虎杖弟の地獄旅   作:悪魔さん

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悠香君はあのレベルの呪術師に師事してるので、堕姫単体じゃあ、ね……。


鬼滅の刃×虎杖弟 第二章その3

 運命の夜が訪れた。

 予め練った作戦に則り、炭治郎と悠香が鬼を探していた。

「このあたりが鬼の臭いが強い…!!」

「じゃあ、とっとと済ませよっか」

 炭治郎と悠香は顔を見合わせると、屋根に飛び乗り二階の障子を開けた。

「っ!」

「…どうやら、俺たちより向こうの方がちょっと早かったようだね」

「鬼狩りの子? 来たのね」

 炭治郎と悠香の眼前には、露出度の高いへそ出し衣装で胴体に帯を巻き、三本歯の下駄を履いた妖艶な美女の鬼が立っていた。

 触手のようにうねる帯には、鯉夏花魁が首から下を取り込まれていた。おそらく鬼の異能・血鬼術によるものだろう。

(成程、帯が通れる隙間さえあれば人を攫えるってわけか)

 悠香がそう分析すると、この遊郭に巣食う〝上弦の陸〟堕姫が目を向けた。

「柱は来てる? もうすぐ来る? 柱じゃない奴は要らないのよ」

「痴女の相手はガキ二人で十分さ、腹を空かしてるなら俺たちで我慢してくださいな。もっとも、髪の毛一本たりとも喰わせる気はありませんけど」

「誰が痴女よ、クソガキ!!」

 堕姫は帯を操り、悠香を真っ二つにしようと攻撃する。

 しかし悠香はそのまま後方に跳び、地面に降り立って木刀で肩をトントンと叩いた。

「炭治郎君、身軽になった方がいいよ。ちょっと手ぇ焼くかも」

「!」

 悠香の声掛けに、炭治郎はハッとなりながら自分が背負う箱に目を向けた。

 箱の中には、大事な禰豆子(いもうと)がいる。相手が上弦ともなれば、箱を背負いながら戦うのは不可能だと悠香は言っている。

「禰豆子、ごめん…背負って戦えない。箱から出るな。自分の命が危ない時以外は」

「ムゥ…」

 箱の中から心配そうな声が聞こえたが、炭治郎は一瞬だけ不安そうな表情を浮かべたものの、すぐに覚悟を決めたように悠香の隣に立つ。

「不細工共……でもそっちの耳飾りの方、目はいいね、綺麗。目玉だけほじくり出して喰べてあげる」

 堕姫はそう言うや否や、無数の帯を振るった。

 それを見た悠香は呪力を込めた木刀で迎撃。帯の一つ一つを弾いていくと、そこへ炭治郎が斬りかかって鯉夏花魁を閉じ込めていた部分を上手に切断した。

「耳飾りのお前、不細工だけど可愛いね。なんだか愛着が湧くな、死にかけの鼠のようだ」

「死にかけの鼠を愛でるんですか、あなた」

「お前は不細工な上に癪に障るね!!」

「心が不細工な人に言われちゃ世話ないや」

 笑う悠香の刺々しい言葉に、堕姫の血管がビキビキと浮き上がっていく。

 完全な挑発に苛立ちが一気に募っていった、その時。

「――喧しいわね、塵虫が! 何の音よ? 何してるの? どこ?」

「……!?」

(宇髄さんたちか…)

 悠香は堕姫の感じ取った異変を察する。

 おそらく、別の場所でも戦闘が勃発し、宇髄たちが対処しているんだろう。

「アンタたち何人で来たの?」

「さぁ? 気づいたらなぜか呼んでもない応援が来てたってこと、しょっちゅうあるようですし」

「正直に言ったら命だけは助けてやってもいいのよ? さっき、ほんの少し斬り合っただけでそいつの刀、もう刃毀れしてる」

 確かに炭治郎の日輪刀は、堕姫の帯を切り裂いていくうちに刃毀れしてしまった。これでは次の攻撃で折れてしまう恐れがあるだろう。

「それを打ったのは碌な刀鍛冶じゃないでしょう?」

「違う! この刀を打った人は凄い人だ! 腕の良い刀鍛冶なんだ!」

「じゃあ何で刃毀れすんだよ間抜け」

「それ言うんだったら俺の木刀に傷一つつけられないあなたの帯は何なんですか」

「お前は黙れ!!!」

 揚げ足取りを欠かさない悠香に、堕姫が怒鳴りながら帯を操る。

 無数の帯が襲い掛かるが、悠香は木刀を横薙ぎに一閃して呪力を飛ばした。

「〝威虎(インドラ)〟!!」

 

 ドォン!!

