キオクヲタドリ、交差する【亀更新】   作:だけたけ

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こんにちわー、久しぶりの投稿です。見てくれてる人も新規の人も楽しんでくれると嬉しいなと思ってます。では本編どうぞ


2話 野宿は危険

 

 

「困ったな....」

 

草原。周りは青草が茂っており膝下くらいまで伸びているこの土地。攻撃に巻き込まれ、死を覚悟した瞬間光に包まれて気づいたらこの土地にいた。つぶやきは周りで鳴る草の音にかき消される。わけも分からずこの身だけで放り出されたという以外にもこの状況は危険だ。視界が開けていて周りから丸見えで、草の背が思いのほか低いので地に伏せても体は丸見えだろう。キャンサーに見つかってしまうのは時間の問題だった。

だからと言って見渡す限り草で森なんかも見当たらない。身を隠すことが出来ないとなると連戦は避けられないし歩いて少しでも安全なところに移動しなければならないことから体力との勝負だと覚悟を決める。

 

「考えてても仕方ないか。七瀬、応答してくれ」

『サザッ.......ピーッ』

 

雑音が聞こえるだけで応答はなし。電波が届かないところに居るのか、それとも司令部は既に海から来たキャンサーにやられてしまったのかと考えて不安に駆られる。あれからどれくらいたったか分からないが日の高さ的に月歌達が基地に帰ってきているかは微妙なラインだろう。泣くかな?いや、たぶん泣くだろうな。月歌は気丈に振舞ってはいるがその実、やはり1人の少女だ。基地が生きていたとしても俺が死んでいることになっているのはほぼ確実で、電波も届かないとなると俺のバイタルも見れないだろう。あんな通信をした手前、帰るのは腰が重いがあの敵の情報を持っているのは俺1人。帰らなければ人類が滅ぶ。

 

「場所が問題なんだよな。これってやっぱり.......」

 

立ち上がって周りを見る。キャンサーは居なくそこにあるのは見覚えのある光景だった。

 

「八土平地だよなぁ.......」

 

その地は湖ができる前の八土平地そのものだった。

 

 

疑問を持ちながら約数時間。と言っても時間感覚なんて無いに等しいので感覚でだが日がだいぶ落ちてきたという目分量。その甲斐あって、ついに確信できる証拠が目の前に拡がった。

 

「あった....やっぱりここは予想どうりの場所か」

 

記憶を辿って歩いていたところ、目の前に森が現れた。予想通りで自然と顔に笑みが浮かんでくる。希望が見えた。ここまでで不自然な程にキャンサーとの戦闘はなかったとはいえ、電ちょが壊れていないのとセラフを呼び出すこともできたというのが1番の幸運だっただろう。安心感が違った。元々、ここは基地からそう遠くない。明日には基地につけるだろう。そう予想を立てる。

 

「....はぁ、ここに来て戦闘かよ。ここまで来たなら最後までみつかりたくはなかったんだがな。」

 

目の前にはヘイルホースとノッカーが一体づつ。悪態をついておいて変な話だがホッとした。戦闘がないというだけで今までとは違うというストレスが自分の身を蝕んでいたことに驚きつつ気が緩んだことを反省する。

 

『此方は剣なれど想い人の盾である事を望む』

 

セラフィムコードを唱えてセラフをだす。この時点で攻撃はもう既に目の前に迫っている。だがまだ焦らない。

 

光が線を描いた。2つに割れる。言葉通りに真っ二つだ。斜めに崩れ落ちるその様は漫画やアニメで見るような現実離れしたもので第三者がみていたとすればいきなり敵が割れたように見えただろう。ザコ敵であろうがシールドを持っている敵は基本シールドを割るために一撃、体力を削るのに一撃で合計2回の攻撃が必要だ。しかし確かに放った攻撃は1回だけだった。これが自分のセラフの性能で、攻撃貫通というものだ。これがソロで1つの部隊という特異性の正体。

 

「あれ....また?」

 

次はアビスノッカー一体。

 

同様に切り捨てた俺はセラフをしまってまた歩き始める。こんなにあっさりとでいいのか?と思うかもしれない。しかし、何も無さすぎて語ることがないのだ。一撃。危なげなく淡々と作業をするように切り捨てるだけ。そんな姿を見て『筆頭』とセラフ部隊員はある程度慕ってくれているのだと思うし誇らしくもあった。

 

「えっと.......ここから.......」

 

問題は森に入ってから起きた。記憶が古いためあやふやだったのが原因だろうか?森に入ってからのルートがどうしても思い出せない。その時は直接歩いて基地に帰った訳でもないので途中から分からなくなるのは覚悟の上だったが思いのほかそれは早く来た。

 

「....まぁ日も落ちてきたし、野営でもして考えるしかないか。」

 

お腹がすいた。そんな弱音は吐かないが事実は事実だ。水分も取っていなければ食事だってとっていない。日のせいで汗だくになり、体はもうベトベト。正直気持ち悪くて寝れるかも不安だった。

 

「今歩いたら明日の朝にはつけるんだろうけどなぁ....」

 

人工の光が無い暗闇というのは本当に何も見えない。暗くなったら寝て、明るくなりかけた時に起きて朝焼けが見える位で出発するのが野営の基本だ。だいたいそんな本当に何も見えない暗闇で奇襲なんて受ければ抵抗なんてさせて貰えないだろう。だからこそ、キャンサーも夜は動かないのだろうが.......

