俺の異世界冒険譚 作:勢いでやりました
「おいっ!地下の牢獄で脱獄したやつが現れたぞ!」
「なんだとっ!」
「探せ!まだこの施設内にいるはずだ!」
バタバタと【ガネーシャ・ファミリア】の団員達が慌ただしく廊下を走る。
地下に囚えていた犯罪者が脱獄したことに義憤に駆られ、団員達は血眼になってその脱獄犯を探し出す。
「「……」」
その様子を柱の陰から聞いていた俺達は団員達が走り去るのを待ってから静かに顔を出して誰もいないことを確認する。
「いねぇな」
「……」
オルドが前後方に人の影が無いことを確かめて柱の陰から出る。
後から顔を青くして引き攣らせた俺がのっそりと出てくる。
「どうしたんだ?腹でも痛いのか?」
そんな様子の俺に気づいたオルドが尋ねてくるが、俺は冷静に考えた今の状況の深刻さに吐きそうになる。
セレナを助けに行くためとはいえ、脱獄するのは不味かったんじゃないかと今更思っていた。
冤罪とはいえ、見回りの人を気絶させ、鍵を奪い、牢屋を出て逃げ出そうとしている紛うことなき脱獄囚だ。
これ、セレナを助けれたとしても俺の身は危ういのでは?
「な、なんでもない」
取り敢えず今はセレナを助ける事だけに集中したい。未来のことは未来の自分へ
「それにしても、ここがギルド直下の留置所じゃなくて良かったな」
「そうなの?」
「ああ、俺も行ったこと無いが、あそこに入れられれば万が一にも脱獄なんてできない。なにせステイタスを強制的に封印される」
オルドは「ここに入れられたのは幸運だったな」と言いながら曲がり角の先を頭だけ出して確認する。
「不味いな。出入り口に四人もいやがる。俺の知ってる限り
「どうする?」
俺もオルドが見ている方向を覗いてみると、像の面を被った男女が四人出入り口で待機しているのが見えた。このまま行けば確実に見つかって捕まるだろう。
四人全員が何処かに行くまで待機するわけにはいかない。俺には時間が無いし、そんな事していれば後ろから誰かやって来る可能性がある。
別の出入り口を探すにしても、この留置所の内装なんて知らないし、ここまで折角誰にも見つからず来れたチャンスが無駄になる。窓には全て鉄格子が施され、出ることなんてできない。
必死に頭を回転させて何か良い案が浮かばないか考えるが、二人で脱出することは難しい。
そして、それはオルドも良く分かっていた。
「俺が囮になってやる」
「は?でも、それじゃあオルドがっ!」
「俺はこう見えてランクアップ間近のステイタスを持ってる。お前よりは十分逃げ切れる可能性がある」
確かにオルドの言う通り、今現在の俺のステイタスはいいとこG評価。一撃で見回りを倒す業からして俺よりもステイタスが高いのは明らかだ。
だが、盗人とはいえ、脱獄の手伝いをしてくれて、更には魔剣までプレゼントしてくれたオルドの事を見捨てることなんてできなかった。
それに、オルドは優しい。とてもじゃないが、あんな地下牢に入れられる人物とは思えない。なにか事情があるはずだと俺は思っている。
「別の方法を考えよう。もし失敗してオルドが捕まったらもっと酷いことになる」
「なんだ?俺の心配してんのか?」
「当たり前だ。まだ会って間もないけど、オルドは良いやつだ」
オルドはポカンとした顔をするが、直ぐにフッと笑って年下の弟を撫でるように俺の頭をぐしゃぐしゃに撫で回した。
「アホか。俺は泥棒だ。悪いやつに決まってる。それよりお前は俺よりも恋人を心配しとけ」
「い、いやだからセレナはまだ恋人じゃ……」
「チャンスは一回だけだからな。……お前は絶対助けろよ」
「あっ!」
オルドは俺が止める前に出入り口にいる四人に向かって駆け出した。
「オラオラっ!そこをどけぇ!」
「なっ!」
「脱獄囚かっ!」
「捕まえろ!」
オルドは槍を構えた男を蹴り飛ばし、反対側から襲ってきた女の手を掴んで投げ飛ばす。
「あばよ!シャバの空気は最高だぜ!」
「うぐっ!待て!」
「クソっ!追いかけるぞ!」
「お前はハシャーナさんに知らせろ!」
「わ、わかった!」
オルドがダンジョンと反対の方向へ逃げた行く。その後を追いかける三人の【ガネーシャ・ファミリア】の団員達。
そして、俺の存在に気づかず横を通り過ぎていった団員を見て、俺はオルドに感謝しながら、ダンジョンのある方向へ走っていった。
(オルド、ごめん。ありがとう!)
