FGOのマスターがまつろわぬ神として顕現してしまった話 作:星の王子さま
時系列が前後してます。
盟友達が顕現した初日の夜の出来事になりますので、そのつもりで読んでいただければと。
いやぁ、我ながら時間経過が遅い…
まだ年始の三ヶ日から先に進めない…
14話です。
どうぞ。
南欧に君臨する「剣の魔王」ことサルバトーレ・ドニと、 盟友の1人「王
まずは、お互いに剣を収めるところから。なので「槍兵の彼」は、戦闘時の構えを解いた。
「ここまでだ」
「…えぇー?なんで?僕はまだやれるよ?」
唐突に闘気を収めた「槍兵の彼」に対して、当然ながら、まだまだ戦えるドニは不満を露わにしている。
とはいえ、ドニの方も体内の魔力が目に見えて減っているくらい、割と消耗はしていた。
「お前さんは戦えるかもしれんがな、オジサンの方がこれ以上は厳しいんだよ」
そう言って、現在は剣の形を取っている自身の得物の刃を見せる「槍兵の彼」。
「槍兵の彼」の方は、魔力に関しては周りの盟友たちのサポートもあり、そこまで切羽詰まってはいなかったが、それとは別に、武具の方がこれ以上保たない程に消耗していた。
ドニの権能「斬り裂く銀の腕」を幾度となく受け止めてきた「槍兵の彼」の宝具は、不毀を謳うに相応しい逸品であるが、今やその刃は大半が欠けており、中々に酷い有様となっていた。
「まったく…オジサンの大事な宝具だってのに、こんなにボロボロにしてくれちゃって…」
そう言いながら、ほぼ完全に気を抜いて、でこぼこになっている自身の宝具の刃を、指先で突っついている「槍兵の彼」である。
ドニの方も、そんな姿を見せられて、少しだけ闘気が萎んでいく。
しかし、それでもドニは、目の前の彼と決着が着くまで戦っていたかった様子。
「だったら、僕に倒されてよ。そうすれば、僕の剣は更に強くなるだろう?」
「…お前さんが、オジサンとの打ち合いをこれ以上望まないってんなら、しょうがない。遠慮なくこの首、取ればいいさ。だが…」
そう言って、ドニを見つめる「槍兵の彼」。
その姿は、既に戦士のそれでは無く、交渉の場にて、言葉を交えて戦う、政治家のそれと成っていた。
「半日、休息の時間があれば、オレはまた、戦える様になる。宝具の修復も、まぁどうにかするさ」
時刻は既に夜も深くなってくる頃。具体的には、現地時刻で夜の8時くらい。
暇を持て余している周りの盟友たちが、焚火を浜辺のあちこちに作ってくれていたので、光源には困らなかったが。
「要するに、お前さんが今ここで一度の仕切り直しを認めるならば、この後半日後には、またオジサンと打ち合いが出来るってことだ」
「槍兵の彼」は、戦士であったが、それだけでは無かった。
軍団の指揮をする長であり、また、政を進める政治家であり、国の象徴たる王家の一員でもあった。
戦場だけで無く、軍略に関する場や、現在進行形で行われている交渉の場においても、彼は百戦錬磨であった。
「お前さんと戦っている時に感じたことだが…お前さんが剣を交える目的はどうやら、魔王として強くなること、では無さそうだ」
「槍兵の彼」が持つ権能の1つ…「友誼の証明」。
敵対している相手の精神状態が正常である場合において、相手の戦意を抑制し、話し合いに持ち込むスキル。
この権能は、魔力を用いて相手に何かを作用させるものでは無く、話術や身振り手振り等を用いて、相手の視覚や聴覚に対して行使される。
相対時に重要になってくるのは「神殺し」として持つ対魔力などでは無く、交渉ごとに関する知識や技能、そして直感。
「…アンタは、アンタ自身の剣の腕を極める為に、戦っている。そうだろう?あんたの言う『満足出来る斬り合い』ってのは、そういうことだろう?」
「槍兵の彼」は、ドニの事を試す様な目で、図るような目で見つめながら、更に言葉を重ねていく。
「ここで我慢して仕切り直し、明日またオレと戦える機会、剣の腕を鍛える機会を得るか、ここでオレを殺してこの場にいる面子からフルボッコにされるか」
「さぁ、お前さんは、どっちを選ぶ?」
「…はぁ、ずるいよぉ、そんなの。そんな事言われたら、僕は我慢するしか無いじゃないか」
最終的には、ドニは、自分が言葉で説き伏せられた事を直感的に理解しながら、それを敢えて受け入れる事にした。
実際のところ、自身の権能込みでまともに剣を交える事が出来る相手は本当に限られており、目の前の神さまは、その貴重に過ぎる相手の1人だ。
