呪術高専さしすせそ!   作:如月SQ

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いつも閲覧、ありがとうございます。
姉妹交流会編ラストです。
滅茶苦茶に飛ばしまくったのにまぁまぁ長かったですね……。
さて、本来ならこの後は過去編の流れですが……やらないで行こうと思います。
アンケートご協力ありがとうございました。


握り寿司

「禪院よ、一つ握って貰おうか」

 

 京都校の学長、楽巌寺学長が席につく。

 特設したインスタント寿司屋……回らない寿司屋のカウンターをイメージしたセットで、俺は顔を綻ばせた。

 現在ここには他に誰もおらず、引率含めて皆手巻き寿司のほうで思い思いに楽しんでいるみたいだ。

 

「お、楽巌寺学長、お久し振りですね。何を握りましょうか」

 

 楽巌寺学長は呪術界の保守派筆頭……これから呪術界を変えていこうとする悟の目的からすると宿敵みたいな人だが……。

 まぁ、別にこの人自身は腐ってる訳じゃないっつーか、かなりまともな人だからなぁ。

 それに俺としてもこの人には世話になったから、あまり失礼な態度は取りたくない。

 

「そうだな……まずは穴子でも貰おうか」

 

「わかりましたっ!まずはあがりをどうぞ」

 

 会話しながら淹れていた熱いお茶を出してから、俺は手を拭いて穴子を握り始める。

 

ズズ……

 

 楽巌寺学長が茶を啜る音が響いた後、湯呑みが置かれると共に、手早く握り終えた穴子二貫を寿司下駄に置いて差し出した。

 

「お待ち!」

 

「早いな……では早速」

 

 学長は寿司下駄に置かれた穴子の寿司を、そのまま手掴みで頬張る。

 咀嚼し、飲み込み、ピクリとその眉が動いた。

 

「ふむ……シャリが口の中で程好くほどけ、穴子の味付けも申し分なし……腕をあげたな、禪院」

 

 ニヤリ、そう音がしそうな笑みを浮かべもう一貫を頬張った楽巌寺学長に、胸を撫で下ろす。

 及第点貰ったようで、良かった良かった。

 

「んむ……では適当に握って貰おうか?」

 

「了解です」

 

ズズ……

 

 お茶を啜り出した楽巌寺学長から視線を外し、今朝購入したばかりの新鮮な良いネタ達で寿司を次々と握りだす。

 マグロにハマチ、シメサバにタイ、ホタテ、イカ、エビ……どれも楽しめるように気持ちシャリは小さめに、けれどバランス良く……。

 

「禪院よ、何故お主は五条につく?」

 

 そんな中、不意に学長から問い掛けられる。

 俺が今一級術師なのはこの人の推薦あってのものだし……自分と同じ保守派にいない事を疑問に思っているのだろう。

 とはいえその声色に責めるような意図はなく、ただ疑問に思っているだけなのだろう。

 

「儂は貴様を高く評価しておる。恵まれてるとは言い難い術式、決して高くはない才能、おまけに産まれが禪院ではまともな扱いを受けていなかったであろう」

 

 歯に布を着せぬ言葉に、俺は思わず苦笑を浮かべてしまう。

 確かに術式が判明した後禪院では、ゴミ術式だなんだとそれはそれは酷い扱いだったが……。

 

「親父とお袋が好きにさせてくれましたから」

 

 まぁあれは諦めていた、とも言えるか。

 今でこそ交流はあるが、一級になるまでは断絶してたからなぁ……。

 空を連れて禪院を出た後は流石に大変だった。

 

「それに、あのクソガキ共の隣にいて、腐らずに力をつけたその心意気を儂は最も評価しておる」

 

 それは、確かにそうか。

 六眼と無下限術式の悟に、呪霊操術の傑……。

 その存在だけで、雑多な奴等は焼き尽くされてしまう程の強い……なんだろ、光、というにはあいつらの性根が腐りすぎてるから……えー……まぁ要は全自動心折りマシーンって事だな。

 実際健人はそのクチだ。

 自分達が手も足も出ず、先輩である空が命をかけて足止めし、命からがら逃げ出した一級呪霊を、あの二人は片手間、もしくはおやつ感覚で下す。

 真面目に鍛えていればいる程、馬鹿らしくなっちまう事だろう。

 

「俺はほら、そこまで真面目じゃないっすから。はい、お待ち」

 

「ふん……」

 

 一通り完成した寿司を差し出す。

 早速とばかりにマグロの赤身を手にした楽巌寺学長は、醤油に軽くつけてパクリと口に放り込んだ。

 

「……これだけ美味い寿司を握れるのだ、呪術師としては確かに真面目ではないのかもしれんな」

 

「その言葉、料理人としては嬉しいですね」

 

 そう言ってニヤリと笑う楽巌寺学長は、寿司には満足してくれているようだった。

 寿司は難しいからな……いや、難しくない料理なんざねぇんだけどさ。

 俺は苦笑を浮かべて、楽巌寺学長が食べる姿に視線を向けた。

 

「……俺が悟達についたのは単純な話っすよ。

 あいつが、俺の友達だから。そんな友達に頼まれたから。それだけの話ですよ。

 あいつらが未来を憂いてるのは間違いないです」

 

「友達……か。あ奴等相手にそう言えるのはお主くらいだろう。

 しかしまぁなんともそれは……難儀な呪いじゃな」

 

 呪い、か言い得て妙って奴だな。

 思わず苦笑を浮かべてしまう。

 

「ははっ、違いないですね。

 あいつら放っといたらまず食を疎かにしやがるから、目が離せませんよ。

 悟なんて一日中角砂糖ガリガリ食いながら、任務に没頭してた事あるんすよ?

