タイトルでわかる通り3部構成にします。もうここまで読んでいる皆さんはわかっていると思いますが、この蒼井救済編でのヒロインは月歌でございます。なので蒼井の登場回が少なかったんですね。はい。
そしてひとつご報告!
【押絵制作中です】
このだけたけ、実はイラストレーターみたいなことをやっていた歴もありまして....ブランクはあるのですが今製作中なので多分出来るのは一章完結頃かなぁと。
ってな訳で押絵と蒼井ヒロインはもう少しお預けという事で.......では本編どうぞ。あ、あらすじ変更しました。ついでにタグも。ここから動くことはないと思います。では今度こそ.......どうぞ。
11話 オペレーション・プレイ・アン・death(1/3)
「全員、作戦は頭に入ってるわね?」
ブリーフィングルームに響き渡る凛とした声。それを聴きながら俺は目を瞑った。大丈夫。作戦は忘れてない。
「問題ない。いつでも行けるぞ。」
「....」
「月歌、何があったか分からないけど切り替えろよ。」
ユキがムスッとした月歌を注意するとあろうことか月歌はユキに向かって睨む。それを見た司令官はひとつため息をついて、言葉を発した。
「何があったか知らないけれど、今回は上層部でも観測できていない特殊個体が居るとのことよ。仲間割れなんてしてる暇なんてないわ。」
「咲、やらせとけ。大丈夫だ。こいつらはそんなこと戦闘に持ち込むほど変な経験してねぇよ。自分の育てた部隊に自信持て。」
「.......1000にヘリポートに集合。乗り込んだ後、指定ポイントを降下、キャンサーを殲滅しつつドームを守りながら特殊個体のポイントに移動して頂戴。」
反応はこちらをチラッと見ただけ。正直どう受けとったか分からないが変なことを言った覚えはない。
「特に蒼井さん。あなたは今回のキーマンで弱点なの。特に気をつけなさい。」
「は、はいっ!」
「どっちみちあたしは蒼井を守るから。」
月歌が初めて発言をした。言っちゃ悪いが月歌が喋らない寂しい作戦会議、進行速度は早いとはいえ、それがいいかと言われると別にそんなことは無かった。
もう、嫌われるとか関係ない。もう知らないフリをするのは辞める。正直に言って自覚はしていた。月歌が気づいてしまったことにも心当たりはある。それは周りの人がいるからこそ打ち明けられない問題で、それは月歌にとって自分を責めて、その苛立ちは周りに向いてしまう厄介なものだ。
仕方がない。月歌は悪くない。悪いのは俺だ。いや、これも体のいい誤魔化しか....
悪者は俺だけでいいなんて綺麗事は言いたくはない。
「じゃあ、一旦解散よ。はやく荷物をまとめてらっしゃい」
あっけなく終わった。本当に静かでどこか空気が重くて、今までのカリスマがなりを潜めた月歌は周りからしたらいきなり怒ったように見えるだろう。しかしそうではない。俺は彼女の中で何が起きて、何に気づいて、何に怒っているのか分かっている。
きっと.......彼女は知ってしまった。
「はぁ、用意しないとな。もう、あと少しだ.......」
でももう後戻りはできない。
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あの時は少し拗ねてただけだった。今までよりちょっと痛かったからそれを少しオーバーリアクションして。拗ねて。いつもあたしがやっている事だ。
だが拗ねている分相手の悪い所を見てしまうのは仕方がなかった。こればっかりは当然だったのだろう。
だから.......だから気づいてしまった
たしかに兄貴のことを嫌いになった訳じゃない。むしろ大切だからこそこんなに腸が煮えくり返っているのだろうとは自分でも自覚はしている。だが感情はそうもいかない。感情が表に出て理性は二の次だ。もうどうしていいのか自分自身でも分からない程に収拾がつかないところまで来ていた。
きっかけは色々あった。ちりばめられたその気付くための欠片がパズルのピースのように嵌って行ったのだ。
最初の違和感は覚悟と言って頑なに蒼井に真実を打ち明けなかったこと。
打ち明けること程度で覚悟が消えてなくなるならば前の世界であそこまであたし達のために強くなろうとはしない。自分自身も騙す勢いで覚悟と思っていたはずだ。自覚すら出来ないほどに深い心の奥底で。彼に似合わず不器用な手段。悪く言えば雑。
2つ目に司令官に記憶を戻さなかったこと。
今の司令官に前の世界の記憶が入るだけだとあたしが説明したことがある。のにも関わらず彼は腐っていたからと一蹴した。その上で司令官に判断を委ねた。蒼井を助けるならば司令官の協力は必要なのにも関わらずだ。
このふたつが合わされば察するのは難しいが予想は立つ。この違和感があたしにとってはものすごく大きかった。何処までもあたしの中で完璧な存在だった彼がここまでの穴を用意するとはどうしても思えなかったのだ。
「なんで....黙ってるの。誰にも相談しないの.......?」
自分の不甲斐なさと彼への不満がない混ぜになって何もかも無茶苦茶になる。とっくに自身の感情がどんなものかも分からなくなっているくらいだ。それが苛立ちに変わって、自分から彼への不満になって外に出てしまう。
もう、自分が嫌いになりそうだ。それと同じくらい彼を嫌いになるのも怖い。
もう、どうしたらいいんだ.......?
