異端の魔族がフリーレンに殺されるまでの話 作:マハトの幻影
・脳を少々弄っていて、フェルンを美味しそうだと思っている。
今回かなり難産でした
原作無視のオリ展開には入らない予定です
原作兵器無双展開はないです
乾いた音、消えた魔族の分身、そして床に落ちたナニカ。
通常ならば罠を警戒するのが普通だろう、気をつけるのが当たり前だろう。
だが、この時のフリーレンはなんの防御魔法も使わずにソレに触れた。
彼女がその時何を思ったのかは定かではないが、フェルンが後に語った話ではいつもとは様子が違かったとの事だ。
「これは……」
触れる、狂れる。
フリーレンの予想通りだった、ソレは武器であるのと同時に情報を蓄積する装置でもあった。
もっとも、フリーレンは「あの魔族はコレを通して何かしらの情報や会話を教えようとしている」とまでしか予想はしていなかった。
その銃火器に内蔵されていた、情報とは。
「ヒロ……シマ……?」
「しかしあの援護射撃は凄まじかったなぁ。フリーレンって思いの他育成能力が高いのかな?それともフェルンに才能があったのか」
レモンパイをテーブルに並べながら、とある魔族は先程の戦いを振り返っていた。
その姿はまるで夕食の支度をする母親のようで、残虐性など微塵も感じさせず、穏やかな空間を生み出していた。
「ただいま先生、話があるけど今空いてる?」
「あぁ、丁度良かった。たった今パイが焼けたんだ、食べながら話そうよ」
ドアを開けて入ってきたメガネの青年の名はラント、ノングラータをも凌ぐ分身魔法の使い手である。
名目上はノングラータの弟子という事になっているが、二人の関係は対等に近い。
彼らは漆を塗った木製のテーブルを挟んで向かい合うと椅子に腰掛けた、目の前には色鮮やかなレモンパイが置かれている。
「いただきます」
ラントはそう良い、ノングラータは無言のまま食べ始めた。
元々この食前の挨拶はノングラータが行っていたもので、少年期のラントは自然とそれを真似していたのだが、いつからか彼女はこの言葉を言うのを辞めてしまった。
なにやら心境の変化があったのだとラントは推測しているが、彼がそれを聞くことはなかった。
一度聞けば暗いエピソードが飛び出してきそうな、面倒くさそうな気配がしていたからだ。
「それで、話って?」
「勇者一行の一人、葬送のフリーレン。僕らに何も告げず、この国の
「ラッタイト地区……ヒューガイストか。魔術と科学技術の混合発展に一番尽力してくれたのは彼だっていうのに、漸く生まれた発明品が日の目を見る瞬間を見せてあげられなかった。後で謝らないとね」
「別に僕らは謝罪を欲してない。貴方が言ってたんだ、銃火器が一般に出回れば人間同士の大戦が起こると。なのに何故、アレをフリーレンに?」
ラントの口調は平坦だ、一見すると責めているようには感じられないだろう。
だが付き合いの長いノングラータには理解できてしまった。
あ、コレめちゃくちゃ怒ってるやつ……と。
「いや、その、これには理由があってさ」
「貴方が何も考えず行動する馬鹿じゃない事くらい僕らは知ってる、聞いてるのはその理由だ」
「……そうだね、まず僕が銃火器を秘匿した理由をおさらいしようか」
レモンパイを頬張りながら立ち上がったノングラータは、魔術でホワイトボードを取り寄せペンを手に取った。
「まず、銃火器がどれほどの脅威なのかはラントも理解してるよね」
「それはもちろん、
「正確には高校の授業で見た戦争の悲惨な歴史ビデオの内容だけど、まぁ覚えてるなら結構」
ノングラータが転生者であるという事を知っている者は数少ない、その内の一人が直系の弟子であるラントだ。
彼は知的好奇心から地球の情報を欲し、魔法を使いノングラータの記憶を見る事でその欲を満たした。
「銃ってさ、強いんだよ。それこそ魔術と鉄の剣に頼りきってる今の戦争の形を根本から変えちゃうくらいに」
予備動作はほぼ無し、持つのに必要な才能はほぼ無し、万人が扱える遠距離殺人兵器。
そんなものが出回ればどうなるかは予測できないが、ロクな事にならないというのがノングラータの見解だ。
「でも、銃だけじゃ意味がない。弾薬に必要な火薬、弾に必要な鉛の鋳造技術、それらが人間にはない」
