~Ruler of the sky~ 作:東側Production
追跡していたUAVが突如敵対行為を開始、予想外の性能のために一時は危険な時もあったがなんとか全機撃墜し、UAVのローディア到達を阻止した。任務を終了したガスト隊の2人はローディア郊外に設置されている空軍基地への帰投の道に就いていた。そして数分後、彼らはローディア国際空港に併設された空軍基地“ローディア空軍基地“に到着した。
「…レーダー上にガスト隊所属の2機を確認、生きて帰ってきたか」
「あぁ、なんとかな」
管制塔からの通信が入る。様子から察するに幾つかの部隊が被害を受けていることは想像つくが、これについては別の隊に聞いた方が手っ取り早いし信用ありそうだ。
「滑走路は第2が空いている、編隊着陸はOKだ。どうする?」
「そうしよう、そろそろ燃料が危ない」
隊長がそう言うので燃料の表示を見ると、あと数分で切れてしまいそうなくらいまで減少している。あれだけの激しい空戦機動を取ったのでかなりの燃料を消費した様だし、多分空戦があることも想定していなかったんだろう。
「了解した、滑走路の経路への進入を許可する。誘導開始」
ヘルメットと連動したHUDに滑走路への進入経路が表示される。編隊着陸では僚機と真横に並ぶ又は斜めに並ぶなどしてほぼ同時に滑走路に着地することで、編隊飛行しながらの着陸なので少々難しい(俺の場合だが)
「コース適正、滑走路着地まであと500m」
「200…100…着地、今!」
管制官の言葉とほぼ同時にランディングギアが地面に接し、急速に減速していく。フラップをフルで展開し急減速を開始する。俺は、この時だけは子供の頃に乗った旅客機の感覚を思い出す。
「無事に着陸できた様だな、地上要員の誘導に従ってハンガーへ向かえ」
「ラジャー」
直ぐに機体前方にマーシャラーを持った作業員が現れ、合図を出して俺たちの機体をハンガーまで誘導していく。隊長機の直ぐ後ろを保ち、ハンガーまで到着して自分の機体を置く場所へ機体を動かす。
今更になるが、今俺が乗っているのはF/A-18E戦闘攻撃機、元は艦上戦闘機であるために主翼には折り畳み機構が備えられているが、空軍が採用したタイプではその機能は取り外されいる。そして正式名称は“F/A-18E=A”である。折り畳み機構は構造が複雑なので、機体の重量が増加してしまうからだ。
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作業員がラダーを持って走ってくる。ラダーはその言葉通り階段で、戦闘機のコックピットは地面から非常に高い位置にあるのでとてもそのままでは上り下りができない。そのためにラダーが必要なのだ。コックピットを開け、俺はラダーを伝って地面に足をつける。
「なんとか生きて土を踏めた…」
「ミッシェル少尉、基地長よりブリーフィングルームに召集命令です」
恐らくラダーを運んできた作業員はこんなことを言った。どうやら基地長から何か話があるらしい。何度か話したことがあるが、どうも生真面目で話しづらい人、多分何か怒られたりするのではと思うが…
「もしかして、ミスとか危険飛行とかのことですか?」
「いえ、どうやら別のことらしいです。基地のパイロットも全員召集されるはずです」
「“はず”?」
「えぇ、UAVとの交戦で撃墜されたとかいう報告も入っています。まぁ噂程度でしかないですが…」
まぁUAVの練度も程々あったし、撃墜されてもおかしい話ではあるが正直呼ばれて話される内容の方がずっと気になる。危険飛行で注意を食らったことは何度かあるが、それではないとしたら一体なんなのだろう…
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周囲を見渡してみると、何故かサンバドル共和国海軍航空隊が使用しているSu-30KSMが駐機していた。この機体はサンバドル共和国が使用しているマルチロール戦闘機Su-30SMを元に改造した艦上戦闘機で、現在は海軍航空隊が空母航空隊に配備している。
しかし、ここはエルドア共和国の空軍基地。サンバドル共和国の戦闘機が本来いるべき場所ではないはずだ。機体の近くには2人の若いパイロットが話している。
「彼らは?」
「あぁ、ここら辺に派遣されてきたサンバドル海軍の空母航空隊の連中だよ。うちの海軍との親善合同演習をしてた時に無人機の襲撃を受けたんだろう」
隊長が答える。よく周辺を見回すと、周囲には更に数機の海軍の識別指標をつけたフランカーが駐機している。恐らく最新のSu-33MCかSu-35Kだろう、単座で推力偏向ノズルを装備している。最近ではサンバドル共和国でもエルドアと同じく兵器の世代更新が行われていて、軍縮と並行して少数の戦力で数を補う方向に加速している。
