呪術高専さしすせそ!   作:如月SQ

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呪術廻戦終わっちゃいましたね……此方も完結に向けてストーリーを進めていきたいと思います。
皆が幸せそうなのをかいてるだけでも楽しくはあるのですが……正直ネタがあまりないので……。



月見バーガー

「そこまでだ呪術師!」

 

「展……なんや……?」

 

 直哉が今まさに領域を展開しようとしたその瞬間、そんな声が聞こえた。

 その声に反応し振り返った直哉の目が見開かれる。

 

「っ……ぐぅっ……!」

 

 そこには自身の生徒、幸吉が腹から血を流して踞っていた。

 その前には白髪の男が女かもわからない、そんな人物。

 手には血まみれの氷柱、明らかな下手人であった。

 

「はっ……」

 

 真人は笑う。

 言葉を紡ぐことは出来ない、それでも目の前の人間を嘲笑う。

 呪いらしく。

 

 一方で直哉の表情はぐにゃりと歪んだ。

 幸吉は腹をおさえて血を止めようとしているが、まったく止まる様子がない。

 目の前の人物も、真人も、自分ならば倒す自信がある。

 しかし……その間に幸吉が力尽きる可能性が脳裏に過る。

 変幻自在の真人を祓う為、慎重になりすぎてしまったかと、小さな後悔が直哉を苛んだ。

 

 加速した思考で、目の前の脅威、自分も認める一級術師達から逃げ仰せた事のある呪霊をどうするか考える。

 このまま領域展開すれば、ほぼ間違いなく祓える。

 幸吉の近くにいる人物は、領域展開後の術式が焼ききれた状態で相手することになるが、東京高のあれらに鍛えられた直哉は術式なしでも十分に戦える。

 しかし問題なのは、その場合かなり時間がかかるということ……。

 そうなれば、幸吉は手遅れになってしまうだろう。

 真人への有効打を放つ術を、直哉は直接触れることと、領域展開しか持ち得ていない。

 簡易領域を修得しておくべきだったと後悔する間も無く、直哉は選択を迫られていた。

 

 特級呪霊真人を祓うか。

 準一級術師与幸吉を救うか。

 

「せん……せい……!」

 

 迷う直哉の耳に、幸吉の声が届く。

 

「俺の事は、気にしないで、ください……!

 これは、皆を裏切った俺に対する、当然の報いだ……!

 ごぼっ……そいつを、祓ってください……!」

 

 脂汗を滲ませ、口から血を吐いて、痛みに悶え……それでも幸吉は言い切る。

 一度間違った選択をしてしまった。

 客観的に見て、許される行いではなかった。

 自分の欲を優先し、皆を裏切ってしまった……。

 

 だからこそ今、呪術師として正しい判断を。

 正しい行為を。

 こんなんじゃ、皆やな胸を張って会いにいけないから。

 

「先生っ……!」

 

 そんな幸吉の姿に、直哉の心は決まった。

 

ドガンッ!

 

「ははっ……甘ちゃんだな、反吐が出る」

 

 直哉の一撃を受け、吹き飛んでいく真人。

 だがそれはただの物理攻撃、真人は吹き飛んでもなんらダメージを受ける事はない。

 バキバキと音をたてて無数の木々を薙ぎ倒しているが、そう間を置かず真人は容易く復帰することだろう。

 

 幸吉の瞳が見開かれる。

 何故、と。

 拘束したままの領域展開で、確実に祓えた筈なのに、と。

 

ズドンッ!

 

「がっ……!?」

 

「阿呆か、生徒が死にかけとるのに、放っとける訳あるかい」

 

 気付けば直哉の姿は幸吉の側にあり、氷柱を持った白髪の人物は息を吐き出しながら吹き飛んで行った。

 

「けど、あいつらを放っておいたら、何をしでかすか……!」

 

「んなことわかっとんねん。黙ってろや。

 ……ちっ……急所は外れとるが、血が止まらん……。

 なんつー嫌な所を……直ぐに治療せなあかんな」

 

 幸吉の容態を確認した直哉は歯噛みする。

 直ぐに死んだりはしないが、何もせず時間が経てば失血死する、そんな厭らしい傷だった。

 幸吉を横抱きにした直哉は、二人を殴り飛ばした方向を睨み付けた。

 既に二人とも平気な顔で立って歩いているのかが視認出来る。

 ニヤニヤと厭らしく笑う真人に対して、直哉はギリ、と音が鳴る程に奥歯を噛み締めた。

 

「ドブカス共が……覚えとけや」

 

 直哉はそう言い捨て、その場を全力で後にした。

 地面がめくれあがる程に強く踏み締め、景色が急速に流れていく。

 あっという間に、戦闘を行っていた場所は見えなくなってしまった。

 

 術師としては間違っていたかもしれない。

 特級を祓える絶好の機会をフイにしてしまった、愚かな行いだったかもしれない。

 それでも、直哉の心に後悔はない。

 腕の中の生徒の命を守る事、それが最優先だと思った。

 先生としては正しい行いだったと、確信していた。

 

「すみま、せん……せん、せい……」

 

「今度からは、ちゃんと考えて行動するんやで」

 

