俺の異世界冒険譚   作:勢いでやりました

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 二日目です。一応勢いはまだ続いてます。


ステイタス

 

  『ダンジョンに出会いを求めるのは間違ってるだろうか?』の世界に転移して早くも半月もの時間がたった。

 路地裏で暴徒に襲われていた所をヘスティア様に助けてもらい、その場でファミリアに勧誘されてから、まずはヘスティア様が今お世話になっているヘファイストス様の所に行って報告した。

 その後、ヘファイストス様に拠点となる原作でヘスティア様とベル君が住んでいた廃教会を紹介された。そして、神の恩恵(ファルナ)を刻んでもらい、俺はギルドで冒険者登録し、毎日ダンジョンに通っていた。

 

「グルルッ!!」

「ふんっ!」

 

 鋭い牙に鋭い爪、殺気を滲ませた赤い瞳、灰色の毛に覆われた人間と同じくらいの怪物コボルト。

 犬のような顔をしたコボルトは光一に向けてその長く伸びた爪を振るうが、何度も同じ怪物と戦ってきた光一は剣で弾く。

 

「ガアアアッ!」

「ふっ!」

 

 今度は自慢の牙で噛み砕いてやろうと光一に飛びついて来たが、光一は落ち着いてそれを避ける。

 

「ここだ!」

「ギャイン!?」

 

 そして、隙を見せたコボルトに向かって思いっきり剣を叩きつける。

 毛皮を切り裂き血飛沫をあげ、悲鳴を上げる。

 チャンスだ!

 大きく仰け反り、体制を崩したコボルトに向かって一気に突撃する。

 

「はぁあああっ!」

 

 右、左、右と交互に剣を振るい、ザシュザシュとコボルトの身体に大きな傷が刻まれて行く。

 

「グオッ!」

 

 自身の敗北を悟ったコボルトは力を振り絞り光一に背を見せて一目散に逃げようとするが、それは悪手だ。

 光一は疾駆した。

 

「トドメだ!」

 

 背を見せ、隙だらけのコボルトの背中に剣を突き立てる。

 コボルトの体内で硬い何かが砕ける感触がした。

 胸から剣を生やし串刺しにされたコボルトは目から光を失い灰に還った。

 

「……よし」

 

 ダンジョン四階層。周囲に他にモンスターがいないか確認し、俺は綺麗に半分に割れた魔石を拾い、腰に下げていた小袋に入れる。

 本来ならあまり魔石を傷つけたくないが、俺の実力だとそんな余裕はない。そもそも戦いなんてまだ半月しか経験してない。平和な現代で暮らしていたのだ。初めの頃はモンスターを殺すことにも抵抗があった。

 

「はぁ、俺強くなれてんのかな……」

 

 ヘスティア様に恩恵を与えられステイタスという目に見える形で成長しているのは分かるが、力は強くなっても技術がてんで駄目だ。

 兎に角剣を振ってモンスターにぶつける。俺の剣技は所詮チャンバラとなんの変わりもなかった。

 

「せめて教えてくれる人がいればなぁ……」

 

 そう言うが、そんな宛などどこにもなかった。何せ光一は日本からやってきた異世界人でこの世界の住人の知り合いなんてヘスティア様とヘスティア様の友神であるヘファイストス様くらいだ。そして、ヘスティア様も剣を教えてくれそうな知り合いはオラリオはにいないし、ヘファイストス様に頼むわけにもいかない。

 俺が一から剣を振って行くしか無いのだ。

 俺ははぁとため息をつき、ぼやきながらダンジョンから帰るため帰路についた。

 

 ●

 

 ギルドで魔石を換金し、手に入れた3000ヴァリスを財布に入れて夕暮れの光に照らされる中、光一は人気のない路地裏はと入り、道を真っ直ぐ進み、目の前の廃教会へと辿り着く。

 鉄格子の柵が折れ曲がり、雑草が生い茂り、壁の石材は剥がれ落ちたその風貌はかなりの年月が経っていることが伺える。

 扉もボロボロで強く叩けば簡単に外れてしまいそうだ。

 俺は正面の玄関を潜り、教会の中へと入る。屋内もかなりボロボロで、壁や床には蔦や草が隙間から繁茂している。天井も穴が空いて、そこから日差しが差し込んでいた。

 俺は更に奥へと進み、地下へと続く階段を降りていく。

 そして、下まで降りた先にある小さな扉を開いて中へと入った。

 

「ただいま」

 

 まるで実家に帰ってきたかのように声を放つと、部屋の中に一つしか無いベットの上でゴロゴロしていたヘスティア様がバッと起き上がる。

 

「お帰り光一君!」

 

 まるで小さな童女のように走り寄るヘスティア様は笑顔で俺を迎え入れる。

 

「今日もまぁまぁ稼げましたよ」

「うんうん、それは良かった。けど、一番良かったのは君が今日も元気な様子で帰ってきてくれた事さ。君はボクにとって最初の眷属なんだ。君に死なれたらボクはショックで立ち直れなくなってしまうよ」

 

 本当に心配してくれているヘスティア様に心が温かくなる。こんな優しい神様に拾ってもらえた俺はかなり幸運なのかもしれない。

 ヘスティア様が一生懸命背伸びして俺の頭を撫でてくれる様子を少し可愛いと思ってしまう。

 

「大丈夫ですよ。ヘスティア様が悲しむことはありませんから」

「それは君が言った本来の歴史で出会うボクの眷属がいるからってことかい?」

 

