呪術高専さしすせそ!   作:如月SQ

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みんなで鍋

ああ……!なんて……!

新鮮なインスピレーション……!

これが……

 

 

 

死か

 

 

 

「領域展開」

 

「【自閉円頓裹】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザァアアアア……

 

「…………は?」

 

どこだ、ここ……金色の平原……?

今俺は、虎杖と七三術師と鍵を振り回す術師と戦ってて……。

領域に鍵術師を取り込んだ、筈。

……あれ?

 

「おや、こんな所にお客さんとは」

 

その声に反応して振り返ると、そこには鍵術師が足を組んで座りこっちを見ていた。

いや、本当に鍵術師か?見た目と服装は同じだけど、髪型が違う。額を露出するような髪型だ。

鍵術師は前髪が長くて額隠してたし……ていうかこっちの鍵術師なんか額に縫い目あるし……。

 

しかもなんか座ってるのは椅子というより、人じゃないかあれ?

その直ぐ近くには人の顔が幹にいくつも浮かんだ木?があるし……その木の周りには人体のオブジェみたいなのがあって……。

片手で本を開いていて、近くあるテーブルにはティーセットまである。

俺が言うのもアレだけど、かなり冒涜的な光景の中ですごく寛いでる。

なんというか、いい趣味してるね。

人を使ってる所や、縫い目がある所とか、不思議な親近感が沸くよ。

 

「やぁ。アンタは、何?」

 

「何、ときたか。見た目通りとは思わないのかい?」

 

「俺は魂がわかるからね。アンタが鍵術師の魂を守ってたんだろ?触れても効かない訳だよ……。俺の術式が効かない奴が二人もいるなんてね……ツいてない」

 

「ふぅん、君からはそう見えるのか」

 

「違うワケ?」

 

「間違ってはないね。ま、折角来たんだ。少し話でもしよう」

 

鍵術師っぽい奴はパタンと本を閉じると足を組むのをやめ、本をテーブルに放った。

みるみるうちに奴のテーブルの対面には同じような椅子が現れて、俺を誘っているようだった。

 

間違ってはない、ね……。

つまりこいつ自身の意志で守ってる訳じゃないのかな?

 

「ま、こうやって領域に取り込まれた時点で終わり、か。外はどうなってる?」

 

俺は躊躇いなく、その用意された椅子に座る。

明らかにここは誰かの領域内、取り込まれているし、俺の術式は焼き切れてる。

足掻いても無駄でしょ。

どかりと背もたれに背中をつけて、頭の後ろで手を組んだ。

 

「安心していいよ、君が入り込んだ時点で外の時間はほとんど止まってるようなものさ。少し話そうじゃないか、茶でも飲みながら、さ」

 

「あ、その言い方俺知ってるよ。小便飲まされる奴」

 

「……随分サブカルに染まってるようだね。まぁ、安心しなよ、本当にただのお茶だよ」

 

苦笑するそいつに対して、俺はジャブを放つ。

このまま祓われるのも癪だしね……何か道が開けるかもしれない。

まずは術式の回復までの時間を稼がないとね。

 

「ところで、話終わったら即座に祓われるとかだと口は重くなるよ?」

 

「ああ、安心しなよ。君がこの領域から去るまで、私は君を害する事はないよ。なんなら縛りを結んでもいい」

 

「へぇ……やっぱり好きでここにいる訳じゃないんだ。なら俺が何か手伝ったら鍵術師を殺してくれたりするの?」

 

「ふふふ、どうかな。今の君に出来るかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢乃先生!ナナミン!」

 

校舎の窓から飛び降りた悠仁は、何事もなかったかのように着地し、排水溝に鉈を振り下ろしている建人を見つける。

その網目の排水溝には何か蠢く物が吸い込まれていくのが見えた。

 

「バイバァーイ。中々……面白かったよ」

 

バゴンッ!