 

「キャアアアアアア!?」

 木刀を介して放たれた衝撃波は、帯を弾きながら堕姫に直撃し、凄まじい勢いで長屋に激突。

 吹き飛ばされた上弦の鬼を悠香はすかさず追跡し、炭治郎も続いて堕姫に向かって行った。

「っ~~~~!! あのガキ、何なのよ!?」

 

 ドンッ!!

 

「!?」

 起き上がった時には、二発目が飛んできた。

 堕姫は紙一重で躱すと、先程飛んできた衝撃波はそのまま裏の家屋を破壊。

 轟音を立てて二階建ては崩れていき、それを目の当たりにした堕姫は嫌な汗を流した。

(何なの、この攻撃…!? まるで巨大な金槌で全身を思いっきり殴られた感じ……しかも遠当て技!?)

 奇しくも風柱と似た感想を抱いている堕姫だったが、その時には悠香の木刀が彼女の顎を捉えていた。

 

 ガォン!

 

「があっ!?」

 強烈な殴打を受け、脳震盪で視界がぼやける中、次に炭治郎が刀を振り上げてきた。

「〝水の呼吸 肆ノ型 打ち潮〟!!」

 悠香の作った隙を狙い、炭治郎は斬りかかる。

 しかし、堕姫は咄嗟に躱して裏拳を放ち、炭治郎を殴り飛ばした。

 飛んできた炭治郎を悠香は受け止め、すぐさま起き上がって体勢を整える。

「大丈夫?」

「っ……ありがとう、悠香」

「あの帯、面倒だね。切れ味は刀といい勝負、しかも速い上に数も増やせる。君のヒノカミ神楽、結構キツいんじゃない?」

 悠香は炭治郎を庇うように前に立ち、木刀を構える。

「何? 頸も斬れない奴が鬼に勝てるどころか、その不細工を守れる訳ないじゃない! 笑わせてくれる」

「俺たち二人を殺すのにこんなに手古摺ってるようじゃあ、上弦の鬼の強さもたかが知れるってモンですよ。柱を殺せたのも全部まぐれなんじゃないんですか?」

「っ…!!」

 未だ余裕を見せながら挑発する四ツ目の少年に、堕姫の怒りが最高潮に達する。

「このクソガキ……!! ぶっ殺してやるから覚悟しなさい!!!」

「!」

「〝血鬼術 八重帯斬り〟!!!」

 帯を無数に交差させて逃げ道をなくし、その上で斬撃を繰り出す堕姫。

 悠香だけでなく炭治郎も射程範囲に入り、退路が断たれて窮地に追い込まれてしまった。

「そこの不細工も死ぬわよ!!」

「……それで勝ったつもりですか?」

 

 ゴゥッ!!

 

「!?」

 悠香は木刀を低い姿勢で振るい、地上から空中に向けて竜巻状の呪力の衝撃波を発生。

 堕姫の血鬼術を容易く撃破し、炭治郎も禰豆子も守り通してみせた。

「え…」

血鬼術(のうりょく)に胡坐掻いただろ、お前。俺の知る()()()()()()()は、誰もそこで完結しなかったよ」

 四ツ目を細め、悠香は呆れたように呟いた。

 

 あらゆる呪術師の頂点に君臨する、史上最強最悪の〝呪いの王〟両面宿儺。

 世界の均衡が変わったと言われる程の影響を与えた〝現代最強の呪術師〟五条悟。

 呪力を全く持たないにもかかわらず圧倒的戦闘力を有する〝天与の暴君〟伏黒甚爾。

 400年前の日本で最強の術師だった〝雷神〟鹿紫雲一。

 

 忌々しい実の母から〝呪いの皇帝〟とまで称される程の可能性を持っている悠香でも敵わない、呪術師の中でも最上位に君臨する怪物たち。

 彼らは皆、己の優れた能力を過信せず修練を重ねてきた。彼らの強さを身を以て知っているからこそ、目の前で人間に猛威を振るう上弦の陸があまりにも軽率で、弱く見えた。

「――しっかりしろよ、三下が」

 悠香は惚けている堕姫に急接近し、その妖艶な顔を鷲掴み。

 手に呪力を込めると、そのまま勢いよく地面に垂直に叩きつけた。

「〝(フル)()()〟!!」

 

 ドカァン!!

