内容はネタバレになるので言いませんが蒼井救済編を最後まで見ていただけると予想ができると思います。
では本編どうぞ。
「昨日はどうにかしてた....」
作戦開始まで残り1日と少し。着々と準備は進んでおり、月歌たちの訓練は終盤に差し掛かっていた。元々蒼井を殺したキャンサーとの接触はイレギュラーな事だったのもあり、今回の訓練は生存率に大きく影響するだろうと思う。
だがそれだけに昨日の自分のテンションの上がり具合には自分のことながら恥ずかしくてたまらない。あまつさえ、勢い余って月歌に嫌いと言われてしまった。
「はぁ、あいつ拗ねると長いからなぁ....」
そんなこんなもあり、独り言が増えるのは仕方ないことだと思う。これ以外に考えることがあるというのに頭が回らない。
蒼井を守る。
言葉だけなら簡単だ。だが実際は難しい。あの攻撃を防ぐなど盾型セラフでなければ一瞬でシールドが割れる。
蒼井以外の盾型セラフを持った人と連携。そう考えられれば楽だろう。とはいえ、引っ張ってくるとなれば他部隊の連携全てを見直す必要が出てくる。時間が足りないなんてレベルじゃない。
「俺があれを出して倒しきれなかったらどうする。」
レベル的には月歌たちでギリギリ倒せるレベル。今まで散見された前の世界との差異を考えると発生場所に先回りも現実的ではない。万が一座標がズレた暁にはもっと被害が増える。
「ちっ.......クソ。継続戦闘の訓練するか....ここまで来てまだ足りないのか。俺はいつになったら満足に....」
守れる。
最後の言葉は口から出てこなかった。発してしまえば最後、弱音は覚悟を鈍らせるからだ。
「.......よし。覚悟を決めよう。」
俺なりの覚悟を。蒼井が知らない、俺と蒼井の約束を作ろう。それをめざして守れるように.......
「....マリ、欲しいものがあるんだけど....」
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「ぜァァァァアアッ!!!」
剣戟の音が響く。その最中に居る男は暗い色を纏って目も止められぬ速さで動いていた。
「茅森さん....深くんってこんなに強かったでしたっけ?」
パネルに表示されている数は156。つまり、雑魚敵とはいえ、三体づつ出てくる戦闘を連続で156回続けているということだ。
468体を倒したということと同義であり、なぜ、あそこで倒れていたのかと思うほどの暴れっぷりであった。明日が本番というのにこの気合いの入りようは異様と言わざるおえない。
「前世と同じ兄貴なら蒼井が死んでからがむしゃらに戦ってたからねぇ....早く死んで蒼井のところに行きたかったのか、それとも蒼井が守ってくれたあたしたちを守りたかったのか....あの兄貴の事はわかんないけど。」
「....多分、後者ですよ。前の世界と同じ深くんなら。」
チームという戦闘の殻を被ったただの独壇場。自分たちのやることは無くて、ただ立っているだけになっている。こちらにたまに流れてくる攻撃に何回か構えるも全て彼の手によって全て撃ち落とされていた。
あれからずっと心の中で迷って、迷っても答えが出なかった。蒼井が知っていて、でも知らない彼をどう考えていいのかずっと心の置き所に迷っている。
「「深くんッ」しんにぃッ!!」
彼の剣が宙を舞った。さすがに握力の限界だったらしい。肩で息をして、休む暇もなく500近い敵を倒していればそうなる。
空中で一回転して後ろに下がりつつ攻撃を交わした。
「ちッ....なろぉぉおあああ!」
地面に刺さった剣を強引に引き抜いて勢いそのままに的に向かって投げつける。それはちょうど目の当たりに刺さって絶命に陥れた。
「なんで、そこまで?」
今の彼は蒼井に対して何も思っていない深くんのはずなのにという疑問からきた言葉。その答えは帰ってこない。
彼を見る茅森さんの顔は少し眉間にシワがよっていてどこか悲しそうだった。
「....蒼井はさ?またあたしたちが死にそうになってたらまた飛び込んで守ろうとする?」
「それはッ....はい。多分、同じ行動をすると思います。」
「そっか....」
どんな意図の質問だったのだろう?
