キオクヲタドリ、交差する【亀更新】   作:だけたけ

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はい。クライマックス、特別長編です!ぶっちゃけいつもの2倍近くの長さあります。多分読むの疲れます。なんってったって1万文字.......少し期間が空いたのもこれが原因というね。時間が無い方はゆっくり出来る時に呼んでいただければと.......

さて、ついに待ってました蒼井とのイチャイチャがこの話にはあります!もう一度言います。あります!もうこれだけで十分ですよね!マジでいちゃってるシーン早く描きたくてうずうずしてた.......

では、本編どうぞ


13話 オペレーション・プレイ・アン・death(3/3)

2人を発見した時は驚いた。焦った。深くんはボロボロで茅森さんに至っては姿はなく、代わりに服とヘアピン。そしてナービィ以外に目にあたるものはなかった。

 

「蒼井が.......蒼井が....」

 

どれくらい経つだろう。まだ数時間というところだろうがすごい長い時間部屋に閉じこもっている気がする。

 

「....」

 

独り言でさえ言う気が起きない。何も考えられない。頭が真っ白とはちょっと違う何も無い気持ち。

 

茅森さんが亡くなった。

 

深くんが再起不能なまでにボロボロになった。

 

「ひっッ.......」

 

脳裏に蘇ったあの地獄絵図。血まみれの中にナービィを抱く深くんの姿。思わず声が出た。

 

どうしようか迷っているうちに司令官が森の中から出てきて気付いたら気を失って今ここに居る。幻だと思いたい。でも墓もあった。葬儀はまだだけど.......

 

「深くん.......」

 

支え合うなんてどうしたらいいのか分からなくなっている。前は自然にやっていたことが今ではどうしていいか分からない。時間という残酷さがやっとわかった。

 

彼ならどうするだろう。

 

あの変わった彼のことが最近よく分からない。いつもふざけてた彼があんなにドライになっていること自体が驚きだ。

 

「ははっ、考えられないって、考えられてる.......」

 

真っ白だったのは感覚だけ。しっかり脳は動いている。余計なことがチラつくけどそれでもまだ蒼井は諦めてはいない。

 

「....お見舞いもう1回行きましょう.......それで、心を整理して.......」

 

沈んだ気持ちを隠して元気という殻を被った。

 

 

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水色のスライム状の生物を持ち上げる。

 

「なぁ....まだ朧気に覚えてんだろ.......?月歌の記憶」

 

ぷるるっと体が震えた。それだけで十分だった。それだけのものを彼女には貰った。この明るい病室が沈む心をかろうじて支えてくれている気がする。助けられる希望があるとはいえ妹を失うのは堪えがたい苦痛なのは言うまでもない。

 

「....ありがとな....」

 

ナービィ(月歌)を自身の上に持ってきて上の方を撫でる。明らかに体の力が抜けているのがわかる。月歌の時は撫でたら嫌がるか無反応。からかってくるのが定石だったが.......

 

....そうか。撫でられるの、本当は好きだったんだな....

 

もう気づいても遅い。この世界の月歌は帰ってこない....なら皆を次の世界に連れていくだけだ。

 

「最上さん」

「ん?ああ、咲か....」

「水生キャンサーの居場所を絞れたわ。八土平地から南西に5キロの地点。地下水脈よ。そこだけ僅かに航空写真と実際の様子が違う場所があるのよ。」

 

どういうことだ?セラフ部隊を通信の届かない地下に送った?何を考えてる。セラフ部隊を捨て石にしてるのか?こいつは。

 

そう考えたがすぐに違うと知ることになった。咲は喉が渇いたのか少し水を口に含んで淡々と話を続ける。

 

「見てちょうだい。ここの岩、航空写真では2倍ほどの大きさになっているわ。」

「なるほど.......でもよく見つけたな....」

 

腕の中でナービィ(月歌)が揺れた。ん?と思い疑問と共に視線を下に向けると思案していたため止まっていた手に自身の体を押し付けるナービィ(月歌)の姿があった。

 