 

「ちっ……!」

 

建人の鉈は蓋を破壊するも狙いは空を切り、逃してしまう。

逃したのは建人が以前遭遇した特級呪霊、名は真人。

現在いる高校での騒ぎ、その騒ぎを起こした少年を煽動したと思われる呪霊。

それを見す見す逃してしまった建人は舌打ちを鳴らした。

 

「下水道か……領域展開まで会得した特級放置はマズイけど……出来れば傑クンが欲しいなー……」

 

「無い物ねだりをしても仕方ありません。此方で唯一有効打となりえる虎杖君を活かして祓うしか……」

 

ドサッ

 

「うっ……」

 

そこで悠仁が突如尻餅をついた。

意識ははっきりしているが、顔色が少し悪く見受けられる。

これは先刻までその騒ぎを起こした少年と、真人、両名と争っていた影響のようだった。

空はそれを暫く見つめ、肩を落としてため息を吐いた。

 

「……ここまでだね。奴を放置はしたくないけれど……傑クンも悟クンも長期任務、今から誠一クンを呼んでも間に合わない。有効打を放てる虎杖クンも限界……」

 

キン、と音がして空が持つ大きな鍵が、小さな鍵へと変化する。

それを見た建人も、乱れたネクタイを直した。

 

「……仕方ありませんね。今回の任務は終了です」

 

「悠仁!」

 

そこに、学ランを着た少年が悠仁の元へと駆け寄ってくる。

昨日の建人と悠仁の受けた任務、映画館の変死体発見事件の重要参考人。

その1日だけで接触した悠仁と友情を築いた少年。

そして……今ここ、里桜高校で非術師に対し、呪術を行使した疑いのある少年。

吉野順平が、悠仁の傍らで膝をついた。

その瞳には涙が浮かび、心配そうに悠仁の手を取る姿からは、そのような凶行に走ったとは思えなかった。

 

「あんな純粋そうな子を呪いの世界に引き込んだ、あの呪霊。逃しちゃってごめんね……」

 

「……いえ、夢乃さんで無理なら他のどの一級でも無理でしょう。奴はそれだけ厄介でした。……吉野順平、彼は呪術規定では」

 

「見てみなよあの二人を」

 

大丈夫と言って微笑む悠仁と、泣きながらも喜ぶ順平。

昨日出会ったばかりなのに、二人の間には確かに友情が存在していた。

 

「ふふ、若人から青春を取り上げるなんてのは、何者にも出来ない……だってさ。彼らを地獄に叩き落とす為の準備期間くらい、気儘に楽しむべきだと、ボクも思うよ」

 

悟クンからの受け売り!

そう言ってニッと笑う空に、建人は小さく息を吐きながら頷いた。

 

「ふぅ、まぁあの人にしては良い事言いますね」

 

「ねっ!ま、報告書とかは後でボクが纏めとくよ。二人は一先ず誠一クンに頼んで……ボク達は約束通りご飯行こっか。建人クンも疲れたでしょ?」

 

『七海も灰原も疲れただろ。帰りに飯くらい奢ってやる』

 

高専時代の記憶が建人の脳裏に浮かび上がる。

髪を短く切り揃えた鋭い眼光で、視線を反らしつつも此方を思いやる、手放しで尊敬出来る先輩の一人だった。

口は悪いしそんなに強くもない、けれども優しい先輩だった。

 

昔の空のビジョンが顔を赤くしながら睨み付けたと同時にその姿は薄れ、今のポヤポヤとした空が首を傾げて此方を見ていた。

 

「何食べたい?」

 

「ふっ……では、ラーメンでも」

 

「いいねっ!」

 

小さく笑みを浮かべた建人の提案に、空はパアッと笑顔を浮かべた。

二人は笑みを浮かべあいながら、悠仁と順平に近付いていく。

今回の任務はそう良い結末ではなかった。

これからの不安も残る、後味の悪い物となった。

けれど、皆生きてる。

悠仁と順平の友情は、青春は続く。

それを思えば、そう悪い結末でもないだろう。

 

空はそう考えつつも、自分の頭に潜む脳ミソを小突いた。

 

「なんか、企んでるでしょ」

 

『何の事かわからないな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅん、成る程ね……」

 

俺は吉野順平という少年を前にして、腕を組んだ。

順平はなんでも苛められていたらしく、それを呪術を使って仕返ししたのだという。

まあ、それだけ聞いたら憂太みたいなもんだろう、ただただ上層部が五月蝿いだけだ。

だが、問題なのは理知的な特級呪霊と関わりがあった、という事だ。

オレと悠仁が遭遇した火山との関係もあるかもしれない。

だから情報を欲した上層部が更に五月蝿かったが、気にしない事にした。

一先ずは俺預かりって事にして、悟や傑が戻ってきたら特級権限で色々やって貰うとしよう。

だがまぁまずは、目の前で俺を少し怯えた目で見る少年と会話する事としよう。

 

「順平、って言ったか?」

 

「は、はい!」

 

「俺は禪院誠一。この高専の食堂を切り盛りしてる。これから美味いモン沢山食わせてやるから、宜しくな!リクエストあればなんでも作ってやる!好きなもんはなんだ?」

 

