FGOのマスターがまつろわぬ神として顕現してしまった話   作:星の王子さま

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第20話です。
では、どうぞ。


20. メソポタミアの盟友たち(1)

中東、イラクの地方都市サマーワから東に30km程進んだところに、かつて存在した古代都市「ウルク」の跡地と、それを発掘・研究する為に設置された地区がある。

その地区から、北東方面に少しズレたところ、何も無い平原が広がっているその場所で、かの「人理の防人の神話」の盟友の1柱が、場違い感が半端ない豪奢な玉座に座っていた。

 

彼の名を「英雄の()王に()して()原典()たる()術兵の(シュ)彼」と言う。

 

普段の彼は、天上天下唯我独尊を地で行く傲岸不遜な人物であり、また、厳しくも正しく民を導く賢王でもあるという、要するに、相手にとってはかなり面倒くさい性格をしているのだが。

そんな彼は今、玉座に座り微動だにしないまま、何やら物憂げな様子で考え事に耽っていた。

顕現してからここまで、彼は、ほぼ全ての時間をこうして玉座に座って過ごしていた。

 

彼には、霊基が幾つかある。

子どもの頃の「弓兵」の霊基、王座に着いた後の暴君としての「弓兵」の霊基、そして、旅を終わらせて、再び玉座に着いた賢王としての「術兵」の霊基。

普段の彼は、前述のこれらの霊基を、大体2:4:3くらいの比率の頻度で使い分けていた。

 

顕現した当初は、彼は暴君としての「弓兵」の霊基だった。

古代都市の跡地のど真ん中に顕現した彼は、状況を把握したのち、現状に対して著しく機嫌を損ねながら、それでも、なかなかに気に入っていた彼奴を1人にする訳にはいかないからと、なんとはなしに移動を始めた。

で、移動して少し経ってから、具体的には、ちょうど現在地辺りに着いた位のタイミングで、色々と「視た」。

その内容を精査した結果、「術兵」霊基の方が適任として、霊基を切り替えたのだった。

 

切り替え直後の「術兵」霊基の彼は、面倒事を自分にぶん投げた「弓兵」霊基の彼にお冠だったが、自分の方が適しているのも事実なので、ここで先々の事物に対する思索を始めたのだった。

 

そして、そこから思索に耽ること2日。

「術兵の彼」は、未だに結論を出してはいないが、周囲の状況が変化した。

具体的には、自身に接近してくる「まつろわぬ神」を感知したのだった。

その方向に目を向けた彼が見たのは、自身と同じ盟友の1人であった。

 

「ようやく、見つけた。英雄王」

 

見た目は10代前半の少女くらいの容姿。

蒼髪を後頭部で纏め上げ、幼い少女の様なスラリとした肢体、そして緋い瞳を持つ、全体的に蒼っぽい雰囲気の少女。

ただの少女とは異なる点として、頭部に2回も湾曲している程伸長している、かつての「獣」としての象徴である、立派な「角」が一対。

そして、まるで水の上に立っているかの様に、地に足を着けておらず、その身体自体が浮遊していた。

 

「人理の防人の神話」の「人理修復」の章における、7つめの時代において、当時最大規模の難敵として、人類が滅ぼすべき7つの悪性の1つである「第二の獣」として、人理の防人の少女の前に立ち塞がった、太古の「創世の母」たる神。

そして、「少女」の盟友として迎えられて以降は、その強大な権能を以て少女の旅路を支え続けてきた、盟友の1人。

 

その名を「創世の大地(ティ)母神()たる()分者()の彼女」という。

 

傲岸不遜にして、大の神さま嫌いの「術兵の彼」さえ、一定の敬意を以て接する、数少ない真性の女神の1柱であった。

 

「…あぁ、御身か、大地母神よ。」

「術兵の霊基?」

「…気分だ」

「そう…」

 

数日ぶりの再会であったが、言葉少なく終わる、会話のキャッチボール。

そして、少し無言の時間。

「術兵の彼」としては、自分に構ってくれるなと、少々鬱陶しく思っていたのだが、「分者の彼女」が離れてくれる気配はない。

 

唐突に「分者の彼女」が問い掛ける。

 

「…いつまで、燻ってる、つもり?」

 

「分者の彼女」は、思考を巡らす今の「術兵の彼」の状態を、よりにもよって「燻っている」と称した。

一瞬イラッときた「術兵の彼」だが。

 

(…そうだな、若干煮詰まっていたのは確かだ。見方を変えれば、燻るというのは、あながち間違いではないか)

 

と、思い直す。

「術兵の彼」の親友や、彼が嫌いな同期の神々たちから母と呼ばれるこの「分者の彼女」は、時に相手の人格の本質や状態を鋭く正確に見抜く、人を見る目を持っている。

 

「それとも、何かイヤなモノでも、視た?」

「……」

「…無理には、聞かない」

 

「術兵の彼」は(全く、本当に鋭いなこの女神は)と思った。

敵対した当時の彼女は、端的に言えば「母性が強すぎるあまりに諸々あって理性が蒸発して人類が滅ぼすべき悪にまで成り果てた者」であり、それはつまり元々「母」としての意識や能力は、文字通り最高峰。

そして、通常の彼女が自身の子どもと見做すのは、彼女より後世の生物全て。

文字通り「全て」である。

人間一人ひとりどころか、蟻一匹、微生物一匹に至るまで、彼女は自身の子どもと見做す。

 

当然ながら「術兵の彼」も、子ども扱いである。

そして、子どもの思うこと考えることの大半は、母には分かるもの、というのが「分者の彼女」の言である。

 

