにか回避する。

 今度は真人が攻撃に出る。改造人間達を放ち、悠香を襲わせる。しかし、悠香は真人の手の内を読んでいたようで、木刀を横薙ぎに振るって呪力を放出。真人の改造人間を全て吹き飛ばした。

 だが、その隙に真人は悠香の懐へ潜り込み、呪力を込めた拳を振りかぶる。悠香はすかさず木刀を振るって受け止め、そのまま凄まじい速さで打ち合いを繰り出した。

 高速戦闘という言葉が相応しい程の速さで放たれる、木刀と拳の応酬。悠香は呪力を纏わせた木刀を振るい、真人の拳を弾いていく。対する真人は余裕綽々といった様子で笑っていた。

 しかし、均衡は崩れる。悠香の右足の蹴りが真人の腹部に命中し、それによって生じた一瞬の隙を突き、下段からの斬り上げが真人を襲ったのだ。咄嗟に呪力でガードするが、勢いを殺し切れずに食らってしまい、そのまま空中へ5メートルも上へ飛ばされてしまう。

「くっ……もしかして、悠仁より強かったりする…?」

「肉弾戦なら兄さんの方が上さ」

「!?」

 真人はハッとなる。

 何と、空中なのに目の前に悠香がいるのだ。呪力強化した身体能力で跳び、距離を詰めたのだ。

「一遍、地獄に堕ちてみろ」

 悠香はそう言いながら、左手で真人の顔を鷲掴みした。

 すると、悠香の禍々しい呪力が真人の身体に流れ始め、次第に全身を包み込んだ。

(ヤバっ…!!)

 真人は一気に鳥肌が立ち、すかさず無為転変で魂を攻撃しようとするが、それより早く悠香が決めた。

「〝(フル)()()〟!!!」

 

 ドンッ!! ドガァン!!

 

「がはっ!?」

 悠香は真人を地面へ垂直に叩きつけると、彼を覆っていた呪力が激突と同時に爆発。

 全身に呪力の衝撃が走り、真人は白目を剥いて吐血しながらクレーターに沈んだ。

 〝降虎雷〟は悠仁の〝逕庭拳〟をヒントに編み出した、悠香の特異体質である「自分以外の呪力干渉を拒絶する」という天与呪縛を利用した技だ。相手が傷を負った際に体から漏れた呪力を引き金に、悠香の呪力と相手の呪力が接触することで拒絶反応を起こす――言わば「混ぜるな危険」を技に昇華させたのである。

 この〝降虎雷〟の恐ろしいところは、攻撃対象の呪力に比例して威力が変動する性質にある。相手の呪力が強力であればある程、拒絶反応による爆発の威力も跳ね上がり、より強力な攻撃となる。悠香より強いからと高を括っている相手程、この技を食らって受けるダメージが大きくなるのだ。もし〝降虎雷〟を喰らってピンピンしていられるとすれば、肉体が異常なまでに頑強か反転術式による治癒がとてつもないかだ。

「ぐ……あ……」

 真人はどうにか立ち上がろうとするが、悠香は空中で一回転しながら木刀を振りかぶって呪力の衝撃波を放つ。

 高速で襲い掛かるそれを、真人は両腕を鳥の羽に変化させて飛行して回避。そのまま腕を銃口に変化させ、縮小させた改造人間を銃弾として発射する。

 改造人間達は元の大きさに戻り、頭上から悠香に襲い掛かる。しかし、悠香は木刀を低い姿勢で振るい、地上から空中に向けて竜巻状の呪力の衝撃波を放出。改造人間達を吹き飛ばした。

「ちょっ、それアリ!?」

 もはや術式ではないかと疑うレベルの呪力操作に、真人は目を剥いた。

 悠香はさらに木刀を横薙ぎに振るい、三日月形の衝撃波を飛ばして攻撃。真人はどうにか回避し、さらに改造人間を放って襲い掛からせる。

 また同じ手か――悠香は目を細めながら木刀を振るおうとした、その時!

 

 ボンッ!

 

「!?」

 悠香の目と鼻の先で、改造人間は自爆して血をぶちまけた。

 時間差変形を生かした、血の目くらましだ。予想外の奇策に悠香は怯み、その隙を突いて真人が顔に触れた。

 

 パンッ!!

 

 無為転変が発動し、悠香の顔の半分が吹き飛んだ。

 夥しい量の血が飛び、うつ伏せに倒れる悠香。その光景に、真人は高笑いした。

「はははっ!! ざまぁないね!! やっぱり魂が歪んでたか!!」

 しかしその直後、悠香の吹き飛んだ顔が物凄い速さで自己再生した。

 ぐじゅぐじゅという生々しい音を立て、まるで逆再生するかのように破壊された顔が元通りになったのだ。

 即死攻撃を喰らったにもかかわらず、反転術式ではなく純粋な再生能力で復活・意識を取り戻して立ち上がった悠香に、真人は絶句した。

「マジかよ…!?」

 真人は物凄い量の冷や汗を流した。

 だが悠香が魂を弄られたことで肉体にエラーに次ぐエラーを起こし、怪物じみた再生能力を得たきっかけは真人自身である。散々呪いとして人々を貪ってきたツケが、まさかこんな形で返ってくるとは。

