呪術高専さしすせそ!   作:如月SQ

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交流戦の内容飛ばしてるのに三話になる、だと……?
自分はさっさと東京、京都の面々で楽しくバーベキューを書きたいだけなのに……。
全部しっかり書いてる作者の方々には頭が下がりますね。


バーベキュー・焼き

 交流会が始まる前……今回参加する京都校の生徒達は、学長である楽巌寺学長から、直接告げられた言葉があった。

 

「宿儺の器、虎杖悠仁は殺せ」

 

 保守派筆頭である楽巌寺学長の言葉に、生徒達の反応はまちまちであった。

 責任は問わない……そんな保証をされようと、人を一人殺すというのだから、それも当然である。

 三年の東堂葵等は激昂してその場から去って行ってしまったが、概ね、学長が言うなら……という雰囲気を醸し出してもいた。

 特に御三家である加茂憲紀はもしも宿儺が復活したら……等の最悪を考えると当然かと割り切り、納得していた。

 三年の紅一点である西宮桃は、それが指示なら従うという態度で平然と様子を伺っている。

 一方で少し交流のあった二年の禪院真依は複雑な表情を浮かべていた。

 同じく二年の三輪霞は呪術師としては珍しい真っ当な感性の持ち主である為、内心で嫌だなぁ、と呟く。

 それらを見た目がまるっきりロボな究極メカ丸が、口を挟まずに眺めていた。

 

 そんな、少し重い雰囲気の中、憲紀が覚悟を決めたような表情で口を開く。

 

京都校(わたしたち)全員で虎杖悠仁を――」

 

ポンッ

 

「憲紀君に皆ー、怖い顔してどないしたん?」

 

「っ!直哉、先生……」

 

 重々しく告げようとした所で、その頭に突然手が乗せられた。

 驚く憲紀を、直哉は悪戯が成功したかのように笑みを浮かべて、京都校の面々を見渡す。

 

「どーせ学長になんか言われたんやろ?悠仁君を殺せ……とかか?」

 

「そう、です。宿儺の器は、生きてるだけで危険ですから」

 

 言い切る憲紀を見つめ、直哉は大袈裟にため息をつき、肩をすくめて首を振った。

 

「はぁー。そないなモンな、学生が背負うもん違うやろ」

 

「兄さん……」

 

 真依は思わず安堵したように息を吐いた。

 呪術師になったのだから人の命を奪う事もこれからあるのだろうけれど……知り合いを心から納得出来ずに殺す、そんな覚悟まではまだ出来ていなかった。

 

「悠仁君の事は悟君達が責任持つ言うとる。

 仮になんかあっても、悟君達に任せとけばええ。

 それでもなんかあれば、歌姫ちゃんも、僕もおる。

 君らはまだ学生なんや、好き勝手やってればええねん。

 ……東堂みたいにまでなると、流石に困るけどな」

 

 最後に冗談っぽく苦笑を浮かべて言う直哉に、京都校の面々の雰囲気は晴れていく。

 それは、責任を持って処する覚悟を決めていた憲紀も同じであった。

 やはり、心の何処かには忌避感があったのだろう、安堵している自分に気付いてしまっていた。

 

「ですが!うわっ」

 

 それを振り払いように声を荒げる憲紀の頭を、直哉はぐしゃぐしゃと乱暴に撫でた。

 

「呪術師としちゃ立派やけどな。まだ君達は学生や。

 憲紀君や桃ちゃんなんて交流会最後なんやで?

 そんな汚い大人の事情なんて関係あらへん、しっかりアピールせんとな!」

 

「でも、いいんですかね……学長の言葉無視しちゃって」

 

 霞は俯き、少し心配そうに呟く。

 

「あないな老いぼれの話なんて聞く意味ないわ。

 なんなら僕に脅されたーとでも言っとけばええ。

 てか僕から後で言っとくわ。だから、君達はなーんも気にせんと戦ってき!」

 

「……ありがとう、兄……先生。しっかり勝って来ます!」

 

「その意気や。東京校なんかに負けるんやないで!」

 

