異端の魔族がフリーレンに殺されるまでの話   作:マハトの幻影

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生臭坊主と異端の魔族

 

「人と魔族は分かり合う事ができない、これはもはや少しでも魔族について調べた事がある者なら誰もが知る公然の事実だ」

 

 異端と呼ばれた魔族が存在した。

 

「そして魔族を知る魔法使いは次々にこう言いだす。()()()()()()()()()()()()だと」

 

 それが自らを人間と自称する事はなかったが、魔族であると自ら認めた事もなかったのだろう。

 

「あぁそうだ、そうだとも。マトモに考えればこっちを殺そうとしてくる奴らと仲良くできる訳がないのはすぐ解る、当たり前だ。感性が違う価値観が違う、そして何より罪悪感を持ち得ない存在と人間は相容れない」

 

 魔族の友を持ち、人間の弟子を持ち、それでも尚彼女は人間と魔族のどちらかに着くという事をしなかった。

 

「でもさぁ、諦め切れないんだよ。可能性があると思ってしまうんだよ。どこかに共存の道があるんじゃないかと探し求めてしまうんだよ」

 

 文化、歴史、言語、法則、何もかもが異なる別世界からの来航者。

 片道切符を手に彼女はこの世界に舞い降りた。

 

「それに、僕だからこそ見える道もある……発想を転換させるんだ。そもそも共存に理解が必要なのか?共存に友情が必要か?個人間の友情や相互理解が成しえない事と共存不能はイコールで結ばれていいのか?」 

 

 彼女の思想はこの世界では異端とされるべき物であり、事実として今までにそれを受け入れた人間は誰一人いない。

 

「……確かに、今のままでは無理だ。そもそも人間が理解できない上に捕食対象に歩み寄るメリットがない魔族、そして魔王によって多くを殺され魔族と共に居る必要性もメリットも無い人間、歩み寄れるわけがない。キッカケすら無いのだから」

 

 いや、受け入れた者こそ存在しないが認めた者なら現状ばただ二人のみ実在する。

 人を研究する変わり者の魔族の少女は、彼女の思想に大きな興味を示した。

 黄金を自らの代名詞にする魔族は、彼女を魔族と認める事は無かったが個人的な友好関係を続けその思想の果てを夢見た。

 

「でも、この世界には僕が居る。魔族の脳で魔族の容姿、それなのに人に共感する狂者。異常極まりない化け物が馬鹿らしい思想を持って生まれ堕ちてしまった。そして、君の話を聞きに来た」

 

 彼女の言葉を聞き続ける老齢の男が居た。

 遠距離より映像を有した通信を行い、いかなる場所であると二者間を繋げる魔法。

 映像会話を行う魔法(コームラント)、極小数の存在しか知らず習得難易度がとてつもなく高い為一般には使われていないそれにより画面越しに二人は向かい合っていた。

 

「僕は人類には詳しくても魔族の事を知らなすぎる、人間より少し多い程度にしか知らないんだ」

 

 若い頃は呆れる程に酒を好み生臭坊主と呼ばれた彼も今はもう歳である、そのため酒を控えていたのだがこの日だけは別だった。

 到底シラフで聞ける話ではない、右手には度数の低い酒が握られていた。

 老人の寿命を縮めるほどでは無いが、酔うのには事足りる程度の酒を口に運ぶ。

 

「七崩賢とはよく話した、魔王の生きる理由を聞いた事だってある。だけど、僕はそこらに居る普通の魔族について無知が過ぎると気づいたんだ。賢く強い魔族だけ見て『共存出来るかもしれない』なんて夢見てたなんて滑稽だよね……すまないただの自虐だ、聞き流してくれ」

 

 これほどまでに人間らしい魔族を彼は見た事がなかった、これ程までに人間臭さを醸し出す魔族など彼は知らなかった。

 互いに干渉できない画面越しで相手を欺く意味は多くない、そしてこれほど強い魔族が老いた人間相手に策略を凝らす必要はない、そして何より一つ一つの仕草が人間的すぎる。

 

「それなら何故、よりにもよって私の所に?直接同じ魔族に話を聞けばいいじゃないですか」

 

 彼女の話を聞いていた僧侶がようやく口を開いた。

 

「もちろんそれもしている、並行作業だよ。弟子に優秀な魔法使いがいてね、彼の分身魔法を借りている訳だ。恥ずかしい話だけど本気で共存なんて夢見るようになったのは最近の事だからね、マルチタスクで事を進めないと夢のスタートラインにすら立てない。あぁ、話がズレた。理由だっけ?それなら簡単だ」

 

 彼女は画面越しに僧侶の目をしっかりと見て訳を言った。

 これが、これこそが彼女が異端と呼ばれる原因である事を僧侶は理解した。

 

「飲んだくれ僧侶のハイター。君が勇者パーティーの一員でフリーレンの仲間だったから、これ以上の理由がいるか?」

 

 

 

 

 

 

 

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「フリーレン様、どこへ行くのですか?」

 

 勇者ヒンメルの死から28年後、そしてハイターが死にフェルンがフリーレンと共に旅をし始めてから少しばかりの月日が経った頃、彼らは中央諸国ヴィレ地方を訪れていた。

 宿から一人で外に出ようとするフリーレンに対してフェルンは疑問を呈する。

 また変な物でもコッソリ買ってこようとしているにではないかと思っているのだが。

 

「町外れの丘……フェルンはノングラータって人間知ってる?」

 

「ノングラータ?ハイター様のご友人だった筈ですけど」

 

「そう、さっきこんな手紙が届いたんだ」

 

 そう言いながらフリーレンはフェルンに羊皮紙の手紙を渡した。

 内容は用事があるから丘まで来て欲しいという旨のものだった。

 ハイターから託された物があるのでそれを渡したいとも書かれてあった。

 

「懐かしいですね、この綺麗で整った字を見るとノングラータ様の事を思い出します」

 

「本当にハイターの友達なんだ、なら危険は無さそうだし二人で行ってもいいかもね。フェルンも来る?」

 

「はい、久々にノングラータ様と会いたいので」

 

 

 

 




ノン・グラータとは『好まれざる人』又は『招かれざる客』を意味する。
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