もうダメだった。今まで我慢していたものが全て溢れ出しそうになる。変えられるはずなのに変えられない自分への嫌悪。あの光景が目に焼き付いて離れない。

 

自身の視線の目の前に落ちた月歌の顔が徐々に光を放ちながら溶けて、ナービィになるその時を見た時、どうしようもない喪失感のせいで蒼井に縋りたくなった。

 

この現実からは逃げられない。

 

 

「....はぁ.......もう、終わりみたいね。」

「ぇ....?」

「ナービィの中に残る記憶って長持ちしないって知っているんじゃないの?これでももった方よ....」

 

いや、でも。まだ俺の手に体を押し付けてきているし.......そんなハズない。だって.......だって

 

 

ナービィの顔を見てしまった。

 

 

 

無表情

 

 

無反応

 

 

さっきまでの感情表現は無く、感じていた押し付けられているであろう手を見て見れば動いているのは自分の方であった。

 

「しっかりしなさい。」

「....咲、」

「....私のミスよ。あなたは悪くない。」

「やめろッ!」

 

慰められる。それが今は辛い。どうしようもなく心の中が....なかが.......

 

俺はなんのために頑張っていた?いや、蒼井の為だ。

じゃあ、蒼井が戦う理由は?....それは.......なんだっけ.......

 

ーー元々人間じゃない君らに血の繋がりなんてあるの?....ーー

 

「人間じゃ.......な、い?、なんだ、なんだよそれッ!なんなんだッ!」

 

ーーもう、か。君は何に依存してる?ーー

 

「やめろッ!....黙れッ!!」

「ちょ、暴れるのはッ!!」

 

ーー君が腕に抱いている生き物は何?ーー

 

「決まってるだろッ!俺の....俺のッ....大切なもの、だ....」

 

ーー君とその大切なものの関係は?ーー

 

「それはいも「落ち着きなさいッ!!!」ッ!」

 

気づけば咲が肩を掴んでいた。その親指が俺の肩に触れて.......

 

「そん....な....」

 

よろめいて咲が近くの椅子に倒れ込むように座り込んだ。

 

ーーもう一度聞くよ。君と....大切なものの関係は?ーー

 

「....なん、だったっけ.......」

 

俺の秘密が露呈した瞬間だった。

 

 

_____________________________________________

 

 

 

あれはなんだったんだ。頭の中で響く不快な中音域の声。蒼井が見舞いに来てくれたのは純粋に嬉しかった。

 

気が動転して病棟を抜け出して中庭まで出てきてしまった。

 

「聞いた事あるんだよな.....多分.......」

 

ひとつ察せるものがあった。誰かの記憶を戻すと俺の記憶が無くなっていく。なんにも代償がないと考えていた俺が馬鹿だった。

 

「記憶、か.......今何が分からないかさえも分からないな.......」

 

大切な人は蒼井と月歌。この2人で、それぞれ元カノと.......

 

月歌は.......

 

「クソ、思い出せねぇ.......」

 

思ったよりも失っているものは多そうだ。わかっている気になっていても肝心の本題は抜けている。これがここまで俺が気づかなかった原因か。

 

当分、皆には隠すとして、月歌のあのいきなりの怒り、多分これに気づいたからなんだろう。俺が自身で気づいていると思った。

 

「となると、原因はユキ達に記憶を戻したことか.......」

 

あれは俺の意思ではない。とは言ってもユキ達が悪い訳でもない。知らなかったからだ。これをユキ達が知ってしまえば月歌が死んだことは自分達のせいだと思うだろう。

 

「隠す....か。」

「何をですか?」

「ッ!」

 

気づけばベンチに腰掛けている俺の後ろに蒼井が立っていた。

 

「こんばんわ。深くん。」

「あ、ああ。」

「隣り、いいですか?」

 

俺はひとつ首を縦に振って了承の意を示した。夕日もあいまって彼女の顔はいつもよりも数段美しく見える。これが月歌が命を落としてまで助けてくれた故の景色だと思うとなんとも言えない複雑な気持ちで泣きそうになる。

 

「....」

「....」

 