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ヘリポート前。もう既に全員揃っている。最後は俺か。
「またせた。」
「いえ、時間通りよ。皆揃ったわね。」
俺の言葉に司令官以外は反応しない。それはそうだろう。この中の輪を乱しているのは俺なのだから。ただ、全部終わる。これで。
「月歌、蒼井。皆.......頑張れよ。」
俺に出来るのは聞こえない程度の声量の激励。意味があるのか分からないけどそれでも俺のせいで死ぬなんてことはさせない。覚悟だ。何事も覚悟。
「覚悟.......覚悟なんだよ.......震えんなよ、足.......ッ」
ヘリの座席に座る。エンジンの音でかき消される俺の声。自分自身でも喋っているのか分からなくなるほどの轟音を全身に感じながら機体が宙に浮く。
オペレーション・プレアデス。
あの忌々しい作戦名。あの作戦前のライブもなければロータリーモールも倒していない。時間は全て今回の訓練に当てた。それは皆も同じ。
空気は重い。いくら作戦に支障はないと豪語した所でふとした時に行動に出るのは分かりきっている事だ。失敗したらまたやり直せばいい。
そんなことも頭をよぎった。甘さだと切り捨てたが捨てきれないのも事実。
もっと上手くやれたはず。
首を振ってそんな思考を無理やり隅に追いやった。今考えるべきはあいつを倒すことだけ。
『通信、応答せよ。』
「....こちら31A茅森。感度良好」
「31B蒼井。同じく良好です」
耳に着いている通信機から音が鳴った。各チームのリーダーが応答してこちらをチラッと見る。面々はうなづいて返事を返した。
『最初はポイントαに向かってドームの防衛よ。元々無かった行動だからごっちゃにならないように気をつけなさい。』
「了解。」
「あの....司令官。」
『なに?』
「茅森さんと深くんをツーマンセルではダメですか?」
「ッ....!蒼井!何言ってんだ!」
作戦どころか何から何まで崩れる提案。
『....理由は?』
「咲ッ!....いいか?蒼井。わかっちゃいるかもだが言うぞ?31Aに指揮を出せるほど癖とかを知ってるのは俺か月歌のふたりだけだ。俺と月歌が抜けたら動けなくなる。俺らはこの作戦の要で「深くんは黙ってて....」ッ.......」
低い声でそう言われた。それに対して俺が持つすべは言うことを聞く他ない。
「ッ.......」
「蒼井、あたしも反対だよ。これは私情とかじゃなくて純粋に「蒼井にだって指示は出せますッ!」....」
「ちょっと待つにゃッ!さっきまで黙ってたけどもう限界にゃッ!」
「そうだ!これ以上乱れるともう戦闘どころじゃなくなるぞッ!」
もう既に乱れて混乱が巻き起こっていた。面々全員が蒼井に詰寄る。以前のままならばここまで来ることはおろか、発言さえもしなかったであろうこの変わりよう。はっきりいって異常でさえあった。しかしたしかに蒼井の目には意思が宿っており、中途半端な偽善だけで言っている訳では無いのは一目瞭然だった。
「ただでさえ、蒼井を守るっていう作戦。それを第2目標にしてくれているのは嬉しいですし、司令官はそれを承認してくれました。今思えば世迷言と言われても仕方がないその発言を信じて。」
『....彼が誰もいない時に進言したのよ。蒼井さんを救えたら今後、最後まで力を貸すって』
嘘だ。そんなことは言っていない。だけれどだいたい想像はつく。咲は威厳のため、あのような強い口調になっているが一隊員だった頃は優しく、思いやりに溢れていた。単純にセラフ部隊を殺させたくないだけだろうという予想は簡単に着く。
しかし作戦の再立案も労力のかかる仕事だ。色々な所への通知、変更した後の安全性の担保。事前調査のやり直し。全てやり直しになるのだから。
これらを全てやりきった彼女は並々の覚悟ではなかったはず。決心もそうはゆらがないだろう。
「見てられません。仲がいいはずのふたりがギスギスしているだけで作戦に支障が出るならば、蒼井が指揮を取った方がマシですッ!」
客観的に見るとそうだろう。ひとつの部隊に司令塔がふたつあるだけで異常。それが成り立っていたのは一重に俺と月歌の連携があってこそだ。ここが途切れてしまうと致命的なのは言うまでもないだろう。だがそれは二人いるから起こる問題で1番の最善策は.......
