俺の異世界冒険譚   作:勢いでやりました

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 注意、オッタルさんは出てきません。別人です。


猪人の男

 

ニシダ・コウイチ

Lv.1

力:H153→G241

耐久:H101→H180

器用:I72→H143

敏捷:H162→G255

魔力:I0

《魔法》

【】

《スキル》

異世界人(アナザーキャラ)

・言語理解

・運命に縛られない

 

 ヘスティア様から貰ったステイタスを更新した内容が記載された用紙を見て、俺は僅かに頬をほころばせた。

 トータル300オーバー。セレナとの鍛練を始めてから成長が著しい。

 未だに新たなスキルや魔法が出てきたりはしないが、それはこれからいくらでも時間がある。たっぷり冒険して気長に待つしか無いだろう。

 

「それじゃあ行ってきます!ヘスティア様!」

 

 俺は新たにヘスティア様から頂いた『ヘスティアソード』を携えてセレナとの待ち合わせ場所へと向かった。

 

「ああ、いってらっしゃい」

 

 ヘスティアは教会から出ていく光一を見送って手を振る。

 光一が見えなくなってから己の手を握りしめ、先程のステイタスの更新した時に感じた違和感について思い返す。

 

(一瞬……新たなスキルが刻めそうな気配があった。けど、取り出そうとした瞬間に逃げられた(・・・・・)……)

 

 ステイタスの更新中、光一の中にスキルにできそうな上質な【経験値(エクセリア)】の感覚があった。

 だが、それはヘスティアが触った瞬間に手から離れていった。まるで今じゃない。まだ完成してないと言われているような……そんな不思議な感覚が手に残っていた。

 光一の力になるならそれは取り出してステイタスに刻んで上げるべきだと思う。しかし、この感覚を信じるならもう少し待った方がいい気もする。

 悩んだ結果しばらく様子を見ることにしたが、この決断が今後どう出てくるか分からない。

 

「うーん……」

 

 ヘスティアは眉間に皺を寄せて考えるが、いくら考えても答えは出てこない。

 

「光一君を信じるしか無いか……」

 

 ヘスティアはそう結論を出して、長い間バイトを休んでいたこと謝りに行くための準備をしに教会へと戻った。

 

 

 今日もまたダンジョンに潜る為にセレナと待ち合わせをしている中央広場の噴水前でヘスティア様から貰った漆黒の剣を眺めながら、セレナの到着を待っていた。

 この漆黒の剣を見たり触ったりするのが止められないほど現在の俺は浮かれていた。

 周囲の冒険者達からは剣を眺めて悦に浸る俺の様子は危険な変態を見るような目を向けられていた。当然剣に夢中な俺は気づかない。

 

「……何やってるの?」

「あっ、セレナ!おはよう」

 

 セレナは不審な様子の俺に若干引いていたが、俺は全くその様子に気づくことは無かった。

 

「おはよう。で、何やってたの?」

 

 俺の挨拶に返事を返すセレナは俺が持っている漆黒の剣に視線を落とす。

 

「へへへっ、これ、俺の主神様からのプレゼントなんだ。君のための作った特別な剣だ。って言って渡してくれてさ。ふふふっ、もう嬉しくて笑いが止まらないんだよ」

「そ、そう」

 

 俺のニヤケ顔に若干引き気味のセレナ。俺はこの剣を貰った時の話を語ってしまいたいが、それをすればダンジョン探索に行く時間が減ってしまうので自重する。

 

「今日も七階層に行くの?俺はステイタスも更新してもらったし、新しい剣もプレゼントしてもらったから更に下に降りても構わないけど」

 

 俺はセレナに今日の予定を聞く。ステイタスが大幅に上がったこととヘスティアソードの存在で完全に慢心して調子に乗っていた。

 その様子を見たセレナはムッと表情を怒りに歪める。

 

「慢心しちゃダメ!ダンジョンは凄く危険な所なんだよ!どれだけ自分が強くなったとしても絶対に油断なんかしちゃったらダメなんだから!」

「ご、こめん」

 

 物凄い剣幕のセレナに俺は素直に謝って、冷静さを取り戻した。

 セレナは至極正しいことを言っている。ダンジョンはモンスターの蔓延る巨大な巣である。そんな敵陣の中で自惚れるなんて傲慢にも程があるだろう。

 俺は自分の両頬を叩いて気合を入れ直す。

 