俺らの間に風が通る。少し隙間が空いたその距離は他ならぬ蒼井の行動でいとも簡単に無くなった。肩が触れることでなんとも言えない幸福感と抱きしめたい気持ちに襲われる。

 

「きっと....きっとさ、俺は気づいて欲しかったんだと思う。」

「え?」

「あ、いや....俺が蒼井の事をほんとは覚えてるってことをさ。」

 

今思えばワガママな子供のようだと自分を殴りたい気分になるがなけなしの理性でぐっと抑えた。

 

「俺は蒼井に嘘をついてさ、知らないって言って。でも心のどこかでは「覚えてますよね?」って言ってもらいたかったんだ。」

「バカですね。言葉にしなくてもわかってますよ。」

「....」

 

両手を前に出してガッツポーズをする蒼井の姿はいつも通りで、いつも通りじゃないのは俺だけ。ほんとになんとも思ってないのかと考えるがそれは無いと切り捨てる。そしてそれは正解だったと他ならぬ蒼井が言う。

 

「確かに知った時はなんで?って思いましたけど....でも少し考えたら分かることですよね。」

「....」

「深くんが未来を変えるために前提条件から崩そうとした事くらいわかります。」

「違う、違うんだよ。蒼井ッ....」

 

もうダメだ。何もかもかなぐり捨てて感情が出そうになる。先走る心の中の何かが理性の檻を抜けて暴れそうになる。

 

「俺は、怖かったんだ.....蒼井を救うとか言っておきながら失うのが怖くて保険をかけてただけなんだよッ....覚悟って言葉で誤魔化してッ!さも自分が正しいですみたいな顔して平然と嘘つい....ッ?!」

「大丈夫...ちゃんとわかってる。わかってるよ。」

 

気付いたら無様に泣き叫んでいた俺の頭が柔らかいなにかに包まれる。

 

「深くんが気付いて無かっただけだよ。ちゃんと蒼井が言った理由もあったんだよ?....デートした時のこと覚えてる?」

「うん....多分大丈夫」

「最初、蒼井は不安でした。」

 

それはそうだろう。自分のことを知らないと言った恋人と同じ姿の男。そんなやつといきなりデートなんて気が気じゃないだろう。この人は同じ姿だけど違う。自分の愛するべき人は居ない。そう思いながらのデートだったに違いない。

 

「でも、知ってたんだ。」

「ぇ.......?」

「蒼井の好きな食べ物とか、さりげなく道の内側を歩くとか。深くんの笑顔とか」

「ち、ちがっ」

「違わない。だからさ、蒼井を守ろうとしてくれてたことを蒼井は知ってます。悪いとこだけ見ないで自分を肯定してあげて。」

 

拒絶したい言葉なのに異常なほどすんなりと頭に入ってくる。これは毒だ。世界で最も幸せな毒。この今世で初めての愛という名の甘やかし。彼氏の特権。

 

「蒼井は深くんが好きです。どうしようもなく好きです。こんなことで嫌いになるくらい甘い愛は持っていません。」

「ッ....俺も、俺も好き。愛してるんだ。だから俺は.....」

 

救いたいと思えた。自分でも分からないくらい愛おしいから君を死という牢獄から救いたいと思えた。

 

「蒼井は深くんが望む結果について行きます。これからは茅森さんだけじゃなくて蒼井も支えます。だから....」

 

彼女の頬は少し赤らんで夕焼けもあいまってとても輝いていた。その唇から出る音は自身の耳を溶かすようで.......

 

これが依存と言うならば甘んじて受けよう。

 

これが重いと言うなら言わせておけばいい。

 

それほどにもう彼女の顔から目が離せない。

 

「だから、蒼井も連れて行ってください。あなたを、あなたが紡ぐ物語を特等席で見ていたい。助けてと一言言って欲しい。もう見てるだけは、何も出来ないだけは嫌なんです。」

「....蒼井....」

 

これは最も情けない告白、これを言ってしまえば悩みと引き換えに自身の男としてのプライドを失う。

 

でも、それでもいいかと思えた。

 

こんな健気で真っ直ぐな気持ちを不意にしてまで一人でやる意味なんてないのでは無いか?

