キオクヲタドリ、交差する【亀更新】   作:だけたけ

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はい。お久しぶりの投稿になります。皆さんお元気だったでしょうか?やりたいことをやるスタイルの自由人なせいで長い間、こちらに手を入れていませんでした。という訳でですね、タイトル改修をして、【亀更新】とさせていただいてます。よろっす。

というわけで本編どぞ


15話 不可解な事象

基地内

 

「おかしい....」

 

何も無い。大きな作戦もないのにも関わらず自身の胸の中はざわめいている。これは異常だと。

 

「なんで?」

 

声に出して見るも答えはかえって来ない。こんな弱い姿誰に見せることも出来ないこともつらさに拍車をかけている。

 

胸に手を置いて少しコーヒーを口に入れる。苦味が拡がって落ち着きが戻ってくるがそれもまたすぐに塗りつぶされてしまう。

 

「失礼します。31A総員集まりました。」

「今日はまともね、茅森さん。」

「えー?司令官〜、そんなにおふざけ月歌ちゃんが恋しいですかぁ?」

「いつも通りね。」

 

ちぇっと言いながら乗り出していた体を引っこめたのを見て話を続ける。

 

「最近、キャンサーが弱くなったとの報告が相次いでいるわ。」

「なんでそんな深刻そうな顔なの?いい事じゃん。」

「....正しく言えば一部地域の個体数が減っているのよ。これを見なさい。」

 

スクリーンに映された地図には波紋が広がりながら連続的に複数点灯していく様子だった。

 

「まさか....」

「ええ、そのまさかよ。これは個体数減少の報告をまとめたもの。つまりは、」

「近づいてきてるってことか?!」

「ええ。一日に50kmほどね。気づくのが遅すぎたわ。もう目と鼻の先よ。」

 

ざっと見積もるに地図上の目測であと2日。いや、一日半というところだろう。それが分からないほど彼女らは弱くはない。証拠に皆深刻そうな顔をして地図を凝視している。

 

「でも最初の方、ドームに近かったのになんでそっちに行かなかったの.......?」

「それも含めて1度あなた達には偵察に行ってもらいます。討伐も視野に入れなさい。遠くないうちに出発するわ。」

「「「「「了解」」」」」

 

これで情報は共有できた。今のこの世界で外で活動できるのはセラフ部隊くらいだろうとは思うが、もし味方になれば.......

 

いや、何故そう思った?おかしい。外で活動できる人間なんて居ないはず。ドームだって今年でいくつ壊されたか。何故そんな思考になった?

 

「司令官、大丈夫か?」

「ッ.......ええ。それより和泉さんも準備をしなさい。」

「あ〜、まぁ、それなんですけど....」

 

痛む頭を押えていた手を下ろして目の前の少女に気持ちばかりの注意をする。しかし、普段なら真面目に聞く筈が今は何故かバツの悪そうな顔をして一向に立ち去ろうとしない。

 

「....ぇ、っと....これからもよろしくお願いします。」

 

差し出された手。たどたどしい姿を見るに別の目的があるようだ。機械に詳しいだけに油断出来ない。だが....

 

この誘い、乗るか(・・・)....

 

.......今何を考えた?やはりおかしい。どうにも自分の思考を自分でしていないかのように思える。どうしてだ?.....

 

「それ、は.......なに?」

「え?!握手ですよ!握手!」

 

上擦った声で答える彼女。もう確定みたいなものだ。遠慮しておく。そう答えようとした瞬間.....目の前の和泉さんの顔が引き締まった。

 

「....握ってください。お願いします。」

「はぁ.....こちらこそよろしッ....」

 

声が途切れた。動悸が激しい。だが同時に理解した。これは必然だと。成程。そういう事か.......