まぁ、つまり。

母は、自分の子どものことは、よく分かっているということであり。

母は強し、ということだ。

 

文字通り、色々と最高峰の一角だから、冗談にならないのである。

 

「動かない?動けない?それくらいは、知りたい」

「…前者だ」

「そう」

 

「術兵の彼」も、やっぱりこの「母を名乗る女神さま」には何となく頭が上がらないので、割と素直に答える。

「術兵の彼」の言を受けて、少し考える仕草をした後、「分者の彼女」は。

 

「じゃあ、あなたの代わり、私が動く」

 

と宣った。

 

「私が、あなたの、足になる」

「…そういうことでは無いのだが、まぁ、良い。御身の心遣いを、無碍にする訳にもいかぬか」

 

 

 

とりあえず、玉座から立ち上がり、「分者の彼女」の前に立つ「術兵の彼」。

目の前の大地母神に移動に関する逸話などあっただろうかと思い返して、思い当たる事柄が無かった「術兵の彼」は尋ねる。

 

「…ところで大地母神よ。足になると言っていたが、具体的にはどうするつもりだ?」

「こうする」

 

そう一言だけ、「分者の彼女」は端的に返した。

そして、唐突に展開される権能「生命の海」と思しき、黒泥の様なもの。

範囲は直径1メートル程。ちょっとした水溜りといった程度である。

そして、そこから浮上してくる様に現れる、黒い外皮に生理的嫌悪を催すような双貌、クモのような四本の鋭い脚に、一対の翅…

あ、ご丁寧にお辞儀してくれた。こちらこそよろし…

 

「いや待て、おい待て、ちょっと待て」

 

あれー、生命の海ってこんな黒泥っぽかったっけ?もうちょっと澄んだ水だった気がするんだけどなー。

 

あれー!?たった今目の前に出てきたコイツは、あの時の獣の近衛やってたヤツじゃなかったっけぇ!?

 

「術兵の彼」は、味方として、盟友として共に戦っていた時に展開してた「生命の海」は、こんなのじゃ無かったから、水溜りの様な黒泥を見た時点で、なんか嫌な予感がしていた。

そして、コイツ(みんなのトラウマ)が出てきた時点で、流石に我慢出来ず「分者の彼女」に詰め寄り、突っ込んでしまった。

詰め寄ってきた「術兵の彼」を、鬱陶しそうに押し返す「分者の彼女」。

 

「貴様、何故こんな様になっている!?まさか獣か?獣なのか!?」

「うるさい。ちゃんと、後で話す」

 

まぁ、理性があって、会話がこうして成立している時点で、かつての獣そのものでは無いのは分かっているが。

後で絶対にとっちめてやると心の中で思いながら、話題を戻す「術兵の彼」。

 

「…はぁ。で?これに、我を運ばせると?」

「違う。制限、引っかかる。この子は、護衛として出した」

 

制限ってなんだ。護衛ってなんだ。何に乗せる気だ貴様。

胡乱げな目線を「術兵の彼」が向けると、何を勘違いしたのか「分者の彼女」は「むふー」と、自信ありそうな顔をして宣った。

 

 

 

「母に、任せなさい」

 

 

 

そう言って、また唐突に、地面に沈んでいった「分者の彼女」。

 

その直後。

突如として、「術兵の彼」は、身体を押し上げられる感覚を覚えた。

足元を見ると、「術兵の彼」は、いつの間にか、土の地面ではなく、とてもフワフワしてて柔らかそうな白い柔毛に包まれた何かの上に立っていた。

即座に周囲を見渡す彼。

離れていく大地。

 

(これは…我が上昇しているのか!?)

 

思わず片膝立ちになり、片手を白いフワフワの地面の上に置く「術兵の彼」。

そして、ようやく身体と謎の地面上昇が終わり、落ち着いたところで、何処からともなく響いてくる「分者の彼女」の声。

 

『龍神形態。砲撃無しで、小さめにしたから、燃費いい。半日くらい、保たせられる。どう?』

 

あぁ、あぁ…そういうことか…と。

「術兵の彼」は頭を抱える。

 

全長は20メートル程。

確かに、60メートル以上の全長を誇ったあの時よりは、小さい。

色彩も、あの時の様な危険な赤ではなく、清浄な蒼を思わせる色合いになっている。

死の概念を付与されて斬られた為に、永遠に再生しない翼の根元も見える。

安定もしている様で、確かに、何もなければ、言った通り半日は保つのだろう。

騎獣としてのみ見れば、全くもって問題無いだろう。

 

「術兵の彼」は、かつて獣として自分たちと敵対していた時の姿の1つである、人面龍の姿をした「分者の彼女」の背中に乗っていた。

 

何処からともなく聞こえる『むふー』という、自信に満ち溢れた声。

 

側を見れば、さっき黒泥から出てきたアイツが、変わらず1人で突っ立っている。

 

(…全く)

 

小さいし色が違うとはいえ、あの時と同じ人面龍で。

1人とはいえ、あの時と同じ新人類擬きがいて。

 

(これでは、かつての第二の獣そのものではないか…)

 

「むふー」じゃないわ、盟友に出会った時に、どう説明するつもりなのだ貴様、と。

「術兵の彼」は、今後発生するであろう数々の勘違いと、それに伴う諸々の後始末を思って、苦労人らしく、再び頭を抱えた。




獣じゃないから大丈夫だと言ったな…

あれは半分嘘だっ!!(嘘になってしまった…)

小説書いてて、作中のキャラクターが独り歩きしだすってこういう事かと、思い知りましたよ…
理性はちゃんとあるから、まだ大丈夫…たぶん…
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