 直哉のその激励に、皆はそれぞれ小さく笑って頷いた。

 これらの言動、直哉は今正しい呪術師ではなかっただろう。

 だが、彼はこの時、誰よりも正しく先生であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「交流会かぁ、思い出すわ。三年の頃は楽しかったで」

 

「直哉先生の実力なら、一年の頃からぶいぶい言わせてたんじゃないんですか?」

 

「阿呆か。一年の時も二年の時も悟君と傑君にボッコボコにされとったわ」

 

「あー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんなぁ、これは京都校(ウチ)の生徒達の晴れ舞台なんよ」

 

ゴスッ

 

「うげっ」

 

「折角気持ち良く()れるように説得して送り出したんよ」

 

ドスッ

 

「おごぅ」

 

「それをなんや?ハンガーラック?気色悪いわ!」

 

ズドッ!

 

「おっぼぇえ」

 

「何よりなぁ、五条五条って、僕を完っ全に無視してるその準備や態度がムカつくわ!」

 

ズドンッ!

 

「ごぼっ!」

 

「ドブカスが……」

 

 直哉の足元で、スキンヘッドの男……呪詛師である組屋鞣造は倒れ、腹部に蹴りを叩き込まれ、悶絶していた。

 既に両脚は膝が真横にひしゃげ、斧を持っていた右腕は逆方向に折り畳まれていた。

 

「ラック……」

 

 それでも唯一無事な左手で、斧を握ろうとするのは見上げた根性の持ち主であった。

 だがそれも。

 

「もう寝とけ」

 

 顎を蹴られて脳を揺らされた結果、目玉がぐるりと回り白目を剥き、鞣造の意識は闇に飲まれていった。

 

どしゃ

 

 漸く沈黙したのを確認した後、直哉はその無事だった左腕も丁寧にへし折り、腕を組んで息を吐き出した。

 

「さて、こいつが関与してるのは確実やけど……どないするかな」

 

 森から感じる肌を刺すピリピリとした圧力に、未だに脅威は去っていない事を察するが、このハゲからも話を聞かなければならない。

 殺さないように手加減する必要があった為に、多少時間をかけてボコっておいた。

 そんな手間をかけたハゲを放っておいて、死なれても困るが……。

 

「既に一人確保しておったか、流石だの」

 

「ええ所にもう一人ハゲが来たわ」

 

「は?」

 

「そいつよろしゅう」

 

 直哉は現れた楽巌寺学長へと男を蹴り飛ばすと、即座にその場から立ち去る。

 向かう先は強い呪いの気配のする場所。

 直哉は加速し、その場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その道中で上がる、いや砕ける帳。

 視認する、目から枝の生えた、恐らく特級の呪霊の姿。

 それと対峙する悠仁と東堂の姿。

 一先ず無事な姿に安堵の息を吐く。

 

 だがその直後、直哉の額に冷や汗が浮かぶ。

 感じる、特級呪霊の圧力なんざ比べ物にならない程の呪力の高まりに。

 

「何ぼさっとしてんねん!」

 

「え、直哉先――」

 

「ぬ――」

 

 二人の前に立ち、直ぐ様二人を肩に担ぐ。

 そしてそのまま即座にその場を離脱し――――

 

ゴゥッ!

 

 轟音と共に放たれた凄まじい破壊が、森と、その呪霊を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒。

 

 上下左右、全てが黒に染められた空間。

 そこにぷかりと浮かぶ存在が一つ。

 全裸で目を瞑る、人間のような姿のそれは、全身にツギハギだらけ。

 眉間には皺が寄り、歯を食い縛る姿は何かを堪えているようだった。

 

「『醤油』」

 

 だが、黒の奥から言葉が響き、その表情ががらりと変わる。

 眉間の皺は取れ、目尻は穏やかに、口元は自然と吊り上がっていく。

 強ばっていた四肢からは力が抜け、その身を黒に任せた。

 閉じていた瞳がゆっくりと開かれ、弧を描いていた口が言葉を紡ぐ。

 恍惚とした表情で、特級呪霊、真人は呟いた。

 

「俺は、醤油だ」

 

パシャッ

 

 瞬間形を保っていたツギハギだらけの体が黒に変わる。

 周囲の黒と同化して、全て同じになる。

 暫しその空間には静寂の時が流れ……。

 

