他小説にかかりきりになっておりました。
まぁでもそちらが一段落つきましたので、ついでに匿名投稿を解除しようと思います。
まぁ、だからなんだという話ではありますけどね。
更新スピードはそう早くはないと思いますが、良ければこれからもお付き合いください。
「邪魔をする。少し見ててもいいだろうか?」
一人で仕込みをしていると、そんな言葉と共に張相が厨房に顔を出してきた。
和風にアレンジされ、袖の広くなっている高専の制服を身に纏っている。
「お、そうか、今日は空いねぇのか。いいぞ、手を洗うとかを最低限やって貰えれば俺は構わねえぞ」
「感謝する」
ペコリと行儀よくお辞儀をした張相は、俺の言う通りに手をしっかりと洗う。
そうして俺の姿がよく見える……けれど邪魔にならないような所へと移動して、そのままじっと此方を見つめてきた。
ふむ……?
いや、よく見ると仕込みをしてるゴム手袋を見てる……か?
俺は料理をする時、人手として【醤油操術】を使う時がある。
俺は縛りによって醤油を戦いに使う事が出来ないが、こういう料理なんかには好きなだけ使う事が出来る。
それの応用の一つが、醤油を入れたゴム手袋を使っての調理だ。
微細なコントロールが要求されるが……まぁ、このくらいは出来ねぇとな。
張相の視線は、それらの宙に浮いて野菜を切り続けているゴム手袋に向いてるように思う。
ふむ……確かこいつの術式は加茂家相伝の【赤血操術】だったか。
液体操作系の術式において、間違いなく頭一つ飛び抜けた応用力を誇る術式だ。
例えば、俺が使う【醤油操術】はどうあがいても醤油のみが操作の対象だ。
俺が無理矢理自分の認識を弄って醤油だと思い込んでやっても、普段操れるのは少なくとも醤油を混ぜた液体くらい……。
だが、【赤血操術】に関しては自分の血でなければならないが、血が付着した物すら操れる。
物理的な威力を出す為に様々な工夫が必要な液体操作系にとって、その差はでかい。
さて、そんな【赤血操術】を持つ張相が、なんでこうも熱心に見つめてるんだか。
「なんか気になる事でもあったか?」
「む……いや、料理がどう出来ていくのかが見てみたかった。
誠一の作る料理はいつも美味い。いずれ弟達にも食べて貰いたい。
そう思った時に、そもそもどう作っているのかが気になった。
……術式を味付け以外にも使っているとは思わなかったが」
「はははっ。ま、使えるもんはなんでも使えってな。しかし、そうか……成る程な」
料理への興味、か。
いつも残さず食ってるから楽しんで貰えてるとは思ってたが、興味まで持って貰えるとはな。
……ふむ、仕込みは大体終わったし、時間はあるか。
なら、ちょいと体験でもして貰うかね。
「なら、ちょっとやってみるか?料理」
それに張相は少し驚いたように目を見開いてから、ペコリと頭を下げた。
「ああ、やってみたい。お願いする」
「まぁまずは肉野菜炒めでも作ってみるか。まずは材料を切る所からだ」
「ああ、わかった」
「具はキャベツ、ニンジン、ピーマン、もやし。
ニンジンは本来皮があるが、そこは剥いといた。
ピーマンはヘタをとって、中の種を取り出しておく。
これで後は食べやすいサイズに切るだけだ」
「わかった」
「キャベツは、一口大にこう。ニンジンは、こんな感じ。
ピーマンはこうだ。もやしは切らないが、洗った後しっかり水切りしておいたほうがいいな」
「ふむふむ……」
「包丁を使う時、切るものを押さえる手は、間違って切らないように、こう。
猫の手って言われてるな。ゆっくりでいいから、正しく包丁を使っていこう」
「ああ……む、上手く切れないな」
「そうだな……こう、前に押し込むように刃を入れて、引いて切る感じかな?」
「こうか?おお」
「そうそう、上手いぞ。後は肉だな。豚バラがあるから、今日はこれを使ってみるか」
「これは切らなくていいのか?」
「そうだな、肉のサイズは好みなんだが……この豚バラなら半分にしてもいいかもな」
「わかった……む、野菜とはまた違うな」
「そりゃな。……けど上手いな。飲み込みが早いぞ、偉いな」
「誠一の教え方が上手いたけだ」
「さて、後は焼くだけだが、実は野菜によって火の通り方が違くてな、全部同時に焼くと上手く火が通ってない、なんて事がよく起きるんだ」
「成る程」
