FGOのマスターがまつろわぬ神として顕現してしまった話   作:星の王子さま

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はい。久しぶりの連投です。
明日まで続きます。

では、どうぞ。


幕間1 「失意の庭」(2)

ストームボーダー内、深夜の食堂にて。

召喚された全てのサーヴァントと、「人類最後のマスター」藤丸立香を除く全てのカルデアスタッフが、とある会議の為に、この場に召集されていた。

 

「…以上が、マスターの『失意の庭』での顛末よ」

 

手順がとても面倒くさい「対象Aが体感した事象を、当時の対象Aの精神状態や心情と共に、対象Bに見て感じさせる」という術式を、キルケーと共同で展開し終えて、その会議内での役目を果たしたメディアの、その言葉に反応出来る者は、いなかった。

 

中には、苦しさからか、胸元を抑える姿や、涙を見せる姿もある。

 

この場にいる全員が、言葉を紡げなかった。

 

彼女の心が、こんなにも、傷付いて擦り切れてしまった事に対する、悲しみで。

そして、そんな状態でありながら「それでも」と、立ち上がった彼女に対する、歓喜で。

あるいは、そんな状態でありながら「それでも」と、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、罪悪感で。

 

彼女は。

「人類最後のマスター」である、藤丸立香という人物は。

決して、換えの効かない人物である。

これは、カルデアの総意である。

 

だから、カルデアスタッフと、彼女に召喚されたサーヴァント達は、彼女の心身の状態には、細心の注意を払ってきた。

それでも、人理を取り戻す旅は、どうしても過酷で。

身体の健康はどうにか守れても。

正真正銘の一般人だった立香の心は、どうしても守り切れなくて。

彼女の心が擦り減っていくのを、少しでも和らげるのが精々で。

今のあの子が、既にかなり危うい精神状態なのは、分かっていたのだ。

 

「…キッツイな」

 

そう声を洩らしたのは、誰だったか。

この場に集う全ての英霊たちは、人神魔問わず。

 

今は、言葉を失ってしまっていた。

 

 

 

「…色々と想うところはあるだろうけど。みんな、そろそろ、いいかな」

 

各々が想いに耽っているところを、ずっとだんまりしてる訳にはいかないと、技術顧問のダ・ヴィンチ(ライダー)が、声をかけ、話を進める。

 

今回の会議の発端は、中々に珍しい、アルトリア・キャスターとバーヴァン・シーの連名での注意喚起だった。

曰く「マスターが『失意の庭』によって、精神に重大な負傷をした可能性がある」とのことらしい。

バーヴァン・シーの方は、かつての自分がやらかした事の為、中々言い出しづらかったのだが、マスターのメンタルケアと、それに付随するマスターの精神状態の現状の話を聞き、流石に拙いのではないかと思い、今回の件に繋がった、との事。

アルトリア・キャスターの方も、マスターの「失意の庭」での顛末を覗き見していたのもあり、彼女の精神状態を探った方がいいという事だった。

 

彼女達からの注意喚起を重く受け取ったカルデアスタッフ一同は、幾人かのサーヴァントの協力を得て、メンタルケアの名目で立香を呼び出し、彼女に眠って貰ったところで、彼女の現在の精神状態と、彼女が「失意の庭」で受けたものを探る事にした。

 

結果は、散々なものだった。

 

まず、彼女の現在の精神状態を転写したものを一時的に保管する為に使用された、彼女の精神状態をブラックボックスのまま保存する、そこそこ良い品質の透き通った水晶が、一気にドス黒く染まった。

この時点でメインの術者だったメディアとキルケーはドン引きしていたのだが、途中で止める訳にもいかなかったのでそのまま続行した。

次に、ブラックボックスになった水晶を解析していくのだが、これが酷い有り様だった。

ドス黒く染まった水晶を見て、もの凄い悪寒がしたので、自身に精神的侵食に対する防壁を幾つか貼りながら、メディアが解析をし始めたその瞬間。

 

メディアが自身に貼った防壁のおよそ半数が、水晶の中のブラックボックスになった立香の精神からの侵食によって、瞬時に崩壊した。

 