 

そう考えていたら口が勝手に動いてしまった。

 

「蒼井、助けてくれ。俺一人じゃ無理だ。」

 

 

 

_____________________________________________

 

 

「ってな訳で今から行ってくる。」

「ちょっと待て待て待て!何がってな訳なんだ?こっちはもう何が何だかわからないぞ....」

 

ブリーフィングルーム。その一角でユキ達に報告&予定を報告。

 

「だから俺が蒼井のこと覚えてたって言うことがバレて....」

「それはわかるし理解した!問題はその後だ。」

「そうです!ちゃんとした説明を求めます!」

「あー、えっと....てへペりんこ?」

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

 

頭を抱えてうずくまるユキを尻目に俺はある世界の真理にたどり着いた。

 

「これ、案外使えるな....」

「使えるな....じゃねぇよ!第1その体でどうすんだよ!戦闘出来ないだろ!ってか言いたいこといっぱいありすぎてもう何言っていいかワケわかんねぇよ!」

「和泉さん元気になった....」

「見てられませんでしたからねー、茅森さんが居なくなってから」

「それはお前らも同じだっただろうがよ.......」

 

ユキ、南無

 

おふざけはこのくらいにして....本題だ。

 

「咲、月歌を助けに行く。戦力失う訳には行かないだろ?」

「はぁ....そんな言い方しなくても許可するわよ。討伐って言うならしなかったでしょうけれど攻撃をもらうだけなら勝算はあるわ。」

「おい深、うちらにも手伝わせろや。」

「....心強いな。」

 

正直ありがたい。蒼井がいくら防御型とは言え、あの速度の飛び出し攻撃をする雑魚どもを捌くのはひとりじゃ相当難しいと思っていた。

 

「咲、七瀬」

「.......」

「ええ、お別れね。」

「あっちでも会えるさ。31Aを連れてけば記憶を戻すべき人の人数も減るし。なんも問題ない。」

「多少強引になってもいいです。必ず。あちらで会いましょう。」

「ああ。最後までオペレート、頼む。」

 

最後の、決戦だ

 

 

 

_____________________________________________

 

 

『その近くよ。警戒して。』

「ああ。深、大丈夫か?」

 

みっともないことに俺は蒼井に背負われて移動をしている行軍速度を考えると防御手段をふんだんに持っている蒼井の近くがいちばん安全と判断した結果なんだが.......

 

正直いって恥ずい。

 

色々と肩の荷がおりたからなのか昔に戻ったかのような気恥しさが全身を駆け回っている。

 

というか背中柔らかっ?!いや、いやいや。知ってたけど....ってかぽっちゃりしているどころか蒼井はスレンダーな方だけれどもッ?!それでもこんなに包み込んで来るとは.......

 

「って何考えてんだ俺っ」

「どうしたんですか?」

「へ?あっ.......いや、なんでも....」

 

やばい、やばいやばい。無理だろコレ。俺、汗かいてない?というか重くねぇか?欠損部分がある分軽いんだろうけど.......

 

「それにしてもこっちに来てから最上さんとゆっくり話してなかったですよね。」

「あ、あ〜.......そうだな。」

 

聞いてなかったんだけど?!蒼井の背中を堪能してて耳に入ってきてなかったんだけど?!

 

「か、可憐もういっか「最上さん、蒼井さんが居なくなってから頑張ってたんですよ?」ッ....」

 

蒼井の動揺具合が揺れと共に伝わってくる。俺、今蒼井と同調してる?!何アホなこと考えてんだ俺ッ....

 

「ふふっ.......」

 

笑うのやめて?!マジで。その振動、今の俺にはだいぶ致命傷だから!

