呪術高専さしすせそ!   作:如月SQ

23 / 48
いつも閲覧ありがとうございます。
アンケート的にはそこまで過去編なくて良さそうなので、ストーリーを続けていこうと思います。

……ちなみにこの作品、原作における渋谷事変で終わりです。


黄金チャーハン

ジャッ!ジャッ!ジャッ!

 

 交流会二日目……トラブルは大いにあったものの、一先ず続行となった交流会。

 本来なら二日目は個人戦、呪術師としてこれから生きる為に自分の実力をアピールする重要な場だ。

 ……なのだが。

 

『僕、ルーティーンって嫌いなんだよね』

 

 とある馬鹿目隠しの謀により、二日目は野球となっていた。

 ただ決まってしまったからには仕方ないと、粛々と準備する中で、妙に歌姫が張り切るとかいう一幕があったみたいだ。

 一日目の団体戦に参加した者に加え、見学していた順平と京都校の新田新も参加し、7人でプレイボールとなったらしい。

 

 その一方で、京都校の引率の一人直哉は帰ってこず、東京側も空が欠席。

 まあそれでもなんだかんだと皆、楽しそうに野球をしているみたいではある。

 

 そんな中で俺は……一人調理場に立っていた。

 そして、一心不乱に中華鍋を振る。

 中で踊るのは米と卵のみ。

 

ジャッ!ジャッ!ガシャッ!カンッ!

 

 味付けは塩と胡椒……仕上げに香り付けの醤油。

 パラパラになったのを見計らい、皿に盛り付け、完成したのはなんの変哲もないチャーハン。

 具はなし、卵のみの、黄金チャーハン。

 それを前にし、レンゲを手に取った俺は、そのまま掬って口に放り込んだ。

 

「はぐっ」

 

 もぐもぐと咀嚼し、味わい、食感、味、風味を感じとり……。

 

「くそ……」

 

 その出来の悪さに、思わずレンゲをテーブルに叩き付けた。

 

「失敗したのか?珍しいな」

 

「……張相、居たのか。悪い、見苦しい所見せたな」

 

 ははは、と笑って誤魔化す。

 張相はそんな俺を見て何を思ったのかは知らないが、いつの間にやらレンゲを手に取り、テーブルに置いたままのチャーハンを指差した。

 

「……食べてみてもいいか?」

 

「ん、ああ……いいぞ。出来は悪いけどな」

 

「いただきます……。はぐっ」

 

 礼儀正しく挨拶した後、張相は俺の作ったチャーハンを頬張る。

 もぐもぐと味わう様子の張相は、ゴクンと飲み込むと少し驚いたように目を瞬かせた。

 

「美味い……パラパラとしてるのに米一粒一粒に卵が絡んでいてしっとりと、油が程よく飛んでしつこくなく、程好い塩味に、醤油の風味が鼻を抜けていく……。

 これが失敗とは思えんが……はぐっ」

 

 続けて二口目を頬張る張相に、俺は苦い顔を浮かべてしまう。

 

「いや、よく見ると卵が上手く絡んでない部分があるし、所々パサついていて、味付けにむらが出てる。

 ……雑念、だな。真人とかいう呪霊をまんまと逃した事に苛立ってるみたいだ」

 

 そんな雑念を料理に持ち越してしまうとはな……俺もまだまだだ。

 だが、真人は危険性から見ても、祓わなければいけなかった。

 魂の繋がりから、本体も幾分か醤油に出来た手応えはあったが、その後からは手応えなし。

 奴の術式が俺の術式に抗えるという事がわかっただけで、俺達は奴等に見事にしてやられてしまった。

 次に術式を叩き込んだ時、奴を祓える自信はあるが……それまでにどれだけの犠牲が出るか。

 

「……んぐ……誠一、貴方の疑念は最もだ、話を聞く限り確かに性質の悪い呪いである事は疑いようもない。

 祓えていれば最上だった……それは間違いないだろう。

 だが、それは貴方一人で背負う物ではないのではないか?

 あの時、五条も母さんも夜蛾も、補助監督も……忌庫番もいた。

 だが結局は高専に侵入した奴を取り逃した……それは貴方だけの責任ではないだろう」

 

「そりゃあそうだがな……」

 

 思わず後頭部をかく。

 確かにその通りだが……奴に通用する手が限定されてる都合上、俺にはあの時奴を仕留めきらなければいけなかった。

 もしも他の呪術師が真人と遭遇すれば……命は保証出来ないだろう。

 だが、そんな悩む俺に、張相は真面目な顔で言葉を続ける。

 

「それに、そんな難しい顔で料理するのは誠一には似合わない。

 昨日のバーベキューの時のように、笑うべきだ。

 笑って、楽しんで、食べて貰う人に喜んで貰う。

 それで作り手である俺達も喜ぶ。

 俺は貴方に料理とはそういうものだと教えて貰ったんだ」

 

「張相…………そうか。……そういうもんだったな。

 ちょっと、気負いすぎてたか。

 ありがとよ、張相。目が覚めたぜ。

 しっかし、お前に諭される事になるとはな……」

 

 照れ隠しに後頭部をガリガリとかく。

 張相は過ごしてきた時間こそ長いが、最近産まれたばかりのようなもの。

 料理の腕もあがってるし、その成長には毎度驚かせられるな。

 

「ああ……俺はお兄ちゃんだからな。

 弟達の手本となるように、人として立派に生きていくつもりだ」

 

「立派なもんだぜ、お兄ちゃん」

 

 お兄ちゃん、か……禪院の兄弟の繋がりなんて……。

 っと、ダメだダメだ、際限なく暗くなっちまう。

 明るく行こう、料理はまず俺が楽しまねえといけないからな。

 よし、ならまずは!

