月日、いや年月が流れるのは早いもので、嵐のような出来事が嘘や夢みたいに過ぎ去っていく。
運命の風の赴くまま、世界は廻っていく。
「……疲れたぁ~~~~!」
「何を言うてんねん、教職やってるって理由で仕事減らして秤君とかに押しつけとるやろ悟君」
身体を伸ばす五条に、直哉が呆れながらボヤく。
新体制となった総監部のメンバーになって早一年……ようやく呪術界は落ち着いた。
旧体制における特級呪術師や一級呪術師で構成された新たな組織は、当初こそ周りのほとんどから仲がすぐ悪くなる――それも五条と直哉によってと決めつけられて――と思われていたが、クズ同士で意見が合うことが多く存外うまくやっていた。
これらも織り込み済みで頼んだのであれば、悠香はとんだ策士だ。
「まぁ、腐ったミカンのバーゲンセールの頃よりも呪術師たちの人員が増えたのはラッキーだったね」
「あれは七海みたいに戻ってきてくれただけやろ」
「それでも貴重な人材さ」
五条は笑みを深める。
去年の旧家大粛清の折、上層部によって呪術界を追放された元呪術師たちを悠香が虱潰しで探し出し、謝罪行脚したという。呪術高専に入学して半年と経たない若者が総監部を徹底排除したことに彼ら彼女らは大層驚き、そして感謝した。現在は呪術師として活躍し、日本各地で呪霊や呪詛師と戦ってくれている。
それだけではない。死滅回游の際に受肉した過去の術師たちも、悠香に協力的になったのだ。まぁ、善意というよりもあの空中庭園と空中要塞を制覇して一泡吹かせたいという思いの方が強いようだが。
「あの子にはみんな騙されたなぁ。僕もあそこまでやらかすとは思わへんかった」
「それね」
「おやおや、取り込み中だったかな?」
するとそこへ、朗らかな表情で九十九が顔を出した。
彼女は一つの報告書を五条に手渡すと、彼は引き攣った笑みを浮かべた。
「……マジ?」
「あの子たち、本当にこっち側でよかったよ」
九十九は深々と溜め息を吐きながら言う。
それは、かつての御三家を上回る規模となっていた「シン・陰流」の当主を引き摺り下ろし、三輪霞を当主に担いだという報告書だ。
「悠香君の大粛清の時に、先代のシン・陰流当主が総監部の乗っ取りを画策していたことが発覚してね。しかも総監部乗っ取りの野心を達成するため、門下生の寿命を当主に捧げる縛りまで判明したのさ」
「うわマジか」
「そんで、悠香君がトドメ刺しに行ったん?」
「その時にちょっと面白いことがあってね」
九十九曰く。
シン・陰流の当主の居場所を天元から聞いた悠香は殴り込みをかけようとしたが、そこに冥冥が待ったをかけて自分が全部やると言ったのだ。彼女が愛でている弟の憂憂が門下生であり、寿命を奪われる契約を何とかして破棄したいという理由があったからだ。
しかし、悠香は断固拒否したという。彼は利害さえ一致すればどんな相手とも手を組む柔軟性を持つというのに、だ。
「あの子のことや、理由あるんやろ?」
「フフ…! それがね…!」
――弟さんに当主を継がせて着服するかもしれないという〝巨大な疑惑〟があるので、冥冥さんじゃなくて俺が全部引き受けます。
「「ブハハハハハハ!!!」」
直哉と五条は堪らず大爆笑する。
悠香は冥冥の守銭奴ぶりから、門下生から月謝を搾り取るかもしれないと予見し、釘を刺したのだ。冥冥がどういう人間かを熟知している証拠だ。
「あの子の面食らった顔は新鮮だったよ」
「あー、見たかったなぁ僕。冥さんのその顔」
「悠香君……見せつけてくれよるなぁ」
悠香は正論から屁理屈まで理論武装することが多く、それも相手が正面から否定しきれないようなものを展開していく。それほど人間観察に秀でており、日置から教わり悠仁を守るために培ってきたのだろう。
もっとも、それぐらいの交渉術がなければ、両面宿儺を筆頭とした怪物たちと渡り合うことなんて土台無理な話だろうが。
「……そういえば、悠香君は今どうしてるんだい?」
「ああ……宿儺と一緒だよ」
その頃、悠香は宿儺と二人っきりで話をしていた。