 

「ふふっ.......あははっ.......」

「ねぇ、笑いすぎじゃね?」

「いや、だってっ....深くん、心臓の音が.......」

 

きっちりバレてたああああ!心臓がバクバク言ってんのバレてんだけど?!もうこれが動揺なのかこの状況せいなのか訳わかんねぇ

 

「そ、そう言う蒼井はどうなんだよ。」

「....聞いてみます?」

 

ごめんなさい。遠慮しときます。

 

いや、今更恥ずかしいとかではないんだよ?それ以上のこと前の世界ではしてたし。でもさ、それはずるいって。

 

「まいりました。」

「勝ちました。」

 

ねぇ天使?天使がおる。ここに天使がおわす.......少し嬉しそうな声で言わないでくださる?もうなんなんこの可愛い生物。ここ戦場だよね?こんな幸せでいいの?無理よ?俺。気が緩みまくりよ?

 

やっとの思いでこの状況に、蒼井が居る状況が今目の前にある訳で、代わりに月歌が居なくなってしまったけど今から月歌の元に向かっていると思うと心も万全とは行かないが余裕がある。

 

仕返し.......

 

「わひゃっ!」

「うおっ、ちょ!蒼井ッ!待て待て!蒼井の背中と地面で俺サンドイッチされるッ!!」

 

脇腹を少し指先でなぞったはいいものの力が一瞬抜けたのかガクッとバランスを崩して地面との距離が近くなる。

 

「ちっ..........」

「間に入る隙間もねぇな....」

「ですねぇ.......」

 

めぐみはこんな俺の態度が気に入らないのか反応は舌打ちをするのみでユキたちはこちらを見てうへぇという顔をしている。

 

なんなんこの羞恥ぷれい.......いいぞ、もっと見ろ。

 

蒼井がこちらを向いて至近距離で俺を見ようとしたその時だった。耳のインカムからザザっとノイズが流れてくる。

 

『岩のポイントもうすぐよ。』

「ッ...全員止まれ!物陰から確認する。ユキ、ドローン。」

「ああ。」

 

まだ視認は出来ない。故にドローンを飛ばす判断をしたのだが.......

 

「なん....だこれ.......」

 

目の前に拡がっているのは湖だった。

 

やばいッ.......

 

「お前らッ、今すぐ来た道戻れッ!!」

 

心構えはしていた。だがいくら鍛えた兵士とてこの和んだ雰囲気から戦闘に入るまでのタイムラグはほんの少しとはいえある。そのほんの少しが命取りな相手。その一瞬に付け入るだけの速度を持つ敵があの湖に.......

 

「クソッ!!」

 

湖が波打った。その瞬間自身の体を捻って反応できていない蒼井を無理やり引っ張る。

 

後ろの木にぶつかってその幹を抉り.......

 

「うわっ.......グロいな.......」

 

その敵はグチャグチャに四散した。

 

やばいッ!やばいやばいッ.......次来たら避けられない。俺の強引な回避行動のせいで蒼井はバランスを崩した。あの一瞬が命取りなのにこの隙はデカすぎる。

 

「最上さんッ!退却は無理ですッ!」

「チッ....蒼井の後ろに1列に並べッ!蒼井、ちょっと無理させるぞ....」

「大丈夫ですっ....」

 

後ろをほかのキャンサーに取られたか、それともあの攻撃を見て退却する余裕は無いと悟ったか。情報量が少ないその判断は彼女達の余裕のなさを表していた。

 

だが問題ない。まだ対処出来ないほど(ピンチ)じゃない。

 

まず相手のキャンサー....イグニスと呼称しよう。そのイグニスが飛び出してくる間は曲がることなく一直線だ。ともなれば対処も簡単だろう。しかし厄介なのがその速度。個人の力量にも夜が刃型のセラフならギリギリ捌ける。が銃型セラフは無理である。早すぎて狙いをつける前に貫かれるのがオチだ。じゃあどうするか。

 

蒼井を湖の方面先頭に置いてその盾でみなを守りつつ後ろでヒーラーによる回復。あとは....

