では本編どぞー
14話 記憶の追憶と新たな謎
「やめろ.......やめろッ!」
目の前に広がる光景。それが受け入れられなくて、必死に手を伸ばしながら願う。
「じゃあ、ね.......し、んにぃ.......」
真っ二つになった妹の姿。下半身は原型が分からないほどにぐちゃぐちゃ。血がバケツをひっくりかえしたように溢れている現状に気が狂いそうになる。
だが、それだけでは無かった。
「いま、い、くよ.......あや、ねる....」
妹の横に転がっている青井ありさのものだった体を見ながらそうつぶやく月歌。そして.......
「お、おい.......月歌?おいッ!おいッ!!!」
息絶えた。
_________________________
強い光に誘われて意識が浮上し始める。次第に背中から覚えのある感覚が伝わってきた。
「あー.......デジャヴ......成功はしたみたいだな.......お前らは.......は?」
辺り一面が森。近くにドームもあるだろう。それはいい。戦っていた場所はドームからほどよく離れた森の中だからだ。しかし問題はそれではない。
「なん、で.......みんなが居ない?いや、考えろ。最初の転移は俺がいない世界へのものだったから気づかなかっただけかもしれない。もしかしたら重複する人がいるならば記憶だけが残る?それとも転移できるのは俺だけ?」
出来れば前者ならばいいが。俺一人の場合、今度は青井と月歌を同時に助けなければいけない。月歌が死なずに済む方法は俺が強くなるのが1番手っ取り早いのだがそれも時間がかかる。
そもそも、蒼井を助けたから月歌が死んだ?世界の強制力なんて話、昔からあった。だとしたら.......
「いや、ダメだ。前の俺のままじゃないはずだ。考え始めると悪い方向に思考が行く、ダメだな.......」
自分に言い聞かせている当たりまだまだだとは思うがそれに気づけているだけまだマシなのだろうか。
「と言いつつ、あそこまで歩くのは面倒だな.......」
デンチョは.......うん。思った通り通信は使えな....
ぷるるるるっ.......
「はい?.......え?あ、はい。こちら最上。」
『蒼井たちは無事です。繋がってよかった。そっちはどうですか?』
「あ〜.......なるほど、同じ世界由来だから繋がるのか....」
『深く....あっ」
後ろから同じ声がした。
その瞬間、冷静にさせていた理性が一瞬でどこかに飛んで行った。
気づけば足は地面を蹴っていて、気づけばその黒い髪と青い瞳、を携えた愛しい人がいた。
「無事でしt....んんッ?!」
自分の口に柔らかな感覚を感じる。
視界に広がる真っ赤になった頬と耳。いきなりのことで困惑しただろう。ただ俺も色々と限界だったのだ。
愛しい人に真実を打ち明けられなかった日々。抱きしめられなかった。こうしてキスすることも。愛を口に出すことも何もかも我慢して、自分を律して。全て彼女のためだとそう俺は思っていた。
だけど何よりも、それが辛かった。当然だ。彼女のために彼女の望まぬ形で、苦しむ形で自分おも苦しめて。
「んっ.......蒼井...ごめんな、ずっと言わなきゃって思ってたんだ。」
「深くん.....」
そうだ。何も言えないだろう。
「君は優しいから、自分が苦しかったとしてもそれが自分の為だと分かれば何も言わずに受け入れる。そんな君が好きで、そんな君に支えられて.......そんな君を守らなきゃって......」
「.......」
彼女の口を塞いだその口からは愛の言葉だとかそんな甘い言葉が出てくるわけでもなく、実際は懺悔。そんな期待はずれな言葉も少し赤みが引いた顔でこちらを見てくる蒼井。本当にかなわない。
「でも、それも独りよがりで、俺の勝手で。それが嫌で悩んで悩んで.......」
「うん....」
「俺さ、お前の前ではかっこいいやつで居たいんだよ....」
「ふふっ.......」
「笑うな....」
少しの抵抗。その言葉も燃料にして笑みは深まるばかり。本当に楽しそうに笑うその顔の頬に手を当てて少し押す。
「ぬぁにすふんでふか!」
「んや?なんでもない。やっぱり好きだなぁって思っただけ。」
「....はい。蒼井も好きです。....ひとつお願いしてもいいですか?」
「え?うん。」
「....ーーーーーってください.......」
1呼吸置いて真剣に、でも緩みそうになる頬を一生懸命我慢しながら.......