場所は自分のお気に入りスポット――懸造りの舞台だ。
「宿儺さん……何と礼を言ったらいいか…」
「よいよい。お前と俺の仲だろう、畏まるな」
胡坐を掻いて風に当たる少年を、宿儺は口角を上げながら見下ろす。
悠香が呪術界に反旗を翻し、勢い任せに粛清と改革を敢行し成功を収めたのは、両面宿儺という五条悟以上の後ろ盾があったからだ。宿儺としては悪ノリや暇潰しの感覚であったが、悠香としては自分の我儘を叶える後押しをしてくれたことに変わりはない。そこに一切の善意が無くとも、悠香は宿儺に感謝していた。
呪術師の歴史が始まって以来、かの天災とここまで良好な関係を築けたのは後にも先にも悠香だけだろう。
「……ところでだが、悠香」
「何でしょうか」
不意に宿儺は尋ねた。
「お前にとって、俺はどう映って見えていた」
悠香はその言葉に、一瞬戸惑った。
天上天下唯我独尊、己の快・不快のみを生きる指針とする呪いの王が、まさか自分に対してそんなことを聞いてくるなど、思いもしなかった。
悠香はどう返すべきか迷ったが、ありのままに答えた。
「……一言では言い表せない、としか正直言えません。俺から見た宿儺さんが、正しいのかどうかすらわからない。どんなに仲が良くて距離も近くても、他人は他人じゃないですか」
「……確かにな」
悠香の言葉に、宿儺は目を細めた。
その上で彼は、逆に質問をした。
「宿儺さんは、葛藤したことってありますか?」
「……生き方を選ぶことができたきっかけはあったな」
宿儺曰く。
異形の忌子として生まれた自分にとって、自分を蔑み虐げた者たちに恨みや憎しみを全く感じなかったわけではない。己の臓腑に蠢く呪詛を吐き出さずにはいられず、同時に心の内では自らの呪いに焼き殺されることを恐れてもいたと。
それを聞いた悠香は、確信した。宿儺は自分を呪いと言い聞かせることで己を保ち、呪いであることを誇ってるのではなく、呪いとしての運命を受け入れていたのだと。
「きっかけは二度あった。それが葛藤というのなら、そうなのだろう」
「……〝葛藤は人間である証拠〟」
「!!」
悠香がボツリと呟いた言葉に、宿儺は弾かれたように彼を見た。
「日置先生が、昔そう言ってたんです。「何をしても迷わない人間なんかこの世にいない。迷って、苦しんで、その上で一つの答えを出す。辿り着いた答えがどんな結果をもたらそうと、その過程を踏めるのなら、それは人間である絶対的な証だ」――それが答えだと思います」
「……」
「結局は俺も他人なので宿儺さんの自由ですけど…生き方を変えてみるのも、良い
その言葉に、宿儺は短く「…そうか」と返した。
悠香は、宿儺の生き方を否定はしなかった。だからこそ、これからは〝呪いらしく〟から〝人間らしく〟生きてみてもいいのではないかと勧めた。
それは、悠香が日置から教わったことでもあるからだ。
「……こう見えて、あなたとの関係は気に入ってるんです。まぁ色々とご迷惑かけるでしょうが、これからもお付き合いしていただけると」
「ケヒッ…そうさな。まだお前の喜劇を見れるのなら、当面はそれを娯楽とするのも悪くない」
「では、今後ともその関係で」
悠香は徐に立ち上がると、軽く一礼してからその場を後にした。
その背中を見つめ続けていると、裏梅が姿を現した。
「宿儺様…」
「……奴は薄々勘づいていたのだろう。俺を愉しませるために月日を過ごす内に、他者に呪いを振り撒くことで自らを呪いで焼き殺さないようにしていたと」
肉体としての器だったのが悠仁であれば、悠香は自らが吐き続ける呪詛を受け止める「心の器」であった。思い返せば、悠香の関係者は「これ以上宿儺と関わらなくていい」と度々制していたのに、当の本人は口八丁に言いくるめたり躱したりして関係を断とうとはしなかった。
それは悠香が宿儺の心の内を察知し、理解していたからなのだろう。悠仁や五条、万でも把握できなかった宿儺のそれを、悠香だけが気づいて受け止める道を選んだのだろう。
そう述懐する宿儺に、裏梅は俯きながら口を開いた。
