俺の異世界冒険譚 作:勢いでやりました
ニシダ・コウイチ
Lv.1
力:H139→H153
耐久:I72→H101
器用:I64→I72
敏捷:H153→H162
魔力:I0
《魔法》
【】
《スキル》
【
・言語理解
・運命に縛られない
「っ!」
普段の三倍以上のアビリティの上昇にヘスティアは息を飲む。
これはつまり今日の朝の鍛錬だけで、一日ダンジョンに潜った数値の三倍以上の経験をしたに他ならない。
服は血だらけで鎧はボロボロ。いつも以上の経験をしたことは分かっていたが、この結果にヘスティアは戦慄した。
(本当に君って子は……)
ヘスティアは改めて少年の危うさに恐怖する。
覚悟を決めた瞳をしていた彼はこれから先も今日と同じ様に無茶してくるのだろう。
たった数時間でこれだけ上がった。途中で死んでしまわないか途端に心配になる。
だが、彼の身を案じると共に、彼の成長が嬉しくもあった。これが
「……すぅ……すぅ」
「……」
光一はぐっすりと眠っている。
暇だったからボロボロのシャツを捲り上げて背中を露出させ、ステイタスの更新を行っていたが、想像以上のものを見てしまった。
そして、ヘスティアは暫く一人で思案した。少し考えた後、「よし」と小声を出し、クローゼットから上着を取り出して着る。
今日はバイトも休みだし、丁度いいかもしれない。思い立ったが吉日という言葉が下界にあるらしいし、彼女も困ったことがあれば助けてくれると言っていた。
ヘスティアは未だ寝ている光一に布団をかけ直し、書き置きを残した後、パタパタと教会の外へ出ていった。
●
「主神様、御友神様が来られたのだが?」
「ん?誰?」
【ヘファイストス・ファミリア】のホームである火山を彷彿とさせる巨大な建物内の一室で、主神である鍛冶神ヘファイストスは執務机を前に椅子に座って書類仕事を行っていた。
内容を見て、直筆サインや判子を押すか押さないかの仕事だが、簡単そうに見えてかなり怠い仕事だ。
こんな事をするぐらいなら炉の前で鉄を打っていた方が楽しい。
だが、ファミリアの主神として、やらなければならないことは弁えている。
そんな時にノックもせず、部屋のドアを開けたのは自分の眷属であり、ファミリアの団長である椿・コルブランドだった。
友神とは誰だろうと、なにか自分用がありそうな神はいたかと、ロキが次の遠征でうちの鍛冶師を雇いに来たのかと思いハーフドワーフの彼女の後ろを除けば、そこには二週間以上前に初めての眷属が出来て大喜びしていた黒髪のツインテールの女神が椿の後ろに隠れながらやって来た。
「ヘスティアじゃない。なにか困った事でもあったの?」
ヘスティアは下界に来てからまだ間もない。お金を稼ぎたいと言ったからバイト先も紹介してあげたが、他に困りごとでもできたのだろうか?
「えぇと……そのぉ……」
「何よはっきりしないわね」
ヘファイストスに視線も合わせず、キョロキョロと目線を動かし、胸の前で人差し指同士をツンツンとしながらしどろもどろになるヘスティアに首を傾げる。
「あの……じ、実はね……」
「はぁ、困り事があったら何でも言ってって言ったでしょ?ヘスティアには天界で色々世話になった事もあるし、少しぐらいなら力になってあげるから」
ヘファイストスは未だ言い淀むヘスティアに呆れながら、力になると言う。友神だというのも理由だが、天界で困った時にヘスティアが助けてくれた事があった。
ヘスティアには多少なりとも借りがあるし、それを返すいい機会かもしれないとヘファイストスは考える。
「光一君に武器を作って欲しいんだ!」
ヘスティアはやがて覚悟を決めて自分の望みを放った。
すっ、と眼帯を付けてない左眼が細まる。
親しみやすい雰囲気から一変して、厳しさに溢れた空気を纏い出した。
「ひえっ!」
ヘスティアはヘファイストスの威圧に情けない声を上げる。
【ヘファイストス・ファミリア】はこのオラリオにて冒険者の収入で唯一運営がされていない。
だが、ダンジョンで生計を立てていないにも関わらず、【ヘファイストス・ファミリア】は誰もが知る大ファミリアである。
多くの人材を抱え、育成し、百の品に勝る一品を生み出すことで有名な業界大手のファミリア。世界中からも引く手数多であるヘファイストスのファミリアは『
