俺の異世界冒険譚 作:勢いでやりました
ギュリオスは身体中切り傷だらけ、雷で焼かれた跡も残ってる。身に着けていた装備も破れ、砕け、傷だらけになっても二本の足でしっかりと佇んでいた。
俺は繰り返し続く鈍痛に苦しみながらも、震える身体で立ち上がろうとするが、手にも足にも全く力が入らなかった。
「ふんっ!」
「アガァアアアアアアアアアッ!!?」
必死に藻掻く俺にギュリオスは歩いて近づき、虫を踏み潰すかのように俺の腹の上に足を置いた。
口から血を吐く。
涙が溢れる。
痛みで汗が止まらない。
ギュリオスの足を退かそうとまだ動く腕を伸ばすが、重い岩のようにその足は動かない。
「フンッ!」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
乗せられていた足に力を込められて、腹の肉が陥没する。
血を溺れそうになるほど吐き出して、絶叫を奏でる。
足を少し動かされただけで、肉を抉られたと勘違いしそうな程の痛みが襲い掛かり、その度に悲鳴と涙を流す。
「散々やってくれたなぁ?雑魚がッ!」
「ヴゥッ!?」
ギュリオスが俺に顔を近づけて、剛腕を振り上げ、叩き落とす。
一撃で鼻が潰れ、だらだらと鼻血が流れた。後頭部からも生暖かい感触がある。ダンジョンの地面を血で赤く染める。
ギュリオスが俺の首を掴んで立ち上がる。
俺は息が詰まりそうに成りながらも、手を振り払おうとするが、身体に力が入らず抵抗できない。
「見ろ!テメェのせいで俺様の身体は傷だらけ、装備はボロボロ、武器も壊れちまった!大損だッ!」
良く見れば後方に砕け散ったバトルアックスの柄が残っているが、俺にそんな事を確認する余裕なんてなかった。
対するギュリオスは表情こそ怒っているが、先程のような獣性は収まっていた。
「ただの雑魚一匹殺すだけの依頼が、テメェのせいでマイナスだッ!」
「ぐっ……あっ……」
掴まれた首が締り、息が苦しくなる。
頭の中は既に苦しい、痛い等以外考えていなかった。
浅く開かれた口が獰猛な笑みを浮かべる。
「だが、テメェらのその絶望したような顔を見れて少しは満足だ。調子に乗るガキを躾けるのは愉快で楽しいからな」
僅かに視界の端に映るセレナは俺が助けに来た時の死の瞬間の時よりも顔を青くして絶望したように顔から表情が消え失せて、眼光がなくなり、マリンブルーの瞳は漆黒へと変わっていた。
「テメェに良いことを教えてやる。俺様は力と耐久は器用と敏捷の倍以上あるんだ。その数値は900以上。つまりS評価なんだよ。同じLv.1でもテメェと俺じゃあ、天と地程の差があるんだ。
「ゔあッ!」
パッと手を離されて地面に受け身も取れず落ちる俺はこんな小さな衝撃にも耐えられず呻き声を上げる。
Lvの低い冒険者はLvの高い冒険者に勝てないように、それはアビリティの数値でも変わらない。
アビリティが全てギュリオスより低く、大したスキルも魔法もない俺が勝てる可能性なんて最初から1%以下しか無かった。ヘスティアソードと雷の魔剣を持ってしても、確率がちょっと上がる程度で、ずっとギュリオスの勝率の方が高かった。
俺はその何十分の一、何百分の一、何千分の一の確率にかけて敗北した。
「お姫様を助けに行く英雄にでもなったと思ったか?アホか!テメェはせいぜい
その通りだと思ってしまった。
ずっと状況に振り回されて、感情のままに動いて、助けられ、騙させれ、また助けられる俺はちっとも英雄になんて相応しくない。
アホか、
急に強い敵に勝てるようになる?なるかボケ、
強い武器を手に入れて俺最強?強いのは武器であってお前じゃないだろ。
本当にあの時俺は必死だったのか?状況に酔って、自分が主人公にでもなったかのように思えて、全部上手くいくなんて妄想して、楽しんでいなかったか?
全部偽物だったんじゃないか?
強くなりたい?英雄になりたい?本当にそう思ってるのか?
