FGOのマスターがまつろわぬ神として顕現してしまった話   作:星の王子さま

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ドラマ「万里谷さん寝取られる」序章。
スタート。

第17話です。
では、どうぞ。


17. 邂逅/脳が焼かれる覚悟の準備をしてください

「1柱だけでもキツイのに、54柱…」

「どうするの?いくら勝負運の強い『神殺し』でも、わたし、今回は流石に無理だと思うのだけど」

 

予想の遥か斜め上にすっ飛んだ内容を聞かされ、思考回路がフリーズしてしまった護堂。

流石に、ずっとフリーズという名の現実逃避をする訳にはいかないので早々に復帰したが、だからと言ってこの後どうすればいいのか、という話である。

エリカも、流石に今回は引くべきだと、遠回しに言ってくる。

54柱の「まつろわぬ神」の各々が個別で活動しているなら、各個撃破とか個別に交渉してお引き取り願ったりとか出来ただろうが。

既に纏まってしまっている54柱もの神々を、全て同時に相手するのは、流石に自殺行為なのは明らか。

護堂が姐さんと呼ぶ中国の「神殺し」や、かつて東京都心で激闘を繰り広げた東欧の「神殺し」でも、流石に怯むだろう。

 

一度怯むだけで、覚悟決めたらそれはそれで突撃しそうな性格の面子だが。

 

とりあえず、もう少し詳しい話だけでも聞こうと、甘粕さんとの現状の共有を進めていく護堂とその一行。

纏めると、以下の通り。

まず、1月5日現在、同盟神の彼ら彼女らは1柱の漏れも無く九十九里浜に集合していること。

次に、正史編纂委員会が、かの同盟神達のうちの幾柱かとの接触、意思疎通に成功しており、コミュニケーションが取れている状態まで持って行けていること。

そして、日本に神殺しの自分が居る事が、既に向こうに伝わっていること。

特に重要な事項は、これくらいか。

これらを踏まえた上で、護堂は54柱への対応を考えなければならない。

…暫く考えて、護堂の出した結論は。

 

「…日本に俺がいる事は、もう向こうに伝わってるんだろ?なら、顔合わせは、最低限しておいた方が良い…と思う」

「では、このまま九十九里まで行きますか?」

「そうですね。行きましょう」

 

 

 

空港から、迎えに来てくれた甘粕さんの車で、そのまま九十九里浜に向かって移動する事暫く。

 

「…草薙さん、到着しました。ここが、彼ら同盟神たちの合流場所です。」

 

護堂とその一行は、甘粕さんが、九十九里浜の海岸が見渡せる道路の脇に車を停めたのを受けて、そこで下車する。

少し前から神殺しとして感じてはいたが、やはり54柱もの「まつろわぬ神」が集合していると、神気が凄いことになっている。

お陰様と云うべきかどうかはビミョーなところだが、旅行疲れしていた護堂の身体は、既に最善のコンディションになっている。

お付きの少女4人や、車の運転をしてくれた甘粕さんは、同盟神である彼ら彼女らの神気に圧されている様で、少し辛そうだ。

 

そんな護堂達を出迎えてくれたのは、諸々の事後の隠蔽工作とかで、いつもお世話になっている、正史編纂委員会の東京分室長にして、護堂のお付きである万里谷祐理や清秋院恵那と同じ媛巫女でもある、沙耶宮馨だった。

 

「やぁ草薙さん、よく来てくれたね」

「薫さん、こっちに来てたんですか」

「彼らとの交渉・伝達役として、ね。ずっと現場の子たちに相手してもらう訳にはいかなかったとはいえ、いやぁ、キツかったよ…」

 

いつもは飄々とした雰囲気を感じさせる洒脱な人なのだが、まつろわぬ神との対面はやはり辛かったのか、現在は、精神的にかなり消耗している様子だった。

 

魔術関係者だからこそ、人間の範疇では優秀とはいえ、「まつろわぬ神」やそれに関する事物においては只人側に分類される薫さんが、54柱の「まつろわぬ神」を纏めて相手するのは、相当に大きな負担だっただろうと、護堂は思った。

 

「空港でも話しましたが、護堂さんたちがマレーシアでまつろわぬキルケーと対峙していただいていた間に、正史編纂委員会は、同盟神たちのうちの幾柱かとの接触、意思疎通に成功しております」

「意外ですよね、神さまのヤツら、人間の話なんて聞かないのがデフォルトだと思ってたんだけど」

「えぇ、我々も始めは決死の覚悟でしたが、お陰様でどうにか生き延びてますよ」

 

空港でも聞いたが、甘粕さんも現地での接触者の1人だったらしい。

鎌倉の方で、同盟神1柱と対面して、お団子を対価に穏便に情報を引き出す事に成功したという。

対面した同盟神である「まつろわぬ女神」も、対話した限りでは武神ながら穏やかな性格だった様で、甘粕さんのポケットマネーが多少減った以外では、特に何か損害が出る様な事も無かったとのこと。

そして、ポケットマネーに関しても、後で経費になった。

 

ちなみに。

顕現した同盟神の数が多かった近畿方面の分室では、同盟神である「まつろわぬ神」との対面を任された現場の人たちは、デスマーチが数日前に終わっているにも関わらず、あまりにも消耗が大き過ぎて、上位媛巫女や甘粕さんの様なエージェント問わず、通常業務が滞るレベルで今現在も死屍累々らしい。

 

「話を戻します。草薙さんには申し訳ないのですが、彼らに誠意を見せる為、誤解を事前に防ぐ為にも、草薙さん御一行が此方に来る事は事前に先方に伝えてあります」

「あぁ、はい、大丈夫です。今日は戦うつもりで来てはいないので」

 

