アンケート的にはそこまで過去編なくて良さそうなので、ストーリーを続けていこうと思います。
……ちなみにこの作品、原作における渋谷事変で終わりです。
ジャッ!ジャッ!ジャッ!
交流会二日目……トラブルは大いにあったものの、一先ず続行となった交流会。
本来なら二日目は個人戦、呪術師としてこれから生きる為に自分の実力をアピールする重要な場だ。
……なのだが。
『僕、ルーティーンって嫌いなんだよね』
とある馬鹿目隠しの謀により、二日目は野球となっていた。
ただ決まってしまったからには仕方ないと、粛々と準備する中で、妙に歌姫が張り切るとかいう一幕があったみたいだ。
一日目の団体戦に参加した者に加え、見学していた順平と京都校の新田新も参加し、7人でプレイボールとなったらしい。
その一方で、京都校の引率の一人直哉は帰ってこず、東京側も空が欠席。
まあそれでもなんだかんだと皆、楽しそうに野球をしているみたいではある。
そんな中で俺は……一人調理場に立っていた。
そして、一心不乱に中華鍋を振る。
中で踊るのは米と卵のみ。
ジャッ!ジャッ!ガシャッ!カンッ!
味付けは塩と胡椒……仕上げに香り付けの醤油。
パラパラになったのを見計らい、皿に盛り付け、完成したのはなんの変哲もないチャーハン。
具はなし、卵のみの、黄金チャーハン。
それを前にし、レンゲを手に取った俺は、そのまま掬って口に放り込んだ。
「はぐっ」
もぐもぐと咀嚼し、味わい、食感、味、風味を感じとり……。
「くそ……」
その出来の悪さに、思わずレンゲをテーブルに叩き付けた。
「失敗したのか?珍しいな」
「……張相、居たのか。悪い、見苦しい所見せたな」
ははは、と笑って誤魔化す。
張相はそんな俺を見て何を思ったのかは知らないが、いつの間にやらレンゲを手に取り、テーブルに置いたままのチャーハンを指差した。
「……食べてみてもいいか?」
「ん、ああ……いいぞ。出来は悪いけどな」
「いただきます……。はぐっ」
礼儀正しく挨拶した後、張相は俺の作ったチャーハンを頬張る。
もぐもぐと味わう様子の張相は、ゴクンと飲み込むと少し驚いたように目を瞬かせた。
「美味い……パラパラとしてるのに米一粒一粒に卵が絡んでいてしっとりと、油が程よく飛んでしつこくなく、程好い塩味に、醤油の風味が鼻を抜けていく……。
これが失敗とは思えんが……はぐっ」
続けて二口目を頬張る張相に、俺は苦い顔を浮かべてしまう。
「いや、よく見ると卵が上手く絡んでない部分があるし、所々パサついていて、味付けにむらが出てる。
……雑念、だな。真人とかいう呪霊をまんまと逃した事に苛立ってるみたいだ」
そんな雑念を料理に持ち越してしまうとはな……俺もまだまだだ。
だが、真人は危険性から見ても、祓わなければいけなかった。
魂の繋がりから、本体も幾分か醤油に出来た手応えはあったが、その後からは手応えなし。
奴の術式が俺の術式に抗えるという事がわかっただけで、俺達は奴等に見事にしてやられてしまった。
次に術式を叩き込んだ時、奴を祓える自信はあるが……それまでにどれだけの犠牲が出るか。
「……んぐ……誠一、貴方の疑念は最もだ、話を聞く限り確かに性質の悪い呪いである事は疑いようもない。
祓えていれば最上だった……それは間違いないだろう。
だが、それは貴方一人で背負う物ではないのではないか?
あの時、五条も母さんも夜蛾も、補助監督も……忌庫番もいた。
だが結局は高専に侵入した奴を取り逃した……それは貴方だけの責任ではないだろう」
「そりゃあそうだがな……」
思わず後頭部をかく。
確かにその通りだが……奴に通用する手が限定されてる都合上、俺にはあの時奴を仕留めきらなければいけなかった。
もしも他の呪術師が真人と遭遇すれば……命は保証出来ないだろう。
だが、そんな悩む俺に、張相は真面目な顔で言葉を続ける。
「それに、そんな難しい顔で料理するのは誠一には似合わない。
昨日のバーベキューの時のように、笑うべきだ。
笑って、楽しんで、食べて貰う人に喜んで貰う。
それで作り手である俺達も喜ぶ。
俺は貴方に料理とはそういうものだと教えて貰ったんだ」
「張相…………そうか。……そういうもんだったな。
ちょっと、気負いすぎてたか。
ありがとよ、張相。目が覚めたぜ。
しっかし、お前に諭される事になるとはな……」
照れ隠しに後頭部をガリガリとかく。
張相は過ごしてきた時間こそ長いが、最近産まれたばかりのようなもの。
料理の腕もあがってるし、その成長には毎度驚かせられるな。
「ああ……俺はお兄ちゃんだからな。
弟達の手本となるように、人として立派に生きていくつもりだ」
「立派なもんだぜ、お兄ちゃん」
お兄ちゃん、か……禪院の兄弟の繋がりなんて……。
っと、ダメだダメだ、際限なく暗くなっちまう。
明るく行こう、料理はまず俺が楽しまねえといけないからな。
よし、ならまずは!