「よし、もう大丈夫。油断なんかしない!」

「……自分に自身を持つことは大事だけど、油断だけは絶対やらないでね。光一が死んじゃったら私、悲しいから」

「っ、本当にごめん!」

 

 セレナに不安げな表情をさせてしまったことに罪悪感を抱く。もう一度、真剣に頭を下げで謝った。

 

「もういいよ。ちゃんと分かってくれたなら許すよ」

「ありがとう、セレナ」

 

 セレナは頭を下げる光一を許して頭を上げさせる。

 俺は自身の驕りを完全に反省し、ダンジョン探索に臨んだ。

 

 

『ギィシャアアア!』

「ふっ!」

『ビィギィイイイ!』

「やっ!」

 

 地面や壁を這って迫ってくる巨蟻が群れをなして俺達に鋭い爪を振りかざす。

 今回はセレナと二人で協力してキラーアントを狩っていた。

 今後八階層以下に潜るなら二人で力を合わせる事は必須だ。その為に連携した動きを練習しておく必要があるんじゃないかと俺が提案した。

 セレナは少し悩んだ末に頷いて、以前と同じようにキラーアントを一匹半殺しにして大群を呼び寄せて連戦していた。

 二人で連携して動くのはかなり難しかった。個人個人で戦うのと、息を合わせて二人で戦うのは今までと違ってよりお互いを意識しながら剣を振るわなくてはならない。

 離れ過ぎず、近づき過ぎない。

 俺もそうだが、セレナも誰かとの協力して戦闘することなんてしたこと無かった。

 だから、所々連携が上手くいかず、逆に相手の足を引っ張ってしまう事も多々あった。

 それでも、キラーアントの群れを処理できているのは上手く行かない部分もあれど、しっかり連携し合える時もあるからだろう。

 セレナとの一対一の鍛練で散々技を見てきたのだ。何となくの勘で彼女ならこう動くだろうと感じることができる。

 

『ギギィ!?』

「「はっ!」」

 

 完全に息が合い。最後に二人で同じ目標に剣を振り、斜め十字斬りにキラーアントを斬り裂いた。

 内心で今の凄く格好良くねと興奮していると、セレナは半殺しにしていたキラーアントに止めを刺していた。

 

「休憩しよっか」

「そうだな」

 

 ルームの中も灰と魔石とドロップアイテムで埋まってしまったのでダンジョンの壁を傷つけて休憩に入る。

 いつ見ても不思議に思うのだが、ダンジョンでモンスターが灰に変わると、灰はいつの間にか綺麗さっぱり消えている。

 何故だろうとセレナに聞いても、セレナも良く知らず、そういうもの何じゃないかと納得していた。俺も特に興味があったわけではないので、ふーんと言って終わらせた。

 

 ……コツコツコツコツ

 

 魔石とドロップアイテムを回収していると、前方の道から誰かがやって来る足音が聞こえた。

 ここは七階層だから、他の冒険者と鉢合わせになることはよくあることだ。

 別々の冒険者同士が出会ったら基本はお互い不干渉が当たり前である。

 だから俺達もそのまま無視して魔石とドロップアイテムの回収作業を続けようとしていたら、その前方から現れた人物にセレナが目をを見開き固まった。

 

「……ギュリオスっ!」

「久しぶりだな雑魚」

 

 小さな獣耳を生やした赤い髪の巨漢。巨大なバトルアックスを所持しており、その鍛え上げた筋肉を見せつけるかのように、上半身裸のヤバそうな猪人(ボアズ)だ。

 ダンまち世界で最強の冒険者である猛者オッタルと同じくらいの肉体を持ち、見たこともない両刃の斧は俺達を威圧する。

 セレナの知り合いっぽいが、見るからに良くない関係みたいだ。

 警戒心を剥き出しにするセレナは耳や尻尾の毛が逆立っている。

 

「なに、しに来たの……」

「おいおい、ただ偶然ダンジョンの中でかち合っただけだろ?そんな警戒すんなよ雑魚」

「くっ、だったら早く行けば」

「なんだよ、ビビってんのか?ククッ膝が震えてるぞ?」

 