「続けようか……真人」

 悠香はそう呟き、さらに殺気立つ。

 それは紛れもなく、〝凶犬〟の再来だった。

 

 

           *

 

 

 一方、その頃。

 裏梅と行動を共にしていた宿儺は、二人の少女と一体の特級呪霊に遭遇していた。

「……まずはお前達だ、小娘共。俺に用があるのだろう? 言ってみろ、指一本分の願いなら聞いてやらんこともない」

 宿儺の言葉に、地べたにひれ伏す二人の少女は震え上がる。

 彼女達の名は(はさ)()美々(みみ)()(はさ)()菜々(なな)()。夏油に救われ、夏油の夢に賛同し、夏油の体を奪った羂索を憎む双子の姉妹だ。

「……渋谷駅の副都心線ホームに、額に縫い目のある袈裟の男がいます。そいつを殺してください」

「夏油様を解放してください。私達は指を2本持っていますので…」

「……」

 二人の言葉に、宿儺はかつての悠香とのやり取りを思い返した。

 

 

「なぁ、悠香よ。お前に一つ訊きたいことがある」

「…何でしょうか」

 数ヶ月前、都内某寿司屋。

 悠香の食事の誘いに乗った宿儺は、裏梅と共に江戸前寿司を堪能しながら質問してきた。

「もし、俺が指一本分の願いを叶えてやると言ったらどうする?」

「まーた難しい質問を…」

「早く答えろ、宿儺様を待たせるな」

 睨みつけてくる裏梅に急かされ、悠香は一呼吸置いてから返答した。

「今の時代を味わってください」

 その言葉に、二人は目を丸くした。

 続けて悠香は、目を伏せながら言葉を紡いだ。

「宿儺さん、裏梅さん……俺は兄さんのような善人にはなれないし、お二人のような大きな存在にもなれません。指一本分の願いなんか口にできるような身の丈じゃないんです」

「……」

「虎杖悠香、貴様……」

 悠香は困ったように笑いかけながら、さらに続ける。

「この時代、平安の時世と違って豊かでしょう? 平安になかったものが平成の世には溢れているんです。だから……だから、この時代のいいところをたくさん味わってください。品質は()()()()()()保証します」

 悠香の言葉に、宿儺はニヤリと笑った。

「ケヒッ……お前もやはり悠仁(こぞう)の弟だな」

「……アレでも自慢の兄ですから」

「やはり、お前は俺を飽きさせんな」

 これだから、この男は面白い――そう思いながら、宿儺は残りの一貫を口に入れた。

 

 

 時は戻って、渋谷。

「たかが指の1、2本でこの俺に指図できると思ったか? 不愉快だ」

 宿儺は冷酷に、怒気を孕んだ声で告げた。

 似たような質問に対し、悠香は宿儺の事を考えて答えていた。自己の利益よりも、相手の利益の方を尊重したのだ。

 この時点で、宿儺にとって美々子と菜々子は「どうでもいい存在」に成り下がっていた。

「裏梅」

「わかりました」

 宿儺が名を呼ぶと、裏梅は手の平に息を吹き付けて姉妹を氷漬けにした。

 ()(こり)(じゅ)(ほう)(しも)(なぎ)――氷を顕現させて周囲を氷結させ操る術式の真髄だ。

「下らん時間を過ごした」

「全くでございます」

 吐き捨てる宿儺に同意する裏梅。

 そして宿儺は、残された呪霊――漏瑚に目を向ける。

「待たせたな、呪霊……貴様は?」

「無い。我々の目的は宿儺、貴様の完全復活だ」

 そう言うと漏瑚は、懐から布に包まれた何かを取り出して大きく広げた。

 中には宿儺の指が丁寧に10本並べられている。

「呪霊……何を企むつもりだ?」

「黙れ裏梅、この裏切者め!! 貴様はついこの間まで我々の味方だったろう!!」

「裏切るも何も、私は最初から宿儺様と共に在ると決めている」

 裏梅の返答に、漏瑚は怒りを露わにしながらも語る。

 自分達の望みは、全ての呪いの頂点に立っている宿儺の復活。自分達が真の〝人間〟として君臨する世界を築くには、完全体の宿儺が顕現することが必要不可欠であると。

 その言葉に偽りはないと宿儺は判断した上で、彼を嘲笑した。

「ケヒヒヒ……!! 貴様の言う世界は、悠香の寸劇の方と比べると〝味〟が足りんなぁ」

「なん、だと……!?」

 呪いの王の言葉に、特級呪霊は絶句する。

「それに俺は今の時代を味わっている最中だ…悠香の寸劇が終幕しない以上、貴様らの望みに応える気はない」

「っ……!!」

「去ね」

 宿儺は閻魔天印を結び、無情にも領域を展開したのだった……。




今後の予定ですが、死滅回遊はやります。
ただ、本編のような地獄ではなく、あえてギャグを多めにしようと思います。

「鹿紫雲耐えたーーっ!!」とか「伏黒恵、沼に引きずり込まれたーーっ!!」とか「日車、あと数センチ手が届かずっ…!!」とか「特級術師・乙骨憂太、鋼鉄の魔城に挑む!!」とか、妄想を膨らませて準備しておきます。
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