ローラン先生(ブルーアーカイブ) 作:招来E.G.O::烏兎
これから初めてWarp列車に乗るので初投稿です
変貌した景色の中で規則的な寝息を立てながら眠る少女。
ここはどこだ?とか、"これ"はなんだ?とか、疑問は尽きないが……それでも突っ立っていても仕方がない。
寝言でカステラだの、イチゴミルクだの、バナナミルクだのと言っているこの子を起こせば、何か聞けるだろうか?
藁にも縋る思いで彼女に声をかける。
「あのー、ちょっと良いか……?」
「……まだ沢山ありますよぉ……」
でも思ったより深い眠りについているようだったので、肩を揺する。
「うへ……ひへっ?」
するとむくりと起き上がって、彼女はボーッとした目でこちらを見た。
「んもう……ありゃ、ありゃりゃ?え?あれ?ろ、ローラン先生!?」
「あ、あぁ…‥ローランで合ってるけど……」
「うわあああ!そうですね!もうこんな時間!落ち着いて……落ち着いて……!」
相当驚いたのか、眠気は完全に吹き飛んだようで慌ただしく立ち上がった。
見てるこっちが落ち着かなくなる。
「一旦深呼吸してくれ、息を吸ってー?」
「すぅぅぅぅ……」
「吐いてー」
「はぁぁぁぁ……」
「落ち着いたか?」
「……はい!ありがとうございます!そうだ、まず自己紹介させてください!」
そう言って、合成音声らしさのある声で自らの名前を名乗った。
「私の名前はアロナ!この"シッテムの箱"に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」
「……ア、ロナ……良い、名前だな」
「ありがとうございます!そして、やっと会うことができました!私はここで先生をずっと、ずーっと待っていたんです!」
……彼女は、屈託のない満面の笑みで嬉しさを俺に伝えようとしてくる。
やめろ、やめてくれ
「さっき見たいに寝ながら、か?」
「あ、あぅ……もちろん、たまに居眠りした事もあるけど……」
自身が居眠りにしていた事に関して、流石にバツが悪そうにしていたが……悪い奴では、ないだろう。
「まだ身体のバージョンが古くて、特に声帯周りの調整が必要なのですが……これから先、頑張って色々な面で先生のサポートをしていきますね!」
「そうか……じゃあ、これからよろしく」
「はい!よろしくお願いします!」
彼女との関係がどれだけ長いものになるかは分からないが。きっと短い付き合いでは終わらないと、自身の直感がそう囁く。
「あ、そうだ!ではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います♪」
「生体認証?何をすれば良いんだ?」
「少し恥ずかしいですが……こちらの方に来てください」
アロナに言われ、彼女に近寄ると人差し指を差し出してくる。
「さあ、この私の指に、先生の指を当ててください!」
「指を?」
言われた通りに指を当てると、彼女の指は少しひんやりとしている。
少し、機械らしいと思ってしまった。
「まるで指切りして約束しているみたいでしょう?」
「そうだな、これで生体認証をしてるのか?」
「これでついた指紋を目視で確認するのですが……すぐ終わります!こう見えて目はいいので」
指を離すと、少し唸りながら確認し始める。
不安になるが大丈夫なのだろうか?*1
「はい!確認できました!」
「……指紋認証って、もうちょっと早いもんじゃないのか?」
「え?……」
「ごめん、なんでもない。それで、聞きたいことがあるんだけど───」
アロナに連邦生徒会長やら、タワーの制御権やら、それをどうにかできる方法やらを尋ねる。
ここでどうにか出来なければどうすれば良いか分からなかなってしまうが……
「私はキヴォトスの情報の多くを知っていますが……連邦生徒会長については、ほとんど知りません。彼女がどうしていなくなったのか、何者なのかも……お役に立たず、すみません」
「そうか……」
一番聞きたかった事については何も得られそうにない。連邦生徒会長自体は情報を彼女自身には開示していないだろうか
「ですが、サンクトゥムタワーの問題は私がなんとか解決できそうです!」
それでも、七神リンから頼まれたことはどうにかできるらしい。
「良かった、それじゃあ頼めるか?」
「はい!わかりました。それでは、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!少々お待ちください!」
「サンクトゥムタワーのadmin権限の取得完了……」
暫く待たされたが、やってくれたみたいだ。
「先生。サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました。今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります。今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!」