 

「任せたぞ。最後は俺がやる。」

 

最終決戦が今始まった。

 

 

 

 

 

_____________________________________________

 

 

 

 

「うっ、うぐっ....」

 

あれから数十分はたっただろうか。蒼井の消耗は果てしなく、タマも回復技の連発で疲弊。しかも尚且つ周りからキャンサーが来てしまったことによってほかの人員の消耗も激しかった。

 

「っぐ!」

「おい最上ィッ!腑抜けた戦いしよるのぉッ!!!!」

「そういうカレンだってボロボロじゃんか....」

 

義足によって戦いができるにしてもバランスは前とは大違い。体重をかけて問題ないことを確認する。

 

その瞬間だった。蒼井の膝がカクッと折れそうになったのだ。

 

やばいッ....やばいやばいっ.....無理させすぎたか....クソがっ....

 

「クソっ!配置変えるッ!俺が先頭だッ。蒼井は消耗回復だ。ほかの人員ッ!俺がまもるからには後退できるだろ?!いいか!下がれば距離ができるんだ。その分迎撃する時間が生まれるッ!分かったらさっさと動けぇぇえッ!!!!」

 

蒼井ッと声をかけて入れ替わる。蒼井とは違い俺は剣型セラフ。体力の消費は蒼井とは比べ物にならないほどに早い。だがここの防御を変われる人員は他には居なかった。

 

「ハハハッ!!楽しいッ!楽しいぞォッッ....この感覚ッ!!この快感ッ!!ーー堪らァァァァアアアアンッ!」

 

.......いや、1人居た。

 

「カレン、出番だぞッ!」

 

2人で前線を支える。

 

あの大きい方の水生キャンサーが出てきてあのビームを打たせりゃ勝ちだ。確証は無いが勘がやり直せると言っている。

 

「うぉぉぉああああッ!!!」

 

驚いた。耐えれれば御の字と考えていたが俺の欠損部位分を補ってあまりある戦闘力。速度。技術などは俺の比較にならないであろうその姿。

 

すげぇ.......

 

いや、感心している場合じゃない。彼女はあまりにも突っ込みすぎている。後ろが逆についていけていない。不味い。

 

「カレンッ!戻れッ!」

「ふひっ、ふひひっッッ!はっはぁあああ!!!」

 

聞きやしない。どうする。このまま俺らも無理やり前線を押し上げるか?それともカレンの単独行動を許すか?

 

選択肢はふたつにひとつだった。

 

「クソがあぁぁぁぁッ!」

 

片足に力を込めて前に蹴り出す。体がふわっと浮いた感覚と共に自身の体が前へと進み出した。そして、

 

 

読み間違った。

 

 

人は間違える生き物だと言う。間違えて学んで成長するのだと。では人では無い俺らはなんなのだろうか?

 

学ばない生き物?いや違う。

 

失敗を繰り返す生き物?それも違う。

 

 

正解は.......

 

 

 

人間よりも適応能力が高いがゆえの隙。

 

この戦場に慣れ始めた俺がとった最悪の一手。

 

次の瞬間脇腹が抉られ、地に伏せることとなった。

 

 

ーーほんとに、ダサいね.......君はーー

 

 

_____________________________________________

 

 

目の前で仲間が倒れた。

 

この作戦の要である男が倒れてしまった。

 

キャンサーのハブは未だに外には出てこない。湖の中で時を待っているかのように雑魚しか出てきていなかった。しかもその雑魚も普通のキャンサーとは違い、厄介この上ない。

 

「最上ッ!」

「最上さんッ!」

「クソッ.......」

 

状況は最悪。ただ何だこの違和感は。

 

彼が関わると任務が難しくなる?いや違う気がする。31Aの頭脳たるこのあたしが考えなければいけないことだろう。

 

何がおかしいのだろう。先頭をしている手前あまり思考に頭を割けない。もどかしさがイラつきに変わって握るセラフからギチギチと音が鳴った。

 

「彼を全力で狙っている.......?」

 

このオペレーション・プレアデスでは負傷しているのは彼のみ、月歌だって彼を守るために死んだだけでいつだってその渦中には彼がいた。

 

「.....キャンサーが攻撃に優先順位をつけてる.......?」

 

邪魔だと思った相手を先に攻撃することはキャンサーだとしても普通だった。しかしこうも頑なに1人を狙う個体は初めてだ。

 

