虎杖弟の地獄旅   作:悪魔さん

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遊郭編です。
吉原では悠香訓を渋谷事変並みに大暴れさせたいなぁ…。


鬼滅の刃×虎杖弟 第二章その2

 無限列車の任務から4ヶ月が過ぎようとしていた。

 炭治郎・善逸・伊之助は毎日鍛錬をしながら合間に入る鴉からの指令に従いそれぞれ鬼を倒しに行き、悠香は蝶屋敷でアオイ達の手伝いをしつつ手合わせを願う柱の相手をしていた。

 悠香が相手にする柱は不死川実弥が多く、その次に自主的な機能回復訓練として煉獄杏寿郎、実力に興味を持った時透無一郎が続いている。ちなみに実弥が一番多いのは、上弦の鬼に出会えない鬱憤を晴らす為であるので職権乱用に当たるのは秘密だ。

 そんな中、任務を終えた炭治郎は、悠香との手合わせを願おうと蝶屋敷へ向かっていた。

「悠香は人気だなぁ。煉獄さんたちから手合わせをいつも頼まれてるから……俺も悠香と手合わせして、もっと強くならないと」

 一人呟きながら、蝶屋敷へと急ぐ炭治郎。

 そして目的地を視界に捉えた、その時だった。

 

 ドゴォン!!

 

「!?」

 蝶屋敷の出入り口を何かが突き破り、思いっきり吹っ飛ばされた。

 土煙が晴れると、宝石が散りばめられた額当てを嵌めて左目の周囲に化粧をした白髪の伊達男――音柱の宇髄天元が腹部を両手で押さえながら悶絶していた。

「っ~~~~!! てめぇ、何しやがる虎杖ぃ!! 俺は上官、柱だぞこの野郎!!」

(あの人は……お館様のお家で……いやいや、そんなところじゃない!!)

 慌てて駆け寄り、宇髄に怪我が無いか確認する炭治郎だったが、強い〝圧〟を感じて蝶屋敷の方へ向く。

 視線の先には悠香が臨戦態勢に入っており、構えた木刀からは紫色の呪力が火花のように散り始めていた。

「炭治郎君、どいて。そいつ消し飛ばすから」

「ダメだ、悠香!! そんな事したら!! この人が何をしたのか知らないけど、落ち着いてくれ!!」

 柱への明確な敵意を察知した炭治郎は、悠香を止めようと必死に宥める。

 しかし、悠香の後ろに立っていた三人娘の内の一人・寺内きよが爆弾発言をかました。

「炭治郎さん!! この人、人攫いですぅ!! アオイさんたちを攫おうとしてますぅ!!」

「よし、悠香!! 思いっきりやってくれ!!」

「了解、出力最大でぶちかます」

「おい、てめぇら俺の命を何だと思ってやがる!?」

 さすがに身の危険を感じたからか、宇髄は事情を説明した。

「いいか!! 俺は任務で女の隊員が要るからここの女衆を連れて行くんだよ!! 継子じゃねぇ奴は胡蝶の許可をとる必要もない!!」

「ハッ…よくそんな事言えますね。アオイさんたちにはアオイさんたちの戦場がある。彼女らのような後方支援がいてこそ戦線は成立するということを、最前線…それも現場指揮官も兼ねる柱が忘れるとは」