「ちっ……」

 

 その黒の中で唯一形を保っている存在の舌打ちが響いた。

 先程まで形のあった場所に足が現れ、パチャ、と液体を踏んだような音が鳴る。

 

「やられた……こいつ、本体じゃねぇ」

 

 この空間、【黒天天ヶ原】の主、禪院誠一は、そう呟いて足元の黒い液体を掬った。

 特級にしてはあまりにも手応えがない。

 宿っている呪力も、大したものではない。

 祓えなかった苛立ちと共に、掬った黒を握り締めた。

 

「……目的は、陽動か。

 だがな、醤油なめんなよ!てめぇは、醤油だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は醤油……やっべ嘘だろゴボッ!」

 

 帳、特級呪霊、呪詛師、更には自身の分身、それらを囮にして高専内に侵入し、忌庫へと侵入する直前だった真人。

 分身の消滅に気付くと同時に勝手に自分が口ずさんだ言葉に衝撃を受けた。

 口から溢れる黒い液体、芳醇な香りや強烈な塩味にえずく間も無く、自分自身が書き変わっていく感覚に、背筋に寒気が走った。

 自分の魂の形が変えられていく……!

 

ビチャビチャビチャ!

 

「む、『無為転変』……!」

 

 即座に術式を使い自らの魂の形を保つ。

 幸いにも、本気で自分自身に術式を使えば少しずつ醤油に変えられた部分を元には戻せそうではあるが……本人が近くにいたり、直接術式を使われたり、領域に取り込まれなんてすれば……。

 

「今度こそ醤油に変えられて終わりか……ははは!」

 

「……こっちで音がしたような」

 

 思わず笑ってしまった真人のほうに、忌庫の番人が様子を見にきてしまう。

 術式は全力で自分に使い続けなければ、醤油にされてしまう。

 帳が上がるまでという時間制限もある。

 もし騒ぎを起こして鍵術師に見つかれば、禪院誠一が気付けば、五条悟と出会えば、自分は終わりだ。

 産まれ落ちて、ここまでの危機はない。

 

 だが、真人の口は酷く吊り上がっていた。

 

「これが縛りプレイってヤツか!禪院誠一に見つかったペナルティ、なんなら殺しもなしで行ってみるか!」

 

 呪力が満ちる、気力が満ちる。

 口から垂れる醤油を乱暴に拭い、知らず自らに課した縛りにより、真人の天性のセンスは研ぎ澄まされていく。

 

「……なんだ?黒い……水……?」

 

 その場から離れて身を隠し、自分が先程吐いた醤油を怪訝な表情で見下ろす術師の背後へと回る。

 首に腕を回し、即座に締め落とす。

 

「っ!っ…………!!!」

 

 抵抗虚しく、声も上げる事なく、忌庫番の一人は気絶させられてしまう。

 動きが止まったのを確認した真人は、肩をぐるりと回し、唇を舌で舐めた。

 

「しょっぱ。ははは、面白くなってきたな!」

 

 その後、真人は見事に目的を果たし、見事に高専を脱出する事に成功する。

 失われたのは高専が保管していた宿儺の指、七本。

 忌庫番は負傷のみで、気絶させられていた所を発見されていた。

 その場に残されていた黒い水が醤油だというがわかった。

 その為禪院誠一がこれらの襲撃に関与している可能性があるとの事で、上層部から拘束命令が下った。

 

「頭腐ってんのか?誠一がそんな事する意味ないでしょ」

 

『今私は任務で海外にいるので。あなた方が一番ご存知の筈では?』

 

「えー、パス。誠一クン、呪霊逃して結構殺気だってるから、今は大人しく料理させてたほうがいーよ」

 

「アホくさ。くだらん事言うてる場合かカスが。

 そない暇なら、僕が捕まえた呪詛師でも尋問しとったらええんちゃう?」

 

「え!無理無理無理無理!私があの子をどうにか出来る訳ないです!」

 

 下っただけだった。

これからの話

  • このままストーリー継続
  • もっと飯中心にまったり進行
  • そもそも過去に何が?
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