「にしても随分と偶然が重なるもんですね、ましてや別の国の空母艦隊が来た時まで狙って…」
「…そうだな、少々嫌な予感がする。取り敢えず、ブリーフィングルームへ向かうか、話はそれからだ」
「…了解!」
ブリーフィングルームへ向かうため司令施設内に足を踏み入れると、そこには多くのパイロットが集まっていた。戦闘機のパイロットから輸送機のパイロットまで、顔見知りから初めて顔を見るかもしれない者まで、数多くのパイロットが集結している。一体何があるのだろうか…
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ブリーフィングルームにも相当数のパイロットが集まっていた。モニターには世界地図が映し出されており、部屋に入って数秒もしないうちにブリーフィング開始を告げるブザーが鳴り始める。廊下に居たパイロットが集まり始める。恐らくその中の数名はサンバドル海軍航空隊の連中だろう、腕の部分に海軍の旗を模したプレートがつけられている。
全員が席につくとドアが閉められ、部屋が暗転する。モニターだけが光を放ち、静粛な部屋の中に1つだけの足音が聞こえ、壇上に1人の男が姿を現す、彼がケンスリー基地長だ。
「…全員集まったか。これよりブリーフィングを始める、起立!」
掛け声と共に全員が起立する。「礼!」で頭をさげ、元の姿勢に戻って折り畳みの椅子を乱雑に展開する音が暫く響く。
「君たちも知っているであろうが、不審コンテナから射出されたのは所属不明の無人戦闘機だった。現在確認されている被害は戦闘機3機被撃墜、1機損傷、駆逐艦一隻損傷、対空駆逐艦二隻損傷、車両20台あまり損傷、無人機については確認できる全て撃墜若しくは自爆したそうだ」
「基地長、少し宜しいでしょうか」
前の席の方に座っていたエルドア海軍航空隊の若いパイロットが挙手する。
「良い、発言を許可する」
「私はサンバドル海軍との合同演習に参加していたパイロットなのですが、空母を掠めて行った無人機が取った行動が少々疑問なのです。攻撃が目的ならば遠距離から攻撃しているはずなのに、なぜかこちらを観察する様にして周回飛行をしていたんです。恐らく、この無人機を使用したなんらかの組織が戦力を確認するために派遣したものかもしれないと思うんです」
「ちょうど良い情報を話してくれたな。君の考察はほぼほぼ正解だ、これを見てくれ」
基地長がリモコンの様なものを操作し、モニターに先程の無人機の同型機が映し出される。その写真の右端の下には“ELMENISTAN NEW UAV“と表記されている。
「この写真はサンバドル空軍のスクランブル機が撮影したエルメニスタンのものと思われる最新の無人機だ。防空識別圏を侵犯して領空内に侵入してきたらしい。そしてだが、これは今回確認された無人機と同型機だ」
「つまり…」
「そう、これはエルメニスタン若しくはエルメニスタンに支援された組織の攻撃だ」
♧用語解説・航空機
♤Su-30KSM
サンバドル共和国が開発した第4.75世代多用途戦闘機。世界最強とも名高いSu-30SMをベースに開発されており、空母で運用するにあたってフックや射出用装置の装備、ランディングギアの強度向上や車輪のダブル化などの基本的な改修は勿論、最新の推力偏向ノズルやステルス塗料、同時に24個の目標を追跡できる新型の火器管制装置や兵装システムなど、次世代機に相応しい装備が施されている。
♤Su-33MC
大陸戦争では装備の陳腐化によって満足な活動ができなかったSu-33Mに最新鋭の改修を施したタイプ。最新の推力偏向ノズルを装備しており、より揚力の発生効率の良い高揚力装置を搭載しているため、初期生産分の10機を除いて全ての機体はカナード翼を装備していない。これはステルス性の向上を目的としたもので、実際にRCSの値は前世代のものよりも小さくなっている。
♤Su-35K
大陸戦争ではエルドア軍を恐怖に陥れた多目的戦争機、それに艦上で運用できるように改設計を施したタイプ。カナード翼の代わりに主翼前縁部に巨大な高揚力装置や離陸専用のフラップが備え付けられている。勿論、ステルス性の保持のためにもこれらは主翼にきっちり収まる様に配置されているため、若干の違いはあるものの原型となったSu-35SのRCSとほぼ同じである。見分けるポイントはコックピットにあり、Su-35Kは速度計や高度計が無く、全てスクリーンで代替されている。
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♧人物解説
♤ケンスリー基地長
ローディア空軍基地の基地長。近年赴任したばかりであるが、大陸戦争の際にも活躍した上級将校である。生真面目な性格から近づき難い人物であるものの、本当は慈愛深いという良き上司らしい性格の持ち主である。