 嘲笑する悠香は淡々と宇髄を罵る。

「神は神でも悪神はお呼びじゃないんで。…それともアレですか? 若い命を食い物にするのが柱であり続けるコツか何かで?」

「お前、言っていい事と悪い事の区別ぐらいつけろ!!」

「ご心配なく。俺は区別をつけた上で選んでるので安心してください」

「お前、マジで性格悪いな……!!」

 黒い笑みを浮かべる悠香に、ビキリと青筋を浮かべる宇髄。

 しかし、状況としてはアオイたちを庇う悠香の方に正義があるような光景。これで蟲柱(しのぶ)が出てきたらさすがに不利になる。

 考えた末、宇髄はこんな妥協案を口にした。

「だったら、お前らが代わりに来い」

「お前ら? 俺以外に誰が」

 悠香は辺りを見回すと、いつの間にか炭治郎だけじゃなく伊之助と善逸まで戻ってきていた。

「おうよ! 今帰ったところだが、俺は力が有り余ってる! 行ってやってもいいぜ!」

「た、たたたたたとえアンタが筋肉の化け物でも、お、俺はいいい一歩もひひひ引かないぜ!」

「不安しかないね。音柱さん、俺一人の方がいいんじゃないかな?」

()()()()()()()()()()()()そいつらも連れてくっつったんだよ!! 煉獄の任務ん時、何しでかしたか忘れたとは言わせねぇからな!?」

 宇髄の言葉に、悠香は「アレが最善だと思ったからやったんだけどな」とボヤくのだった……。

 

 

 悠香たちが宇髄に同行した任務先は、日本一色と欲に塗れた街・吉原遊郭だった。

 平成という時代の人間である悠香としては、吉原遊郭は歴史の教科書や資料集に載る存在。それが目の前に本物として現れていることに、静かな興奮を覚えていた。

 そんな吉原にある鬼殺隊の支援者である「藤の花の家紋」を掲げる一族の屋敷で、悠香たちは宇髄から任務内容を聞いていた。

「いいか聞け。遊郭に潜入したらまず俺の嫁を探せ。俺も鬼の情報を探るから」

「自分の個人的な嫁探しに部下を使う…という訳じゃないんですか?」

「当たり前だバァカ!! 俺の嫁が遊郭に潜入して鬼の情報収拾に励んでたんだよ!! 定期連絡が途絶えたから俺も行くんだっての!!」

「そういう妄想をしてらっしゃるんでしょ?」

 嫌味っぽく言う善逸に、宇髄は大量の手紙を投げつけた。

 その量は膨大で、相当長い期間潜入しているように思える。

「随分多いですね。かなり長い期間潜入されてるんですか?」

「三人いるからな嫁」

「珍しい、愛人…じゃなくて側室がいらっしゃるとは」

「いや、三人共本妻だが」

「三人…嫁…てめっ…てめぇええ!! 何で嫁三人もいんだよ!! ざっけんなよ!!」

 嫉妬を爆発させる善逸だが、いい加減にしろと言わんばかりに宇髄が腹パンを炸裂。そのまま黙らせた。

「何か文句あるか」

「「いえ…」」

「善逸君、多分ここに巣食ってる鬼もあの人の家庭事情知ったら同じことを言うから大丈夫。……それで、具体的にはどうしろと?」

「そりゃ、まあ変装よ。不本意だが地味にな」

 宇髄曰く。

 花街は鬼が潜む絶好の場所だと踏んだ自分が客として潜入した時、鬼の尻尾は掴めなかったので、優秀な女忍者〝くの一〟である自分の嫁たちに〝もっと内側〟に潜入してもらったとのこと。

 そして怪しい店は三つに絞っており、そこで嫁を探して情報を得るのが与えられた任務なのだが……悠香は一人物申した。

「……宇髄さん、俺に時間くれませんか?」

「あ? お前、まさか逆らうのか?」

「急がば回れってヤツです。深く入れば入る程、ちょっとしたボロで計画が全部ご破算になる。向こうが地味なら、こっちは地味と派手を兼ねて動くべきだ」

 悠香の言葉に、宇髄は少し考える。

 確かに悠香は頭が切れるし腕も立つ。しかも予想だにしない行動で敵の足を掬うのがかなり得意で、無限列車においては見逃す形とはいえ上弦の参による殺戮を阻止している。

 何も考えてない、ということはこの四ツ目の少年に限ってまずない――それだけは断言できる。

「……いいだろう、ただし一日で敵の居場所を特定しろ。できなかったら責任取ってもらうぞ」

「い、一日……!?」

 宇髄が悠香に突きつけた条件に、炭治郎はギョッと目を見開く。

 だが、悠香はニィッ…と口角を上げた。

「構いません、俺にそれぐらいくれれば十分です。求めてる答えがすぐ出てビックリしないでくださいよ?」

 