「なら俺だけが行けばいい。」
俺だけが別行動をすればいい。俺はソロでの活動ノウハウもある。1番現実的な策はこれだ。
そう思っていたのだが蒼井は負けじと言葉を発した。
「どちらかと言うと茅森さんの方に問題があります。」
「ッ.......」
「この件で怒って冷静さをかいているのは茅森さんです。だけれど、この大型作戦でチームを率いるのは荷が重い....ソロなんてもってのほかです!」
『なるほど、だから2人でってことね?』
蒼井がしたたかすぎて怖い。なんでそんな発想が次々に出てくるのかが分からない。主な目的は俺と月歌の和解。それなのに建前もしっかりと頑丈。何をとっても文句のないものだった。
ただ、俺個人としては無理やりという印象が強い。どこまで行っても屁理屈に聞こえてしまうのだ。
『許可するわ。作戦はそのまま。最上さんは別行動で31Aと協力しながらおなじ進行ルートで行ってちょうだい。』
「おいッ!咲ッ!」
通信が切れた。それと同時にヘリのハッチが開く。
「おいおい....グダグダのまま降りるのかよ.......」
ユキが小さく愚痴る。俺も同じ考えだ。どうなるかはもう分からない。
外からの風が全身を殴ってくる。扉の横のランプが赤から緑に変わる。
もう切り替えなきゃ行けないだろう。強引にでも思考を切りかえて.......
頭にフラッシュバックするあの忌々しいキャンサーの姿。
「待ってろよ.......レッドクリムゾン.......てめぇは俺が絶対殺すッ....」
そこから降下完了までは特に何も無かった。文字通り何も、何もだ。会話さえも無く、重いというより最早人間がいるべき場所じゃないんじゃないかという程に空気が悪い。いつもなら落下中叫ぶであろう月歌とタマでさえ何も発言をしない。
そうこうしているうちに地面がもう目の前まで迫っていた。テレポートで着地する。
『では、オペレーション・プレアデスを開始する。』
ここで一旦まとめよう。
【ドーム防衛。余裕が出てきた後30Gに任せて進行開始】
↓
【31A、B、そして最上深が合同で事前情報にあった辺りを探索。】
↓
【見つけ次第討伐。見つからなくとも3時までにはポイントβに移動してヘリを待つ】
至ってシンプル。ドーム防衛が追加されたのは連携の確認のための計らいだろう。
だが、その意味はなくなった。別行動という新たな条件でこの行動の意味は住民の護衛以外の意味を無くす。
「月歌、こい。」
「....うん。」
作戦になったからか、返事は飛んできた。ただその声音にはまだトゲがある。
「蒼井、皆を頼んだ。俺は右回り。作戦通り10キロ外側外周を回る。」
「はいっ!.......あの.......」
元気な返事が聞こえて踵を返そうとすると少し遠慮がちに蒼井が引き止めてきた。
視線を戻すことでその声に応えると目の前の彼女は少し頬を赤らめて綺麗な笑顔でこう言った。
「気を.......気をつけてくださいね?」
「.......うん。気をつける。」
その笑顔は記憶に焼き付くほどに熱く、想い人からのプレゼントだった。
これが今後のトゲとなることを知らずに.......
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「足跡は無しか....月歌、そっちは?」
「無い」
平和。呑気に昼寝できるぐらいに何も無かった。
「洞窟.......か。」
「浅い.......何も無い」
相変わらずの態度に思わずため息が出る。今のところ戦闘は起きていない。時間に余裕がある以上慎重になることに越したことはないという事で行軍速度が遅いというのもあるが1番の原因は....