 

「....木の上しかないか」

 

空が霞む程の生い茂った木の葉は体を隠すにはちょうど良かった。木の上ならば見つかる危険をぐっと減らすことが出来るだろう。

 

「よっと....あれ.....」

 

慕われていると言ってもそこに人間性が無ければついてくる人はいない。つまり何が言いたいかと言うと.......

 

「ズボンが引っかかってっ.......取れねぇ.......」

 

彼はぬけていた。

 

戦闘に関しては無類の強さを誇る彼でも天は二物を与えなかった。

体を気に擦り付けて片足を上げたまま。そんな不格好なポーズで固まるしかない彼を誰かが見たとすればモゾモゾと動くそれを爆笑しながら指さしているだろう。

 

「ちっ....切るか?いや、でも....くっ...やっぱり取れねぇな」

 

芋虫さながらの動きを見せる演技派の彼。文化祭のセミ役と並ぶ演技力だ。

 

「....このまま登るか.......?」

 

行動に移せばすんなりとズボンに引っかかっていたものは取れる。ここに至るまで15分ほど。周りが暗くなってきていたのもありキャンサーに見つかることなく済んでいたとは言うものの先程反省した油断をしないというものはどこへ行ったのか。油断というよりもはやバカを通り越してアホである。

 

「....寝るか。疲れてるんだろう.......」

 

風が頬を撫でた。冷たい感触が全身を覆う。廃した世界の中で自分一人のような孤独感を感じながら務めて瞼を閉じる。

 

明日、生きている保証はない。熟睡はできないのはわかっているし、そもそも敵地での睡眠など訓練を受けたこともやったことも無い。

 

「無事だろうか....」

 

愛しい人を失い、その上妹分まで失うと考えると寝るなんて生易しいことをしていていいのだろうかと感情が訴えかけてくる。務めて無視しようとするがしきれないのもまた事実でこのまま寝れないくらいなら動いた方がいいという思考も浮かんでくる。

 

「連絡は取れない、時間もわから....デンチョがあったか。」

 

ここで気付くがその発想は無駄になった。

 

「くそ....こんなに暗いのに朝の9時なわけねぇだろ.......」

 

時間がズレていた。今までこんなことは無かったが故障か、それともほかの要因か。取り尽く島が無いということだけがわかった。

 

瞼を閉じるとあの凶悪な敵がフラッシュバックする。

 

「....寝れないか....」

 

色々なことがありすぎた。心配事の一つ一つが大き過ぎるのだ。水生の敵、その強さ。基地の無事と月歌の無事。自身の生き残ることと自身の状態。なかなかどうして人生は上手くいかない。

 

「歩くか.......」

 

体を休めるという選択肢はもうなかった。ただ前に進むだけ。戦闘に体力を使ってないだけにまだ体は動く。

 

夜の闇の中、何も見えないなか、月の明かりだけを頼りに進み始める。

 

その姿は行き場を失った少年のようだった。

 

 

 

_____________________________________________

 

 

 

同時刻、基地で

 

 

「光?」

「ええ、そうよ。八土平地で一際大きく輝いたた後、すぐ消えたと巡回の部隊が報告してきたの。」

「キャンサーか?」

 

司令官に呼び出された31Aの面々。その雰囲気は重いもので普段おちゃらけている月歌でさえ顔を険しくするほどだった。

 

「可能性はあるわね。でも大きな問題はその光では無いの。」

「....これはッ」

 

そこにあるのは一枚の写真。そこには倒れているキャンサーの姿があった。

 

「一撃....?」

「ギィィェェエエエ!!!!真っ二つ?!」

 

そこに写っているのは縦に割れたアビスノッカーだった。普通のノッカーならいざ知らず、31期舞台の中でもトップの実力を持つ31Aでも少し手こずる程の強敵だ。それが1太刀。他に傷は見受けられない。

 

「これ...」

「ああ。ありえない(・・・・・)

 

そうありえないのだ。キャンサーを倒すには必ず2つ以上の傷が付く。だがこの写真を見るに同じ場所を正確に2回斬るか一撃で倒すしかこの結果は有り得なかった。

 

「考えられるのは特殊な能力を持ったキャンサーの同士討ち.......」

「ええ、上もその仮説で今動いているわ。ただ、気になることはもうひとつあるの。」

 

片手を帽子に添えて司令官が口を開く。

 

「航空写真ではここはいつの間にか八土平地のほぼ全てが湖になってるのよ。」

「....は?」

 