 

            *

 

 

 翌日、巳の刻。

 悠香は早速動き出し、炭治郎たちを連れて聞き込みを始めていた。

「すみません。僕は虎杖悠香…旅の先々で言い伝えや伝承、伝説を調査している民俗学者の弟子なんですが、お話を伺ってもよろしいですか?」

「「「!?」」」

 悠香の猫の被り具合に、炭治郎たちは驚愕を隠せない。

 こうやって相手の懐に飛び込んできたのかと、炭治郎たちは少しだけ戦慄した。

「お話……一体何の?」

「僕たちは今、日本各地に伝わる人喰い鬼の伝承を追ってまして。その伝承に共通するのは夜に人が消えること……ここ吉原遊郭でも昔、夜に人が消えると後が絶たないと聞いたので、もしやと思って」

「ああ……それは〝足抜け〟のことよ。借金を返さずにここから逃げる子が多いのよ。――あ、でも…」

 悠香に物を聞かれた女性は、ふと思い出したように言った。

「そう言えば、昔聞いた噂があるのよ」

「噂?」

「物凄い別嬪だったけど、物凄い性悪の花魁のお話……その花魁たちは〝姫〟ってつく名を好んで使って、気に食わないことがあると首を傾けて下から睨めつけてくる独特の癖があったって。茶屋のお婆さんが子供の時と中年の時に見かけたとか……」

 その証言に、悠香の目が一瞬鋭くなった。

「う~ん…外れかなぁ。妓楼ごとに花魁はいるし、たまたま似た性格の人って可能性も否定できない。今の花魁さんはどうなんだか…」

「花魁って言えば、京極屋の蕨()花魁が一番稼いでるそうよ? おかげで毎夜大繁盛よ、羨ましいわぁ」

「京極屋、ねぇ……わざわざすみません、お忙しいところ」

「いいのよ、こんなことで話すの新鮮だし。私もちょうど暇だったから」

「ありがとうございます。では、失礼します」

 ペコリと頭を下げて、その場を離れる悠香と炭治郎たち。

 悠香は三人を路地裏に呼ぶと、我が意を得たりと言わんばかりに口を開いた。

「奴さんを見つけた。京極屋の蕨姫花魁が鬼だね」

「え!? 今の聞き込みでわかったの!?」

「何世代も上の人が見かける複数の「姫の名を冠する花魁」。そしてその花魁たちは首を傾けて下から睨めつけてくる独特の癖があった。……その花魁たちが同一人物だとしたら?」

 悠香の言葉に、三人はハッとなった。

 もしそうだとすれば、蕨姫花魁が鬼でなければ説明が付かない。

「鬼がどこを拠点としてるかはわかった。ひとまず戻ろう」

 

 

 藤の家紋の屋敷に戻った悠香たちは、宇髄に報告した。

「京極屋……確かに俺が怪しいと踏んで嫁を潜入させたぜ」

 有言実行の悠香に、宇髄は不敵に笑いつつも内心驚いてもいた。

 煙に巻かれている雰囲気で手を焼いていたところで、悠香が有力情報を掴んで戻ってきた。これは状況が好転しそうだ。

「無限列車の時もそうでしたが、俺は手ぶらで帰ってくることはしません。それとこれは別件ですが……あなたの奥さんたちの行方に、一つ心当たりがある」

「何!?」

 その言葉に、宇髄は思わず声を荒げた。

 大事な妻たちの行方に関する情報も掴んだとなれば、黙っている理由はない。

「これはほとんど俺の推測なんで、それを前提に言わせてもらいます。……夜の街は鬼に都合がいいことも多い反面、都合の悪いことも多い。巧妙に人間のふりをしていればいる程、人を殺すのには慎重になる。後始末も手間が掛かりますからね」

