まさかああなるとは……。
あまりの展開に自分が救われる為に書き出したこの作品ですが、まぁまたボチボチ更新して行きたいと思います。
パチッ……パチッ……
油。
熱した油。
思えば不思議なもんだよな、液体の油に食い物を突っ込むと、カラッと歯応えの良いモンに仕上がるってんだから。
事前に食べやすい大きさに切っておいた鶏肉……今回はジューシーで食べ応えのあるもも肉を大振りに切って揚げていく。
事前に漬けておいた鶏肉に衣をつけて……と。
油の温度も……もう良さそうだ。
今日は生徒達も血塗達も皆学校を出て任務だからな。
お弁当に、冷めても美味い、俺特製唐揚げ弁当だ。
いっぱい作らなきゃならんからな、早速揚げていくとするか。
衣をつけた鶏肉を、ゆっくり油に……と。
ジュワワワワワワワ
良い音をたてながら、泡だらけになっていく、油の鶏肉。
それを眺めながら、次々と鶏肉を投入していく。
ただし入れすぎには注意……と。
そんで衣が固まってきたら一度油からあげて……。
ザパァッ
しっかり油を切ってから……再度油に投入!
ジュワワワワワワワワワァアア
後はカリカリになるまで揚げれば完成だな。
うーん、油で揚げてる時は何故こうも心躍るのか。
あ、ただし油跳ねると危ないから気は抜かないぞ。
「……ん、よし、そろそろかな」
良さげな唐揚げをひとつ摘まみ、最後に油にちょんとつけて油を切って……パッドに置く。
箸で表面を撫でればカリカリとした感触がして、出来映えの良さに頬が吊り上がった。
「いよし、完璧だ。張相もやってみるか?」
「ああ、やってみよう」
今揚げてる分を揚げ終わった後に、張相に振り返った。
張相は俺の背後で動きを備に観察していたし、揚げ物の解説はしてある。
俺は特に不安も不満もなく、張相に場を譲った。
真剣な表情で揚げ物に挑む張相を暫し眺めた後、俺も他の仕事に移ることにした。
「……さて、そんじゃ、どうするかな」
他には卵焼きにウインナーでもいれるかな……ご飯はおにぎりのほうがいいか?
おにぎりの具材を仕込んで、卵焼き作って……ウインナーはタコさんにしてやろう。
血塗の喜ぶ顔が目に浮かぶぜ。
うんうんと頷き、材料の保管庫へと足を進めていくのだった。
「兄者ー、そろそろ昼飯にしよー」
「む……そうですね、気付けばそんな時間ですか。
暫し捜索は中断し、昼食にしましょうか」
壊相と血塗は高専の制服に身を包み、呪物の捜索を続けていた。
今のところいくつかの危険度の低い呪物を回収していた。
その捜索中不意に強い反応があり、その反応を頼りに捜索を続けていた。
しかし、その強い反応に反して、どうにも見つからない。
熱中し過ぎて気付けば昼過ぎ……折角弁当を持たせられているのだからと血塗の提案に乗り、壊相は背負っていたリュックを下ろした。
「わーい、べんとーべんとー!」
同じようににリュックを下ろし、嬉しそうに中をまさぐる血塗を、壊相は微笑ましそうに眺めていた。
「お弁当を食べる前に手をちゃんと拭きましょうね」
「おー。そうだな兄者。美味しく食べる為には必要だ!」
壊相が取り出したウェットティッシュを受け取った血塗は、ニパッとした笑みを見せて楽しそうに弁当箱を広げ、その手を丁寧に拭いた。
おかずの入った弁当箱に、おにぎりが二個。
パカリと弁当箱を開けば、卵焼きにタコの形のウインナー、野菜の煮物、レタスにプチトマト、そしてメインの唐揚げがその姿を現した。
「うわぁ、美味しそうだなぁー」
目をキラキラとさせた血塗は、満面の笑みを浮かべて、パン、と手を合わせた。
壊相もそれに合わせて手を合わせ、二人は同時に口を開いた。
「「いただきます」」
早速とばかりに二人はメインの唐揚げを最初に摘まみあげた。
冷めている筈なのに箸で持ってもわかる、そのカリっとした感触に、血塗の口内に涎がたまった。
「あーむ」
カリッ
案の定の食感、そして口に広がる鶏と旨味と脂、そして鼻を抜ける醤油の香り。
咀嚼する血塗の目は見開かれ、口元が釣り上がっていった。