「試してみる価値は.......ある。蒼井、最上の周りに集まって外をむくように皆を配置させたい。」

「....わかりました。皆さん!聞いた通りですッ!」

 

そこからの行動は早かった。カレン以外の皆が周りに集まる。すると手応えが格段に変わる。攻撃の苛烈さが増したのだ。いや、否。攻撃の中心地点に来たというのが正しいだろうか。

 

「っぐ.......こんなッ.......」

「き、キツイッ.......」

 

攻撃をどこに撃っても撃ってもどれかの敵に当たるこの物量。向こう側など見えやしないこの状況に、戦慄が走る。

 

手足、片方づつと義足1本だけでこの物量を凌いでたのか?!規格外なんてもんじゃねぇぞッ?!

 

「カレンッ!突っ込めッ!!!」

 

今だからこそわかる。カレンが前に出れたのは彼が攻撃の大半を捌いていたから。この地に伏せた強者はそれだけの力があった。

 

「ヒャッハーッ!!!!」

「やめ、ろ.......ッ....撤退だ。」

 

後ろで立ち上がった気配がした。その彼のセラフを見てみなが察する。

 

「蒼井ッ!退避だッ!!」

 

この中で唯一彼女だけが知らないことが今起ころうとしていた。

 

「セラフが.......光って.......」

 

これは蒼井が命を賭してみなを守った時と同じ光。これが本当の極地への終着点。

 

 

彼が筆頭と呼ばれた本当の理由。

 

 

彼を英雄と崇めるに足る力だ。

 

 

「セラファリリース"月歌"」

 

彼はひかり輝く片手剣を両手で持ち直した。セラフ自体が見えなくなるほどのその光は次第に分離していき、そして.......

 

「ぇ.......」

 

月歌のセラフそっくりの双剣となった。

 

「ここは俺が抑える.......お前ら撤退しろッ!」

「んな事できるかッ!」

「撤退ですッ!皆さん、森に向かって走ってくだ「あれは命を削るんだよッ!あたしらが撤退したら本気で最上が死んじまうッ」ッ?!」

 

彼のことが第1な蒼井は彼の指示に従おうとするがあたしの言葉で動きをとめた。

 

「蒼井も経験あるだろ。最後、あたしらを守ってくれたあの力。あれを小出しにするのがあれなんだッ!ああッもうッ!!......」

 

悪態をつこうとする口が不意に止まる。その原因は後ろからだった。

 

小爆発。地面が凹んで、えぐれて。見るも無惨になるほどの力。

 

こちらをちらっと見るその顔は少し悔しそうに歪めていた。

 

彼は剣の持ち手の底どうしをくっ付けて一言。

 

「"消えて、無くなれ"」

 

その言葉の瞬間剣は火をまとい、振り下ろされた。

 

 

 

湖が蒸発した(・・・・)

 

 

「なっ.......に、これ.......」

「チートだろ.......」

「にぎゃあああああッ!なんですか?!なんなんですかッ!あ、最上さんでしたか。」

 

ザコ敵に勝利した。彼の意識と引き換えに。気は抜いていなかった。抜いていなかったのだ。だがピチピチと跳ねる雑魚キャンサーの他に居ると言われていた大型キャンサーの姿はどこにもない。

 

「なんなんだ.......居な「貴様らッ!死にたいのかッ!!!!」ッ?!」

 

もう何度目の驚きだろう。目まぐるしく変わる場面に目をぐるぐるさせながら最後に見た景色は.......

 

 

目を焦がす程の辺り一面の光だった。

 




はい。もうなんだろ.......この後月歌救済編が始まると言うのに蒼井とイチャイチャしてる主人公しか思い浮かばないのはなぜなのだろう。

はぁ、おい深!お前その位置オレ(作者)に変われッ!


では遅くないうちにまた次話にてあいましょう.......

2章からはどんな雰囲気が良い?

  • 蒼井とのイチャイチャ多め
  • 月歌とのイチャイチャ多め
  • 蒼井と月歌とのイチャイチャ多め
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