「おぉ……とんでもないな」
「先生が承認さえしてくだされば、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できます……でも、大丈夫ですか?連邦生徒会に権限を渡しても……」
アロナの心配の元が不安か、不信かはわからないが……
「とりあえずそうしてくれ、俺が持っててもしょうがないしな」
持っていたら持っていたで、厄介な事になりそうだしな。
「わかりました。これよりサンクトゥムタワーの権限を連邦生徒会に移管します!」
電気照明の光の戻った地下室で、七神リンに報告した。
少しして制御権の移管を確認したようだ
「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように行政管理を進められますね」
「そうか、それなら良かったよ」
「お疲れ様でした、先生。キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。ここを攻撃した不良達と退学中の生徒達については、これから追跡して攻撃致しますのでご心配なく」
「それは良いけど……」
聞きたいことがいくつかあるが、彼女からはまだ聞いてないことがある。
「連邦捜査部、とか言ってたよな?それについては……」
「そうでしたね……それでは、ついてきてください。連邦捜査部"シャーレ"をご紹介します」
【空室 近々始業予定】
そして、七神リンの今日何度目かの案内で辿り着いた部屋の扉には、そう書かれた貼り紙がなされている。
「ここが、シャーレのメインロビーです……長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎える事になりましたね」
ドアを開けて部屋の入った彼女に続いて中に入る。
「失礼しまーす……」
机と椅子、何個か置かれたモニターに、ホワイトボードに戸棚。
なんというか……事務室、という感じの部屋だ。
「ここが、シャーレの部室です。ここで先生の仕事を始めると良いでしょう」
「仕事か……何をさせられるんだ?」
そこに帰ってきた答えは、予想もしていなかった物で。
「シャーレは、権限だけはありますが目標のない組織なので。特に何かをやらなきゃいけない……という強制力は存在しません」
「え……大丈夫なのか、それ?」
「面白いですよね。捜査部とは呼んでいますが、その部分に関しては連邦生徒会長も特に触れられていませんでした……つまり、何でも先生のやりたいことをやって良い……ということですね」
どんな激務を押し付けられるかと思っていたが……本当に意味が分からない。
「なんだよそれ……その連邦生徒会長って人は何を考えて……」
「……本人に聞いてみたくても、相変わらず行方不明のまま。私達は彼女を探すのに全力を尽くしているため、キヴォトスのあちこちで起こる問題に対処できません」
「そうかよ……」
「……今も連邦生徒会に寄せられてくるあらゆる苦情……支援物資の要請、環境改善、落第生への直接授業、部への支援要請などなど……もしかしたら、時間の有り余ってる"シャーレ"なら、この面倒な苦情の数々を解決できるかも知れませんね」
聞いている限りだと、学校の先生というより
慣れていること、と言われればその通りだが……手持ち無沙汰にはならなくて済むらしい。
「その辺りに関する書類は、先生の机の上にたくさん置いておきました。気が向いたらお読みください」
「……OK、ありがとう」
「それではごゆっくり。必要な時には、また連絡します」
「分かった、それじゃ」
建物の外に出て、ここまで護衛してくれた生徒達を見送ってオフィスに戻ってきた。
『あはは……なんだか、慌ただしい感じでしたが……ある程度、落ち着いたみたいですね。お疲れ様でした』
"シッテムの箱"から、画面に映ったアロナが話しかけてきた。
「そうだな……もうクタクタだよ」
『はい、でもこれからですよ?』
「だろうな……まぁ、出来る限りやってみるよ」
"キヴォトス"、"シッテムの箱"、"連邦生徒会長"……はっきり言って分からないことだらけだった。
アロナには少し背伸びをすると言って、"シッテムの箱"を置いて窓に寄る。
「……まるで、図書館に来た時みたいだな」
身体も、服装もその時と変わらない。まっさらに戻った感じもした。
でも、一つだけ違うものがあった。
前は
取り出して、眺めて、それを大事に懐にしまって。ひとまず俺は"都市"じゃない場所にいることにした。
プロローグも終わったので、これから対策委員会編に突入する……の、ですが。
その前に1話だけ、メインストーリーとはあまり関係のない話を挿入するかもしれません。
されてなかった場合は、
前回の誤字報告もありがとうございます、なるべく減らしていきたいですね……