「呪具か、まずは予算とどんな効果のものが欲しいかだな」
「予算は出来るだけリーズナブルで、壊れにくくて拳につけられるものでお願いしたいっす」
絶対に反社であろう顔をしている夜蛾先生だが、生徒からの相談には真摯に対応してくれる。本当にいい先生だよなぁ、と思いつつ答えを待つ。
あと、拳につけられるものってぼかしてるけどメリケンサック以外無いよなこれ。夜蛾先生もちょっと困り顔だ、申し訳ないことしたな。
「とりあえず、呪具はそう簡単に手に入るものでもないから、こちらで探して良いのが見つかったら報告しよう。それでいいな?」
「うっす、ありがとうございます」
「まずは、普通の武器に呪力を流すことから始めるのはどうだ?手軽だし物体に対して呪力を流す練習にもなる」
「あー、やってるんすけど結構な頻度で壊しちゃうんですよね〜。だから壊れにくくする術式とか組み込んでる呪具が欲しくて」
「お前はかなり呪力が多いからな、仕方ない部分もあるだろうがそれもまた練習だ」
まぁ確かに、壊さないように調整するのもいい練習になるしな。けど、任務で強い呪霊が湧いてきた時に壊れたりするとちょっと怖いんだよな。ステゴロで戦わないと行けなくなるし。
「まぁ見つかったらでいいんで、お願いします。あ、それと買う時に金が無いとか嫌なんで任務も多めに入れといてください」
「それは良いがあまり無茶はするなよ、お前は少々危なっかしいところがあるからな」
「いやぁ、五条に比べたらまだマシでしょ。あいつはいつか呪術事故で人殺しますよ」
俺は毎日半殺しにされてるがな!まだまだ弱いとはいえ黒閃出したんだぞ、もう少し食らいつけてもおかしくないと思うんだけど。そうひとりごちるが五条の術式の理不尽さを思い出しがっくりと肩を落とす。
「…やっぱ同期の中でも俺だけ格下っすよね〜、へこんじゃいますよホント」
「なんだ、そんなことを気にしていたのか」
「いや、気にしちゃいますよ流石に」
「たしかにお前はあの2人に比べたら特異性という意味では劣っているかもしれない」
「ぐっ…ガッツリ言いますね先生」
「しかし、実力という面で言うのならばお前とあの2人にそう違いは無いと考えている」
いやいや、それは言い過ぎでしょう。だって、俺呪力で固めてぶん殴るしかできねぇようなやつだぞ?呪霊でパーティー作れる奴と無限の壁作れる奴に勝てるわけねぇじゃん。
「そういうところだ、もっと自分に自信を持て。少なくとも、俺はお前を相手に正面からは戦いたくない」
「…まさか、慰めてくれてるんですか?」
「客観的な事実だ」
まぁ、そう言ってくれるならありがたく受け取っておこう。いつも心を折られてばかりだからな、たまにはこういうことを言われてもバチは当たらないだろう。
「ってことがあったんだ」
「はっ、それで喜んでんのか?たしかに、最近伸びてきてはいるけど、まずは俺に一発当ててから調子に乗れよ」
「悟は『修行頑張ってるし最近強くなってきてるから認めてあげてもいいよ』って言ってるよ」
「いつ俺がそんなこと言ったんだよ!!」
机に手を叩きつける五条、いやそんなテンプレ的ツンデレみたいなムーブされても全然嬉しくないんだけど…
「まぁ先生の言ってることは正しくもあるね。私も誠也とは正面切って殴り合いたくないし」
「えぇ〜?夏油の呪霊神拳で毎回ボコボコにされてる俺にそれ言う?」
「私の格闘技に変な流派名をつけないでくれ。あと、ちょっと言いたいんだけどさ」
「ん?何だよ」
「誠也、君さぁ
「は?」