「ハブ....だな。この辺りの比較的強い種はだいたいレッドクリムゾンの周りに集まっていた筈だ。」
これでは防衛の意味が無い。それ即ち連携もクソも無いわけで蒼井が下した決断の負の面は図らずとも最初から考えなくてよかったということになる。
月歌が何となしに枝を折った。それを合図に説明していた口を閉じる。
しばらくたったその時だ。草をかき分けて進んだ先にちらっと赤い光が見えた。月歌の肩を少し下に強く押して伏せさせる。
「....こりゃどゆことだ.......」
「ッ....なに、これ....」
今までの出てこないは何だったのだろうか?目の前に広がるのは地獄絵図と言っても過言じゃないほどのキャンサーの数。森と草が生い茂る先にある少し広い平原。そこにびっしりと有象無象が群れていた。
「戦うか....?」
「....」
無言でこちらを睨んで踵を返して引き返そうとする寸前、月歌が踏んだ木が折れて音が鳴る。
「....はぁ、テンプレだな.......」
「....ごめん」
「気付かれた。逃げるぞ。3.2.1」
あの大軍は俺でもやばい。物量というものは相手にとって効率は悪くても確実な方法ではある。実際、俺がこの世界に来た時も最初物量で後退せざる追えなかった。1個の強力な個体よりも威圧はどうしても群の方がでかくなるのもそのせいだろう。
「走れッ!!!」
「ッ!」
俺はセラフをしまって、月歌はそのまま走り出す。
一見、武器をしまった方が早く走れるだろうと思うだろうが現実はそうではない。戦闘手段を捨てて走る等というのは遠距離手段を持つキャンサーを相手には悪手だ。だから、迎撃は二刀流で重心が崩れにくい月歌に担当して貰い、俺は指示を出すのに専念する。こういう指示をする側の判断の速さ、それを受け取る方の理解。それを養うのが訓練だ。
そんなことを過去、皆に言った気がする。それを言わずとも実行する月歌を見て俺は笑みが漏れる。
こいつは素直で、ムードメイカーで、愚直で努力型の天才とかいうチートみたいな存在だな。でもいいと思ったものはすぐ採り入れて自分のものにする器の大きさ。
これが物語なら、主人公は俺じゃなくてこいつだよな。俺に無いもの、全部もってるこいつは何もかも、いや、きっと俺が居なくても全て救えるんだろう。失っても1人で立ち上がって。
でもそこに俺が居たい。そんな欲望は前の世界からあった。どこか違って、どこか間違って。それでもいいから。
俺の中の世界は狭い。俺と蒼井。そして月歌。この3人しか大切なものがない。
「月歌、2時方向!」
「ッ.......」
攻撃が激しくなってきた。月歌がこちらに目線を飛ばしてくる。それと同時に俺の方へ右手の剣を投げてきた。咄嗟に受け取り月歌の方を見る
「なッ?!」
到底人間ができる動きではなかった。
月歌は空いた方の手を使って木の枝を掴んでその場で一回転。一際でかい光弾を切り裂いてその場に降りてきた。
「....キツイ。しんにぃも戦って」
「....おう。」
物量、月歌からの剣の受け渡しはお前も戦えの意だったらしい。素直に剣を返して自分のセラフを取り出す。
「はぁはぁ.......っぐ....はぁ.......」
「ッ.......」
走り出してからもう30分は経つだろう。もうそろそろ月歌は限界だ。しかし後ろの黒い海は減ったか分からないくらいだ。通信などしている暇がない程の攻撃密度。いつまで続くのか分からなくなった時.......
「月歌ッ!」
「な....ッ!」
月歌が撃ち落としたその光弾の死角にもうひとつの光弾。横から見ていないと気づけないほどの巧妙な攻撃。それを認知してから俺の体は咄嗟に動いた。
剣を右から左に持ち替える。
空いた右手で月歌を押して射線から逃がしてその間に俺の体は一回転。勢いをつけて聞き手では無いという力不足を緩和。そのまま払い除けた。
「ッぶねぇ!」
「ッ.......」
感謝の言葉こそなかったがこちらを見る月歌の睨み顔が少し崩れているのを見て満足する。
待て、今ちらっと見えた枝が折れていた。
「まさかあれは.......」
月歌が折った枝。
「振り出しかよッ!」
「うぐッ.......」
「月歌ッ!!」
月歌がその場でバランスを崩して斜面を転がる。フォローに入ろうとするが見計らったようにこちらに迫る光弾。
キャンサーとの距離残り20メートル。
渾身のミスだった。月歌は素早く起き上がるがそのタイムロスは痛い。
残り15メートル。
キャンサーの奥を見ても黒一色。向こう側なんて見えやしない。せめて月歌だけでも.......
