キオクヲタドリ、交差する【亀更新】   作:だけたけ

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はい。思いのほか3話が早く上がったので早めの投稿。ぜひ楽しんでください


3話 救出

「基地近くで高密度エネルギー反応!」

「巡回部隊は?」

 

居ないという返答を聞く司令官。顔はしかめっ面で眉間にはシワがよっていた。

 

分からないことだらけ。

 

人類が滅亡する。そんなことは皆が恐怖し、心の中で否定しきれないと考えているもの。その想像がどんどん膨らんで来る。

 

「司令官、部隊を出します。基地から10キロ圏内でここまで大きい反応が出るなんて看過できません」

「ねぇ、七瀬。これはあの光と関係があると思う?」

「....分かりません。ただそうだとすると.......」

 

その先は彼女の口からは語られなかった。だけれどそれは想像に固くなくまた司令官こと咲もそれを察していた。

 

大規模作戦になるだろう。なのに準備も出来ていない。部隊もかき集められていないし光と関係があるとすればこっちで起きた日時を見て、一日で40キロは移動していることも相まって進行速度が異常に早く、人間の速度でこっちに一直線に向かっているくらいだろう。上に掛け合っている時間もない。詰みだ。

 

「....ッ.......31A部隊を出します。」

 

想像できないほどの重さが全体重をかけて肩にのしかかる。空気も重い。そんな雰囲気のまま七瀬はマイクに向けて放送を開始した。

 

 

程なくして身なりを整えた31Aの面々が作戦室に入ってくる。

 

「司令官....」

「えぇ.......」

 

動揺が走る。今までに見た事のないようなこの基地の最高位である彼女がここまで言葉に詰まるなんてことは今までどんなに大きな作戦でもなかった。

 

「出たんだな?例の光のやつが。」

 

ユキが歯を食いしばりながら口を開いた。

 

「確証はない。ただ基地から7キロの地点でエネルギー反応が感知されたわ。」

「7キロ?!それってやばいんじゃないの?!」

「もうここまで来ててもおかしくないじゃないかッ.......」

「正直余裕はありません。ヘリを準備している時間よりも歩いて着く方が早いでしょう。31Aの皆さんには今すぐそこに向かっていただきます。討伐出来そうであればそのまま討伐。できそうでなければ発見出来次第報告、その後の行動は状況によって司令部から指示します。」

 

無謀だった。一応、光の件で出撃の準備はできているが徒歩での移動という準備は出来ていない。それをユキが抗議しようとする。だがそれを月歌がとめた。

 

「月歌ッ?!.......」

「司令官、五分で準備して門まで行きます。」

「ごめんなさい....バックアップは可能な範囲で最大限にするから。人類の命運を分ける局面よ....ほんとに、お願い....」

 

相当参っているのだろう。ただでさえ重責が重いこの役職に人類の重みも乗っかるなんて月歌には考えられなかった。

 

素の彼女を見た気がした。司令官では無いただの1人の女性を。

 

「了解。行くぞ、みんな。」

 

 

_____________________________________________

 

 

「月歌!なんであの時あたしを止めた?!」

「冷静になれ。ユッキー。」

「こんなん冷静になれるかッ!昨日まで誰が1切れのケーキを食べるか言い争ってたのに今日、いきなり人類の命運を分けるなんて言われて納得できるかッ!!!」

「ちょいちょいちょい!!言い争ってる場合か!ほんまに人類のピンチなら早く準備終わらせないとあかんやろ。」

 

肩に手をかけて月歌を問い詰めるユキの顔は冷静沈着なクールである彼女の面影はなく、冷や汗で顔を濡らしながら早口で言葉をまくし立てた。周りはそれを止めようとするが本人はそれが耳に入っていないのか止まるを知らない。

 

「出撃の準備をしていたのは私たちしかいない。しかも今まで以上に時間が無い。ここでトップの実力をもつ私達がやらないと」

「でもッ....」

「情報が無い、でも可能であれば討伐しろって言ってたし不安なのはわかる。無茶だとあたしも思う。部隊長として.......いや、友達としてそんなところにユキたちを連れていきたくは無い。」

「ッ....」

 