何言ってんのこいつ、俺がいつもお前らとの組み手でどんだけボコボコにされてると思ってんだよ。毎回半泣きで転がされてんのに、ふざけんな。
「あ、それ俺も思ってた。なんでいつも手加減してんだよお前」
「いやいや、組み手で思いっきり黒閃お前に振りかぶってたじゃん。あれは全力だったぞ俺は」
「そうだな、全力だったな。でも、
「敵意が無いとも言い換えられるかもね。誠也は」
「あー、ヘタレだなヘタレ。パンピー出身だからだろうけど」
おい、言い過ぎだろ。口撃の威力がすごいな君ら。2人がかりで俺のメンタルをゴリゴリ削ってきやがる。
「そうだね、君が敵意を持って私と組み手した場合…」
「場合?」
「5分だね」
5分?5分は耐えられるってことか?まぁいつも3分くらいでボコボコにされてるし良い方だろうな。
「いやいや、違うよ。5分で
「は?いや、ないない」
「もっと自由に動いてみなよ、最初から勝てないって決めつけるんじゃなくてさ」
「…ま、俺も術式なかったら危ないかもな。負けねーけど」
そんなもんかねぇ。まぁあんまりピンときてはないけど、自信をつけようとしてくれてるんだろう。
「まぁひとまずは鍛錬と任務だな。あと、まとまった金入ったら焼肉行こうぜ。ワ○カルビ行きたい」
「いいね、ちなみに奢りかい?」
「んなわけないだろ。むしろ奢れ、階級上だろ」
「…ワ○カルビってなんだ?」
「「え」」
コイツ全国チェーンの焼肉屋すら知らないのか?どんだけ坊ちゃんなんだよ。どうせ、今まで叙○苑とか個室のステーキ屋とかしか行ったことないんだろうな。
「あらあら、やぁねぇ夏油さん。あの方お高く止まってらっしゃるわ」
「そうねぇ、誠也さん。庶民の気持ちがわからないみたいだわ」
「おい、ぶっ飛ばされる前に早く教えろ」
なんか可哀想になってきたので素直に教えた。教えたのに俺はぶっ飛ばされた、解せん。
「ふーん、私は誘ってくれないの?」
「いやいや、誘うに決まってるじゃん。硝子ちゃん」
たまたま五条&夏油コンビが任務に行って高専にいない時に、焼肉騒動の話をするとそう言ってきた硝子ちゃん。ちょっと拗ねたような顔もかわいいね。
「なんか2人と順調に仲良くなってるみたいだね」
「まぁ、最初よりかはマシかな。人間としては認識されてると思う」
「私を差し置いて仲良くなっちゃって」
「え、いや、そんなことはないと…」
冗談だよ、と少しイタズラが成功したような笑みを浮かべてこちらに顔を向ける。いや惚れてまうやろ、なんだこの小悪魔。
「なんだろうね、誠也はあの2人とはちょっと違う感じがする」
「まぁクズじゃないからな」
「たしかに」
クスクス笑いながら懐からタバコを取り出し、口に咥える硝子ちゃん。なんか様になるよなぁ、かっこいい。そう思いながらじーっと見ていると何を思ったのかもう一本タバコを取り出した。
「吸ってみる?」
「え、いいの?」
「良くはないよ、だからこれで共犯者だね」
なんて言っていきなり口にタバコを咥えさせ、自分のタバコをくっつけて火をつけてくる。あ、これって、有名なやつ…
「シガーキスって言うらしいよ」
「…こういうのやったら勘違いしちゃうよ」
「私のこと、好きになっちゃった?」
「ああ、好きになっちゃったかも」
「ふふ、嘘つきだ」
そう言って硝子ちゃんは妖しく笑った。その顔は今までで1番の笑顔だった。
最後の話をやりたかっただけです。慣れない描写頑張ったので高評価ください。
追記:夏油の一人称が「僕」になっててご指摘ありがとうございます。ちなみに普通に間違いです、死にます。