虎杖弟の地獄旅   作:悪魔さん

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取り立てVS.ツケハラの序章です。


鬼滅の刃×虎杖弟 第二章その4

 宇髄がようやく鬼の巣に到着した直後。

 堕姫の分身体である帯鬼は撤退を開始。逃がすまいと宇髄は二刀流で斬り刻んだが、仕留めるには至らず、そのまま逃走を許してしまった。

 しかし人質の救出には成功したため、結果オーライ…かもしれない。

「天元様! 人質だった者達は私達にお任せを!」

「は、早くしないと被害が拡大しちゃいますよーっ!」

「そうだな。よし、野郎共! 追うぞ! ついて来い!」

 宇髄は善逸と伊之助を抱えて地上へ離脱。

 そのまま家屋の屋根伝いに急行する。

「どけどけェ!!宇髄様のお通りだ!!」

「くそォ…(はえ)ぇ…!」

 凄まじい速さで駆け抜ける宇髄を、伊之助と善逸は必死に追いかける。

 その時!

 

 ドゴォン!!

 

「「「ギャアァァァァッ!!?」」」

 凄まじい衝撃波が三人に放たれ、ギリギリで回避。

 家屋の二階や電柱を抉り吹き飛ばしていった。

 

 

「……ちっ、ちょこまかと」

 一方、堕姫と戦闘中だった悠香は、舌打ちしながら木刀を構える。

 衝撃波の射出を連発すれば、どんなに寝静まった夜でも轟音と衝撃で住民は起きる。

 四ツ目の少年と帯を操る痴女が家屋を破壊しながら殺し合えば、逃げなければと本能が警鐘を鳴らす。それが功を奏してか、住民はパニックに近い状態ながら戦場となった吉原から離れていった。

「……で、禰豆子さん大丈夫?」

「そんなわけないだろう!! 泡吹いてるじゃないか!!」

「感謝してほしいんだけどね、俺としては」

 悠香はやれやれと肩を竦めた。

 実は戦闘中、一時戦闘不能に陥った炭治郎に堕姫がとどめを刺そうとしたところ、我慢に我慢を重ねた禰豆子の怒りがとうとう爆発。鬼化が進行し、堕姫を上回る再生能力と鬼を焼く火を操る血鬼術で圧倒したが、体力の消耗が激しいのか瞬く間に飢餓状態に陥って暴走。どうにか回復した炭治郎が必死に止めようとしたところ、それより早く悠香が動き、木刀で容赦なく唐竹割りで脳天を強打。脳震盪を起こさせて一撃で昏倒させたのである。

 禰豆子の暴走による被害を防いだことに関しては炭治郎は感謝するが、それ以前に何の躊躇いもなく可憐な妹を暴力で捻じ伏せる悠香の凶暴性に愕然としたのは言うまでもない。なお、それを見ていた堕姫も戦慄を覚えた。

「……まぁ、これでようやく集中できるわけだし。炭治郎君、計画変更だ」

「?」

 縮こまった禰豆子を箱に避難させた炭治郎は、悠香の言葉の意味がわからないと言いたげな顔をする。

「ここで俺と〝縛り〟を結ぼう」

「〝縛り〟…?」

 首を傾げる炭治郎に、悠香は笑みを浮かべながら思い返した。

 

 

 ――悠香よ。貴様は肉体の都合上、呪力を持たぬ者となら〝縛り〟を結べるだろう。

 ――俺が、〝縛り〟を結べると…?」

 悠香が飛ばされる前。

 呪術高専の校庭で、彼の師でもある呪いの王・両面宿儺は語った。

 ――変異しているが、他者の呪力と拒絶反応を起こす体質であることは変わらん。ともすれば、呪力を持たぬ者との間に〝縛り〟を結ぶことで自身を強化できる可能性がある。伏黒甚爾に自身の呪力を与えることもできるかもな。

 ――……覚えて損はなさそうですね。

 ――呪力操作だけである程度の連中を今まで仕留められた上、今の貴様の体質は異常だからな。

 宿儺は目を細めると、ニィッ…と凶悪な笑みを浮かべた。

 ――だが、いずれそれでは通用しなくなる。五条悟に一泡吹かせるためにも、覚えて魅せろ。

 

 

「縛りは誓約。何らかのリスクを背負うことで、呪力や術式の出力・効果を強化する。この場合は、俺と縛りを結ぶことで君を強くできる」

「!!」

「どう? 賭けてみる? 悪い話じゃないよ。むしろいつかやるんだから、試験運用しないと」

「――わかった!」

 悠香の提案に、炭治郎は強く頷いた。

 民間人の被害を最小限に抑えながら上弦を討伐できるなら、多少の危険は厭わない。人の心を持たない鬼の、理不尽に命を奪う横暴を許すわけにはいかないのだから。

「よし、じゃあ俺が今から言う条件を聞いたら「結びます」と言ってね」

 悠香は条件を提示した。

 