 

「今戻りました。司令官(前の司令官)....」

 

イタズラが成功した子供のような無邪気な笑みが頭に焼き付いた。

 

_________________________

 

 

「っと、おまたせ。」

「ユッキー遅い〜!先行ってるよー」

 

月歌がそのまま部屋を出ていった。あたしが戻ったばっかりなのにせわしない奴だ。

 

寮の部屋。皆はもう荷物をまとめているようだ。時間もない。自分も荷物をまとめなければ。合流すればあとは帰投するだけ。間違っても彼とは戦闘にはならないだろう。

 

「月歌に記憶を戻すのは.....彼本人がするべきだろうな....自殺って聞いてるし取り乱されたら抑えられるのは悔しいけどあいつしか居ない。」

「その口ぶり...あんたらも記憶戻ってんやな?」

「あたしは戻ってる。」

「私もよ。」

「なんのことでしょうか?」

 

....は?

 

一瞬にして物音、声。それらのものが聞こえない静寂と化した。次の瞬間、皆がタマに触ろうと体を同時に動かした瞬間、他ならぬ彼女の口から訂正が入る。

 

「ピィっ?!じ、冗談ですよ?!そんな真顔で集まっ....にぎゃあああ!一気にみんなの顔が般若にッ!!!!」

「おいタマァッ!」

「はぃいっ!」

「二度とすんな。」

「いや、本気で叱るのかよ.......」

 

とツッコんだはいいものの焦ったのはこちらも同じだ。あっちの世界にタマだけ置いていってしまったかと思うと体が勝手に動いていた。

 

「ねぇ、早くー!」

「ああ、今行くよ。」

 

外から声がかかる。どうやらずっと外で待っていたようで声からは焦れったさがにじみでていた。それに苦笑しながら物を手早くまとめてドアを開けた。

 

 

_________________________

 

 

「やっと着いた....大丈夫か?蒼井」

 

今度はドームではなく基地。俺らの接近には気付いていてもいいものだが、なぜ誰も反応しない?他のみなのことも気になるし......

 

「はい。大丈夫です....」

 

と言いつつも肩は上下していて少し汗が出ている。頑張っている蒼井可愛い....

 

あ、違う。いや、違わないけど、それでもなんかこの思考は違う。

 

「ここで待ってても巡回の部隊が来るだろ。目立つように座ってようぜ?」

「はい!あ、えっと....」

 

近くの岩場に腰を下ろした俺の足元を指差しで何かを言いたそうに視線をこちらに向ける。それを見て首を傾げてみせるとおずおずと声を出した。

 

「ムカデが.......」

「うおっ?!なんだこれ、でっか?!」

「ふふふっ.......」

「....なんだよ....」

 

そう少しムスッとして声を返すと彼女の笑みはいっそう深くなった。そして口に持って行っていたその手をこっちの頭に伸ばすと優しい手つきでこちらの頭を撫で始める。

 

「口調も変わって、少し大人らしくなって.......」

「....」

「本当に蒼井よりも弱かったのに.......」

「おい、泣くぞ.......」

 

褒められていると思ったら途端にマイナスへ。急降下の気圧のせいで頭痛くなるけど?大丈夫そう?いや、大丈夫では無いな。撫でられる頭が熱を持ったように熱い。顔は真っ赤。どうすりゃいいんだ。

 

「ふふっ、でも今は誰よりも強くなっていて、茅森さんから聞きました。強くなったのは蒼井の為だって。」

「改めて聞くとそれ、はずいな....」

「そこまで想って貰ってるなんて、女の子としては嬉しいですよ?」

「そんな恥ずかしいことよく言えるな....」

「昔は深くんが言ってくれてたんですけどね?」

「やめろ!黒歴史ッ!」

 

そうしてまた笑う。

 

本当によく笑うようになった。と言うのはいいだろうか?少し上から目線になっている気もする。だが紛れもない本音だ。これくらい許して欲しい。あとそろそろ頭撫でるの勘弁して.......

 

「ダメです。」

「声出てた?!今!」

「出てましたよ?」

 

ぉぉぉぉぉぉお!!!死にたい。頭撫でられてるの関係なく顔から火が出そうだ。戦場なのに気が緩む。

 

ザッ.......

 

音が聞こえた。きっと巡回の部隊だろう。お疲れと声をかけるために後ろをふりかえって.......

 

思考は停止した。

 

 

 

「....久しぶり。」

「は?.......」

 

目の前に、黒髪で白衣の下にセラフ部隊の制服を着た見知ったここには居ないはずの彼女がいた。

 

待て。いや、待ってくれ。夢か?