「私は、あなた様を変えることはできなかった…苦しんでいるあなた様の心に気づくことなく、ただ、見ているだけでした」
「……」
「虎杖悠香は……悠香は気づいていた。そしてあなた様に配慮し、それを誰にも言いふらすことなく、あなた様の苦しみを受け止め続けていた」
裏梅は胸に当てた手を握り、涙を流した。
「私は……私は、あなた様に何もできなかった……!」
「……悠香は微塵も思ってないようだがな」
主君の言葉に、裏梅はハッとなった。
「もうすでに帰って行ったが…奴ならばこう言うだろう。「傍に居続けてもらうだけでも人は救われる」とな」
「……!」
裏梅は涙を拭い、顔を上げた。
「私は……これからも宿儺様にお仕えします」
「……そうか。ならばお前も好きにするがいい」
「はい……!」
深々と頭を下げる裏梅に、宿儺は穏やかに微笑んだ。
宿儺との対談を終えた悠香は、すぐさま日置に報告した。
「そうか……やはり人の子だったんだな。それを聞いて安心した」
「……私が言うのもアレだけど、日置は五条以上に規格外だな」
安堵した笑みを浮かべる日置に、家入はそう評した。
実を言うと、日置も自らを呪いと称する宿儺に疑問を抱いていた。平安という時代がいかに不安定で多様性のない社会であったかは、当時の資料が生々しく物語っている。結合双生児をはじめとした奇形の理解や知識が皆無なのは言うまでもなく、差別偏見が跋扈する。そんな中で奇形で生まれればどうなるか、火を見るよりも明らか。
故に日置は、宿儺も内心では「人間」を憎んでいたのではないかと考えていた。そして、悠香の話を聞いて予想通りだと確信したのだ。
「内面を知ろうと努力するのが教師って仕事さ。その対象が生徒だけとは限らない」
「……五条にあんたの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいよ」
家入は日置の答えに、思わずそう零した。
「それで? 悠香はどうしたいんだ」
「……兄と一緒に向き合ってく所存です。伏黒君も釘崎さんも、五条先生たちも結局は呪術師。あの人をどうしても呪いと見てしまう部分があるでしょうし」
生粋の呪術師ではないからこそ、宿儺と向き合えるのだと語る悠香に、日置はエールを送った。
「彼の未来はお前次第になるかもしれない。俺も俺なりに微力ながら協力する。何かあったら、すぐに連絡してくれ」
「ありがとうございます」
「それと……悠香も、自分の人生を歩んでいいんだぞ。呪術師として生きるのは、あくまで選択肢の一つだ。俺は、お前が幸せになってくれるならそれでいい」
「……はい」
日置の言葉に、悠香はその優しさを素直に受け取った。
*
翌日。
悠香は久しぶりに悠仁たちと合同で任務に赴いていた。
「等級違いの任務がないから楽だ」
「経験者は語るってヤツですか」
伏黒の呟きに、悠香はそう返す。
旧体制における上層部は、五条が言っていたように魔窟であり、保身の為に等級違いの任務を与えて若い芽を摘んできた。しかし実質クーデターを起こした悠香によって新体制となった今、五条を筆頭に若者の為の適切な対処を徹底し、昇級もよりしやすくなった。
そして、悠香も例外ではない。彼の活躍によって呪術界は変わったため、彼は特別1級呪術師に昇級していた。兄の悠仁も1級呪術師に認定され、真希は禪院家の妨害がなくなったために2級呪術師に昇格、総監部になった来栖華にいたっては特級呪術師に認定された。
そして御三家や保守派からの迫害を受けてきた者たちや補助監督の待遇が改善され、鹿紫雲をはじめとした死滅回游で覚醒した術師たちにもある程度の任務を与えることで人手不足も一気に解消。旧体制の時よりも呪術師は少ないのに、日本国内での怪死者・行方不明者が減少傾向にあるという異常事態になった。
なお、これを知った日車は「君たちは本気で呪いから日本を守る気があったのか」「若者に負担を押し付け過ぎだ」と東京・京都両校の教師陣を厳しく叱責し、天元にも非難の矛先を向けたという。やはり外様の人間は一味違うようだ。