「しんにぃッ!洞窟!!!」
「ッ.......」
まだ諦めるには速い。月歌の言う通り洞窟に逃げ込めれば行けるはずだ。この敵の量。敵だって音を聞き分けられてはいないだろう。そこをつかなければ2人とも死ぬだけ。
「月歌ッ!行けッ!」
「でもッ!」
もう怒るという仮面は剥がれていた。ちらっと見るとその顔は泣きそうな顔。
「俺は死なねぇッ!行けよ!早くッ!!俺も追い着くッ!!!」
月歌が全力で駆けだしたのをみて俺は敵に突っ込んだ。
「こんなとこでッ.......やられてたまるかッ!!!!」
俺が死んでも、前の世界の知識を持ってる月歌はきっと蒼井を助けてくれる。あの顔を見ればわかる。あいつは心も強い。大丈夫。俺の役目は.......
斬る。
切り捨てる。
自分に着いた血がもうなんの血なのか分からない。
「ぜぁぁぁああああああああッ!!!!!」
足の感覚はない。きっと筋肉が切れて、動かせないだけだ。
目の前が灰色になる。目の前に敵しか作らなくなる。
右手は既に上がらない。
斬る。
「くそッ!」
飛んでいく自分の腕が見えた。感覚は既にない。情報は視覚のみ。もう音も聞こえない。デフレクターなんてもうあるはずがない。突っ込んで一瞬のうちに消えた。
もう助からない。わかってる。
俺の役目はここでこいつらを抑える。それだけだ。助からないなら、せめて盛大に散ってやる。
意地だ。主人公になりきれなかった男の。たった一つの意地だ。
守れるものは少ない。それは分かってる。
満足に守りきれない。嫌という程に分からされた。
何一つ満足にできない俺が唯一できるのは.......
この世界の異物にできる最高の抗いは.......
動け、口。なぁ、わかるか。今なんだよ。
今言わないで.......一世一代のこの気持ちを.......嘘偽りないこの気持ちをッ!!!!!
叫べッ!自分が変えるんだろッ!
自分がいなければ起きなかった悲劇を変えるんだ.......
ほら、言えッ!
「....ぃつら.は....あいッ....つらは....殺らせるかッ!!!『セラファリリースッ』!!!!!!!」
ドーム周辺に轟音が鳴り響いた。
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「ッ.......」
涙が止まらない。さっきまであたしは彼に怒っていたはずだ。なのになんであたしは.......
後ろにもう彼の姿はない。彼が突っ込んで行ってから進行速度が遅くなっている。確実に。そのおかげで洞窟まで間に合いそうではあった。
でもこころは晴れない。
脳裏に浮かぶのは彼の突っ込む前にみせたあの笑み。あの慈愛に満ちた優しい笑みが思い起こさせるのは兄という存在。妹を守る兄の顔だった。
「あんな態度だったのに.......あたしって何をしたかったの?」
あっという間に洞窟に着いた。中に入る。
あたしの態度がどうであれ普通に話しかけてきた兄の優しさに今更ながらに気づいた。遅いかもしれない。音が大きくなってきている。抑えきれなかったと同義だ。
「しんにぃが入ってきたらすぐ入口を落とそう.......」
そうだ。兄はデフレクター残ってるかな?あたしが守らないと。それで謝って.......そして、えっと.......
剣を握っている手に力が入る。音の大きさ的にもう来ていないと間に合わないほどにキャンサーが近くに来ている。
グチャっ.......
上から落ちてきたそのものを見て体が強ばる。
なんで?いや、理由はわかっている。
待って、お願い。嘘だ。あたしの頭が恐怖でおかしくなったのか?
そんな思考になったのも無理はないだろう
「ご、めんな....お前は生きろよ?」
「しん....にぃ?....」
耳なはっきりと聞こえた言葉。
右手が無い。
足はかろうじてくっついている。
服なんてもう纏っているかも分からないくらいにボロボロ
彼が不意に振り上げた剣は月歌が持っているものと同じで.......
その刃は入口の天井を無惨にも崩した。
「し、しんにぃぃぃぃイ"イ"イ"イ"イ"ッッッ」
洞窟に闇が落ちた。
はい。戦闘描写苦手ですまんかった。
反省は後でひとりの時に.......ひとまずは作戦、1話目やっと終わりました。待ち望んでいてくれた人も居たかと....居たよね?まぁ、うん。
ここで各々が悩んでいるものをまとめときます。
最上深
「自身の無力」「それを隠そうとしていた不甲斐なさ。」「自分が守ると誓ったのに守れない。」
茅森月歌
「兄への理想と現実の差異」「自身が気づいた○○ということへの怒り」
「支えると誓いながら支える隙がない兄」
と言った具合ですね。本文ではまだごっちゃごちゃだと思うのでここでまとめました。また次話でお会いしましょう.......
では.......
2章からはどんな雰囲気が良い?
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蒼井とのイチャイチャ多め
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月歌とのイチャイチャ多め
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蒼井と月歌とのイチャイチャ多め