「んー!」
「これは……美味しい」
壊相の口からも思わず感嘆の声が漏れた。
料理とは冷めてしまえば多少味が落ちるものだと、壊相は理解している。
だからこそ、冷めてもなおこれだけ美味しいこの料理に、心底驚いていた。
しかもこのお弁当は、自分達の兄、張相も手伝ったものだという。
二人は目には見えない兄の愛を感じながら、顔を見合わせて嬉しそうに笑う。
勿論、作ってくれた片割れである誠一への感謝も忘れない。
いつも美味しい料理を作ってくれる彼の事を、壊相と血塗は非常に好ましく思っている。
わざわざお弁当を作ってくれた二人へ、改めて内心で感謝を述べ、壊相は煮物に箸をつけた。
「今度は出来立てを作って貰いましょうね」
「おう!あー……んむ!」
壊相の提案に笑顔で頷き、血塗はおにぎりにかぶりつく。
中から出てきた具のツナマヨに、血塗は顔を綻ばせた。
「ほーら血塗、タコさんウインナーですよ」
「うぉおお!タコさん!可愛い!食べるのが勿体無いなぁ」
お弁当を美味しく平らげた二人は捜索を続けたものの、やはり反応はなんともハッキリしないまま。
そうして辺りを彷徨っているうちに、既に周囲は暗くなっていた。
しかしそこで反応に変化があった。
急いでその反応の元、橋のほうへ向かえば、そこには明らかに領域と見られる境目があった。
そして……その中に取り込まれている人間の反応も……。
「……!マズイ……!」
二人は呪物だ。
人と呪いのハーフであり、母と慕う夢乃空が用意した体に受肉してるに過ぎない。
呪い故に人命に対してあまり重く捉えることはない。
しかし……同時に人でもある故に、軽く考えることもない。
手を伸ばせば助けられるのであれば、助けることに疑問はない。
二人は顔を見合わせて頷きあうと、その領域へと手を突っ込み……取り込まれていた人間を引っ張り出したのだった。
「うぇ!?」
「はぁ!?」
「うぉ!?」
「おや?」
そうして現れた見覚えのある格好をした二人、虎杖と釘崎の姿に、壊相と血塗の二人は目を見開いていた。
任務の邪魔をしてしまったことを謝罪し、こうなったからには手伝うと決めた二人だったが、領域にどうにも入ることが出来なかった。
中には呪霊がいて、伏黒が取り残されている状態……。
伏黒なら、という感情と伏黒でもといという相反する感情で、領域に再突入する為に四苦八苦していた、そんな時だった。
「なんだ……?随分と賑やかではないか」
ぞわり
全員の背筋に寒気が走った。
だがそれは一瞬、それをかき消す程の熱気が、辺りを包み込んだ。
声のしたほうに四人は視線を向け、そして思わず顔をしかめた。
「久しいな、宿儺の器よ。儂はそこの領域にいる呪霊に用がある。邪魔をするなら、燃やし尽くすぞ?」
火山のような頭、大きな一つ目、その身に纏う圧倒的な熱気。
以前虎杖が遭遇した特級呪霊、仮称火山呪霊、漏瑚。
大地の畏れから発生した自然呪霊が、そこに静かに佇んでいた。
「っ!」
その瞬間、真っ先に動いたの血塗だった。
首をスッポリと隠していた襟を一気に開き、胸元にある口を顕にした。
「おぶえっ!」
そしてその大きな口から、ドス黒い血を漏瑚に向けて勢いよく吐き出した。
血塗と壊相、この二人の術式は同じ、『蝕爛腐術』。
自身の血を媒介に、血を毒とし、触れた相手を腐らせる術式。
この術式を受けた者は凄まじい激痛に襲われながら腐っていく、一度触れさえすれば必殺と言って良い術式なのだが……。
「ふん……くだらん。半端者が」
漏瑚とは余りにも相性が悪かった。
ジュワァッ!
血塗の放った血は、漏瑚の纏う熱気と放つ炎を微塵も突破することが出来なかった。
蒸発した血すら燃やし尽くされたのを見た血塗と壊相は、自分達では目の前の呪霊に対して有効打が打てないと理解させられてしまっていた。
「オラァッ!」
そこを釘崎は間髪入れずに釘に呪力を籠めて、金槌で打ち出した。
真っ直ぐ飛ぶ、呪力で強化された釘。
「惰弱」
ジュッ!