「……まぁ、おかげで私たちもある程度楽をできるのはいいけどね。給料も跳ね上がったから買い物もいいのが買える! 神様仏様悠香様だわ、ホント」
「俺一人じゃできなかったよ。宿儺さんが後ろ盾になってくれたからさ」
「その宿儺は? アイツ結構アンタに構ってくるじゃない」
「さあ? まぁ大丈夫だよ、人は変わる生き物だから」
缶コーヒーをグイッと飲む悠香に、一同は目を点にした。
その言い回しは、まるで宿儺を改心させたかのようにも聞こえたからだ。
「悠香、お前まさか宿儺を――」
「兄さん、俺はきっかけになっただけだよ。生き方を決めたのは宿儺さん自身だ、そこは履き違えちゃいけないよ」
そうキッパリと言い切った悠香に、悠仁は少し間を置いてから頷いた。
宿儺が今何を思ってるのかはわからないが、少なくとも悠香と接するようになってからは呪いらしい極悪さが少し鳴りを潜めた気がする。しかし自分の言葉が届いたかどうかはわからないし、気まぐれな性分ゆえに以前のような無差別に惨禍を齎す可能性もゼロじゃない。
だがそれでも、自分は呪いの王に「生き方を変えてみるのも、良い暇潰しになる」と言ったのだ。ならば自分はそれを信じてやるだけだ。
「悠香…信じていいのか?」
「言い方もあれだけどさ……また悪さしない?」
質してくる悠仁と順平に、悠香は返した。
「……
そう告げ、缶コーヒーを飲み干してゴミ箱へ捨てる。
前世を持つ虎杖悠香と、時を越えて復活した両面宿儺。どんな目に遭っても生きて抗うことを止めない少年と、呪詛を吐かずにいられなかった呪いの王。
環境も生い立ちも思考も異なる両者だが、二度目の生を受けたという意味ではシンパシーを感じる部分が少なからずあるのだろう。
「……やっぱ人間、向き合わなきゃダメだよ」
それが、全てだった。
任務を終え、帰還した一行。
寮の前で彼ら彼女らを待ち構えていたのは……。
「ようやく戻ってきたか、悠香!!」
『宿儺!?』
いつもの傲岸不遜さはどこへやら、やけに焦った表情の宿儺。
明らかに異様な雰囲気に、一同は警戒するが、悠香は一人どうしたのか尋ねた。
「宿儺さん、どうしたんですか? 裏梅さんは?」
「説明は後だ、お前の力を借りたい!!」
「……何か猛烈に悪い予感がしてきた…」
悠香がそう呟いた直後。何かが落下してきたような衝撃音があり、地面が揺れた。
そう離れていない場所にもうもうと土煙が立ち上り、煙の奥に影が見えた。
「――見つけたわ、宿儺!!」
「くっ! しつこい女だ!」
『何だあれ!?』
煙が晴れると、そこには虫と人間のキメラみたいな、それこそ呪霊みたいな見た目の人外が猫なで声で宿儺の名を呼んだ。
するとそれに苦虫を嚙み潰したように応じる宿儺だが、その声は聞き覚えがあった。
「宿儺さん、あのテラフォーマーみたいなのって万さんですか!?」
「ああ、構築術式の応用で肉の鎧を纏っている」
「うわぁ、いかにも機動力がありそうな形態…」
悠仁は思わずそう呟いたが、そんなことを言ってる場合ではない。
何をトチ狂ったのか知らないが、事情を聞かねば。
「何したいんですか、あなた」
悠香の質問に、万は不気味に笑いながら答えた。
「フフ……
万の言葉を聞いた悠香は、一気に血の気が引いた。
宿儺に愛を教えようとする万が、もし誰かに協力を求めるとしたら、
「さ、沙奈ちゃんと手を組んだ……!?」
「彼女の愛も立派なものよ。まさか私も勉強になるなんて思わなかったわ」
「いや、参考にしちゃマズいでしょうが!!」
そう、万は信頼できるトラウマという訳のわからない立ち位置にいる悠香の同級生・沙奈と手を組み、ストーカー同盟で宿儺に迫ったのだ。
おそらくだが、沙奈は宿儺を快く思ってないため、彼に少し怖い思いをさせようと考えて万に力を貸したのだろう……。
「さあ、奥村沙奈! 今日は気分がいいから私も手を貸してあげるわ」
「……今回だけね」
そこへ、狂気の笑みを浮かべた沙奈が降臨。あまりの迫力に悠香だけでなく悠仁たちも怯んだ。