「……それは人間を舐めすぎでは?フリーレンに与えたサンプルが一つでもあれば魔術による解析を使って複製品を作ることくらい簡単だ。技術は広がる。技術は模倣される。これも先生の言葉だよ」
「あぁ、それはもちろんだよ。重要なのは火薬も鉛玉も量産ができないって事、工場がないんだからさ」
ノングラータの見込みは正しい、魔王が倒された後魔術は『無から有をも生み出す』から『既存の物を変形させる』と言った方向に変化していった。
当然のことながら未だ前者の魔法を使うものもいるが数が少ない、その中で火薬や鉛玉を作れる魔法使いと言ったらそれこそ国に十人いるかどうかだろう。
戦争に用いるのにそれだけの生産体制じゃあまりにも足りなすぎる。
「そして、何より重要なのは僕らの存在だと。ラントも知ってるだろ?山々に囲まれた僕らの街が有る事無い事言われてるって」
そしてノングラータはホワイトボードに地図を描いていく、彼女は長を務める街の全体像を。
「曰く、外界から切り離された地獄、食糧に困らぬ桃源郷。そして、
周囲を囲む巨大な山、そして中央に広がる豊かな自然と畑や田んぼ。
並び立つい家家、そして地下に広がる街の本体。
「周辺国家も薄々勘づいてる。僕らが規格外の戦力を保持しているって事に。だからそんな噂が出てきたんだ。扨、銃火器なんて先進技術が外に漏洩すればどうなる?」
「……十中八九ここが狙われる。更なる技術と銃の量産方法を求めて」
「正解だよラント、その認識で間違いない。ぶっちゃけこの街は軍隊を保持してないからね、最大戦力で有効戦力が僕一人な時点で国家という力に勝てるわけがない。高位の魔術師達が大量に出張ってくれば負けてしまう。滅ぼされてしまう」
ここまではラントとフリーレンの共通認識。
ラント自身もそれなりに戦えはするが、生死を賭けた戦いとなれば逃げてしまうだろう。
彼は面倒事を好まない。
「これが第一の理由。二つ目は魔族と人間のパワーバランスが崩れてしまう事だ」
ノングラータはホワイトボードの裏に大きな長方形を書き、そこに魔族と人間と書き加えた。
「今のところ情報伝達技術も開拓技術もそこまで発展してない。それに加えて魔族はまとまった街を作ったりしないから生活圏もあまり被らない。互いの殺し殺されはしているが全面的な戦争には魔王の死以来なっていないんだ」
そして、ホワイトボードの長方形を縦に二分する線を引く。
「銃は文明の象徴。それを手にするということはあらゆる技術が先に進むということ。長らく停滞していた科学技術の発展開始を意味する……僕のいた地球では人が住んでないところでも『ここはこんな場所』と政府が調べていた」
「成る程ね、ある種の意味で共存できていた今と違い、魔族の位置を簡単に見つけられてしまう。そして銃という兵器を手にした人間は
「だいたいそんな感じ。今現在魔族が存在できてるのは個の力が人間より圧倒的に上だからだ、魔法使いでもなけれは魔族の前に立つことすらできないからだ。それが民間人でもある程度の魔族を倒せる兵器を手にしたらどうなる?魔族は終わりだよ」
「それなら尚更どうしてフリーレンに銃を?」
「あぁ、漸くその話ができる。まぁ、ざっくり言うと──撒き餌だよ。魔族にとっての最大の脅威、ゼーリエを誘き出すための撒き餌」
ゼーリエとは神話の時代より生きる魔法使いを指し、その年齢はかのフリーレンをも超えると言われている。
大陸魔法協会の創始者であり、魔法使いの尊敬を一手に集める存在でもある。
「あの銃には広島に落とされた原爆の情報を詰め込んである」
一瞬、静寂が訪れる。
ラントは今の言葉を飲み込めていないのだ。
数秒して、漸く平静を取り戻したラントは少し大きな声で問いかけた。
「正気か?アレは僕らの切り札で最強の兵器。それをバラすなんて───「しーっ」
ノングラータはラントの唇を人差し指で抑えた。
「大丈夫、全ては僕の思う通りに進んでいる」
常識的に考えればおかしな作戦、だが狂気こそが彼女をここまで成長させた要因。
だからこそ妖艶な笑みを浮かべて、ノングラータは笑うのだ。
「僕を、信じろ」
・二度目ですが現代兵器無双展開はおそらくないです。
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