 

いや夢じゃない筈だ。なんで?なんでここに?

 

 

「あ、深くん。やっとき「待てよ。なんでいるんだお前.......」え.......?」

 

少し微笑んでこっちを見る。世界が違えばこういうことも有り得るのだろう。それでもなにか異質、なにか普通ではない。なんなんだ、この悪寒。

 

「久しぶり、お姉ちゃん」

「ッ.......」

 

隣にいた蒼井が目の前の少女に抱きつく。それでも俺は動けなかった。体は鉛のように重くなり、心臓は早鐘のように鳴っている。

 

「....久しぶり。深」

「なん、なに?、は?」

 

混乱で言葉さえも出ない。

 

目の前には、ありさが居た。あの、ありさが。死んだはずの、いや、俺の記憶では目の前で死んだはずのありさが.......今ここに。

 

「綾橋ありさ.......」

「....僕は蒼井ありさだよ?」

 

首を傾げる彼女。

 

蒼井.......お姉ちゃん.......待て待て、落ち着け。蒼井えりかをお姉ちゃんと言った。そして俺の元いた世界の記憶を持っている。つまり、セラフ隊員になる前のありさと目の前のありさが同一人物でなければ辻褄は合うんだが....

 

「やだなぁ、僕は君の命の恩人だよ?ほんとに忘れたの?」

「あ、え、いや....る、月歌との関係は....?」

「変なこと聞くね。るーたんのバンドの元ベーシスト。」

 

否定する要素がない。俺の持っている記憶と同じ。違うのは苗字と蒼井えりかを姉と呼んだことだけ。

 

いや、もうひとつある。

 

なんで驚いてない?(・・・・・・・・)

「.......」

 

ニコッと笑うだけで何も言葉を発しない。

 

ここにいること。こっちが驚いていて疑問を持たないところ。ふと考えただけでもこんなにも要素はあるのに彼女の笑みは記憶と同じで、違和感など欠けらも無い。

 

気持ち悪い。

 

違和感がないことが違和感でしかない。いつも通りという態度であることに理解が追いつかないのだ。

 

「なんなんだ.......」

「あ、ありさ。とりあえず基地まで案内して頂いてもいいですか?」

「うん。わかった。着いてきて?」

 

そう言って歩き出す彼女。頭の中がごっちゃごちゃだが頭を振ってその行き場のない思考を無理やり辞める。

 

「って言っても、もう目の前だよ?」

 

そう言って指さす先にはたしかに見覚えのある基地の姿。だがおかしい。あと少しと言ってもまだ見える距離には無いはずなのだ。なのに何故ここにあるのか....

 

「.....移転したんだ。ついこのあいだにね。」

「移転?なんでそんなリスクを....」

 

この世界では何かを建設するのにも外界ではリスクがある。周りに部隊を配置して何ヶ月も守り抜かないといけない。敷地を確保するためにまず最初に外壁を建設するとしてもそれくらいは時間がかかるし、極めつけにはキャンサー由来の素材でという鬼畜仕様。それだけでも莫大な資金と時間、労力がかかる。

 

「新たに設計する余裕はなかったから同じ形なんだって。」

「あ、ああ....」

「理由は.......」

「水の中にいるキャンサー....」

「うん。四方をどこに居ても囲まれるなら既存のキャンサーの方が対処がわかってるからって」

 

なるほど.......そういう事か。確かに最善手ではあるのだろうがいささか妙ではある。

 

「どうやって....どうやって気付いた?」

「.......?何言ってるの?」

 

心底不思議というような顔を浮かべてから表情が変わった。

 

全身の毛が立ち上がって警告を発した。

 

「あなたが教えてくれたんだよ?」

 

その黒い笑みが頭にこびりついた。




はい。あざます。こちらの投稿頻度はめちゃくちゃ遅くなるので気長にお待ちくださいませ。

今、原神の二次創作をしています。興味がある方は読んでいただけると嬉しいです。それではまた....

原神ss: https://syosetu.org/novel/357087/

2章からはどんな雰囲気が良い?

  • 蒼井とのイチャイチャ多め
  • 月歌とのイチャイチャ多め
  • 蒼井と月歌とのイチャイチャ多め
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