FGOのマスターがまつろわぬ神として顕現してしまった話   作:星の王子さま

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(2024/08/15)個人的に読みづらいと感じたので、差し替えました。書き方を変えただけなので、話の流れは変わっていません。

第3話です。どうぞ。


3. 私は…/馨「なんなのよぉ!?」

 

さて、この場が南極であることと、太陽の軌道から今の時期が12月前後であり、日が沈まないことが判明して、少し余裕が出てきた少女。一夜の宿を求めて彷徨っていたが、そもそも対処するべき一夜自体が当分来ないと分かった。

なので、歩く速度を落としながら、次の問題に目を向ける。

 

食糧問題である。

彼女は現在、手持ちに食糧がない。水分補給に関してはその辺に積もっている雪を食べて凌げるが、普通の人間であれば、このままでは飢えてしまい、遭難と飢餓のダブルコンボになる可能性が高い。また、本来なら水分補給に関しても、衛生面の観点から、そこら辺の雪を食べることもあんまりよろしくはない。

 

…一応、食糧になりそうなものは見つけてはいる。どうしようもないと判明した場合には、それを糧とするしかないけど、南極大陸に他に食べられそうなものってあったっけ?

 

そう考えながら、少女は食糧候補のそれらを見た。

そして、唐突な捕食者の気配に、野生のペンギンさん達は背筋を凍らせて慄いた。

 

ここまで考えて、少女はまた、ふと気づく。

 

「…お腹、全然減ってない」

 

スタート地点だった山脈中腹分からここまで、結構な時間を結構な速度で踏破してきたが、一切の空腹感を感じていない自分の身体。

少女は、流石に何かがおかしい、自身の状態を改めて正確に把握しようと、ペンギンさんのコロニーから少し離れたところで雪の地面に座って考え込み始める。

 

とりあえず、まずは礼装に備え付けられている簡易的な探査の魔術を自身を対象に走らせて身体検査をしてみようと、礼装の機能を起動させた、が

 

「…エラー?魔術を弾いてる?」

 

結果はこの通り。

何回か試してみたが、何故か自身の身体が魔術を受け付けない仕様になってしまっていることが判明した。備え付けの探査の魔術は、あくまでも簡易的なものなので、少女の身体が何故そんな仕様になっているのかまでは、分からない。

 

「この弾かれ方は…対魔力?」

 

ただし、少女の今までの経験と、自身の身体が探査の魔術を弾いた様子を照らし合わせると、かつて敵対していた盟友達を相手に、別の礼装に備え付けられていた拘束や妨害の魔術を使用した時に、相手が持つ「対魔力」によって弾かれて無効化された時の様子と、かなり似ていると感じた。どうやら、今の自分は割と強力な「対魔力」か、それに近しい何かしらを保有しているようだ。

これだけ強力な魔術に対する抵抗があるならば、とりあえず身体・精神に対する魔術的な攻撃や状態異常は効かないとみていいだろうと、少女は判断する。

 

そして次に、現在の状況に陥った原因になるような何かがあったかどうかを、自身の覚えている限りの記憶を頼りに思い出そうとした。

 

そして、彼女は、少しばかりの余裕と考える時間を確保することが出来たこのタイミングで、初めて気づいた。

 

「あれ、わたしの名前…なんだっけ?」

 

自分の名前が出てこない。

いや、違う。名前はある。「●●●●」だ。いや、しかし、それは「自分の物語のベースになった人」の名前だ。「少女」の名前ではない。でも、わたしは「●●●●」であるという自意識も明確にある。これは、どういうことなのか…

 

この時、少女は、このことを認識したこのタイミングで、自分の中に「●●●●」としての第二の人格があることを本能で理解した。

同時に、少女の精神の中に眠っていた「●●●●」としての人格は、「少女」にそれと認識されることで、このタイミングで活性化した。活性化した「●●●●」の人格は、自身の状況と立場を理解し、主人格の立場を「少女」の人格に任せることにした。

少女は「防人の少女」であると同時に「●●●●」である。メインの人格を「少女」として、サブの人格に「●●●●」としての人格が置かれた、いわゆる二人羽織の状態に、少女は成っていた。

 

少女としては、ここまでで割と手一杯なのだが、さらに連鎖反応的な感じで、自身が持つ「権能」について、急速に頭の中に入ってくる。

頭の中に入ってきた情報に溺れかけた少女は、半ばボーッとした状態で、自身の右手の甲にある刻印に意識を向けた。自身の権能の源であるので、少女としては意識を向けただけだったのだが、ボーッとしていたので、そのつもりは無かったが、手の甲にある刻印を無意識のうちに励起させていた。

 

励起、させてしまった。

 

そして、これをきっかけとして、少女は、顕現から2日経ってようやく、今現在の自身が何者であるのかをはっきりと認識した。

 