自慢ではないが、【ヘファイストス・ファミリア】に所属する上級鍛冶師の作品は、同業者達の間でも最高品質であると誉れ高い。その相場は一流の冒険者やファミリアであろうとおいそれと手を出せない域にある。まだ二週間ちょいしか経ってない新興ファミリアである【ヘスティア・ファミリア】がそれらの品を買えるほどの大金を所持している訳がなかった。
つまり、ヘスティアは友神のよしみで格安で譲って欲しいと言っているのと同義であった。
いくら借りがあると言ってもそんなのは論外だ。ファミリアの主神としても自分の
「悪いけど、それはできないわ」
ヘファイストスはヘスティアの頼みをキッパリと断った。
友神にこんな冷たい態度を取るのは心苦しいが、鍛冶師として譲れない一線だった。
だが、ヘスティアもまた頑固だった。
ダンッ!とその場で手と膝を付いて頭を床に擦り付けた。
その突然の奇行に、厳格な態度を取っていたヘファイストスも流石に動揺してしまった。
「お願いだ!ボクはあの子の力になってあげたいんだ!」
手足や額に汚れが付くのも気にぜず、土下座のポーズを取ったヘスティアは大声でヘファイストスに懇願する。
少し前まで下界に来てヘラヘラと呑気に笑って自由気ままに下界を満喫していた彼女がちょっと見ない内に変わっていた事にヘファイストスは驚きを隠せずにいた。
「……ヘスティア、何でそうまでして頭を下げるの?」
ヘファイストスはヘスティアがそこまでする理由を知りたかった。
「ボクには覚悟が足りなかった。あの子は今、一つの目標に向かって走り出してる!けど、ボクはあの子の思いも知らずに楽しく笑っていただけ!嫌なんだ。危ない道を進むあの子を助けてあげられないのは……。だからお願いだ!あの子を手助けしてやれる力を!道を切り開ける武器を!」
全知零能となったこの身でできることなんて限られている。ステイタスを更新するだけじゃ助けてるなんて言えない。
本当なら自分の力であの子を助けたいと思ってる。けれど、自分じゃ何もできないから恥を忍んで神友であるヘファイストスに頭を下げていた。
視線を床に縫い付けたまま、言葉を喋ったヘスティアにヘファイストスは小さく吐息を漏らした。
「……わかったわ。作ってあげる、あんたの子にね」
「ヘファイストスっ!」
バッと顔を上げて瞠目するヘスティアに、ヘファイストスは肩をすくめた。
「私が頷かなきゃ、あんた梃子でも動かなそうだし」
「うんっ、ありがとう、ヘファイストス!」
頬を染めて破顔するヘスティアの額が真っ黒になっているのを見て少しクスリと笑みがこぼれた。
「で、あんたの子が使う得物は?」
「え……ヘファイストスから貰った剣だけど?」
ヘファイストスは部屋の角の棚に並べてあるショートハンマーの前に立ち、ヘスティアに質問する。
ヘスティアの答えを聞いて、紅緋色の鎚を選び、腰に常備しているポーチにしまい込む。
そして、今度はクリスタルケースを別の棚から取り出して錠を開け、ケースの中から白銀色に輝いている鉱石を選択した。
「へ、ヘファイストス。もしかして、君が武器を打つのかい?」
「そうよ、当たり前でしょう。これは完璧にあんたとのプライベートなんだから。私の事情に【ファミリア】の団員を巻き込む訳にはいかないわ」
もしかしてと思い、ヘスティアは質問したが、ヘファイストスは当然でしょと肯定した。
「……これからやる作業、あんたも手伝いなさい。これで貸し借りも無しだからね」
「ああ、任せてくれよ!というか、借りならボクのほうが大きいような……」
「あらそう?なら代金として1億ヴァリス払って貰おうかしら?」
「い、1億ぅ!?」
「冗談よ。でも、今回だけだからね。次は絶対やらないから」
ヘファイストスは冗談を織り交ぜてヘスティアに言う。
ヘスティアは、思わぬ大金に目を仰天させてビビっていたが、冗談と知りほっと胸を撫で下ろしていた。万が一払えと言われたら光一には黙って何百年経とうが自分がバイトで稼いだお金で払うつもりだ。
ヘスティアは友神の作業を手伝うために一緒に工房へと向かった。
ヘスティアナイフならぬヘスティアソード回です。
諸事情により借金は無しにしようと思います。
あっ、でもやっぱり借金あったほうが良いと思ったら、なにかやらかして背負う事にします。