FGOのマスターがまつろわぬ神として顕現してしまった話   作:星の王子さま

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(2024/08/15)個人的に読みづらいと感じたので、差し替えました。書き方を変えただけなので、話の流れは変わっていません。

第10話です。どうぞ。


10. 賢人議会顧問アリスの、不幸な時間の始まり

 

「ところで、あの真性ドラゴン娘、飛ぶのが早すぎてここに戻ってくる時に止まれない、なんてことにならないかい?」

「ふむ…マッハ単位の速度で動くあのドラ娘のことだ。集合場所であるここが分からずに10km単位ですれ違うなんてこともあり得るか?」

 

ところ変わって此方はブリテン島中部、イギリスの片田舎の港町。

ドラ娘こと「妖精騎士にし()て白竜(リュ)の骸()()る槍()兵の彼女」が、周辺に散らばっている盟友の回収を終えるまで間、この辺りを簡易的な拠点とする事が出来るように軽く諸々を整えた後、やれる事が無くなってしまい、割と暇を持て余している「第六異聞の女王に()()()()師たる狂兵の彼女」と「私()()()()()司令()()()()()女」であった。

別に、何をするでもなくボーッとしていても問題は無いのだが、彼女たち2人はそういうのはあんまり性に合わないので、とりあえずやれる事を捻り出してこなしていた。

 

かつて組織に所属していた頃に培われた、社畜根性か何かでも残っていそうである。

 

「そういうことであれば、あのドラ娘が分かりやすい様に、簡単な目印でも掲げておくか」

「なに、デカい旗でも作るのかい?」

「いや、視覚にも見える魔術的なピンを此処に刺す。あとでやっておこう」

 

ちなみに、今「狂兵の彼女」が言っていた魔術的なピンだが、現在地の直上にかつて所属した組織のマークを模った水球を、半径10m程に巨大化させて掲げておくという代物で、一般的なこの世界の術者では、これまた10人単位の人数と、十分な触媒や準備時間が必要になる様な代物でもあった。

で、それを1人でサクッとこなす予定である、当の「狂兵の彼女」だが…

 

「さて…そこ、見ていますね?姿を現しなさい」

 

突如、虚空に向かって杖を向けた。

 

「…っ!」

 

まさか、自分が観察していることはバレても、お相手の「まつろわぬ女神」に、軽い警戒の意思と共にそれを指摘されるとは思ってもいなかった彼女、グリニッジ賢人議会の特別顧問であるプリンセス・アリスは、此処で即座に撤退することと、女神の指示に従うことを天秤に掛けて、後者を選択して姿を見せ、即座に跪いた。

本体は相変わらずロンドンの自室から動けないので、霊体をその場で作成して、だが。

 

彼女は今、周囲の人々の命運が、完全に目の前の女神に握られていること、ここで対応を間違えると、周囲一帯が壊滅するかもしれないことを自戒した。

奇しくも、彼女は、日本の鎌倉における甘粕氏と同じ状況に立たされた。

 

ちなみに、即座に撤退した場合は、その痕跡を辿った「狂兵の彼女」に、ロンドンの屋敷の自室まで乗り込まれる事態になっていた。

「神域の魔術師」と呼ばれた彼女にとっては、霊体の痕跡を辿って本体に辿り着く程度、なんてこと無いのである。

 

「へぇ、何となく感じてはいたけど、やっぱり見られてたのかい」

「…ふむ、霊体ですか。念力まで併用するとは、中々器用なことをしますね。本体は…私が顕現した近場にあった、あの都市ですか」

「…そこまで、お分かりに…」

 

この一瞬でそこまで分析されたのか、と、アリスは完全にお手上げ状態になった。同時に、目の前の、今対話している女神が、おそらく魔術に精通した女神であることも予想がついた。

そうでなければ、もう1人の女神のように「何となく見られている」程度にしか感じなかった筈だから。

 

あと、即座に撤退する選択肢を退けた自分を、全力で褒めてあげたくなった。

 

目の前の女神さまは、少しの間じっとアリスの霊体を見つめた後、もう1人の女神さまと視線を合わせて何か相談した。

 

「まぁ、良いでしょう。私の前に霊体で現れたことは不問とします。端的にいきましょう。まずは、名乗りなさい。」

 

とりあえず、コミュニケーションは取ってくれるようだと少し安心しながら、アリスは、言われた通り端的に答えていく。

 

「アリス・ルイーズ・オブ・ナヴァールと申します」

「よろしい。其方が名乗ったのですから、此方も名乗るのが礼儀ですが、私と、そこの彼女も、本来名乗るべき名を持ち合わせていません」

 

「まつろわぬ女神」が名乗るべき名を持たないとは、どういうことなのか、と疑問に思う彼女だが、お相手の女神さまは考える時間をアリスに与えなかった。

 