月歌の顔が悲痛に歪む。今、彼女は友達と世界を天秤にかけているのだろう。それはどんなに残酷なことか分からない人はここには居なかった。こんな若い歳で命の重さを知り、現実の厳しさを知った少女たちが次は自分の命を友達の命を捨てようとしている。

 

「人類のためなんて言葉は使わないし思ってもない。でも....でもここにいたままでも結局作戦が失敗したらみんな死ぬ。それだったら私達が行った方がいい。」

「ッ.......納得は出来ないけど理解はした。すまん。お前がいちばん辛いはずなのにな....」

 

やはりリーダーだった。カリスマと呼ぶにはおこがましいほどこの部隊の絆は完成されていた。

どれだけ動揺していても相手の意見に耳を傾けることが出来るユキもそうだし、自分には何も出来ないと周りにいる人はそれを適任の人に任せるという判断。これも日々磨いてきた連携と信頼というものなのかもしれない。

 

「それでどうする?」

「とりあえず歩きの準備と言っても普段とそう変わらないから、このまま荷物を部屋に取りに行ってそのまま門に集合だ。」

「えっと、カレンちゃんが.......」

「え?」

「強敵ならワシに殺させろぉぉぉ!!!!」

「うっるさ!」

 

みな、出てくるとは思っていたが予想していたよりも大きい声でみなが耳を塞ぐ。

 

「そんなことはどうでもいいんだって!ほら、みんな急いで!!」

 

そんな月歌の声を皮切りに皆が慌てて走り出す。

 

「ああ、もう!この部隊はッ!!」

 

そんなユキの声が空に消えていった。

 

_____________________________________________

 

 

 

 

 

「カッコつけたんだけどなぁ.......」

「これは....」

 

命令通り指定されたポイントに向かってみればそこにはでかいクレーター、そしてその中心に人。

 

「どういう状況?これ....」

 

人が居るなどとは考えてもいなかった。この荒廃した世界で1人の人。しかもその手元にはセラフと思しき武器が握られている。

 

「男....だよな?」

「男ですね!」

「これ、どうしたらいいのかしら....」

 

一人一人困惑を示すこの状況で戸惑いながら月歌は司令官に報告を上げた。

 

「現場に到着、大きいクレーターができてる。その中心にセラフを持った男が倒れてるんだけどどうしたらいい?」

『男....?いえ、接触をはかってみて。キャンサーの罠の可能性も否定できないから慎重にね。』

「了解」

 

なんとも想像した通りの答えだった。緊張感がいくばか薄れる。だが彼女たちはそれでもプロで警戒は解かず、クレーターをおりて行く。

 

その壁面を滑り落ちているその時間がやけに長く感じた。徐々に大きくなって行く男の呼吸で上下する背中を見て31Aの面々は内心胸をなでおろした。

 

「おーい、そこの人。大丈夫?」

「....ぅ....ぁ....」

 

うめき声とともに男はセラフを握る手に力を込めた。その行動は無意識らしく彼の意識はまだ戻っていない。

 

「おーい、もしもーし」

「そんなんで起きるわけないだろ。助けに来ました。セラフ部隊31Aの和泉ユキです。」

 

肩を揺する。すると思ったより数倍簡単に男のまぶたは開いた。

 

どこか焦点が合わない様子で周りを見渡し、状況を確認する。

 

「ぁ.......ょか....た.......」

「何言うとんねん自分。聞こえへんわ」

「おい、逢川....」

 

離れていてかろうじて聞こえるか聞こえないかの声量。それを突っ込んだめぐみにユキはしたためる。

月歌はそれを聞き取ろうと顔を男に近付けて言葉を待った。

 

「る....か.......ぉま....ぇ....がぶじ.......で.......」

 

ー月歌、お前が無事で良かったー

 

と。確かにそう言った。月歌自身、彼のことは微塵も知らないし、なぜ名前をしってるとか色々と言いたいことはあったが次の彼の行動で全ての疑問に答えが降ってくる。

 

「えっ..........」

「「「「「え?!(はぁ?!)」」」」」

 

気づけばボロボロの彼の手が月歌の頭や腰に回されて抱きしめられていた。もちろん目の前の彼の行動によるもので周りからは驚愕と困惑の声が上がる。だが月歌だけはそれどころではなかった。

 

頭に電気が走った。一瞬で思考に霧がかかり現実から意識が離れていく。視界が真っ暗になって感じるのは抱きしめられている感触だけ。

 