キャンサーの写真を見るに近くにそんな湖なんてものは無い。このご時世、いつ何が起きても不思議では無いとはいえそこまで大きい湖がいきなり出来る。しかも実際には確認できないという異常性は看過できるものではなかった。

 

「情報が欲しいけど部隊を行かせるにも不安要素がありすぎる。アビスノッカーを一撃で倒すほどのキャンサーが何体も居るとなれば31Aでも手に負えないわ。」

「セラフ部隊総出ってこと?」

「それが一番ね。でも......」

 

そこで口を噤む。司令官にしては珍しく言葉に詰まる。その事実はこの事態がどれだけ深刻かを物語っていた。

 

「....わかった。とりあえず私たちは基地内で待機しとく。」

「オイ、たまァァァ!!」

「は、はいぃぃい!」

「風呂はいって早めに寝とけ。」

「そんなに怒鳴って言うことじゃねぇよ....」

 

 

不穏な空気はぬぐえないまま。月歌はどこか遠くを見つめるように見る司令官の顔が頭から離れなかった

 

 

_____________________________________________

 

 

「こいつら何体来るんだよ....」

 

すっかり日が上がり、基地まであと少しという所。巡回のセラフ部隊員に出会ってもいい頃合ではあったがその姿は見えず、代わりに雑魚敵であるキャンサーがぞろぞろとそこら辺を徘徊する始末。幸い水生のキャンサーはまだここまで来ていないようだが基地が無事かはまだ分からない。情報不足という度を超えていた。

 

「よっ.....おっとと....」

 

体にも限界が来ていて足をもつれさせることも少々。飲まず食わず、徹夜をして体を動かし続けるという1種の極限状態に、感じる疲労はもう限界まで来ていた。太刀筋も昨日までの鋭さはなくザコ敵だから一撃で倒せるもののアビスノッカーと会ったら一撃ではもう倒せないだろう。

 

「ッ....あぁつれぇな.......」

 

改めて漫画やアニメの主人公はすごいと思う。今自分が経験している辛さよりももっと酷い状況で生き延びて自身の糧にしていく。一言で言えば人間じゃない。

 

1歩1歩、剣を杖にして前に進む。ここで休めばキャンサーの餌食だ。こんなことなら夜休めばよかったと今後悔しているがそんなものはもう遅い。

 

「....ッ.......」

 

孤独に勝つために出していた声はもう出すのも辛いほどに疲弊していた。その時だ。視線を下に落とした瞬間頭上を黒い影が覆う。

 

「....ッ.......おいおい....まじかよ.......嘘だろ.......」

 

目の前にはアビスノッカー.......では無い。相性の悪い自分にとってそれ以上の強敵であるニードルバードが居た。

 

「ッ....ああッ.......オラァ!来いy....」

 

その瞬間視界が飛んだ。否、自身の体が飛んだ。宙に放り出されるように凄まじい衝撃を体に受けながら。

 

....バリンッ.......

 

絶望の音が聞こえた。

 

自信を守っていたバリアが割れた。元々限界に近かった最後の砦が今壊された。

 

やばい。やばいやばいやばいやばいッ!!!

 

焦りとは裏腹に体は動かない。うつ伏せで視線だけはキャンサーに向けて懸命に体を動かそうと足掻く。剣を手繰り寄せてもう一度立ち上がろうと藻掻く。

 

「ッグッ....グオエッ....」

 

自分の体から鳴ってはいけない音が聞こえた。もう一度感じた衝撃はもちろん目の前の敵によるもの。頭に酸素が行かない。頭に酸素が行かない....考えろッ....どうする?どうする....そんな焦りで頭が塗り替えられる。疲労のせいで冷静さが失われていた。

 

「おぅ.......とうしろ.......し、れいかん....おい.......ッ....」

 

通信機に声を向けた。しかし変わらず向こうは沈黙。

 

「ここまでッ.......来たのに.......」

 

もはや体の感覚はない。そのおかげで痛みがあるであろう体を鞭打って立ち上がる。

 

『.....』

 

声を出さないこのキャンサーに恐怖を覚える。体が全快であれば取るに足らない相手。それでも今の状態では致命的だった。キャンサーが現れて地上の植生が変わり、仮に逃げれても今では何を食べれるものかもわからない状態、詰みだ。

 

終わり。そんな言葉が浮かんできた瞬間、切り札だったものを思い出す。それは蒼井が生きていた頃使えていたもの。剣は盾として....盾の盾として....

 

俺は剣で蒼井を守りたかった。

 

でも守れなかった。

 

あの日、月歌を守りながら赤い光に彼女の体が埋めつくされるのを見た時からどこか心に闇が落ちたように。

 

全ては空元気。

 

結局頑張って見たけど妹分さえ守れないダメな男で終わる。

 

でも.......最後くらい力を貸してくれよ.......なぁ.......

 

 

まもりたいんだよ.......お前は守れなかったけどお前が守ってくれた人を守りたいんだよ.......

 

お願いだ.......

 

お願いだから.......

 

 

『セラファー....リリース....』

 

 

悪あがきが今始まった。

 

 

 

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