FGOのマスターがまつろわぬ神として顕現してしまった話 作:星の王子さま
いつもの投稿時間にしてはフライングですが、ある程度の書き溜めがどうにか出来ましたので、再開します。
あと、徐に今までの各話にタイトルをつけてみました。
裏設定の1つを、幕間として1話分のお話に仕立ててみました。
反応が良さげなら、気が向いた時にでもまたやってみようかと思います。
(…これ書いてたせいで本編ストックが思ってたより進まなかったとか言えない…)
あと、今回はFGOの2部6章のストーリーの一部ネタバレがありますので、ご注意を。
どうぞ。
「どこを見ているのかな。疲れて幻覚でも見ているのかな?これから異聞帯を攻略しに行くっていうのに、そんな調子じゃ困るなぁ」
「代わりなんていくらでも用意できるけど、キミは人類最後のマスターなんだからね」
え……代わり、用意出来るんですか?
他のレイシフト候補者が見つかった、とか?
「あれ、気づいてなかったの?異聞帯の攻略にレイシフトは必要ないだろ?マスター候補もカドックが確保出来たんだ。彼の治療が終わればキミ1人じゃなくなる。あ、でもマスター候補という呼び方は正しくないね。だって本来、候補だったのはキミなんだし」
「ん?あれ、通信だ。もしもし?カドックが目覚めた?健康状態も良好?それは良かった!至急、管制室に呼んでくれ!」
「いいニュースだ!カドックが回復した!これでキミも予備に戻れる!我々もナビがラクになるというものさ!」
そうなんだ。
あんなに持ち上げておいて、わりとあっさり、『もういい』って言われるんだ。
───
彼女の心を感じる。
困惑を。悲哀を。
───
「おい、どこほっつき歩いてたんだよ」
「……ったく、いつまでマスター気分なんだよ。おまえは自室待機だろ。自由に歩き回ると怒られるぞ」
でも、万が一にそなえて体を鍛えておかないと。いつ異聞帯に行くか分からないんだし。
「はあ?そんなの必要ない、必要ない!トレーニングもミッションも過去の話だろ。おまえ、素養のない一般人なんだからさぁ、もう無理に頑張らなくていいんだって」
「あとのことは俺たちに任せて、部屋でのんびり過ごしてな!」
のんびり……。
のんびりって、具体的には?
目の前で死んでいく誰かとか、目の前で飛び散る人体とか…
逃げ出したくなる足を支える訓練とか、心を透明にする練習とか…
これまであんなに強要しておいて、それ以外の過ごし方とか、もう思い出せないよ?
───
彼女の心を感じる。
悲嘆を。苦悩を。
───
……分からない。
本当にこれでいいのかな、わたしは。
「現状の理解が、世界の解析が怖いというんだね。分かるよ。実のところ、私もつねづね考えてはいた」
「『この事件を本当に解決していいのだろうか?』とね」
「だってそうだろう?バッドエンドを回避できたとしても、それで失われたものが戻るわけでもない。事件解決後、キミの目の前に広がっているのは何もかも壊れた後の、絶望的な地球の姿だ。それなら、まだ希望的解釈の残されている『現状』の方が、生存圏としては優れている。先は見えないが、一問ずつ問題をクリアしていけば報われる可能性がある」
「ほら。今の方が、キミにとっても楽だろう?。取り戻しようがない以上、失われたものを思い出さなくてもいい」
「安心したまえ。誰もキミを責めない。なぜなら、キミを責める人類は、キミが知っていた人々は、とうの昔に消えているのだから」
───
彼女の心を感じる。
苦痛を。慟哭を。
───
「いいかね、連中に同情なんぞ不要だぞ」
「人類史のイフ。一方的に打ち切られた歴史。確かにまぁ、こちらを敵視する理由は分かる。理屈としてな」
「だがそれだけだ。所詮ヤツらは敗北者」
「天体が衝突して氷河期になった?神々の黄昏で世界が燃えた?うむ、辛いな。だがそれは我々の責任ではない。いちいちロストベルトの住人の意見を聞くな。だいたい、辛さで言うなら我々の方が上だ!」
「我々は汎人類史、正しいルートの勝者だ。失敗するわけにはいかない……いかないんだ……」
「だが12人だけで何ができる……?復興も繁栄も、とっくに不可能なんだよ!お先まっくらだと分かっているだろう!こんな孤独が、重圧がヤツらにあるか!?」
「譲歩するのはヤツらの方だ!消え去るのはヤツらの方だ!あの程度の痛み、我々に比べれば小さいのだから!」
───
彼女の心を感じる。
…あの子の心がひび割れていく音が、聞こえる。
───
「うん。キミさぁ、ちょっとおかしいよ。何度も死ぬ思いをして、そのたびに幸運に助けられて、何度も世界を見捨てて、そのたびに悪運に助けられて。多くの命を見殺しにして、多くの世界を殺してきた」
「そこまでやって、まだ健常でいるなんて」
……やめて
「それとも、こんなの『今だけ』だって我慢してる?戦うしかないのは自分のせいじゃない。誰も助けられないのも仕方がない。今は泣き言を言っている場合じゃない。泣き顔がバレないように両手で覆っていればいい」
「だいじょうぶ。人理が戻れば、世界が戻れば、自分も元に戻れる筈だって」
「でも、人間の心というのは変化しやすいだけで、元のカタチには戻れないものだ」
……やめてよ
「戦いが終われば日常も戻る?そんな都合のいい話があるもんか」
「君の心はどこにも行けない。焼き付いた光景は消え去らない。染みついた匂いは拭いとれない。戻れる道は、もうないんだよ」
「なのにキミだけが、そう信じようとしているんじゃない?」
……お願いだから…
……やめて、ください…
───
彼女の心を感じる。
崩れ落ちて、砕け散ってしまいそうな、彼女の心の悲鳴を、感じる。
…感じる、だけだ。今の自分たちには、助けるどころか手を差し伸べることも出来ない。
───
「だから止めてしまえばいい。もう楽になっていいんだ」
「君の行動は、カルデアの冠位指定とやらは、ちょっと荷が重すぎた」
………
───
英雄と呼ばれた我々では、終ぞ感じることが出来ないであろう「一般人」だからこその、恐怖/悲嘆/慟哭。
自分たちは、手を、差し伸べることは、出来ない。
何故なら…
───
……だと、しても。
……だとしても、まだ…っ!
まだ、投げ出すことは、できない!!
だって、まだ「答え」を、見つけてない!
あの「善」を打倒した、その根源を、まだ見つけてない!
その「答え/願い」を見つけたくて、ここまで積み重ねてきたんだ……
なのに……
それを、今更、たかが「自信が無い」だとか「割りに合わない」だとか……
そんな、その程度の「理由/弱音」で……
終わってたまるかぁぁぁぁ!!!!!
自分たちが出来ることは、何もない。
だって、あの子は。
自力で、立ち上がって、戻ってきたのだから。