ローラン先生(ブルーアーカイブ) 作:招来E.G.O::烏兎
知り合いに便乗して初投稿です。
招かれた客-1
俺達は、破滅的な結末を迎えた。
『……私のミスでした』
『私の選択、それによって招かれた全ての状況』
『結局、この結果に辿り着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……』
自身の身体から血を流していても笑みを絶やさない彼女を見て、俺はどんな表情をしているのだろうか。
彼女の背後にあるガラスに映る黒い仮面からは見えないが、きっと見るに堪えない顔になっているだろう。
『……今更図々しいですが、お願いします』
『先生』
『きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません』
『何も思い出せなくても、あなたは、あなたらしい選択を選べるでしょうから……』
『ですから、大切なのは経験ではなく、選択』
『貴方にしかできない、選択の数々』
俺はお前に尊敬されるような人間じゃない。
『───責任を負う者について、話したことがありましたね』
『私には、どうしてあなたがキヴォトスの全てを抱え込もうとするのかが分かりませんでした』
『でも、ようやくわかった気がするんです』
違う、違うんだよ。
『ですから、先生』
『私が信頼できる大人である貴方になら』
『このねじれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……』
『そこに辿り着く選択肢は……きっと見つかるはずです』
『だから先生、どうか──────』
ただ、自分勝手に切り捨てる事が出来なかっただけだ。
ずっと囚われているだけだ。
愛する人を失った過去と、苦痛を廻す為に切り捨てた過去に。
「………………い」
何かを呼ぶ声がする。
「…………先生、起きてください」
呼ばれた人間が俺じゃないことを願って微睡む。
「……ローラン先生!」
「うおっ?!」
その願いは届かずに、意識は起き上がってしまう。
周りを見てみれば、今いる場所が俺が眠りにつく前に見た景色とは似ても似つかない場所であることにはすぐに気がついた。
「……お待ちくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。なかなか起きないほどに熟睡されるとは」
「えっ、うん?」
俺自身の困惑を他所に目の前の少女……少女?は眉一つ動かさずこちらを見つめる。
「…………夢でも見られていたようですね。ちゃんと目を覚まして、集中してください」
「なんかすみません」
「……もう一度、改めて今の状況をお伝えします」
一呼吸を置いて、彼女は話し始めた。
「私は七神リン、学園都市"キヴォトス"の連邦生徒会所属の幹部です」
「あのー、ここってもしかして翼か何かの実験施設ですか?」
ジロリ、と彼女の目がこちらを向く。
ペラペラと喋っても良いことはなさそうだから口を噤むことにした。
「そしてあなたは恐らく、私たちがここに呼び出した先生……のようですが……」
しかし、浮かんだ疑問を口にしないという選択肢はなかった。
「……なんで推測形なんだよ?」
「私も、先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです」
「呼び出したのに知らないって……」
目の前にいる七神リンと名乗った少女の言葉を丸々信じるなら、お互い状況をよく把握できてないことになる。
どうなってるんだ、と叫びたくなるくらいには自分が動揺しているのがわかる。
「混乱されてますよね、わかります」
「そりゃ、まぁ」
「こんな状況になってしまったことを、遺憾に思います。でも今はとりあえず、私についてきてください……どうしても、先生にやっていただかなければならないことがあります」
「一体何をやらせる気なんだ?こんな冴えない中年野郎を引っ張り出して……常人じゃ思いつかない奇想天外な人体実験でもされるのか?」
「……学園都市の命運を賭けた大事なこと……ということにしておきましょう」
余程時間が惜しいのだろうか、俺の同意を求めるわけでもなしに彼女は短くそう答えて歩き出してしまった。
「なんだよそりゃ……」
渋々、俺は彼女の後をついて行くことにした。
「ここは……」
自動ドアが開いたエレベーターに乗り込んで、ガラス越しに見える光景は俺が知っている何もかもと違った。
俺が生きていたクソッタレな"都市"*1とは比べ物にならないほどに透き通っているように思える。
「"キヴォトス"へようこそ、先生」
"都市"の中でも探そうと思えばこんな感じの巣はいくつもあるんだろう。
翼*2が折れていたりしなければ、少なくとも余程のものじゃない限り見かけは似たような物になる筈だ。
「キヴォトスは数千の学園が集まって出来ている巨大な学園都市です。これから先生が働くところでもあります」
「やっぱりここ、どっかの翼の巣*3じゃないのか?K社とかW社とか……」
「キヴォトスの外については知りませんが、少なくともその様な場所ではありません」
俺は意を決して、聞きたくなかったことを聞くことにした。
「……ここは、"都市"じゃないのか?」
「……人が多く集まる大きな街、という意味では都市です。あなたが言う都市がどういったものを指すのかはわかりませんが……」
「嘘だろ……?」
何を言っているんだ、と言いたげな顔をして、彼女は俺に聞きたくなかった答えを与えた。
「きっと、先生がいらっしゃったところとは違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが……でも先生なら、それほど心配しなくても良いでしょう」
「それは、なんでだ?」
「あの
知らない誰かを示す名詞に、不思議と親しみを覚える。
まるで昔に記憶処理されたことに関わってるみたいな感じがした……正直、気味が悪い。
「……それは後でゆっくり説明することにして」
エレベーターが止まってドアが開く、ここで降りるらしい。
……彼女が言った誰かに関しては、あまり気にしない方が良いようにも思えた。
先に進むと、誰かに呼び止められた。
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!……うん?隣の大人の方は?」
「首席行政官。お待ちしておりました」
「連邦生徒会長に会いにきました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています」
「あぁ……面倒な人達に捕まってしまいましたね」
「面倒な人達って……」
でも呼び止められたのは俺じゃなくて、俺を先導した彼女の方だろう。
当の本人は避けたかったみたいだが、そうはいかなかったようだ。
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他暇を持て余している皆さん。こんな暇そ……大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よく分かっています」
「今暇そうって……なんでもないです」
明らかに機嫌が傾いた彼女の視線から逃れて、ついていけない話をただ聞くことにする。
「今、学園都市に起きている混乱の責任を問う為に……でしょう?」
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!数千もの学園自宅が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学園の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