茅森さんは前の世界で蒼井を救ってくれた人の中の一人だ。恩があるし、それ以上に友達としていなくなるのは許容できない。状況は違うと言えど、同じ場面になったら以前より迷いなく飛び込む。蒼井が好きな彼が居るという枷が今はない。その分以前よりも躊躇なんてないだろう。
「理由、理由はなんですか.......」
「え?」
「深くんがここまで頑張る理由です。」
「....」
茅森さんの顔が驚きで染った。その後困ったように笑って黙り込む。
答えを知っている。そう確信した。けれど彼女は答えないということも同時に察してしまった。
「蒼井は....またあのころに戻っちゃいました....」
何をしていいかわからず、引っ込み思案だった頃の蒼井。このままじゃダメだと思っていても決して自分では抜け出すことが出来なかった頃の自分。
「深くんが....あなたが助けてくれたんですよ?なんで、なんで深くんが蒼井を困らせるんですかッ....なんで元に戻る原因があなたなんですかッ....」
「蒼井....ッ....」
「蒼井ッ!避けろッ!!!」
そんな弱音を吐いた時だった。ひとつの小型キャンサーがこちらに向かってきているのが視界に入る。咄嗟に茅森さんを突き飛ばしてセラフを自身の前に移動させようとするが間に合う気配がない。
判断ミス。回避していれば間に合ったかもしれない刹那の時間。油断だった。
ビーッと音が鳴ってキャンサーが消える。
「はぁ..油断した。ごめん。」
「い、いえ、蒼井が何もして買ったのが悪いので....」
「このアホしんにぃ。」
僅かに彼の顔が歪む。まだ仲直りはしていないようで茅森さんの言葉にはトゲがあった。
「んな事言うな。ほら、欲しがってたプリ「要らない。あたしが怒ってる理由が分からないなら.......いや、気づかれてないと思ってるから」.......」
単純に驚く。ムードメーカーたる彼女がここまで怒るのは初めて見た。発端はあの些細な頭グリグリだろう。傍から見ていた蒼井から見てもすごく痛そうだったのを覚えている。だがそれだけじゃないように見える。女の勘と言われればそれだけだがどこか悲しそうに彼を見つめるその目はただならぬ雰囲気をまとっていた。
「....きっと、会えますよね。」
その言葉を口に出してストンと心に嵌った。これだと確信を得るのに時間はかからなかった。
そうか....そうだったのか。同じ人で会って違う。それならば本物を求めればいい。
あなたじゃないあなたを。
きっと蒼井が知っている深くんと出会える日まで。きっと会えるまで。蒼井は.......裏切らない。彼と同じ存在がここに居ようともずっと....ずっと私はあなたを想ってます....
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訓練が終わって1人、ベンチに腰かけていた。
体力がまだ足らない。そんなことを考えながら1人反省会をやっているとユキが後ろから話しかけて来る。
「おつかれ。」
「ああ....」
「なんか、災難だったな。」
何がだ?と思ったが師匠の事だと直ぐに思い至った。最後、ユキと接したのがそこだったからだ。しかしそれはそれとして....
「災難だと思うなら師匠を止めろよ.......」
「無理だ。お前に触れてたし、反応的に記憶が戻ってるのがわかったからな。」
愚痴を言いたくもなる。あの後、酷い目にあったのは本当で普通に怖かったしビビった。
「お前ほど強い奴がなんで他人を怖がるんだ?」
「言っても俺の特殊性が無いと師匠には勝負にすらならないからだよ。」
「でも筆頭って呼ばれてたんだろ?」
俺は肩を竦めて見せた。確かに「筆頭」と言う呼び方には多少の誇りもあるが条件が違えば他人に簡単に追い越される程度のものだ。俺を「筆頭」たらしめているものは異様な頭の回転の速さと運だけだ。師匠もセラフが銃でなければまた違っていただろう。
「和泉は....「ユキでいい。前の世界ではそう呼んでたんだろ?」....ユキは俺がなんでここまで技を磨いたのか察しがついてるんだろ?」
「.......ああ。蒼井の為だろ?」
そういうユキの瞳には確信めいたものがあった。言い切るものだから少しカッコつけたくなるのは男の性だろうか?
「蒼井以外の....お前らのためだ。俺が強くなろうと思った時にはもう蒼井は居なくなってた。」
ユキの顔が少し険しくなる。それに対して少し苦笑して言葉を続けた。
「俺は蒼井が強くて思いやりのあるいい子だと思ってた。けどそんな認識しか無かったせいで....せいで....どうなったんだっけ.......?」
「あぁ....だからあたし達なわけか。」
「え?ああ....そう。自分でも綺麗事すぎて嫌だけどな。」
ユキは怒らず静かに聞いていた。今の今まで戦い抜いたもの達にとって今の言葉は「お前ら頼りにならない」と言ってるも同義だからだ。
雨が小ぶりで降り出してきた。髪がしっとりと濡れる。
「ま、そういうことだ。」
「綺麗事と言うか、蒼井優先というか.......でも、そんなことを言う割には他にも仲がいい女子が多いみたいだけどな?」
「....割には、ね.......」
「だってそうだろ?全部蒼井の為だ。強くなる発端は蒼井、蒼井が守ったあたし達を代わりに俺が守る!とか、昔の自分のことが嫌いだからとか。少し思い詰めすぎじゃないのか?」
かっこつけたと思ったらナチュラルにユキの方がカッコイイ。相手のフォローをしつつ事実を言うなんて器用じゃないとできない事だ。代わりに俺が昔の自分を嫌いとかいうくだりなんて事前に情報がないと....ない....と....