●
冒険者達の喧騒で賑わうメインストリート。楽器を鳴らし歌を奏でるエルフや酒を互いにかけ合うドワーフ、美味い食事にありつき舌鼓を打つヒューマン等、色んな人が笑い合っていた。
そして、そこに二人組の若い女性の冒険者が自分達のホームに帰るために歩を進めていた。
「ううっ、大分遅くなっちゃいましたね。帰ったらリヴェリア様に怒られちゃいます……」
そう涙目に語るのは山吹色の長い髪を後ろでまとめ、尖った耳をへにゃりと垂れ下げた
「うっ、ごめん」
そして、小声で謝ったのはその隣を歩く金髪金眼のヒューマンの少女だった。
身に着けている蒼色の軽装は所々傷が付いており、今までダンジョンに潜っていたことが伺える。
「い、いえ!アイズさんのせいじゃありません!私がしっかり時間を確認していればっ!」
「ううん。私も下層まで行こうって言ったから……」
二人はお互いに自分のせいだと謝り合う。
今回二人は少なくなってきたお金を稼ぐ為に17階層の嘆きの大壁に出現する
そこでつい夢中になってしまい、時間を忘れ、今の今までずっと下層でモンスターを狩っていたわけだ。
現在はギルドで換金も終え、二人でホームである『黄昏の館』へ帰還途中だった。
「いえいえ、私が……」
「ううん、私が……」
「いえいえいえ!アイズさんが悪いなんてこと天地がひっくり返ってもありえませんから!」
「そ、そう」
レフィーヤの剣幕に圧されてついにアイズが折れる。
「大丈夫です!リヴェリア様には私のせいだとちゃんと言っておきますのでアイズさんは気にしないで下さい!」
「う、うん……」
レフィーヤは笑顔でそう言ったが、アイズは罪悪感で胸がチクチクと傷んでいた。
アイズが顔をしゅんとさせて下を向いて余所見していると……
ドンッ
「す、すいませんっ!」
と前方から走って来た黒髪黒目の青年に気づかず、お互いの肩をぶつけ合った。
だが、よろめいたのは青年だけでアイズは蚊に刺されたかのようにビクともしなかった。
青年は謝った後、直ぐにダンジョンの方角へ走って去って行った。
「なっ!アイズさんになんて失礼なっ!」
その様子を隣で見ていたレフィーヤは怒り心頭で、走って行く青年を親の仇を見るかのように睨みつけていた。
「レフィーヤ、大丈夫だから」
今すぐにでも追いかけて殴りかかろうとするレフィーヤの腕を掴むアイズは落ち着いてと必死に宥める。
見た感じあの青年はLv.1。魔導士とはいえLv.3のレフィーヤが殴ればただでは済まない。
レフィーヤはアイズの説得もあり、不満気だが、なんとか気持ちを鎮めた。
「あのヒューマン、今度あったらたたじゃおきませんっ!」
撤回。全然怒ったままだった。
アイズと並んで歩いていることに楽しげだったレフィーヤのテンションはあの青年のせいで台無しだった。
アイズはまた怒って追い駆けられたら困るので、レフィーヤの手を握って一緒に帰ろうと伝える。
レフィーヤはアイズに手を握られて感情が爆発し、一瞬で青年のことなど吹き飛んだ。
「行こ」
「はいっ!アイズさん!」
暫く歩くと、前方で
普通なら怪しい変態集団かと思うが、彼らはオラリオの安全を守る【ガネーシャ・ファミリア】でアイズ達もよく知るファミリアだった。
「何かあったんですかね」
「……」
「……囚人……脱獄」
「どっち……」
「…………らん」
囚人やら脱獄やら不穏な言葉が聞こえてくる。
すると、一人の男がアイズ達に気づいてこちらへ向かってきた。
「すまない。少し良いだろうか?」
「何かあったんですか?」
「実はここで捕まえていた囚人が二名、脱獄したようでな。俺が警備を担当していたのだが、野暮用で不在の間に逃げられたみたいなんだ」
他の団員と違い、仮面を被らず無精髭を生やした褐色肌の男はしくったと己の失態に頭を掻いて自分を責めていた。
「脱獄……どんな人達なんですか?」
何か力になれるかもしれないと義心を持ったレフィーヤは男に尋ねた。
「茶髪で頬に傷があって背はそれなりに高いが細身のハーフドワーフの男と黒髪黒目の極東出身ぽいヒューマンの青年なんだが、知らないか?」
「それって!」
「さっきの子……」
「知ってるのか!?」
「はいっ!黒髪黒目のヒューマンならさっき無礼にもアイズさんにぶつかってそのままダンジョンの方に逃げて行きました!」
レフィーヤとアイズは先程ぶつかった青年を思い出して目の前の男にダンジョンの方へ逃げたことを伝える。
レフィーヤは怒りが再燃し、とんでもない悪いヒューマンだと歯を食いしばってグギギと音を鳴らしていた。
「情報提供ありがとう!」
男はそう言ってダンジョンに向けて走って行く。
「アイズさん!私達も行きましょう!今度こそあのヒューマンに痛い目を見せてやります!」
「え、あっ、レフィーヤ!」
レフィーヤはホームに帰るということも忘れ、憤慨しながらダンジョンに逆戻りする。
アイズはどうしようと一瞬悩んだが、レフィーヤを一人にすることはできないと、レフィーヤの後を追いかけた。
ようやく原作キャラを出せるようになってきた。もっと早めに出す予定だったのに出すタイミングが分からずここに来てようやく……
勢いだけじゃ小説を書くのは難しいですね。
とりあえず区切りの良いところまではこのまま行きます。その後、拙いかと思いますがしっかり考えてから書いて投稿していきます