私は夏油傑、霊界探偵だ。
幼き頃より異形の存在『アヤカシ』と私は戦っている。この事を知っているのは私の家の近所に住んでいる大学生のお姉さんだけだ。そして、私の扱う霊具の貸し与えてくれているのもお姉さんだ。
お姉さんの近くには霊界探偵として仕事を斡旋する仲介役の女の子や妖怪ハンターとして活躍する大学教授、さらには妖怪を懲らしめる幽霊族の男の子など様々な助っ人がいる。
「…C級妖怪ってところか」
自然と私はそう呟いた。
まあ、ただの経験則だが。
こういった蝿や蜥蜴など小さな生き物の姿形をしているのはD級やC級に位置する低級妖怪である。しかし、こういう妖怪を見逃していると家族に危害をき加える可能性だってあるのだ。
「ふう、霊剣っ!!」
私は右手のひらに霊力を練り上げ、体外に放出すると同時に剣の形に作り替える。仲介役の女の子が言うには私の霊力は〈取り込み〉と〈作り替える〉という工程を容易く行えるそうだ。
尤もそういうのもまだ学ぶ途中だけど。そんなことを考えながら霊剣を振るうって低級妖怪を滅し、低級妖怪に合掌する。
どうか安らかに霊界に居てくれ。
「お前、なに?」
そんな声が聞こえて、後ろに振り返る。
そいつは夕焼けで茜色に染まり掛けていた路地に異質すぎるほど白かった。私の学生服とは違う。彼の着た黒色の服は彼の白さを際立たせている。妖怪……いや、彼は人間なのだろう。
「そういう君は?」
「俺は五条悟だよ。知らねえの?」
うん、初めて聞く名前だ。だけど、五条悟と名乗った彼はなんとなくワクワクしているように見える。彼は「なあ、戦ろうぜ?」と言って、私は「……いきなりだね」と答える。
「あ、そうだ。私は夏油傑、霊界探偵だ」
「れいかいたんてい?呪術師じゃねえのかよ」
「生憎と呪術は習ってないね。まあ、そんな厄介すぎる術なんて習うつもりは無いけどさ」
「フーン。あっそ…」
君が聞いてきたんだろう?と言いそうになりながら人気の少ない空き地に彼を連れていく。いくら路地とはいえケンカしているところを見られるのは。
まあ、あれだからね。
「じゃあ、始めようか?」
「おう!」
いきなり彼は拳や蹴りは当たる間合いまで詰め寄ってきたかと思えば愚直すぎるほど真っ直ぐ正拳を放つ。受ける?いや、これは!?
おそらく彼の能力によるものだ。彼の拳を避ける私の動きを抑制し、無理やり拳に引き寄せる。つまり、彼の能力は──。
「ぐっ、君は重力を使うのか!?」
「あ?重力なんぞ使ってねえよ、夏油。俺の術式は無限を操る。さっきのは術式順転『蒼』って言う物体を引き寄せる技だ」
「(それが重力なんだけどなあ…)」
私は物質を引き寄せる彼の拳に突進した。
実質、カウンターを受けたことになる。だが、なんとなく分かった。私は彼に対して霊技を使わず勝つのは無理ということだ。
とはいえ。その前に試してみるか。
「フウゥーーッ、仕切り直そうか」
「へへっ。やる気だなあ?」
「まあ、ねッ!!」
私は鋭く速く左拳を放つ。彼は重力を使う。引き寄せる事の反対も出来ると考えていいだろう。そう思って彼の顔に拳が当たる瞬間、素早く左手を自分の胸元に引き戻す。
「うがっ!!なんっだよ、今の!?」
さっきまで余裕に満ちていた五条悟の顔は跳ね上がり、何をやったのかを問い質そうと鼻血を垂れ流しながらた私を睨み付けてきた。
しかし、検証完了だ。
「なに、単純だよ。五条の術式…だっけ?私の予想は『引き寄せ』と『弾く』という二種類を使い分けることが出来るんだろう?」
「…おう」
「私は君が拳を『弾く』前に、私は拳を引っ込めた。分かりやすく言えば私の君の無意識に行う反射と選別を利用していたんだよ」
「それお前の術式じゃねえじゃん」
「いや、ただの科学だが?あと私は術式なんて持ってないし。私は霊界探偵の仕事のために霊技を鍛えているだけだよ」
どこか不満そうに言う五条に溜め息を吐く。
こういうのは学校で習ったりするものだけど。まさか不登校の学生だったりするのか?まあ、確かにアイドル並みに顔は良いけど。
そんなことを考えながらケンカを止めて、彼の話す呪術師について教えてもらうことにした。ついでに私の霊界探偵の仕事も教えると「俺もそっちがいい!」なんて言い始めた。
〈五条悟〉
呪術師。
ある日、霊界探偵(架空の仕事)と名乗る夏油傑に出会った。自分と対等に渡り合える同年代かつ同性の彼に期待しているが「呪術師になるつもりはない」と断られた上に暗黒武術会や魔界のトーナメントを聞き、そっちに転職したくなった。
〈木原神拳〉
出典・とある魔術の禁書目録
木原数多の編み出した暗殺拳。ベクトル操作の原理を利用し、攻撃の瞬間に拳や蹴りを引き、ベクトルの内側に反転して攻撃その物を引き寄せる様に仕向ける技術であり。五条悟の「無下限呪術」に対して夏油傑は使用した。