大きめの上着にスーツの様な制服が目を引く少女がまず捲し立てて。
「連邦矯正局で退学中の生徒達について、一部が脱走したという情報もありました」
腕章に目立つ"風紀"の文字と赤い眼鏡が特徴的な少女は冷静に問い詰めて。
「スケバンの様な不良たちが、登校中の生徒を襲う頻度も、急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」
「戦車やヘリコプターなど、出所がわからない武器の不法流通も2000%増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」
頭から一つ翼が生えている様に見える……いや、実際に生えている少女と黒い制服と黒い翼が目立つ少女?は淡々と現況を告げた。
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」
よくよく見れば、ほぼ全員が見たこともない銃器を持っている。
代行とかなんとか呼ばれ、その状況に臆するわけでもなく隣で隠す気が全くないため息をついたのが聞こえた。
「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」
「え……!?」
「……!!」
「やはりあの噂は……」
「結論から言うと"サンクトゥムタワー"の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。認証を迂回できる方法を探していましたが……先程まで、そのような方法は見つかっていませんでした」
明らかに重要な人物の失踪を告げられて明らかにどよめいたが、直後の言葉で落ち着きが取り戻される。
「それでは、今は方法があると言うことですか、首席行政官?」
「はい───この先生こそが、フィクサーになってくれる筈です」
「この方が?」
「……俺が?確かにフィクサー*4だけど……」
既に解決策は用意されてあった、ということだろう。
「ちょっと待って。そういえばこの先生は一体どなた?どうしてここにいるの?」
「キヴォトスの外から来た方のようですが……先生だったのですね」
「こちらのローラン先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」
「行方不明になった連邦生徒会長が指名……?ますますこんがらがって来たじゃないの……」
俺は知らないうちに知らない雇用契約でも結んでいたらしい、が。
「……聞きたいことは山ほどあるけど、後にした方が良いか?」
「そうしてくださると助かります」
「あー、俺の名前はローラン。ド底辺フィクサーで……知らない内にここで先生として働くことになってたらしい」
ひとまず、知られても平気な自己紹介をすることにした。
「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの……いや、挨拶なんて今はどうでもよくて……!」
「そのうるさい方は気にしなくて良いです、続けますと……」
「誰がうるさいって!?わ、私は早瀬ユウカ!覚えてください、先生!」
「OK、覚えておくよ」
早瀬ユウカと名乗った彼女からは苦労人気質が感じ取れる、周りに荒んだ人間がいたら大変そうだ。
「……先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました」
「……ある部活の担当顧問?」
「───連邦捜査部"シャーレ"」
耳馴染みがなくもない単語だった。知っているとも、知らないとも言えないような───
「単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織の為、キヴォトスに存在する全ての生徒たちを制限なく加入させることが可能で、各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能です」
「そりゃ……凄まじい組織なんだろうな?」
「はい、なぜこれだけの権力を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかはわかりませんが……」
そして、そのとてつもない権力を持った組織の顧問になることが決まっていたらしい。
これ、後から莫大な請求とか無茶な仕事が来たりしないよな?
「シャーレの部室は、ここから約30km離れた外郭地区にあります。今は何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に"とある物"を持ち込んでいます。先生を、そこにお連れしなければなりません」
そういって、彼女は何かしらの機械を弄った。
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」
『シャーレの部室……?あぁ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?』
その機械は通信機のようだが、かなり高性能な物のようでホログラムで人物が映し出される。
「大騒ぎ……?」
『矯正局を脱出した退学中の生徒たちが大騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ』
「……うん?」
『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れていたみたいだよ?』
『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事な物でもあるような動きだけど?』
「……」
『まぁでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な……あっ、先輩、お昼のデリバリー来たからまた連絡するね!』
通信相手にはぶつ切りされたようでプルプルと震えている。こちらも苦労人と言う点では大概かもしれない。
「…………」
「その、平気か?」
「……だ、大丈夫です……少々問題が発生しましたが、大したことではありません」
「そうは見えないけど……」
七瀬リンは視線を動かした先には、先ほどまで自身に詰め寄っていた彼女達がいた。
「……?」
「な、何?どうして私達を見つめてるの?」
「ちょうど各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」
「……なるほどな?」
行く道が不安があるなら、不安に対抗できる人間を連れて行けばいい。
彼女達に、ツヴァイ協会の真似事をさせるらしい。
「キヴォトスの正常化の為に、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう」
「ちょ、ちょっと待って!?どこ行くのよ!?」
……やりたい事もないし、俺はひとまずは流れに身を任せることにした。
そして、いろいろ違うとは聞いたし、慣れるまで時間がかかるとは言っていたが。
これは、しばらく慣れそうにもない。
「こういう方向で違うのか……」
"都市"では重税や制約によってバカスカ撃てない銃*5も"キヴォトス"では雨粒の如く撃てるようで、ひとまず自分は遮蔽に隠れるしかなかった。
深夜テンションって怖いね?5000文字弱くらい書けちゃったよ
不定期的に更新すると思いますので、よろしくお願いします。