「とりあえず私は、神話での名として『第六異聞の女王にして神域の魔術師たる狂兵の彼女』と名乗っておきます。長いでしょうから好きに呼びなさい」

「んじゃ、そっちの女王さまに倣って。アタシは『私掠船艦長にして艦隊司令官たる騎兵の彼女』と呼ばれている。好きに呼びな」

「…では、神域の魔術師さま、艦隊司令官さまと」

 

アリスは「神域の魔術師」はともかく「艦隊司令官」は神さまが名乗る名前とするには斬新過ぎるのではないか、と思った。

それとも、艦隊を使った海戦に関する神さまなのだろうか…そんな、かなり限定されるような状況を司る神さまなんて居たかしら…それに神話上の存在にしては、服装がとても近代チックだ…と、少ない時間で必死に考察を進めていく。

 

ただし、まぁ当然ながら、これだけの情報で正解に辿り着ける訳もなく。

 

「さて、アリス。貴方のその術の技量、人の身にしては中々に練度が高い。其方、この世界における魔術の社会にそれなりに関わりがあると見ましたが、この辺り一帯の魔術に関する組織などに心当たりはありますか」

 

目の前の女神さまの問い掛けに対し、そういうことなら、と、対「まつろわぬ神」用の組織でもある、自身の所属している組織を、自分が顧問をしていることもセットで挙げた。

 

身内を巻き込んだとも言う。

 

「ロンドンのグリニッジに『賢人議会』という組織がございます。私は現在、そこの特別顧問をしております」

「ほう。丁度いい。その『賢人議会』とやらがどれほどの規模と知名度なのかにも依るが、情報収集が捗りそうだ」

 

此処までやり取りしたアリスは「まつろわぬ女神」が人間の組織を気に掛けるなんて、物好きな女神さまだ、と思い。

 

そして此処まで対話をして、やっと「『まつろわぬ女神』と、上下関係はあれど、常識的な対話が出来ている」ことの異常さに気がついた。

 

「魔術組織に横の繋がりがあるんなら、アタシらのことも伝えておいた方がいいんじゃないかい?なんせアタシら一斉に湧いて出て来たから、あっちこっちてんやわんやしてるだろう」

「確かに、そうだな…。現地民達との無駄な混乱は避けたい」

 

しかも、女神さま同士の会話を聞く限りでは、現地民のことを考慮している様子。一般的な「まつろわぬ神」は、人間のことなど殆ど考慮しないというのに、一体この女神さま達は何者なのだ…と、更にアリスが混乱していると、

 

「アリス、提案です。情報交換といきましょう。貴方はこの世界について私たちに教授しなさい。対価として、私たち自身のことを教えましょう」

 

「まつろわぬ神」である「神域の魔術師」さまのその提案は、「まつろわぬ神」が人間に対するものとしては破格極まりないものであり、これを呑まない手は絶対に無いし、断ることなど出来るはずもない。

そもそも、一般的な「まつろわぬ神」は、人間相手に「提案」と称して、自身の情報という、とても有用な対価を提示したりしない。

 

対「まつろわぬ神」の組織の元議長として、現特別顧問として、他の人より多くの「まつろわぬ神」や、その情報に触れて来たからこそ、目の前の2柱の女神さまの異常性が、よく分かる。

だから、アリスは益々混乱を深めていき、結局、

 

「…仰せの、ままに」

 

アリスは、そう言うしか無かった。

 

─────

 

「あぁ、それともう一つ、言っておくことがありました」

 

少し前の混乱の極致に至った時から少し経った現在。

先ほどから、何やら超規模な魔術をサクサクと組み上げながら、唐突に「神域の魔術師」さまが声を掛けてきた。伝達事項があるらしい。

 

いったいどんな恐ろしいことを伝えられるのか、内心でビクビクしながらアリスは粛々と対応する。

目の前の二柱の女神さま達は、礼節を尽くせば、とりあえずは問題ないというのがここまでのコミュニケーションで分かっている。

 

「…はい、何なりと」

「ここを、我が盟友たちの集合のための拠点とします。複数の「まつろわぬ神」がここに暫く留まることになりますから、予め周知しておきなさい」

 

内心「えっ、まだ来るの?」と思ったが、目の前の女神さま的には既に決定事項な様子。

たかが人間の自分にどうこう出来るものでもないから、

 

「は、はい、仰せのままに…」

 

と返答するのみであった。

 

 

 

ここで止めておけば、精神衛生上よかったのに、アリスはつい尋ねてしまった。

 

 

 

「…あ、あの」

「なにか?」

「神域の魔術師様の盟友というのは、何柱程いらっしゃるので…?2・3柱でしょうか?」

「ふむ…向こうの動き次第ではありますが…」

 

アリスは、目の前の女神さまのような「まつろわぬ神」がぽこじゃが出てくるものではないことを知っていたから、多くてもそれ位だと、思っていた。

この場にいるもう一人の「まつろわぬ神」である「艦隊司令官」さまの言葉を、忘れていた。

 

 

 

だから、そんなこと、聞かなければよかったのに……

 

 

 

「おおよそ100程になるでしょうか」

「…………………………へ?」

 

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