「な、なんだ?」

 

そんな発言もほんとに自分が発したのか分からない。なんだ、これは

 

困惑、不安、それとどこからが感じる安心感。

 

それらが入り交じり思考が停止していく。

 

頭が痛い。辛い。熱い。

 

流れ込んでくるのは映像。

 

いや、それよりもはっきりとしていた。

 

目の前の男との思い出。

 

なかったはずの記憶。

 

慕っていた虚構の思い出。

 

色あせたセピア色の記憶という世界の中で自分の体の熱さだけを感じ、今ではそれを心地いいとさえ思ってしまっている。

 

目が熱くなる。心地いい熱が目頭に集まる感覚。

 

自分が自分でなくなっていくような感覚が。違う自分が中に入ってくる。これ以上はいけないと理性は叫ぶのに体は彼を抱き締め返したいと叫んでいた。

 

《彼は死んだ。》

 

頭の中に聞き覚えのある声が聞こえた。

 

《彼は死んだ。》

 

言葉は繰り返す。

 

(嘘だ。死んでいない。私が駆けつけた時にはちゃんと息もしていた。)

 

《あたしは知ってる。死んだのを》

 

頭の中で響くその声はギンギンと頭痛のように痛む。

 

(知らない。でもあたしは見たんだ。生きてるのを)

 

《彼女も彼も死んだ。死んであたしを置いていった。》

 

何を必死になっているのだろう。彼は別に関係性もない赤の他人なのに

 

《ほんとに?あたしは知ってる。本当はもう気づいてるんでしょ?》

 

(知らない。知らないよ。そんなこと。だって、こんな.......こんなのッ....)

 

流れ込んできた記憶。それは有り得るはずのない未来。るかを守って....いや、あたしを守って死んで行ったというあるはずのない場面。

 

《それが本当に起こったっていうのを君は知ってるはず。だって.......》

 

言い淀む雰囲気があった。

 

(受け入れられない。)

《受け入れなきゃ。》

(こんなの、いきなりすぎるよ)

《でも事実だ。》

(蒼井は死んでない)

《でも、事実だ。》

(あた、しは....彼のことなんて、知らない....)

《それでも、それでもこれは事実なんだよ。》

 

否定の材料がなくなってしまった。自分ではわかっていたんだ。これは未来を見ているとかそんな大層なものではなくて。でも妄想でもなくて。理解するしかない。これが現実だったと。

 

他ならぬ自分が知っていた。知りたくなかった。けれど....

 

溶けてしまう。外聞も恥もなく泣きわめいてしまいそうになる。自分の性格なんてどうでもいいことをかなぐり捨てて。

 

今まで思ったことなどなかった。そりゃあたしも女の子だから誰かに寄りかかりたくなった時なんていくらでもある。それでも1人で立ち上がって頑張ってきた。でももうダメそうだ。

 

自分が積み上げてきたものなんてぶっ壊して目の前の男に気持ちを伝えたい。悲しかったんだよ?って。

 

親愛なんてまた別ベクトルの想いではあるが愛しいと言うことには変わりないのだから。

 

ーあぁ.......こりゃダメだ。ー

 

そこまで思考して目の前を見てみれば既に現実に帰ってきていた。だがさっきの出来事はまだ頭の中に残っている。

 

目の前のそれは、至近距離のそれは....優しげな顔で意識を落としていた。

 

遠いところにいたようだった。どこか本当に誰も知らないところに。自分しか知らないところに。

 

まだ夢見心地だ。あたしはチョロいのだろうか?少し自分に説得されたからと安易に理解して納得して。でも、それでも悪い気はしない。それどころかスッキリした気さえもする。

 

帰ってきてくれてありがとう。

 

虚ろな目で呼んだ

 

「にぃ....さん....」

 

世界が繋がった。




少し文字数が少ないのとあと予定していたシナリオより進んでしまったと言うので予定通りに行かなかった話ですね。もしかしたら今後書き足して長編にするかもです。

2話目で早くも感想が付きました。正直めちゃ嬉しいし、こんなに早く3話目あげれたのもモチベが上がりまくったって言うのも正直なところです。ってな訳でこのまま4話目も作成していきます。ストックは無いのでいつ投稿になるかはわからないですが、待っていてください
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