特に侵略の意図が込められた訳でもない、純粋な負の感情による単純な力押しだったから、尚更タチが悪かった。

 

即座にそれを察知して、追加の防壁を貼ってくれた他のキャスターたちや、魔術が使える同僚たちが居なければ、メディアは精神の侵食を受けて大変な事になっていただろう。

「あの子なんて爆弾を抱えてるの!?」と驚愕しながら、それでも、周囲の支援の下、どうにか解析をやり切ったメディアとキルケーが抽出に成功したものの1つが、この会議で共有した内容の1つである「失意の庭」での顛末であった。

 

「…という感じで、現状の立香ちゃんの精神状態はかなり危うい。前々から厳しい状態であったのは周知の通りだけど、それが更に加速したような状態だね」

「とはいえ、誠に悔しい限りですが、私たちがやれる事に変わりはありません。カルデアスタッフのカウンセリングや、マリーさんや、ナーサリー・ライムさん達が主導で行ってくれている『お茶会』等で、少しでも立香さんの心が擦り減るのを緩和していく。現状はこれしか手段がありません」

「英霊のみんなとの交流も、立香ちゃんの心を和らげてくれるだろう。私たちスタッフも出来る限りのことをするから、みんな、よろしくお願いするよ」

 

そうして、その会議は終幕となった。

 

 

 

各々がそれぞれの部屋にトボトボと戻っていく、その道中で、シェイクスピアは、隣に居るアンデルセンに問いかけた。

 

「で、今回の件。どうするのです?」

「…どうするとは、なんだ」

 

アンデルセンの問いかけに、お前分かって聞いているだろうという顔をしながら、シェイクスピアはもう一度、正確に問いかける。

 

「我々が現在手掛けているあの童話に、今日の話を反映するのですか?」

「…意外だな。お前のことだから、諸手をあげて組み込むべきと押しかけてくるんじゃないかと、思っていたが」

「…普段の我輩であれば、恐らくそうしたでしょうな」

 

普段のシェイクスピアは、彼が面白そうと感じた者に付き纏い、不躾な質問を繰り返す、ナルシストで愉快犯的な性格をしている厄介なサーヴァントなのだが。

今の彼は、そのような形を潜め、至極真面目な顔をして、先ほどの追憶をしているようだった。

 

「あの恐怖、悲嘆、慟哭、そしてあの奮起は、無碍に扱って良いものではない。それくらいは、分かりますとも」

「そうか」

「ただ、あの心を無い物として扱うのは、それはそれで勿体なさすぎる」

「……」

 

シェイクスピアは、彼女のサーヴァントとして、物書きとして、自分の心情を述べる。

アンデルセンは、黙ったままだ。

 

暫く、無言の時間が流れた。

 

唐突に、シェイクスピアは、アンデルセンの前に立つ。

いつもの彼らしくない、とても真剣な表情だった。

普段の彼を知っていて、かつ人間観察に長けたアンデルセンでも、彼が真剣に自分に向き合っていると、感じられてしまう程に。

 

「あの童話のメインの書き手は、アンデルセン、貴方だ。故に、我輩は貴方の決定に従いましょう。反映しないなら、それはそれで結構」

 

しかし、と、シェイクスピアは、言葉を重ねる。

やっぱり、彼らしくない、なんの面白味もない、真面目過ぎる表情だった。

 

「もし貴方が、あの心を、あの童話に反映すると決定するのならば。我輩は、物書きとして、今まで以上に、慎重に、真摯に、誠実に向き合い、言の葉を書き連ねましょう」

 

面白くないものを心底嫌う彼が浮かべた、面白くない真剣な表情を見て。

アンデルセンは、腹を括った。

 

「……組むぞ」

「御意に」

 

そうして、後の「人理の防人の神話」は、またカタチを変えていった。




ちなみに。
当時の立香の精神状態は、ギルガメッシュ(術)が思わず「溜め込み過ぎだ、馬鹿者」と漏らしてしまう程(という設定です)。

…と、いうわけで。
この作中のカルデア所属のサーヴァントたちは、全体的に、マスターである立香ちゃんに対して、結構過保護気味です。
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