大抵の剣使いの「まつろわぬ神」相手は、自身の権能込みで相対すると、剣ごと斬り伏せてしまう事が殆どだったから。
たった一戦だけして討ち取るのは、勿体なさ過ぎると、ドニは思ってしまった。
そして「そう言う方面」では、目の前の神さま相手には敵わないと言うことも理解した。
「そうかい、物分かりが良くて助かるよ。そう言う訳だから、今日はここで終いだ。明日また来たら、この刃が保つ限りは、オジサンが相手してやる」
2つ目の賭けである「停戦」にも見事に成功した「槍兵の彼」も、満足そうにしている。
ここでドニの方が停戦を受け入れず、戦闘が続行する様であれば、その時点で「槍兵の彼」は、遠からず討ち取られてしまっていた。
「槍兵の彼」がここで討ち取られるという事は、ドニの相手をするのに適した盟友が居なくなるという事であり、ドニの刃の矛先が他の盟友に向くという事でもある。
自身の生死という意味でも、周りの盟友たちの安全という意味でも、結構な綱渡りであった。
と、ここで、神さまでも魔王でもない人が場に入ってきた。
魔王サルバトーレ・ドニの側近にして、界隈では結構な苦労人として有名な、アンドレア卿であった。
「ドニ!探したぞ!」
「おや、アンドレアじゃないか。よく此処が分かったね?」
「まったく…現地の結社から連絡が無ければ、分からなかったぞ」
そう言って、今度は「槍兵の彼」に向き合うアンドレア。
只人の身でありながら、目の前の「まつろわぬ神」に正面から向き合える胆力は、流石魔王の側近にして大騎士の一人といったところ。
「我が王が迷惑をお掛けしてしまった様で、申し訳ありません。なれど『まつろわぬ神』と『神殺し』が出会えば剣を交えるは必定。御容赦くださいませ」
「あぁ、いいよ、別に。いや良くは無いんだけどね」
そうして、その日のとあるギリシャの海岸の様相は、ようやく落ち着いた。
その後に起きた、所謂幕間的な何か。
その一。
「あぁ、そうだ、アンドレア」
「なん…いや待て、何か嫌な予感がするぞ。心の準備を…」
「ぼく、明日もまた此処に来る事にしたよ。目の前の彼が付き合ってくれるって言うからさ。彼、凄いんだよ!ぼくの剣の権能込みで、まともに剣を交える事が出来るんだ!」
「…重ね重ね、我が王が迷惑をお掛けします」
「…苦労、してるんだねぇ」
その二。
ふと思い立った「槍兵の彼」が、アンドレアに声を掛けた時が、アンドレア卿の、生涯最大の苦難の始まりであった。
「あぁ、現地の人が出てきたなら丁度いいか。アンドレア卿、少し時間良いか」
「…はい、何用でございましょうか」
「おーい、船長!他の奴らも!今日はもう終いにしたから出てこいー!」
と、一見して誰も居ない方向に向かって声をかける目の前の神さま。
実はその周辺の森林地帯には、大騎士のアンドレアがギリギリ気付くことが出来る程度に巧妙な隠蔽の術が掛かっていた。
アンドレア卿も「そこに隠蔽工作がされている」ことは気づいていたが、目の前の自分の上司と「まつろわぬ神」の事を優先して、とりあえず後回しにしていた。
後にアンドレア卿は、その場面を「自分の今までの生涯の中で最も心臓に悪かった瞬間」と称している。
「槍兵の彼」の声掛けに対応する様に解かれる隠蔽。
「あ、終わったー?」
by鷹の魔女
「おつかれー」「おつかれさーん」
by月女神さまと付属品の熊人形
「簡単だけれど、晩御飯作ってありますよー」
by神妃さま
「兄さーん!僕と一緒にご飯食べましょー!」
by 「槍兵の彼」の弟
とまあ、この様にワラワラ出てくる「まつろわぬ神」たち。
数にして20以上。
半日あれば、目印となるモノを元に、ギリシャとその周辺に顕現した盟友たちの大半はここに辿り着けていた。
そして極め付けは。
意識の外から唐突に現れた、視界に収まらない「視覚の暴力」であった。
「…」by超巨大な青銅巨人
因みに、青銅巨人の方には、神さま達によるガチの隠蔽が掛かっており、大騎士とはいえ、只人のアンドレアでは「隠蔽がある事」にさえ気づけなかった。
以上のものが、隠蔽が解かれてから10秒間の間にアンドレアが認識できたモノである。
アンドレアは、この時自分がかろうじて気絶しなかった事を、生涯の心の支えの1つとするようになった。
「だいじょーぶ、あの時ほどじゃない」と。