 悠香は自分の推理を続ける。

「蕨姫花魁が鬼とすれば、夜は仕事をしなきゃならないから遊郭からは出れない。そこで思ったのが、建物の中に通路がある可能性。建物の床と天井の間にある僅かな隙間を、肉体を弄って移動すれば昼間でも活動できる。そして人口密度が高い中で人間を喰うには隔離空間が必要…建物の中に通路がある可能性を鑑みると、鬼は地下空間を隠れ家にしてるはず」

「そうか!! 地下なら日光も届かないし、俺の鼻で匂いも嗅ぎ取れない!!」

 悠香の〝読み〟に、炭治郎はハッとなる。

 鬼は何らかの方法で人間を誘拐して根城の地下に引き摺り込み、好きな時に捕食するとすれば、鬼も攫われた人間も足取りが掴めないことに納得がいく。

「つまり、悠香は鬼である蕨姫花魁の隠れ家は吉原の地下で、宇髄さんの奥さんたちはそこに捕えられてるって言いたいんだな?」

「ちっ……道理で地味に見つからねぇわけだ。ここまで周到となると、相手は上弦かもな」

「向こうから挑発行為を仕掛けてないあたり、こっちの兵力や人選を知りたがってるかもしれません。そうすると、奥さんたちを生かして尋問している最中でしょう。それを逆手にとって、ある程度の準備をしましょう。――俺たちが十回戦って十回勝てるぐらいに」

 ニヤける悠香に、宇髄も笑った。

「いいねぇ、気に入った! じゃあ早速鬼狩りの準備と行くかね」

「よっしゃあ、早速行くぜ!! 猪突猛進!!」

「タンマ、伊之助君」

 闘気を漲らせる伊之助を、悠香は制した。

 すぐに「何でだよ!?」と凄まれるが、焦らずとも敵は近く動くと悠香は語った。

「昼間憶えてる? 鯉夏花魁の身請け」

「あっ! ときと屋の?」

 善逸は思い出す。

 蕨姫花魁の情報を入手した帰り、悠香はときと屋の関係者が稼ぎ頭である鯉夏花魁が身請けされることになったという話を小耳に挟んだのだ。

 炭治郎ら三人はあまり気に留めてなかったが、悠香は違った。それこそが決戦の日取りになると判断したのだ。

「しのぶさんから聞いたんだ、鬼にとって男より女を喰う方がより早く強くなれる性質だと。赤子を育てる分、栄養分が高いと……その理屈で行くと、次の獲物は間違いなくときと屋の鯉夏花魁。鯉夏花魁が攫われる瞬間こそが、最も鬼に接近できる」

「そして同時並行で地下空間を征圧して、体力回復と逃走手段を封じれば…!!」

「それでようやく張り合えるかってところかな」

「え!? 俺たちが有利になるんじゃないの!?」

 悠香の一言に、善逸は仰天する。

 その理由は、相手の能力に関する情報の少なさだった。

「上弦の鬼に関する情報を鬼殺隊はほとんど持っていない。相手の手の内がわからない以上、あらゆる可能性を視野に入れなきゃならない。たとえば…一定条件を満たさないと頸を斬っても死なないとか」

『!!!』

 その可能性に、炭治郎たちはおろか宇髄も息を呑んだ。

 ただ戦うだけじゃなくて、本当に頸を()()斬れば勝利が確定するのかを探る必要性も考慮すると、まだ劣勢と言えるのだ。

「鯉夏花魁の身請けは二日後と聞いてます」

「つまりはまぁ、明後日ってことか」

「決戦まであと二日…」

「地味に時間がねぇが、やるだけやるしかねぇか」

 部屋全体に緊張感が漂う。

 すると悠香は、ニヤリと笑みを深めて告げた。

「準備を整え、機を待ちましょう。――人間様を本気にさせるとどうなるか、調子に乗ってるバカ共に思い知らせてやろうよ」

 四ツ目の少年の宣言に、炭治郎たちは深く頷いたのだった。




次回、上弦の陸との戦闘。
頸が斬れないから取るに足らない雑魚と高を括った堕姫を、容赦ない衝撃波攻撃が襲う…!!

ちなみに悠香君、上弦の参のヘッドハンティングを目論んでます。
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