 ヘスティア様は少しむくれた表情で俺に聞く。

 俺は恩恵を刻まれてヘスティア様に全てを打ち明けた。

 俺が異世界から来たこと、この世界が本の中の世界だと言う事、そして、ヘスティア様に本来の最初の眷属がいることを包み隠さず伝えた。

 最初は隠し通そうと思っていたが、恩恵を刻んだことでヘスティア様に俺がこの世界の住人では無いことに気づかれ、嘘をつくわけにもいかないし、ヘスティア様が信頼できる神であることは知っていたからだ。

 

「ええ、俺が万が一死んでもヘスティア様が路頭に迷うことは……」

「光一君」

 

 ヘスティア様は少しだけ怒気を表し、小さな子供を大人が論すかのように告げる。

 

「あの時言った君の言葉に嘘はなかった。未来でボクは君の言う優しくて素晴らしい子供に出会うんだろう。けれど、この(・・)ボクが最初に出会ったのは他でもない君なんだ。君がボクの最初の眷属なんだ。ボクは君が死んだら悲しいよ」

「……ヘスティア様」

 

 ヘスティア様の真っ直ぐな瞳に俺はそれ以上何も言えなくなる。

 そして、ヘスティア様はニコリと俺に笑いかける。

 

「さぁさぁ暗い話は止めようぜ!それよりも一緒にご飯を食べよう!」

「……はいっ!」

 

 ヘスティア様はそう言って、キッチンの方へ走っていった。

 俺は帯剣していた剣を壁に立てかけて二つあるソファーの片方に座り、キッチンから両手で紙袋を抱えたヘスティア様がテーブルの上にどーんとそれを置く。

 

「じゃーん!これを見ると良い!」

「これは!」

「そう!ジャガ丸くんだ!露店で余ったジャガ丸くんを頂戴したんだ!今日の夕飯はジャガ丸くんパーティだぜ?」

 

 ダンまちの名物と言えるジャガ丸くん。最初はただのコロッケかと思いきや、これがとんでもなく美味しかった。

 食レポなんて高等なことは出来ないが、原作キャラのアイズ・ヴァレンシュタインが気に入っていたのも納得だ。

 

 俺とヘスティア様は紙袋の入ったジャガ丸くんを頬張り、ものの数分で満杯に入っていたジャガ丸くんが空っぽになってしまった。

 あっという間にジャガ丸くんを食べ終えた俺はお茶で喉を麗してベットに腰掛ける。

 

「さて、夕食を食べてお腹いっぱいになったことだし、今日も君の【ステイタス】を更新しようか!」

「お願いします!」

 

 俺は上着を脱ぎ捨てて上半身半裸となり、ベットにうつ伏せになる。

 ヘスティア様が俺の腰の上に跨り、俺の背中、恩恵(ファルナ)が刻まれている所を指でなぞる。

 そして、用意していた針を指先にちょんと刺して、滲み出る血を俺の背中へと落とす。

 

「改めて見ると君って着痩せするタイプなのかな?服を着ているとヒョロヒョロに見えるのに、中身は案外筋肉質だね」

「まあ、小学校……六歳の頃からスポーツをやっていて走り込みや筋トレはほぼ毎日やってましたからね。高校に入ってから自分に才能がないってことを突きつけられてスポーツは止めたんですけどね……」

 

 ヘスティア様が俺の背中をなぞって【ステイタス】の更新作業をしている間にも何気ない会話をする。

 この世界に来る前はサッカー部に所属していたが、高校に入ってから自分にサッカーの才能が無い事を悟り、サッカー部を速攻で退部し帰宅部になっていた。それでも習慣になっていた走り込みや筋トレはやり続けていた。

 戦闘経験が無いのにまともにモンスターとやり合えるのはこのお陰だろう。

 

「そっか、でも君なら必ず自分の得意なことが見つかるよ!そのスポーツが駄目だったとしても他にもスポーツはあるんだし、スポーツ以外にもやれることは沢山あるんだからね!」

「ははは、ありがとうございます。ヘスティア様が応援してくれるなら頑張れる気がします」

 

 ヘスティア様の言葉に少し元気をもらった俺はうつ伏せのまま顔だけ振り返り、ヘスティア様に微笑みかける。

 ヘスティア様はニカッと笑い返してくれた。

 

「はいっ、終わり!ボクは君の味方さ、何かあったら何でも相談してくれよ!」

「はいっ!」

 

 ヘスティア様が俺の上から離れ、俺は脱いだ服を着直し、ヘスティア様が紙に書き写した【ステイタス】を受け取ってそれに視線を落とした。

 

ニシダ・コウイチ

Lv.1

力:H120→H127

耐久:I63→I65

器用:I59→I60

敏捷:H136→H142

魔力:I0

《魔法》

【】

《スキル》

異世界人(アナザーキャラ)

・言語理解

・運命に縛られない

 

 用紙に刻まれている文字に少しだけため息が出た。

 期待していなかったわけじゃない。異世界転移したのだからチート見たいのがあって一気にステイタスが上昇して直ぐにランクアップする。そんな二次創作主人公のような事が自分にもと思わないことはなかったが現実は非常である。 

 目標はベル君が来る半年以内にLv.2になる事だったが、もうちょっと頑張らないといけないだろう。

 唯一刻まれているスキルは多分異世界転移した人間ならデフォルトで付くものだろうし、俺本来のスキルとは言えない。

 肩を落とす俺にヘスティア様はよしよしと頭を撫でる。

 

「大丈夫さ。ちゃんと強くなってる。ゆっくりでいいんだ。未来を知る君にとっては難しい事かもしれないけど、地道に頑張って行こう。何度も言うけどボクは君の事を応援してる」

「……ありがとうございます。ヘスティア様」

 

 俺は【ステイタス】が刻まれた用紙を暖炉へ投げ捨ててダンジョンで汚れた身体を洗うためにシャワーを浴びに部屋から出ていった。

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