「はぐっ、はぐっ!」
戒めとしてこのチャーハン食って、やる気出すとするか!
バクバクと頬張り、味わう。
うーん、やはりいまいち……まぁ、悪くはねぇか!
「む……食うのか……」
そして、張相が少し残念そうに俯いたのを見て、俺はもう一つチャーハンを作る事になる。
完成したチャーハンは満足出来る出来で、頬張った張相はその目を輝かせていた。
うん……やっぱこれだな。
「あ、そうだ誠一にお願いがあってきたんだ」
「お。なんだ?」
「栄養のつく料理を沢山用意して欲しいんだ」
「?なんでまた。誰が食うんだ?」
「母さんが今、壊相と血塗を産んでいるから、その回復の為に」
バキバキッ!
ブシュッ!
「おぶっ……ゴポッ……はぁ、はぁ……」
高専内、とある窓のない一室。
空の腹から、血塗れの腕が飛び出していた。
空の体を内側から壊し、夥しい血を流しながら。
「ッ……空っ!今治し―――」
「はぁ、ダメだよ、硝子ちゃん……言ってたでしょ?
この子達が、はぁ、ボクの体から出てくまで、はぁ、治しちゃ、ダメ……」
達、の言葉通りに腹から飛び出ている腕は二本、明らかに太さ長さの違う、別人の二人分の腕。
それらの腕が、外を求めて蠢き続けていた。
バキィ!
「あがっ!……ふふ、元気だ……もうちょっと、だよ……頑張って……!おぶっ……」
空の肋がまた一本中から折れ、体の外に飛び出す。
それを硝子は息を飲み、けれど空の傍らでその手を握って見守っていた。
顔色は空と同じくらい青く、今すぐにでも空を治したい衝動に抗い、胸をざわつかせながら。
「はぁーっ、はぁーっ!ッ……!出て、おいで……!壊相、血塗っ――――!」
「……その二人が壊相と血塗、か」
「初めまして、壊相と言います。ほぼ全裸で失礼……」
「はぐはぐはぐはぐはぐはぐ」
俺の前に、見慣れない人物が座っていた。
見た目割りとガタイの良い兄ちゃんって感じだが、白目が黒く、モヒカンで、布を羽織っただけのような格好だ。
「その格好で寒くはないのか?」
「お構い無く」
丁寧な言葉と柔らかい物腰に、隣に座ってバカ食いしてる空の頬を時折拭く優しさ。
本当にこいつ特級呪物の受肉体か……?
こいつが呪胎九相図2番の、壊相、か。
もしかしたら今高専で最もまともな人間(?)かもしれんな。
そんで、3番の血塗は……。
「はい、血塗あーん」
「あーん」
「美味しい?」
「美味しい!」
硝子の膝の上でチャーハンを食べさせて貰ってる、ちっこい空が、血塗か……。
壊相と同じく白目が黒いが、ほぼほぼ小さい頃の空だな。
……懐かしいな、あのくらいの空なんて高専の頃以上に荒んだ目をしてたからな。
まぁそれも、俺の実家である禪院のせいだから、なんとも言えねえんだが……。
「血塗って言ったか?チャーハン、どうだ、美味いか?」
「?うん、美味い!これ好きだ!」
そう言って満面の笑みを浮かべる血塗は、硝子のブカブカの白衣を身に纏っている。
その首元が少し見えるんだが……見間違いじゃなきゃ、あれ、口があんのか……?
笑顔で咀嚼する顔、それと同じようににもごもご動く首元の口。
まぁ、一応は半分呪霊って事なんだろうな。
目と合わせて、張相に比べて二人は呪霊っぽさが残ってる感じか……。
「おし、壊相、出来たぞチャーハンだ。
折角受肉したんだ、腹いっぱい食ってくれ!」
ま、関係ないな!
俺は完成したチャーハンを壊相の前にドカリと置いた。
米一粒一粒が黄金色に輝く、黄金チャーハン。
……うん、やはり食う奴の事考えて作ると、違うな。
「ありがとうございます、いただきます……ん!これが美味しいというものなんですね……」
「兄者ぁー!これ美味ぁいー!」
「頬っぺたが汚れてるよ血塗。……うふふふ……」
「はぐはぐはぐはぐはぐはぐ!誠一クンおかわり!」
手を合わせて行儀よく食べ始める壊相、硝子の膝の上でぶんぶんと手を振っている血塗。
そんな血塗に何処か怪しい目を向ける硝子に、兎に角食い続けてる空。
その様子を、張相は腕を組んで、心底嬉しそうに見守っていた。
「……また、一段と騒がしく、賑やかになりそうだな!」
俺は小さく呟き、新しいチャーハンの調理に取り掛かるのだった。
これからの話
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このままストーリー継続
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もっと飯中心にまったり進行
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そもそも過去に何が?