「そーいや、傑の師匠って誰なんだよ」
ふと疑問に思った事を悟は聞いていた。
私の師匠、知識や霊具の使用法を優しく教えてくれるのはお姉さんだろうか?と答える。まだ悟には会わせていない……というより会わせるつもりはないけど。ウン。私の師匠はお姉さんなのだろう。
「近所のお姉さんかな?」
「やっぱ、強えぇの?」
「……どう、なんだろうね。少なくとも私はお姉さんの戦っているところを見たことはないし。実践的な技術は教えてもらえるけど。ほとんど口伝で教えてもらっているかな?」
「フーン。じゃあさ、試してみね?」
お姉さんを試す?
まさか優しくて可憐なお姉さんにケンカを吹っ掛けるつもりかと悟を睨み付けると「流石に俺でも女相手にケンカしねえよ!」と怒鳴られた。まあ、そうだろうね。女の子や小さな子供を虐めるヤツは最低最悪のゴミクズ野郎だ。
私の言葉に悟も同調するように頷く。しかし、彼の言っている事は事実だ。いくら幼い頃から守って貰ったり色んな事を教えて貰っているとは言え過信するのはあまり良くない。
「あっ、夏油君。こんばんは」
「お、お姉さん!?」
「えっ、胸でかッ!?」
「見るな、悟ッ!!」
確かに素直と云うのは美点だ。けれど。今の悟の発言は歴としたセクハラだ。こういうところがあるから、お姉さんに会わせたくなかったんだ。クソ、私だって直視したいのにッ!!
「夏油君、この子は?」
その問いかけに「傑の友達の五条悟でぇす!」と高らかに宣言する。まだ君と会って数時間なんだが?と反論しそうになるが。お姉さんのいるところで暴れる訳にはいかない。
そんなことを考えているとお姉さんが「そう出会ったのね」と静かに呟いた。まるで、私と悟が出会うことを知っていたような口振りだ。その事に悟も気づいたのか。ジッとお姉さんを見ている。
「その青い眼を大切にね」
「お姉さん、知ってるわけ?」
「いいえ、知っているのは君じゃないわ。ただ、なんとなく君に似ている人を知っているだけ。彼はがむしゃらに世界を救うために戦い、幾度となく世界の危機を救ってみせた…本当にかっこいい人だよ」
そう言ってお姉さんは笑った。
いつもとは少しだけ違う。誰かの話をするときは決まってお姉さんは懐かしむように語るだけだ。けど。さっきの話は初めて聞いた。
「ソイツ、強かった?」
「えぇ、強かったわ。誰よりも弱くて臆病なクセに絶対に後ろには退かない、決して逃げたりしない。それなのに優しくて、どうしようもなく応援してしまう。気付けば、みんな彼を慕って一緒に戦って…」
「なるほどね、そりゃあ強い!でもさ、俺は最強だからもっと強いよ!!」
「ちなみに私に負けてるよ」
「黙ってろ、傑ッ!!」
「ふふふっ。やっぱり似てるわね」
ふわりと花の香りがした。お姉さんの暮らす家の庭に咲く花の匂いだ。なんとなく悟の考えていることが分かった。強いか弱いかを聞く前に私達じゃお姉さんの話についていけないのだ。
〈青い眼の彼〉
レオナルド・ウォッチ
平凡お姉さんの推し。がむしゃらで努力家な彼を応援するのが前世の楽しみだった。お友だちのおかげで、この世界でも読めるけど。基本的に寝室の本棚(お友だち特製)に隠している。ちなみに五条悟を見ても全く世界線に気づくことはなかった。