まさに絶体絶命と思われた、その時。
「〝霜凪〟!!」
突如として分厚い氷の壁ができ、ストーカーたちの行く手を阻んだ。
裏梅が氷凝呪法で足止めしたのだ。
「裏梅!!」
「お二方、ここは私が引き受けます!! 早く遠くへ!! 日置が来るまで時間稼ぎします!!」
「そうだ、先生今日出張だったんだ…!!」
裏梅の言葉でようやく思い出し、頭を抱える悠香。
常に狂気が見え隠れする沙奈も、日置に雷を落とされた経験があるので、日置が苦手なのだ。だが彼が出張でいない今、実質無敵状態なので手に負えない。
「姑息ね、裏梅!!」
刹那、裏梅の氷壁を万は拳で容易く粉砕した。
沙奈のアシストを受けてるせいか、想像以上に強化されている。
「っ……!! おい、やめろっての!!」
居ても立っても居られないのか、悠仁が万に立ちはだかった。
意外な展開に、誰もが驚きを隠せないが……。
「邪魔!!」
「ぶほっ!?」
容赦なく拳が浴びせられ、しかもこういう時に限って黒閃が発生。
悠仁は殴り飛ばされてしまった。
「嘘でしょ、兄さん!?」
「ちっ、役立たずが…!!」
まさかの秒殺に悠香は悲鳴に近い声を上げ、宿儺は舌打ちをした。
が、そこは現代最強に「千年生まれてこなかった逸材」と称された悠仁。すぐさま復活し、ある意味暴走状態の万に立ち向かった。
「ふ、伏黒君!!」
「ちっ、仕方ねぇ…」
「上等よ、二人とも根性叩き直してやるわ!!」
これ以上野放しにするわけにいかないと、順平と伏黒、釘崎が奮起する。
その隙に宿儺は悠香を抱えて逃走、万と沙奈は自分たちの愛を邪魔する敵を薙ぎ倒さんと立ち向かった。
そうこうしている内に、二人は街中へと降り立った。
「ここまで来れば、奴ら次第だ」
「こういう形で身を隠すハメになるなんて……」
呪術高専から脱出して、どうにか一息吐く。
日置が戻ってくれればいいが、五条の場合は愉快犯で居場所を探す可能性があるので、そうならないことを切に願うばかりだ。
「……す、宿儺さん…」
「言うな、今だけは何も」
「……えっと…迷惑かけたんで、この後ご飯でもどうですか…?」
「……お前の奢りでな」
宿儺の反応に、悠香は思わず笑みを溢した。
これは、一人の少年が呪いにかかわり、闘いの末に新たな平穏をつかみ取るまでの物語。
人間と呪い、どちらに天は微笑んだのか。それとも双方に微笑んだのか。
それは神のみぞ知る。
虎杖弟の地獄旅 完
これにて本シリーズは完結となります。
色々描写が足らない部分もあるかと思いますが、そこら辺はご想像にお任せします。
補足事項があるとすれば……まあいくつか。
まず、禪院直毘人が途中で行方不明になりましたが、彼はメロンパンの策略で死んでます。ただ、あいつ一人にハメられたのかは別問題ですが。
それと途中から描写が一気に少なくなった吉野凪さん、彼女は高専で普通に働いていて、日置先生と距離が近いそうです。世代が近いからでしょうが、何やら再婚を考えているという噂が……?
それとドブカスでお馴染みの直哉さん、彼は伏黒に名字を変えようとしているそうです。パパ黒と津美紀が何も言わないことをいいことに企んでます。
あと、沙奈ちゃんの実家ですね。実家は悠香君が呪術界から排除してます。そのせいで沙奈ちゃんの執着がより強力になっちゃいましたが、本人は全く気づいてません。
なお、追放された旧家は徒党を組んで復讐を企んでますが、新体制の戦力があまりにも強大すぎて何もできないそうです。そのまま寿命が尽きるのも時間の問題です。(笑)
掲載開始が2023年10月02日なので、およそ一年半ぐらいですか。
呪術廻戦は大まかにしか知ってないので、皆様からご指摘も多かったなと思います。そのおかげでよりよい物語、より愉快な物語となり、本作が「ソフト系呪術廻戦」になれたんじゃないかなって思ってます。
我ながらとても楽しくやれました。応援ありがとうございました。
次回作を今年の4月までに投稿しますので、今後ともよろしくお願いいたします。