護堂の今回の目的は、あくまでも同盟神である彼ら彼女らとの顔合わせ。

今までの「まつろわぬ神」や、その関係者達との戦闘は、主に人間社会に多大な迷惑をかけていたから、対応出来る自分が出張ってお引き取り願っていた、という次第(と護堂は思っている)なのだが、逆に言ってしまえば、人間社会の中で騒ぎを起こさないのであれば、護堂としては相手をする理由が無い。

 

それに、戦闘になった場合、1対54なんて集団リンチになる未来しか見えない。護堂がリンチされる側で。

だから護堂は、意識無意識問わず、絶対に彼らに喧嘩を売ってはいけないのだ。

 

「ご理解いただきありがとうございます。それで、草薙さんの来訪にあたって、先方から条件を提示されました」

 

なので護堂としては、今回の顔合わせで、同盟神である「まつろわぬ神」たちがどんな様相の相手なのかを知るべく、コミュニケーションを取ることが出来ればそれで良いと思っていた。

思っていたのだが…

 

「…条件ですか。どんな?」

「先方が定めた以上の距離に近づかないように、との事です。ちょうどこの辺りが定められた距離くらいですね」

「…近づくなって、こんなに離されちゃ話も出来ないだろ。俺まだ彼らに何にもしてないのに、なんでそんなに警戒されてんだ…」

 

何故か、物凄く警戒されている様で、話すどころか顔合わせさえ、出来ないようだった。

今回は、向こうの浜辺に集まっている彼ら彼女らを見ていることしか出来なさそうだ。

 

「此方も理由は聞いていないし、申し訳ないが『まつろわぬ神』相手にそんな事を尋ねられる程、図太くはないのでね」

「まぁ、それはそうですね…」

 

そう言って、護堂は54柱の「まつろわぬ神」を見た。

彼ら彼女らが集まっている先の近海には、いつの間にか、木造の帆船が一隻、浜辺に近づいてきていた。

 

 

 

木造の帆船が、砂浜のすぐ近くの海上に停泊している。

帆船の側面には、砲門と、そこから突き出ている大砲の砲身がズラリと並んでいる。

護堂の側にいるエリカとリリアナから「大砲?」「随分近代的な…」という呟きが聞こえた。

神さまパワー的な何かだろうか、明らかに船底が座礁しそうな水深まで近づいているのに、帆船は何事も無く海上に停泊している。

そのあと少しして、船から砂浜まで、木造の板が渡された。これを橋代わりにして、砂浜に降りるのだろう。

 

先程まで砂浜に散らばっていた54柱の神々は、今は集合して、自分たちには目もくれず、只々船を見つめている。

こちらに背中を向けている為、自分からは彼らの表情は分からない。

それでも彼らは、隠し切れないほどの歓喜を、その身体から湧き上がらせていた。

 

船側の橋の先端に、人影らしきものが現れた。

橋を渡って、ゆっくりと砂浜に降りてくる。

周りは、不思議な程に静寂であった。

聞こえないくらい離れた距離に居るはずなのに。

橋を渡る時の、板の軋みが聞こえる。

橋を降りたあと、砂を踏み締める音が聞こえる。

 

船から降りて来たのは、年若い女性の姿をした神だった。

オレンジ寄りの赤毛で、セミショートくらいの長さの髪を左側で一房結んだサイドテールに、ぴょこんとハネたアホ毛が1つ。

ちょうど良い具合に日光が邪魔をして、目元は影に隠れてしまっているが、顔立ちが整っているのは分かった。

護堂のライバルだったアテナの例があるとはいえ、古い時代の神さまっぽくない、現代的な白いコートのような服、黒いブーツに身を包んでいる。

 

あれが、「まつろわぬ『人理の防人の少女』」。

なんというか、普通な見た目だな、と思った。

今まで遭遇した神々や、それらに関係するものは、とびきりの美形かとびきりの異形かのどちらかだというのが定番だったから。

 

そうして「まつろわぬ『人理の防人の少女』」が、同盟神たちの目の前に辿り着いた時。

同盟神達は、ある神は威勢よく、別の神は粛々と、また別の神は嫋やかに、皆様相は違えども「人理の防人の少女」に膝を折り、自ら恭順を示した。

 

その様相は、それこそまるで、神話の場面の1つの様に美しかった。

 

「人理の防人の少女」の口元が動いた。

遠すぎて、ここからは何と言っているのかは聞こえない。

しかし、その言葉に我慢が効かなくなったのか、比較的幼なげな姿をした幾柱かの同盟神が「人理の防人の少女」に飛び掛かり抱き付いた。

「人理の防人の少女」は、それをしっかりと受け止めて、抱き付いて来た同盟神たちを抱きしめ返している。

 

周りで膝を折っていた神々も、徐に立ち上がり「人理の防人の少女」の元に集っていく。

慕われていると一目で分かる、先程の神々しさとは別の、実に人間臭い、美しさを感じる光景だった。

 

そして、彼ら彼女らが言葉を交わし、暫く親睦を深めあっている様子を見ていると、ふと「人理の防人の少女」の視線が此方を向いた。

彼女の瞳が、此方を捉える。

まるで太陽を思わせる様な、それでいて神々しさを感じさせない、不思議な金色の瞳だった。

 

視線が、交わる。

 

そして、その直後。

霊視の媛巫女、万里谷祐理は、「人理の防人の少女」について、今までで1番鮮烈な方法で、霊視を授かった。




さぁ、万里谷さん。
脳を焼かれる準備は出来たか?

現在:61柱
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