 一つ目――虎杖悠香は吉原遊郭内で「(カミノ)」を一切使用しない代わりに、竈門炭治郎の身体能力と回復力を爆発的に強化する。

 二つ目――この縛りの有効期限は、上弦の陸を討伐するまでとする。

 

「……結びます!」

 炭治郎が宣言した直後。

 ドクンッ! と強い鼓動が二人の胸に響き渡った。

「……悠香」

「じゃあ、第二ラウンドと行こうか」

「何? 願掛けや神頼みのつもり? そんなんでアタシを殺せる訳ないじゃない!!」

 それぞれの得物を構える少年二人を、堕姫は二階の屋根から見下ろして嘲笑う。

 その姿は先程と違い、毛先が黄緑色の白髪となり、全身にヒビのような紋様も加わっている。

(姿が変わった…なんて禍々しい匂いだ…喉の奥が痺れて痛い…)

 明らかに力が増している堕姫に、炭治郎は警戒を強める。

「さてと……そんじゃあ、まずは景気づけに――」

「されるわけないでしょう!!」

 悠香が木刀を頭の右脇に構えると、堕姫が血鬼術〝八重帯斬り〟を行使し、呪力の大砲が炸裂する前に逃げ場を塞いだ斬撃を仕掛ける。

 帯は二人を膾斬りにせんと迫っていく。

(さぁ、来なさい。あの灼けるように痛い斬撃は消耗が激しいことくらいお見通しなのよ!)

 堕姫は内心でほくそ笑む。

 耳飾りの鬼狩りの方は、斬撃こそ強力だが消耗が激しく体力の限界を迎えるのが早い。たとえ斬られて懐に潜り込まれても、そのまま持久戦に持ち越せばいい。四ツ目の遠当て技は厄介だが、耳飾りの方は恐れるに足らない。そう堕姫は思い込んでいた。

 だが、その考えは容易く打ち砕かれることとなる。

「〝ヒノカミ神楽 灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)〟!!」

 

 ズバババババッ!!

 

「!?」

 炭治郎が日輪刀を振るった途端、無数の帯があっという間に全て斬り刻まれた。

 すかさず千切れた帯を再生させながら畳みかけるが、ここである異変に気づいた。

(ちょっと、どういう事? アイツ、何でアタシの帯で斬られたところが再生してるの!?)

 そう、炭治郎の左半身にできた裂傷が、なぜか塞がっているのだ。

 人間の域を超えた異常事態に、堕姫は焦り始め、攻撃も段々単調になる。

 これが縛りの効果――言葉の通り、炭治郎の回復力が信じられない程に上がっている証拠だ。

(凄い…さっきよりも身体が軽く感じるし、しっかり呼吸もできる…!! これが〝縛り〟の力なのか…!?)

 悠香の〝縛り〟の効果で、飛躍的に身体能力が高まった炭治郎は、一気に攻めていく。

「斬らせてたまるか!!」

 堕姫は帯を十三本に増やすと、一箇所にまとめて伸ばす。

 大砲の如き一撃は、炭治郎の身体を木っ端微塵にする勢いだが……。

 

 ダンッ!

 

「っ!! お前ぇ!!」

 何と悠香が現れ、堕姫の懐に飛び込んできた。

 帯が炭治郎の方に伸びた以上、対応できるのは自分の四肢のみ。

 咄嗟に拳を振るい、悠香の頭を鬼の怪力で砕こうとしたが、それより早く木刀の切っ先が額を穿った。

「がっ……!!」

 衝撃が直に脳を揺らし、一瞬もんどりを打つ堕姫。

 それが、炭治郎に好機をもたらした。

「〝ヒノカミ神楽 円舞〟!!」

 悠香が作った隙を見逃さず、炭治郎は一気に距離を詰めて刀を円を描くように振るい、堕姫の頸を見事斬り落とした。

 ゴロンという音を立てて彼女の頭部が転がり、残った胴体はその場で膝を突いた。

「……やった……!」

「うん、いい感じだね」

 とうとう上弦の陸の頸を斬り落とした事に炭治郎は笑みを溢す。

 しかし、悠香は炭治郎を称賛しつつも警戒を弱めず、むしろ先程以上に強くした。

「……よし、小休止を挟んで第二形態を倒すとしようか」

「え…?」

 その言葉に、炭治郎はハッとなる。

 通常、人喰い鬼は日輪刀で頸を斬り落としたら再生することなく肉体が崩れて消滅する。

 しかし堕姫は、頸を斬り落としたにもかかわらずまだ生きている。それはすなわち――

(頸を斬り落としても死なないのか!?)