しかしそれすら、漏瑚の前では無意味。
小さな鉄程度では、漏瑚の放つ炎に耐えられる筈もなかった。
呪力で強化していても、正に焼け石に水。
圧倒的な熱量に、溶かし尽くされてしまった。
ちら、と三人の視線が虎杖に向くも、虎杖は首を横に振った。
術式を持たない虎杖は、呪力を込めた近接戦闘によって呪いを祓ってきた。
だがそれは、漏瑚とは死ぬ程相性が悪い。
近付くだけで、虎杖は燃やし尽くされてしまうだろう。
手詰まり……そんな言葉が脳裏に過った。
しかも、虎杖は知っている。
目の前の呪霊が、極致である領域展開すら会得していることを。
今ここにいるメンバーでは、漏瑚には勝てない。
「……なんだ、無駄な抵抗は終わりか?ならばさっさと燃え尽きろ。儂は暇ではないのだ。さっさと、死ね」
全員が身構えたその時だった。
バリンッ!
すぐ側に展開されていた領域が砕け、伏黒が姿を現したのだ。
ズタボロの痛ましい姿だったが、生きている様子で、その手には凄まじい呪いの気配が握られていた。
漏瑚の目の色が変わり、伏黒の手を凝視していたことに気付いた虎杖と壊相は、一瞬だけ目を合わせると頷きあった。
「伏黒!すまん!」
「……なに……?」
虎杖はズタボロの伏黒を担ぐと、その手に握られていた宿儺の指を奪い取り、適当な方向にぶん投げたのだ。
そして漏瑚の一つ目は、投げられた宿儺の指に釘付けになっていた。
「あ、おい!虎杖お前!」
「悪い!本当に!でもそういう状況じゃねーんだよ!」
虎杖と壊相は、逃げるしかないという結論に至っていた。
どうしても引けないなら、勝てる可能性があるなら、抗っただろうが、このまま戦ってもただの無駄死になってしまう。
ならば、目的であった呪物、それを捨ててでも生きる。
二人はそう判断していた。
極ノ番・翅王
「私の術式は蝕爛腐術!私の毒性の血を浴びた者に、激痛を与えながら腐らせる術式!」
壊相は視線が反れた漏瑚へと、自分の全力を放った。
術式の開示を行い出力を底上げし、ついでに警戒させ無理にでも防がせる為に。
上半身の制服を脱ぎ去り、上裸となり、その逞しい体を顕にする。
ドス黒い血が背中に蝶の翅のような模様を描き、そこから無数の血が漏瑚に向けて殺到した。
「チィッ」
それ自体は漏瑚にとって容易く対応出来るものであるが、その全てを焼き尽くさねばならないとなれば、流石に足が止まる。
「さぁ、逃げますよ!」
「ああ!逃げるぞ釘崎!」
「あーもう!今日は良いとこなしね!」
「恵ぃ、大丈夫か?」
「くそ……後で説明しろよ……!」
そんな漏瑚を後目に、壊相をしんがりに、虎杖達は一目散に逃げ出したのだった。
逃げながらも壊相の攻撃は続く。
音をたてて蒸発していく血は、一切有効打を与えられなかったが、漏瑚の足止めという役割はしっかりと果たしていた。
河原から道路へと駆け上がった、そのタイミングで、けたたましいエンジン音が響き渡った。
ブオオオオオン!
「クォルァッ!ガキども!やっぱりここッスか!なあに勝手な真似をしくさって―――」
「ナイスタイミング新田ちゃん!」
運転席から身を乗り出して怒鳴り散らす、補助監督の新田明の姿を見つけた釘崎は、表情を明るくさせる。
そんな様子に出鼻を挫かれた新田は、道路に飛び出してきた虎杖達の前で、急ブレーキを踏んだ。
キキィーッ!
「な、なんッスか!?てか数多くないッスか!?定員オーバーッスよ!」
虎杖達は慌てる新田に構うことなく、車に乗り込んでいく。
座るところのない血塗は、壊相の膝に座った。
明らかな定員オーバーに、新田の顔が歪んだ。
「いいから!特級呪霊から逃げてきたの!細かいことは後で!さっさと出して!」
「――オーライッ!」
ガチャ!
ブゥウウウウウウウンッ!
しかし新田はその切羽詰まった様子に頭を切り替えた。
そして、ギアを上げ、思い切りアクセルを踏み込む。
一気に加速していく車は、あっという間にその場から走り去って行ったのだった。
「ちっ……逃がしたか。まあいい」
河原に取り残された漏瑚は、差程気にした様子もなく、奴等が走り去っていった方向を眺めていた。
その手には、特級呪物、宿儺の指が握られていた。
「所詮リハビリを兼ねたお使い……儂らの出番はこの後だ」
それを懐にしまい、漏瑚はその場を立ち去る。
「儂らの、呪いの世界が訪れるのも……もう間も無くだ」
そう呟いて、漏瑚は夜の闇の中に消えていった。
これからの話
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このままストーリー継続
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もっと飯中心にまったり進行
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そもそも過去に何が?