「ん?」
「え?」
一旦まとめようか。今、前の世界の記憶を持ってる人は月歌、蒼井、七瀬、師匠。その4人だけのはずだ。だがそのことを知っている人はこの中には月歌と七瀬しか居ない。
「....お前....」
「....ああ、そうだよ。とっくに戻ってるよ。というか31Aは全員で知らんぷりしようって決めてたんだ。クソ、へましたなぁ....」
「....勝手に人の体触ってなんで開き直ってんの?.......」
「なッ!ち、ちげぇよ!手!手だからな?!」
目に見えて焦り出すユキ。味方が増えていく。自分の意思で自分からその記憶を自分に宿すことを選択してくれて。それがどうしようもなく嬉しくて。この世界でも俺を信じてくれる人ができたと思うと感慨深い気持ちが溢れ出す。もう顔なんてとり作ろえてないだろう。
「31Bは?」
「いや、そっちは蒼井だけだ。あんまり背負い込むなよ。」
「ああ。全て終わったあとの目的も作った。大丈夫だ。」
モヤがかかった記憶。それほどに日々が濃かったのか、いやもうわかっている。でも大丈夫。あと1日。運命の分かれ道まであと1日だ。
足音が聞こえた。落としていた視線を持ち上げて前を見る。制服を濡らした月歌がこちらを歩いてくる。その雰囲気はやはり怒気があり....
「しんにぃ....今日、なんの日。」
「ぇ....作戦前日?」
「お、おい。月歌、いきなり何を「黙ってて。」ッ.......」
ユキの言葉をさえぎって語気を強くした彼女は少し距離を縮めて質問を繰り返した。
「この基地にしんにぃが来て何日目?」
「あ?そんなの.......色々あって忘れちまったな。」
少し月歌が顔を顰める。でもそれはしょうがない。俺からしたら一日の区切りなんてなかった。ずっと蒼井のために何ができるか考えて行動して。だからここまで来たのだ。来れたのだ。残り--日でここ迄やれたなら上出来じゃないだろうか?
「....ねぇ、しんにぃ。ただのケンカの筈なのにいきなりここまであたしが怒り出した理由、わかる?」
「わかんない。」
「おい、いい加減事情をッ「ユキ」....どうしたんだよ、月歌....」
低い声。それだけじゃ言い表せないような迫力がそこにはあった。並の人には当てては行けない威圧とでも言うのだろうか?
「ッ.......自覚、無いんだね。」
「何がだ?」
「....もういい。アホ。」
何が何だか分からない。ただどこか怒っているだけでは無いとわかっていた。でもそれが何かは分からない。どこかに行ってしまう月歌の背中に手を伸ばしそうになるがすんでのところで止める。
横にいるユキは驚いた顔で止まっている。それはそうだろう。あそこまで素直な感情を露わにして怒る月歌は初めて見ただろう。ユキと月歌が喧嘩した時だってここまでではなかったはずだ。
「....ユキ、少し1人で考えたい。」
「あ、ああ.......」
「明日はちゃんとやるから。おやすみな。」
前日に不安だろう。でも仕事はきっちり果たす。そしてその後、月歌と話し合う。
俺らは腐っても軍人。作戦行動に支障が出るような行動はしない。不安なんて今はキッパリ忘れろ。
そう。全て終わったあとの目的。これで2つ目だ。上等じゃねぇか。やってやる。覚悟なんてとっくに決まってる。
俺も生きて、
蒼井も助ける。
俺の望み全部押し付けてやる。俺は.......俺は....
「なんて呼ばれてたっけ.......まぁ、いいか。」
作戦開始まであと12時間。
本編を見て下さりありがとうございます。(少し長くなります。)
そもそもこの作品を執筆しようと思ったのが蒼井がヒロインのオリ主小説が無いなと思ったからで、ほんとに文才と努力足りなさで皆さんの満足いく出来にできているか不安ですが....
とりあえず、今までのフラグ、全ては蒼井救済編のこの後の数話で全て回収する気であります。
皆さんが読んでいて思っていたであろう「ん?ここ矛盾してないか?」とか、「変だな」と思っているところはできる限り腑に落ちるところまで持っていきたいと思っていますので少々お待ちを.......
ps.感想、ありがとうございます。全ての感想に返信を行ったので確認いただけると幸いです。まじモチベになってます。多分感想がなかったら6話辺で挫折してる.......笑。
それではまた次話で。
2章からはどんな雰囲気が良い?
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蒼井とのイチャイチャ多め
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月歌とのイチャイチャ多め
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蒼井と月歌とのイチャイチャ多め