「ちょっと、ふざけんじゃないわよ!!」

 炭治郎は嫌な汗を流していると、頸を斬られた堕姫が生首状態で喚き散らしていた。

「よくもアタシの頸を斬ったわね! ただじゃおかないから! アタシまだ負けてないからね! 上弦なんだから!」

「でも俺たち二人に負けた事実は変わんないよ?」

「アタシ本当に強いのよ! 今はまだ陸だけど! これからもっと強くなって!」

「そうですか。頑張れ頑張れ」

 思いっきりおちょくる悠香に、堕姫はついに――

「わーーーん! 死ねっ! 死ねっ! みんな死ねっ! 頸斬られたぁ! 頸斬られちゃったああ!」

「炭治郎君、構えて! 第二形態だ!」

「っ!!」

 悠香の言葉に、炭治郎は身構える。

 そして、上弦の陸は()()姿()を露わにすることとなる。

「お兄ちゃああん!!」

 堕姫の悲痛な声が響く。

 すると、彼女の背中が盛り上がり、そこから新しい鬼が登場した。

 

 長身で筋肉質ながら、腹周りは砂時計のように細く、腰の辺りに至っては骨盤が浮き出てるガリガリの体型。

 極度の猫背と、体のあちこちにあるシミのような黒いアザ。

 上半身裸で両腕に帯を巻いた、ボサボサのくせ毛。

 

 鬼の中でも一際凶悪な面構えに加え、堕姫とは比べ物にならない圧迫感に、炭治郎は息を呑んだ。

「泣いてたってしょうがねぇからなああ、頸くらい自分でくっつけろよなぁ、おめぇは本当に頭が足りねぇなあ~」

 つけすごむような間延びした口調で堕姫の頸を治す、彼女の実の兄――妓夫太郎(ぎゅうたろう)はゆっくりと二人に振り向くと、二振りの鎌を構えた。

 

 ザシュッ!!

 

「「!!」」

 妓夫太郎は瞬間移動し、すれ違いざまに二人を斬りつけた。

 炭治郎は額から、悠香は脇腹から出血する。

「……へぇ~、やるなぁあ、殺す気で斬ったけどなあ」

(速い…!! 悠香と〝縛り〟を結んでなかったら即死だ…!!)

 炭治郎は呼吸を整え、妓夫太郎を見据える。

 一方の妓夫太郎は、悠香に興味を向けていた。

「んん……? 何なんだぁあ、お前ぇ? 人間のクセに鬼みてぇだなあ、目が四つもあるじゃねぇかああ」

「望んでできたもんじゃないんですよ」

「そうかぁあ…でも顔自体は悪くねぇなあ。肌もいいなぁ、シミも痣も傷もねぇんだなあ。肉付きは…まあまあだなぁあ、俺は太れねぇんだよなぁあ」

「そっちこそ、中々印象的な人相で憶えやすいですよ」

 言葉を交わす二人だが、互いに警戒心を剥き出しにしている。

 すぐ仕掛けないのは、迂闊に手を出すのは良くないと戦闘勘が研ぎ澄まされてるからだろう。

「妬ましいなああ、妬ましいなああ……死んでくれねぇかなぁあ、そりゃあもう苦しい死に方でなぁあ」

「心配せずとも、ロクな死に方期待してませんのでご安心を」

「素直だなぁあ、じゃあ生きたまま生皮剥いだり腹を掻っ捌いてやろうかぁあ?」

 ニタリと笑みを浮かべる妓夫太郎。

 すると、傍にいた堕姫が泣きじゃくりながら兄に叫んだ。

「お兄ちゃん、コイツだけじゃないのよ、まだいるの! アタシを灼いた奴らも殺してよ! 絶対! アタシ一生懸命やってるのに、凄く頑張ってたのよ一人で!」

「一生懸命頑張っても勝てない相手がいると知ることも立派な成長だよ」

「お前ホント死んでくれる!?」

 ビシッと指を差しながら涙目で怒鳴る堕姫に、悠香は「俺は実体験を口にしただけなんだけどなぁ」と頭を掻く。

「皆で邪魔してアタシをいじめたの! よってたかっていじめたのよォ!」

「じゃあ最初っからお兄さん呼べばよかったじゃないですか」

「……うわーーーーん!!」

「お前、一番痛いところ突いてんじゃねぇよぉお!! 俺の可愛い妹が足りねえ頭で一生懸命やってたんだろぉがぁああ!!」

 とどめの一言が炸裂したことで堕姫は先程以上に泣きじゃくり、妓夫太郎は血走った眼で悠香に怒りを露わにした。

 無慈悲なまでの言葉の刃に、炭治郎は思わず同情しそうになった。

「俺の妹をいじめるような奴は皆殺しだ、取り立てるぜ、俺はなぁ、やられた分は必ず取り立てる。俺の名は妓夫太郎だからなああ」

「取り立てはお互い様だろ。俺は炭治郎君たちと違って外様の人間だけど、君らの今までのツケを回収させてもらう。ちなみに俺の名は虎杖悠香です」

 妓夫太郎は鎌を、悠香は木刀を構える。

 

 上弦の陸との死闘は、新たな戦局(ステージ)を迎えるのだった。




悠香君も一応呪術師なので、縛りは結べます。
ただ、呪力を持たない人間のみが対象なので呪術師としてのハンデはデカい方です。それでも十分強いんですけどね。
ちなみに悠香君が「竈」を使用すると上弦兄妹は吉原ごと滅却される可能性が高く、天元様の出番も無くなってしまうので、遊郭編での使用は却下しました。彼の性格上、術式は出し惜しみすると思いますけど。
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