 そんな奴等に食の楽しみを植え付けられるよう、これからもあいつらの側でやっていきますよ」

 

「ふん……仕方あるまい。儂としてはお主がこの先の呪術界を担う人間になると思っていたのだがな」

 

 本気で思ってる様子だが、それは流石にねぇなぁ。

 俺には荷が重い。

 

「買い被りすぎですよ、俺はこの高専のコックでいい。

 合間に任務をこなして、生徒達と友達に飯を作って、笑顔にさせる。

 俺にはそれで充分過ぎるくらいですよ」

 

 そういう未来を担うのは悟とか、これから先育っていく生徒達だ。

 俺はそいつらの胃を満足させるだけでいい。

 

「そうか……わかった、この件はもう何も言わん。

 さて、それでは次に何を握って貰おうかの?」

 

「お、そろそろ変わり種行きます?回転寿司なんかであったんですけど、天ぷら寿司とかどうです?天ぷらお好きだったでしょ?」

 

「ほぅ、お主の握る天ぷら寿司か……期待させて貰おうか」

 

「任せて下さいよ!」

 

 俺は朗らかに笑って、天ぷらの準備を始める。

 さて……まずはエビとイカに、後はキスでも握るかね。

 楽巌寺学長の口に合うといいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サクッ

 

「ふむ……美味い……わさび醤油マヨがよく合うのぉ……。

 ところで話は変わるが、お主は宿儺の器をどう見ておる?」

 

「あ?悠仁ですか。良い子ですよね、本当に良い奴で、学校内が一段階明るくなった気がしますよ」

 

「人柄は儂も好感は持っておるが、宿儺が表に出た時、または正式に死刑が下された時なんとする?」

 

「え?勿論殺しますよ。そのくらいは割り切ってます。

 ま、正式に下されるまでは足掻きますけどね」

 

「……本当に惜しい。クソガキ共には勿体無いわい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、天ぷらだ。誠一!あたしにも頂戴な」

 

「歌姫先輩、わかりました。天ぷら盛り合わせっすかね。寿司はなんか握ります?」

 

「炙り系のなんか食べたいわ!」

 

「ふーむ、かつおのタタキでも作るか……ちょっとお待ちを」

 

「あー、あんたは良い子ね、硝子や空と同じくちゃんと敬語使うし、先輩ってつけるし。五条と夏油とは大違いね!」

 

「今回の食材費とか結構悟が持ってるから、あんまり罵倒するのもどうかと思いますよ」

 

「え、そうなの……?ぐぬぬ……」

 

「……その天ぷらに罪はないんで、そんな憎しみ込めた目で見ないでやって下さいよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最終的に、炊いてた米の殆どを食べ尽くし、手巻き寿司と握り寿司は大盛況のまま終わった。

 皆満足そうに笑顔を浮かべ、学校の違いも学年の違いも気にせず、思い思いに交流して……。

 棘に作ってやった大量のツナマヨ軍艦を、真希が食い漁り、棘が拗ねたり、順平と見学していた京都校の一年が仲良くなってたり……いろんな光景があった。

 俺はそれを眼を細めて眺めていた。

 

「ああ……いい光景だな」

 

「なに誠一、なんか爺臭いよ」

 

 いつの間にか隣にいた悟は、デザートに用意していたあんこもちを頬張りながらそう言って笑う。

 まあ、否定はしねぇな。

 

「いや、こうやって未来を担っていく呪術師達が、仲良くやってるのは素晴らしいなと思ってさ」

 

 そう素直に告げれば、悟はそれを笑い飛ばす。

 

「はっはっはっ。これをずっと見れるようにしていくのが、僕達の仕事だよ。

 今回は正直危なかった。相手は想像以上に僕を意識してる。

 まさかこの僕が弾かれる帳なんか使えるなんてね……。

 ……僕にもしもの事があればその時は……」

 

 けれどそこで珍しく、悟は一度口ごもる。

 少しだけ自信無さげに俯く悟の背中を、俺は思い切り叩いてやる。

 無下限を突破する気はなかったので途中で止まるも、悟は俺の行動に気付いたようで、驚いたように顔を此方に向けていた。

 ったく、らしくねぇな。

 弱音を吐いてくれたのは嬉しいが、そんな情けない姿は『五条悟』じゃねぇだろ。

 

「おいおい、天下の五条悟が自信喪失してどうすんだよ?

 悟、お前はなんだ?傑と二人ならお前は?」

 

 悟は俺の言葉に面食らうも、一瞬の間の後、にいっと頬を吊り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ……ま、何があっても大丈夫でしょ」

 

 ニヤリ、悟はいつも通りの笑顔を浮かべた。

 

「僕達、最強だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、姉妹校交流戦は色々なトラブルもありつつ、問題もありつつ、けれど死人はなく、恙無く終了を迎えたのだった。

これからの話

  • このままストーリー継続
  • もっと飯中心にまったり進行
  • そもそも過去に何が?
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