彼と出会ったのはいつ頃だろうか。
まあ、なんとなく気付けば私の近くにいて気が付けば中二病になってしまっていた幼馴染みの夏油傑という健康優良児の中学生は今日も元気に妖怪(という名前の空想の相手)と戦っている。
彼は怪我しているときもあるけど。
お友だちと遊んでいれば怪我だってするだろう。しかし、この世界に転生する前の年齢を加算すると私はお姉さんというよりおばさんなのだ。そのため夏油君とお話しするときは内容の半分も分からなくて、とても大変だった。
「こんにちは」
「やあ、夏油君。こんにちは」
そう言って私はコンクリート塀の向こう側に立っている夏油君に話し掛ける。もう私より大きくなってしまった夏油君を縁側に招き、ぽんぽんっと床を叩いて座るように催促する。
いつでも使えるように近くに置いている薬箱を開け、ゆっくりと清潔なハンカチに消毒液を吹き掛けて、夏油君の頬っぺたや唇、額の辺りに出来た傷に優しく当てて、ガーゼや絆創膏を貼り付ける。
彼と出会って以降、ずうっと繰り返す。
その度に私はそろそろ中二病は卒業できたのだろうか?と考えてしまう。私には彼の思い描く超能力で妖怪と戦う
「また、教えてもらえますか?」
そう夏油君は悔しそうに言った。どうやらまた妄想のスランプに陥ってしまったらしい。私には妄想できるほど豊富な想像力はない。
夏油君の中二病の原因は私だ。いつか彼に報いることは出来るだろうか。私と出会ってしまったせいで中二病を患った事を黒歴史と感じ、大人になって死にたくなったりしないだろうか。
最近はそんなことばかり考えてしまう。
「夏油君は式神使いだったね」
「はい」
妄想の世界の彼は陰陽師だ。
何故、主人公の少ない支援向きな設定にしているのかは分からないけど。きっと彼の頭の中では壮大すぎるストーリーは今も尚、私と話す時でさえ続いているんだろう。
私は「ちょっと待っててね」と夏油君に伝えて部屋の中に戻る。この日のためにお友だちと協力して用意していた夏油君の妄想の世界を手助けする秘策のアイテムを与えるときは来た。
「お姉さん、これは?」
「その霊具の名前は
「そんなものが…!?」
夏油君の細目はキラキラと輝かせながら私の差し出す神操機を見つめている。彼の中二病を助長させているのはこういうお助けキャラみたいなことを私がしているせいだ。
いつかは止めなくちゃいけない。
そう私は思いながら神操機の使い方を教える。きっと高校生になれば彼の中二病は終わるはずだ。それまで私は彼の相手をしよう。
〈夏油傑〉
健康優良児。
小学生の頃、いつも縁側で本を読んでいるお姉さん(中学生)と知り合った事で世界の真実(ただの勘違い)を知ってしまったある日の出来事を覚えている。そして、中学生の現在は世界を守るために邪悪な妖怪(ただの呪霊)と戦う陰陽師をやっている。ちなみに呪術高専のスカウトはまだ受けていない。
〈
出典・陰陽大戦記
平凡お姉さんとお友だちによって夏油傑の妄想の世界を手助けするために誕生してしまったアイテムの一つ。平凡お姉さんは形状のデザインは担当し、お友だちのチート能力によって完成した。ちなみに式神は白虎のランゲツさんだ。