「…マジかぁ、わたし神さまになっちゃったのかー」

 

改めて紹介しよう。

 

この少女こそは、最新の神話の主人公にして召喚士。

友誼を結んだ世界各地の数多の盟友達の力を借り、7つの時代と7つの異聞を駆け抜けながら、幾つもの人が滅ぼすべき悪性に立ち向かい、自身の役目である人理の奪還を目指す、何処にでもいるような、ごく普通の少女、だった者。

 

若しくは、数多の偶然が重なり、現地で神話に格上げされた結果、そして、現地の産まれたばかりの人理くんの概念が、割と人理的にヤバそうと判断してしまった結果、物語の中では人の身でありながら、現世で神として顕現してしまったヤツ。

 

まつろわぬ「人理の防人の少女」である!

 

 

 

ところで話は変わるが。

彼女が右手の甲の刻印を励起させた結果、彼女は自身が「まつろわぬ神」であることを自覚したわけだが。

励起したその刻印は「まつろわぬ神」たる彼女の権能の源であるのに、励起した結果として発生した出来事が神としての自覚を促す、それだけで済むだろうか?

そんなわけ無いのである。

 

残念ながら、そんな訳が、無いのである。

 

─────

 

所変わって日本の正史編纂委員会の東京分室。

現在ここは、たった今発生した出来事に対処するために上から下へ大騒ぎしている状態だった。

 

「それで!?状況はどうなっている!?」

「あの瞬間以降のタイミングでの顕現は、今のところは報告されていません!」

「そうか!引き続き現状の把握に尽力しなさい!」

「了解!」

 

そう言って、部下の報告者はバタバタと部屋を退出していく。平時であれば、もっと静かに退出するようにちょっとした小言を入れるところなのだが、今現在においては、正史編纂委員会東京分室長にして媛巫女の1人でもある沙耶宮馨は、そんなことに構っていられない程の出来事の処理に追われていた。

 

「あぁ、全くもう!草薙さんがマレーシアに向けて出発して、1時間も経たないうちにこんなことになるとは!」

 

いつもらしく無い、荒げた声を上げる彼女。だが、起きた出来事を前にして、まだ声を荒げることが出来るだけまだマシだった。人によっては、心が折れて動けなくなっている者もいる。

なんせ…

 

「『まつろわぬ神』と思われる者の同時顕現、それも日本だけで40柱以上だなんて!一体何がどうなったらこんなことになるんだ!?」

 

ということである。普通に考えてどうしようもない。

幸いなのは、顕現から1時間以上経った今の時点で、直接・間接を問わず、彼ら彼女らが原因の人的・物的な被害らしい被害が出ていないことくらいだろうか。また、彼ら彼女らが顕現した位置は、近畿地方の、特に京都や奈良、大阪辺りに集中しているようで、関西の、特に近畿の方の分室はこちら以上に悲惨なことになっていそうだ。

 

向こうの人たちの心中をお察ししながらも、分室長としての役割を果たさんと、馬車馬の如く動く彼女。そこに、護堂達を無事空港まで送り出して戻ってきた甘粕氏が戻ってきた。

 

「只今戻りました!」

「良いところに!早速だが仕事だ!」

「はいはいどちらへ!?」

「鎌倉に顕現した『まつろわぬ神』の偵察を!」

「承りました!あと、報告事項が1つあります!」

 

普段は昼行燈で給料分の仕事しかしないとか言ってる奴の反応では無い。無いが、しかし、この後生き残るためにもここは全力を尽くす場面だというのは流石に心得ているようだ。

 

「報告?なんだ?」

「万里谷さんが霊視を受けました。内容は『人理』『さいごの』の2つのみ。ここからは私見ですが、おそらくこれは『人理の防人の神話』関連の何かかと」

「…ふむ」

 

報告を受けて少しだけ考え込む馨。だが、今の段階では情報が足りないと判断したのか、考え込んだのは本当に少しの間だけだった。

 

「とりあえず了解した。偵察の件、頼んだよ」

「はい。では行ってきます」

 

そう短くやりとりをして、甘粕は鎌倉に偵察に行った。薫の方も、それを見届けた後、自身の仕事に戻っていった。頭の片隅に「人理の防人の神話」のことを置いておきながら。

 

─────

 

「少女」が右手の甲の刻印を励起した時、それに呼応するかのように、世界の各地で「まつろわぬ神」と思われる者達の顕現が同時に発生した。確認されただけでも、その数は200を超えており、特にヨーロッパ、インド、中東、日本に集中していたという。

顕現した彼ら彼女らは、自身の状態を確認した後、刻印を通した「少女」との繋がりを頼りに、一斉に各自の判断で動き始めるのだった。

 

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