「それと肉は焼きすぎると固くなるし、野菜より火が通りやすい。だが、旨味が出るから最初っからいて欲しくもある、なかなか難しい食材なんだ」
「成る程、そういう場合は?」
「最初にさっと火を通してフライパンに肉の旨味を残して、そこで野菜を焼いていくんだ。油引いたな?」
「ああ」
「中火で肉をさっと焼く。色が変わるくらいでいいぞ。塩コショウだけして一旦退避だ」
じゅぅう
「わかった」
「そうしたら強火にして、フライパンが温まれば、そこにニンジンを投入だ」
じゅううう
「……成る程、肉からエキスが出てるのか」
「そうそう、そんてニンジンに火が通ったら、キャベツ、ピーマン、もやしを投入」
じゅわわわわわ
「……いい匂いだな」
「だな。そのまま焦げないように適当にかき混ぜて……ん、そろそろか。キャベツがしんなりし始めただろう?後は肉を戻して味付けだ」
「味付けは?」
「料理酒、醤油、オイスターソースに鶏ガラでいくか。……ん、こんなもんだな。ほれ、これ入れて全体に味を馴染ませていくんだ」
じゅわぁっ
「……一段といい匂いだ」
「これで後は馴染んだら完成なんだが、一応ちょっと味見してみな。足りないもんがあればここで足すんだ」
「わかった……あむ……(ジャキジャキ」
「どうだ?」
「む!美味い……!」
「そうか!それ、お前が自分で作ったんだぜ?どうだ?」
「ああ……悪くないな」
「そんじゃ、皿に盛り付けないとな。それ以上火を通してもよくないからな」
「ああ。わかった」
見事に完成した野菜炒め。
いい香りをさせてやがるぜ。
いやぁ、なかなか筋が良かったな。
張相も無表情ながらキラキラして嬉しそうだし、良かった良かった。
ガラララッ!
「誠一さんっ!」
そんな時、少し慌てた様子の悠仁が食堂に飛び込んできた。
「おっ?どうした悠仁、まだ朝の五時半だぞ」
「緊急任務!悪いんだけど、なんか食うもんない!?」
「食うもんって……米は炊けてるが……」
そこで俺の視界に入ったのは張相の作った野菜炒めだった。
俺と張相で食おうと二人前作ってたが、悠仁なら丁度良い量か。
チラ、と張相に視線を向けて、俺は両手を合わせて張相に頭を下げた。
「張相、それ、悪いが悠仁に食わせてもいいか?」
「む、構わない。作れただけで満足だ」
「悪いな。悠仁!ご飯は炊けてるからよそっとけ!」
「はーい!」
茶碗に山盛りご飯をよそった悠仁の席へと、完成したばかりの野菜炒めを置いてやる。
ほかほかと湯気をたてるご飯を手に戻ってきた悠仁は、席について手を合わせた。
「ありがとう誠一さん!いただきます!」
早速とばかりに野菜炒めに手を伸ばし、それを口に運ぶ悠仁。
背後で張相が息を飲んだのが不思議とわかった。
もぐもぐと咀嚼した悠仁は。
「んっ!美味っ!」
カッと目を見開き、キラキラと輝かせた。
ご飯をそのまま掻き込む悠仁は、口をパンパンにして、幸せそうに笑みを浮かべていた。
「んぐ。美味いっすねこの野菜炒め!シャキシャキとした歯応えも良くて、いくらでも食えそうだ!あむっ!」
そこまで言った後は食べる手を止めず、次々と頬張っていく。
みるみる内に減っていく野菜炒めと山盛りのご飯。
笑顔で食べ進める悠仁……そしてそれを見守る張相。
ふと見たその顔には、自然と笑みが浮かんでいた。
「ご馳走さまでした!誠一さん、美味しかったっす!」
「礼なら張相にしな。それ作ったのこいつだからな」
「マジか!張相……さん?料理上手いんスね!ご馳走さま!」
「……ああ」
「それじゃ、任務行ってきます!」
「作った料理を誰かに食って貰う……笑顔で食べて貰える……悪くないだろ?料理人冥利に尽きるってもんよ」
「ああ、悪くない…………。誠一、これからも料理を教えて貰ってもいいだろうか?」
「はははっ!大歓迎だ!気が向いた時、いつでも来てくれていいぞ!」
それから張相は、食堂で料理する姿がよく見かけられるようになる。
得意料理は野菜炒めだ。
これからの話
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このままストーリー継続
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もっと飯中心にまったり進行
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そもそも過去に何が?