「テメェは英雄じゃねぇ、ただの雑魚だ」
「あ……」
ポキッ
心が折れる音がした。
もう何も考えられない。
俺は弱い。どうしようもなく弱い雑魚だった。
だから、もう良いや。
諦めよう-------
『これから先、君が何度卑屈になったってその度にボクは君に伝えよう。君は特別だって』
俺がそう結論付けた瞬間、背中が熱くなった気がした。
『ボクは君が死んだら悲しいよ』
『ボクは君の事を応援してる』
『ボクは君の
(ヘスティア様……)
俺を支えてくれていた言葉を思い出す。
ヘスティア様はずっと俺を信じていてくれた。こんな弱い俺を想っていてくれた。
『……俺、この剣に誓います。必ずこの剣に相応しい使い手になるって』
この想いは嘘なんかじゃない。
涙を流しているセレナが目に入る。
『私も英雄になりたい』
『よろしくね光一』
『えっと、大丈夫ですか?』
セレナが浮かべてくれた表情にドキリとした。
『君のことが好きだから助けたいんだ!』
この恋も嘘なんかじゃない。
胸が熱くなった。
最初に言ったじゃないか、好きだから助けるんだって、単純だ。
ポーチから割れてないポーションを全て取り出して素早く自分に振りかける。
全回復はしない。傷がひどすぎる。でも動けなくはなかった。
「どうやらもっと痛めつけられてぇようだな?」
ふらふらになりながら立ち上がり、ヘスティアソードを握り締める俺に、ギュリオスは冷酷な眼差しを向ける。
このまま倒れていた方が楽に死ねたかもしれない。
けれど、ヘスティア様とセレナを思い出して、生きたいと、諦めたくないと思ってしまった。
だから道化になろう。
とびっきり情けなくて、ゴミで、カスで、周りから指をさされて笑われる程の道化になろう。
「セレナ……」
「……こう、いち?」
俺はギュリオスから視線を外して、未だ座ったままのセレナを見つめた。
「助けてくれ」
「え?」
「は?」
俺の言葉に二人は呆然としていた。
セレナは口を半開きにして硬直し、ギュリオスは拳を握りしめたまま静止していた。
「見ての通り俺一人じゃ勝てないから力を貸して欲しい」
俺は助けるはずの相手に助けを求めた。童話のアルゴノゥトよりも酷い道化だ。
「……プッ、ハハハハハハハハハ!何を言うかと思えば、助けに来たお姫様に助けを求めるとか、クククッ、腹がよじきれて死にそうだ!ハハハハハハハハハ!」
ギュリオスは俺の突然の挙動に腹を抑えて大笑いした。
自分でもそう思う。今の俺は最高にダサいだろう。
俺は物語の主役のように怒りで覚醒とか、突然不思議な力が宿ったり、そういう秘められた力なんてものはない。
ならばこの状況でギュリオスに勝つにはセレナの力を借りるしか無かった。
羞恥心で頭が沸騰しそうになるが、それを振り払って真剣な表情で懇願する。
「俺一人じゃギュリオスには勝てない!だからセレナの力が必要なんだ!頼む!」
「ヒーッ、腹がいてぇ。情けないったらありゃしねぇ!雑魚だ雑魚だと思ったが、とんでも無い雑魚だったな!まじで道化じゃねぇか、滑稽だぜ」
ギュリオスは腹を抱えて笑い続ける。
それを無視して俺はセレナに向かって頭を下げた。
「もう一度、俺の英雄になって欲しい」
「っ!」
セレナはその言葉に目を見開き、そのまま顔を伏せた。
「無駄だ、無駄!白猫の雑魚が俺様と戦えるわけがねぇ!神の恩恵を持つ俺様と持たない白猫じゃ勝負にもならないぜ。それに、コイツは俺様のことが怖いんだよ。何せ、旦那からの依頼で躾の為に何度も力の差を思い知らせてやったからな。白猫が英雄に?笑わせんなよ!無理に決まってる!もしかして、俺様を笑い殺す作戦か?だったら称賛してやるよ!もう腹が痛くてしょうがねぇ!」
俺はギュリオスの不愉快な笑い声を聞きながら、それでもセレナに頭を下げ続ける。
「君がいないと英雄になるなんてできない。だから、俺が英雄になるために、君と一緒に英雄になるために立ち上がってくれ!」
「………………わかった」
「え?」
「あ?」
セレナは立ち上がると、ギュリオスを睨みつけてスカートの中に隠し持っていた短剣を構えた。その目には確かな意志が宿っていた。
「ついにテメェもイカれたか!?」
「そうかもしれない。けど……英雄になりたいって想いはずっと残ってる。なら、
「巫山戯やがってッ!」
「ここで私が死ぬ運命だと言うなら……その運命を断つ!」
セレナに怯えはもうない。
ギュリオスは怒りで歯を剥き出しにして、セレナを睨みつける。
セレナが駆け出したのを見て、俺も走り出す。
「「はあああああああああっ!!」」
「クソがッ!!」
俺とセレナはギュリオスを中心に何度も交差する。ヘスティアソードと短剣で筋肉質な肉体を斬り刻む。
頭に血が上り、攻撃が雑なお陰で、先読みは簡単だ。それに、一人から二人になったことで、意識が散漫になり、隙ができやすくなった。
「ふっ!」
「はっ!」
「アガッ!?……お、俺様がッ!負ける?」
二人の攻撃を受けて、ギュリオスは後退る。
怒りで燃え上がっていた瞳から徐々に敗北の恐れを滲み出していた。
俺とセレナは左右同時に挟み込むように斬りかかる。
「「これでっ!トドメ(だ)!」」
「-----------------------------------ッ!!!?」
ギュリオスの身体にバツ印が刻まれる。
大量の血飛沫を上げてギュリオスが仰向けに倒れた。
「……俺様が……駆け出しの雑魚に……恩恵の無い雑魚に…………」
そして、完全に意識を途絶えさせた。
「はぁ……はぁ……」
「勝った……」
俺とセレナは緊張の糸が切れ、その場に座り込んだ。
俺は大きく息を吐いた。
「うっ……!」
「光一ッ!」
ポーションで外側は誤魔化していたが、体内はズタズタだ。戦闘の興奮で出たアドレナリンのお陰で痛みや恐怖は抑えられていたが、力が抜けた今、再び吹っ飛ばされた痛みに襲われていた。
「はぁ……はぁ……」
「ポーションはッ-------ないっ……!」
俺のポーチからポーションを探すセレナだが、ポーションはさっき全て使い切ったせいでもう持ってはいなかった。
(不味い……意識が……)
「-------ッ!-------ッ!」
もうセレナの声も聞こえないほど意識が朦朧としていた。
そして、最後に見えたのは泣きながら何かを叫ぶセレナと後から迫っていた金髪の誰かだった。
ここで一回更新やめます。
今後は設定とかちゃんと考えてから書いてこうと思います。最初からちゃんと見直して、リメイクになるのかな?やり直します。話の内容とか変わるかもしれないから新しい話になるかも知れない。
まずは原作を読み直してからします
なんか軽い気持ちでやり始めてすいません