「ああ、わかった。」
_________________________
記憶を与えられた。
あの人に。
あの方に。
あの、神に。
この体は多分、作り物なのだろう。感覚が違う。理解ができる。全てが。それが、どうしようもなく、怖かった。
見える景色は様々だ。
何を感じるかと言えば.......まぁ説明はできないけれど、理屈で言えない感情が心を渦巻いている。だがその正体はまだ分からないまま。
でもあの人たちだけは覚えてる。恋した人。自分が助けて、そして、自分を守って死んだ親友であり、彼の妹だった人。
支離滅裂な思考、微妙に思考と思考の間が繋がってない気がする。
自分が怖い?なのに景色が綺麗だと考える自分もいる?嫌だ、自分が二人いるみたいだ。なんなんだこの違和感は。
「知りたく、無い.......けど、僕は.......」
会わなきゃいけない人が居る。
_________________________
「んで.......着いた訳だが.......」
「....」
隣でオーバーヒートしている蒼井を横目にチラッと見てみる。こちらが顔を赤くしそうになるほどに狼狽えており、明らかに普段の彼女ではなかった。
「え、えっ.......と.......」
「ふぇっ?!」
確かに流れに逆らわず全力疾走で駆け抜けたぐらいには理性は飛んではいたが、だからといっていきなりキスは早すぎたか?
これまでの溜まりに溜まっていたものが全て出てきたとはいえさすがにな蒼井も嫌だった.......訳では無いよな、反応を見ると.......
「て、照れてるのか?」
「はっ、はいっ!」
上擦った声で普段よりも大きく返事をする彼女。それを見て逆にこっちが冷静になって来る。
「警備....居なくね?」
「ですね....何かあったんでしょうか?」
「いや、何かあっても警備は立たせなきゃダメだろう....まさかもうドームの中が蹂躙されたとかないよな....」
所詮はドームの住民に任せた雑多な管理だ。プロから見たら杜撰なのはわかるが、それでも警備がないとは異常以外の何物でもない。
そう考えていると....
「は?....」
「ぇ....」
信じられない....いや、信じたくない光景が見えた気がした。そんなことは無いと信じたい。無意識に早くなるその2人の歩みはいつの間にか全力疾走に変わっていて、その光景が現実味を帯びてくる。
「追い出せッ!!」「行ける!行けるぞ!!!出てけ!キャンサーッ!!!」
次々に飛ばされるヤジに一人の男が前に出てきた。その手には草刈りに使う様な鎌が握られている。震える手を振り上げるのが見えた瞬間、そのスライム状の....いや、ナービィの体が震えた気がした。
ちらっと見えたドームの門の中には白い灰の柱のようなものがちょこんと立っている。その傍には....
セラフ部隊の制服が。
刹那、頭が真っ白になる。
「.......めろ.......ゃめろ.......ッ!やめろぉぉぉおおおッ!!!」
体をその鎌とナービィの間に滑り込ませる。無意識だった。叫んだことも、その体の動きも、全てが自分の意思とは無関係に動いていたのだ。
頭の中ではただひとつの感情が渦巻いていた。
冒涜だ。
理解しない訳では無い。見たことがない生き物が、化け物と一緒にいれば恐怖も感じるだろう。ただ、このセラフ隊員は守ったはずなのだ。このドームの住人たちを命を落としてまで救った。そして、自分すら知らない自分の正体のせいで目の敵にされて恐怖に満ちた顔を向けられて....
そこまで思考をした時にはもう目の前に鎌の切っ先が迫っていた。
しまった、避けられない....ッ
瞬間青い軌跡がまたもや鎌の前に現れる。
「助かった、蒼井ッ!離脱するぞッ!!」
「はい!」
蒼井は盾を地面に叩きつけて砂の煙幕を作る。
こうなればこちらのものだ。一般人に追いつかれるほどやわな体づくりはしていない。
少し雑にそのナービィを抱え込んで走り始める。
少しは休む時間を与えてくれよ、神様.......
そう考えて森の中に再び飛び込んだ。
次話の投稿をお楽しみに.......それでは
2章からはどんな雰囲気が良い?
-
蒼井とのイチャイチャ多め
-
月歌とのイチャイチャ多め
-
蒼井と月歌とのイチャイチャ多め