「え、て、天津飯とか」

 

「おお!じゃあ明日作ってやるよ。今日は……歓迎会って事で、同学年、一年で鍋でもつついて親睦を深めてくれ」

 

「鍋かぁ……少し季節外れじゃないッスか?」

 

「いつ食っても鍋は美味いと思うけどな。ま、もう鍋の仕込み終わってるから、野薔薇と恵来たら食え食え」

 

少し不安げな顔を浮かべる順平に、俺はその頭に手をのせてやる。

 

「そう不安がるな、皆いい奴等だぞ?それに今日は色々あって疲れただろう?美味い飯をたらふく食って、ゆっくり休め。これからの事はそれから考えろ」

 

「……はい」

 

頷いたが……まあ、そう簡単切り換えれる事でもないか。

ま、俺に出来るのは美味い飯を用意する事だけだ。

しっかりと仕上げするとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、鍋?」

 

「いやぁ、親睦深めて貰いたくてな。あ、おかわりあるからな?」

 

カセットコンロの上で土鍋でグツグツと煮られる鍋。

四角テーブルで悠仁、恵、野薔薇、そして順平がそれを囲んで座っていた。

 

「しっかり味はつけたからそのままでもいけるが、ポン酢やごまだれもオススメだぞ。さ、たっぷり食べてくれ!」

 

「「「「いただきます」」」」

 

怪訝な顔の野薔薇だが、鍋は本当にいつ食べても美味いからな。

白菜、大根、人参、長ネギ、しめじ、えのき、糸こんにゃく、白滝、つみれ、鳥肉、タラ、鮭……具沢山で美味いぞー?

 

「それで、虎杖、そいつは?」

 

恵が早速自分の取り皿に取り箸で具材を取りながら、向かいに座る順平を見る。

順平がビクリと体を跳ねさせる一方で、タラを口に放り込みながら、悠仁が答えた。

 

「はふっ……吉野順平!元々一般人で、色々あってこれから同級生になるんだぜ。いい奴だよ」

 

「ふぅん……はふっはふ……宜しく。俺は伏黒恵だ」

 

「よ、宜しく。吉野順平、です」

 

「はぁい宜しく。私は釘崎野薔薇。一年の紅一点よ。…ふー、ふー……はむ……」

 

恵はそのまま、野薔薇はポン酢で早速か。

二人とも美味そうで良かった。

はふはふと熱そうに食べる姿に、順平は少し顔を赤らめ、悠仁に体を寄せた。

 

「……釘崎さん、可愛いね」

 

「え、順平もしかして」

 

「い、いや、そう言うのじゃないよ……!」

 

耳打ちでこそこそと会話する二人だが、近いからか野薔薇にも聞こえてるし、なんか嬉しそうだ。

 

「ふふんっ、なかなか見る目があるじゃない。虎杖と伏黒は吉野を見習いなさい」

 

「はふ……んっ、このつみれ生姜が効いててとても美味しいです、禪院さん」

 

「そりゃ良かった。まだまだあるからな」

 

つみれを食べた恵が目を輝かせて俺に言ってくるが……いいのか?野薔薇がめっちゃ睨んでるぞ。

 

「ほら、見てないで順平も食えよ!禪院さんの料理マジでどれも美味いから!」

 

「う、うん……!」

 

突然顔が凶悪になった野薔薇にビビって顔を強張らせながら、順平は具材をひょいひょいと少し控え目に取った。

 

「はぐっ……あふ、はふ……」

 

「どう?」

 

咀嚼している順平の顔は熱さに悩む顔から、目を開き、うんうん、と何度も頷く。

 

「ん!美味しい!味が丁度良く染みてるし、歯応えも良くて……はむ……んー!」

 

「だろー?にしし!」

 

目を輝かせて食べ進める順平の様子に、胸を撫で下ろした。

いやぁ、良かった。

いつかの傑や、高専に来たばかりの憂太と同類っぽかったから心配だったが……根は優しい良い子なんだろう。

だからこそ、まずは美味いもんを食って、心の余裕を取り戻してくれ。

悠仁と談笑しながら食べ、野薔薇と外の流行りについて話、恵と高専について話し……。

笑う君に、これから良い未来が来る事を願ってるよ。

俺は減ってきた鍋の中身を追加しながら、そう願った。




誤字報告ありがとうございます!
修正しました。

これからの話

  • このままストーリー継続
  • もっと飯中心にまったり進行
  • そもそも過去に何が?
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