 ギュリオスはセレナを嘲り笑う。普段のセレナの姿からは想像できないが、ギュリオスと呼ばれた男の言った通り、セレナの膝が震えて、咄嗟に構えた剣も僅かに振動していた。俺はセレナの怯えている様子にただ事じゃないと感じた。

 

「止めろよ!」

 

 俺はセレナの前に立ってギュリオスを真正面から睨む。

 

「ああ?何だお前?」

 

 ギュリオスの圧倒的な威圧感に尻込みしそうになるが、冷や汗を流しながらも、俺はギュリオスを睨むことをやめなかった。

 

「俺は、セレナの仲間だ!」

「仲間?その雑魚のか?」

「セレナは雑魚なんかじゃない!」

 

 俺は目の前のギュリオスに対して怒りが込み上げてきた。

 セレナは物凄く強い。俺はセレナを侮辱されるのを耐えることはできなかった。

 

「ふんっ」

「おごっ!?」

「光一!」

 

 気づいた時には俺はダンジョンの壁に叩きつけられていた。

 ギュリオスが殴ってきたと分かった瞬間には腹に拳を食い込まされて、ぶっ飛ばされた。

 

「げほっ!がはっ、はぁはぁ!」

 

 地面に倒れ伏し、肺から一気に空気がなくなって、必死に噎せ返る。僅かに血を吐き出して、全身から感じる激痛に涙を滲ませる。

 

「光一っ!大丈夫っ!?」

 

 無様に蹲り、醜態を晒す俺にセレナが血の気を引いた様子で駆け寄る。

 今まで感じたことがないほどの苦痛に苛まれながらぼやける視界が定まっていく。

 心配そうに涙を流すセレナが小鞄からポーションを取り出して俺に飲ませようとゆっくり試験管を口に近づけた。

 

「プッ、ガハハハハハハ!雑魚の仲間は雑魚だったか!まあ、当然のことか!ガハハハハハハ!」

 

 ギュリオスの嘲り声が響き渡るが、今の俺はそんなことに構う余裕なんてなかった。

 セレナから受け取ったポーションを一気に飲み干して、身体の痛みが引いていくことにホッとする。

 まだ少し痛みが残るが、立てるくらいに回復した俺は未だ涙ぐむセレナの肩を掴んで後ろへ隠すように前に出た。

 

「ああ?何やってんだテメェ?」

「俺のことはいくらでも笑え。俺が雑魚なのは自分が一番良くわかってる。でも、セレナは雑魚じゃない!セレナはお前なんかより強い!」

「……カスが、どうやら頭の中まで雑魚みたいだな?先輩として教育してやるよ」

 

 ギュリオスはバトルアックスを片手で構えると、腰を落として俺に対して攻撃を仕掛ける。

 パワーもスピードも段違いだ。俺はこの世界に来て初めての自分の明確な死を感じた。

 

ドカンッ!!

 

 とギュリオスの攻撃はダンジョンの壁に当たった(・・・・・・・・・・・・)

 咄嗟にセレナが俺に抱きついてギュリオスの攻撃を避けさせたのだ。

 

「チッ、雑魚が邪魔しやがって!」

「ごめんなさい!貴方には逆らわないから!見逃してください!」

「セ、レナ……」

 

 苛つくギュリオスに向かって頭を下げるセレナの身体はカタカタと震えており、目尻には涙が浮かんでいた。

 初めて見るセレナの姿に俺は動揺を隠せなかった。

 

「……見逃してほしいなら、分かるよな?」

「……今日稼いだ分です」

「ふんっ、良いだろう」

 

 ギュリオスはセレナから魔石やドロップアイテムが入った袋を奪い取り、中身を確認してポケットに仕舞った。

 俺はそれを呆然と眺めていたら、ギュリオスがセレナに向かって唾を吐きつけた。

 

「お前っ!」

「やめてっ!」

 

 俺は自分がさっきどのようにしてやられたのかを怒りで忘れ、ダンジョンの奥へと歩くギュリオスに向かって飛びかかろうとした所をセレナに腕を捕まれ止められる。

 

「……ごめん。ごめんなさい」

「あ……」

 

 セレナは泣いていた。顔をクシャクシャにして、泣いて俺に謝っていた。

 俺は何も言うことができなかった。ただ呆然と泣き続けるセレナを見つめるしかなかった。

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