 

「はぐっ、はぐっ!」

 

 戒めとしてこのチャーハン食って、やる気出すとするか!

 バクバクと頬張り、味わう。

 うーん、やはりいまいち……まぁ、悪くはねぇか!

 

「む……食うのか……」

 

 そして、張相が少し残念そうに俯いたのを見て、俺はもう一つチャーハンを作る事になる。

 完成したチャーハンは満足出来る出来で、頬張った張相はその目を輝かせていた。

 

 うん……やっぱこれだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ誠一にお願いがあってきたんだ」

 

「お。なんだ?」

 

「栄養のつく料理を沢山用意して欲しいんだ」

 

「?なんでまた。誰が食うんだ?」

 

「母さんが今、壊相と血塗を産んでいるから、その回復の為に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキバキッ!

 

ブシュッ!

 

「おぶっ……ゴポッ……はぁ、はぁ……」

 

 高専内、とある窓のない一室。

 空の腹から、血塗れの腕が飛び出していた。

 空の体を内側から壊し、夥しい血を流しながら。

 

「ッ……空っ!今治し―――」

 

「はぁ、ダメだよ、硝子ちゃん……言ってたでしょ?

 この子達が、はぁ、ボクの体から出てくまで、はぁ、治しちゃ、ダメ……」

 

 達、の言葉通りに腹から飛び出ている腕は二本、明らかに太さ長さの違う、別人の二人分の腕。

 それらの腕が、外を求めて蠢き続けていた。

 

バキィ!

 

「あがっ!……ふふ、元気だ……もうちょっと、だよ……頑張って……!おぶっ……」

 

 空の肋がまた一本中から折れ、体の外に飛び出す。

 それを硝子は息を飲み、けれど空の傍らでその手を握って見守っていた。

 顔色は空と同じくらい青く、今すぐにでも空を治したい衝動に抗い、胸をざわつかせながら。

 

「はぁーっ、はぁーっ!ッ……!出て、おいで……!壊相、血塗っ――――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……その二人が壊相と血塗、か」

 

「初めまして、壊相と言います。ほぼ全裸で失礼……」

 

「はぐはぐはぐはぐはぐはぐ」

 

 俺の前に、見慣れない人物が座っていた。

 見た目割りとガタイの良い兄ちゃんって感じだが、白目が黒く、モヒカンで、布を羽織っただけのような格好だ。

 

「その格好で寒くはないのか?」

 

「お構い無く」

 

 丁寧な言葉と柔らかい物腰に、隣に座ってバカ食いしてる空の頬を時折拭く優しさ。

 本当にこいつ特級呪物の受肉体か……?

 こいつが呪胎九相図2番の、壊相、か。

 もしかしたら今高専で最もまともな人間(?)かもしれんな。

 そんで、3番の血塗は……。

 

「はい、血塗あーん」

 

「あーん」

 

「美味しい?」

 

「美味しい!」

 

 硝子の膝の上でチャーハンを食べさせて貰ってる、ちっこい空が、血塗か……。

 壊相と同じく白目が黒いが、ほぼほぼ小さい頃の空だな。

 ……懐かしいな、あのくらいの空なんて高専の頃以上に荒んだ目をしてたからな。

 まぁそれも、俺の実家である禪院のせいだから、なんとも言えねえんだが……。

 

「血塗って言ったか?チャーハン、どうだ、美味いか?」

 

「?うん、美味い!これ好きだ!」

 

 そう言って満面の笑みを浮かべる血塗は、硝子のブカブカの白衣を身に纏っている。

 その首元が少し見えるんだが……見間違いじゃなきゃ、あれ、口があんのか……?

 笑顔で咀嚼する顔、それと同じようににもごもご動く首元の口。

 まぁ、一応は半分呪霊って事なんだろうな。

 目と合わせて、張相に比べて二人は呪霊っぽさが残ってる感じか……。

 

「おし、壊相、出来たぞチャーハンだ。

 折角受肉したんだ、腹いっぱい食ってくれ!」

 

 ま、関係ないな!

 俺は完成したチャーハンを壊相の前にドカリと置いた。

 米一粒一粒が黄金色に輝く、黄金チャーハン。

 ……うん、やはり食う奴の事考えて作ると、違うな。

 

「ありがとうございます、いただきます……ん!これが美味しいというものなんですね……」

 

「兄者ぁー!これ美味ぁいー!」

 

「頬っぺたが汚れてるよ血塗。……うふふふ……」

 

「はぐはぐはぐはぐはぐはぐ!誠一クンおかわり!」

 

 手を合わせて行儀よく食べ始める壊相、硝子の膝の上でぶんぶんと手を振っている血塗。

 そんな血塗に何処か怪しい目を向ける硝子に、兎に角食い続けてる空。

 その様子を、張相は腕を組んで、心底嬉しそうに見守っていた。

 

「……また、一段と騒がしく、賑やかになりそうだな!」

 

 俺は小さく呟き、新しいチャーハンの調理に取り掛かるのだった。

これからの話

  • このままストーリー継続
  • もっと飯中心にまったり進行
  • そもそも過去に何が?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。