 

 悠香の荒業をまともに食らった堕姫は、悲鳴を上げる隙も与えられずに衝撃波と土煙に飲み込まれるのだった。

 

 

           *

 

 

 同時刻。

 伊之助は萩本屋の床に隠された鬼の隠れ家に通じる穴を見つけ、侵入に成功していた。

 地下の隠れ家は長い帯が複数垂れ、周囲には無数の人骨が散乱している悍ましい光景が広がっていた。

「人間柄の布? 何だこりゃ…いや、この感触…生きてる人間だ」

 伊之助は帯に取り込まれた人間がまだ生きてる事を知る。

「女の腹巻きの中に捕まえた人間を閉じ込めとくのか。チッ! それで好きな時に出して喰うんだ」

 えげつねぇ奴だなと吐き捨てていると、帯に取り込まれた人間の中に見慣れた黄色いタンポポがいた。

 同期の我妻善逸も、堕姫に攫われていたのだ。 

「何してんだコイツ…」

「お前が何をしてるんだよ! 他所様の食料庫に入りやがって! 汚い…汚いね…汚い! 臭い! 糞虫が!」

 伊之助は背後の殺気に反応し、日輪刀を構える。

 視線の先には、両目と口だけが浮かび上がった帯の形をした鬼が姿を現していた。

「何だこの蚯蚓! キモッ!」

「この糞虫がァ!」

「ぐねぐねぐねぐね気持ち(わり)ぃんだよ蚯蚓帯!」

 そのまま蚯蚓帯…ではなく帯鬼と戦闘になる伊之助。

 しかし実力の差は歴然だった。

「動きが鈍いぜ! 欲張って人間を取り込み過ぎてんだ! でっぷり肥えた蚯蚓の攻撃なんぞ伊之助様には当たりゃしねぇ!! ケツまくって出直してきな!!」

(チッ! 上手いこと人間を避けて斬りやがる…せっかく鮮度の高い食糧を保存していたのに)

 帯鬼は内心で焦りを感じていた。

 剣士としての実力もさることながら、何より感の鋭さ、特に殺気を感じる力が尋常ではない。食糧貯蔵庫にまで鬼殺隊士が潜り込むのは想定外だったが、それを抜きにしても前後左右どこからの攻撃でも敏感に察知して躱す伊之助の身体能力が帯鬼にとって厄介極まりないものだった。

 しかし伊之助もまた、体をくねらせるために必殺の一太刀が決まらないことに焦りを感じていた。

「アタシを斬ったって意味無いわよ、本体じゃないし。それよりせっかく救えた奴らが疎かだけどいいのかい? アンタにやられた分はすぐに取り戻せるんだよ」

(やべぇ! 人間を守りながらも戦いをしなきゃならねぇのに!)

 帯が伊之助が解放した人間に襲い掛かった、その時。

 二つの人影がそれを妨害した。

「〝蚯蚓帯〟とは上手いこと言うもんだ!」

「ほんと気持ち悪いです! ほんとその通りです! 天元様に言いつけてやります!」

 伊之助に助太刀したのは、宇髄の三人いる妻の内の二人・まきをと須磨だった。

 頭数が増え、他の人間を任せられる状態になって伊之助も楽になったが、それでも斬りづらさはどうにもならない。

(あの野郎、本体じゃねぇだと? ホントだったらやべぇぞ! 戦いに終わりがねぇ!)

「〝雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃 六連〟」

 せめて分身だけでも仕留めねば、と慌てたところに、雷鳴のような音が鳴った。

 善逸がようやく動き出し、神速の居合を六連続で繰り出して帯を一刀両断したのだ。――ただし、寝たまま。

 伊之助は「お前ずっと寝てた方がいいんじゃねぇか」と思ったのは秘密だ。

(何なのアイツ…何て速さ! ――いやそれよりも今、音が二つ鳴らなかったか?)

 帯鬼は落雷のような音が重なって二つ鳴ったことに気づいた。

 一つは目の前に立つ善逸。もう一つは――

(上から!? 風穴が空いたの!? 地上から何をしたらここまで穴を空けられるのよ!?)

 そう思った直後。

 

 ドゴォン!!

 

「何だ!?」

 突如天井が爆発し、そこから人影が降り立った。

 音柱・宇髄天元その人だった。

(この気配! 柱!)

「……天元様…」

「うぁああ…!」

「まきを、須磨、遅れて悪かったな。元気そうで一安心だ、派手にやったようだな」

 流石俺の女房だと宇髄は笑いかけると、柄尻を頑丈な鎖で繋いだ二振りの日輪刀を構えた。

「よし! こっからはド派手に行くぜ!」

 鬼殺隊と呪術師による〝上弦の陸〟討伐劇が幕を開けた。




悠香君は囮役や補助役も手慣れてるので、正直なところお館様がガッツポーズしたくなるほどのオールラウンダーです。やったね!

堕姫は嘲笑しながら挑発を重ねてますが、炭治郎とかならともかく悠香君は無効です。口の上手さはレスバの上手さ…悠香君を挑発して冷静さを欠こうとしても、それ以上の正論や侮蔑で殴り返してくるので、実際のところは口を一切利かずに戦うのが賢明。
ただ口を利かないなら利かないで地雷をわざと踏んで戦況を有利に進めようとするので、短期決戦かつ初見殺しで封じ込めない限り、鬼が悠香君を殺すのはほぼ不可能です。
それにまだ悠香君は切り札を出してないので…多分出したら吉原一体が焼け野原になるかも。
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