 先生らしく、軽い説教を一つ。

 今はそれくらいで良い。

 どうせ助かった後、幸吉はいくつものお小言を頂戴することになるのだから。

 他の先生から、同級生から。

 それは幸吉にとって大変だが……きっと喜ばしいことになるだろう。

 その未来を揺るぎないものにする為、直哉は更にギアをあげる。

 

 目指すは呪術高専東京校だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 呪術高専東京校。

 パンパンの紙袋が複数入ったビニール袋を提げながら、夏油傑は廊下を歩いていた。

 その逆の手には半分包装の剥がされたハンバーガー。

 パンの間に挟まれたミートパティと、卵らしき白い層がちらりと見える。

 傑は口をぱかりと開き、ハンバーガーにかぶりつき、その半分近くを一度に頬張った。

 同時に広がるのはまずパンの香ばしさ。

 噛むと同時に染みだすのは、このハンバーガー特有のソースのまろやかな風味。

 噛み締めればミートパティとベーコンの塩気が顔を出し、それらを卵の白身と黄身が彩る。

 秋季限定販売の月見バーガー、一年でこの時期しか食べられないそれを、傑は目を細めて味わっていた。

 

 学校の廊下を物を食べながら行儀悪く歩く傑。

 先生とは思えない姿で、もし生徒に見られたら顰蹙ものであるが、今日学校には生徒も先生も殆どいない。

 悟も空も任務で出払っていて、基本的に料理担当で学校を殆ど出ない誠一ですら、数日前から張相を連れて任務で遠方だ。

 生徒達もそれぞれ任務であり、夜蛾も上層部に呼び出されて不在。

 故に今この学校にいるのは夏油傑と……。

 

ガララッ

 

「や、硝子。月見バーガー買ってきたよ」

 

「あ゛ー……あんがとー……」

 

 家入硝子だけである。

 保険医として活動している硝子であるが、反転術式をアウトプット出来る唯一の呪術師として、呪術師の治療を一手に担っている。

 他には、彼らが受けた傷から呪霊の特性を調べたり、死体ならば検死も担当している。

 つまり、有り体に言って硝子は日本中を駆け回る二人の特級(クズども)と負けず劣らずとてつもなく忙しい。

 

 ぐしゃりと半分程になったタバコを灰皿に押し付け、窓を開けて換気扇を回す。

 部屋中に充満していた煙が一気に排出されていく様子を、傑は呆れた顔で笑った。

 

「忙しいのはわかるけど、不摂生が過ぎると、誠一や空が戻ってきた時怒られるよー?

 タバコもやめたんじゃなかったかい?」

 

「うっせー……空の前では吸わないだけだよ。

 そんなことより、ギブミー月見バーガー。

 誠一の飯に不満はないけど、そーいうジャンキーなモンたまーに無性に食いたくなるんだよねぇー」

 

「同感。まぁ沢山買ってきたから好きなだけ食べると良いよ。

 まだ熱々だよ、ほら。あと濡れティッシュも」

 

「ん、気が利くじゃん」

 

 硝子は側にあったコーヒーをグビりと口に含み、ニコチン臭い口内を気持ち洗い流す。

 この程度で消えるものじゃないけれど、多少はマシ。

 傑から受け取った濡れティッシュで乱雑に手を拭き、差し出された『月見バーガー』と印刷された楕円を受け取った。

 

がさり

 

 即座にその中身を露にし、ふわりと香るジャンキーな香りにじゅわりと口内に唾が分泌される。

 

「あつあつのハンバーガーとかいつぶりだろ……まぁいいや。いっただっきま―――」

 

 あーと硝子が大口を開け、ハンバーガーを頬張ろうとした、その時だった。

 

ガシャァ―――ンッ!

 

 二人がいる所から離れた窓が砕け散り、何かが部屋へと転がり込んできたのだ。

 

「っ!」

 

 傑は直ぐ様袋をその場に置くと硝子の前に立ちはだかり、即座に呪霊を出せるように身構えた。

 硝子は目を白黒させ、口を大きく開いたまま固まっていた。

 

「ハァッ!ハァッ!いきなり飛び込んで堪忍な!ッ……はぁ、でも頼む硝子ちゃん!あんたにしか頼めへんのや!」

 

「直哉、かい?どうしたんだい、窓からなんて大胆――」

 

 闖入者の正体に気付いた傑だったが、息を切らせ、大粒の汗を流す直哉と……その腕の中でぐったりとした、血だらけの制服を着た少年の姿に言葉を失った。

 顔色の悪いその少年は、明らかに今すぐに手当てが必要だと素人目にも映ったからだ。

 

 そしてそれは当然、専門である硝子はより正確に、今すぐに治療しなければ手遅れになると判断出来て、しまった。

 

「…………はぁ」

 

「うちの生徒を助けてくれ!頼む!」

 

 小さく息を吐き出した硝子はハンバーガーを包み直すと、頭を深く下げた直哉とその血だらけの生徒に向き直った。

 

「わかった、さっさと処置台に運びな。直ぐに治療を始める」

 

「おおきに!」

 

 礼を受け取りつつ、必ず助けるという使命感、生徒を救うという責任感で自らを奮い立たせていく。

 目の前の命を救うため、白衣を翻して硝子は患者に意識を集中させていく。

 

「……あつあつの月見バーガー、食べたかったなぁ……」

 

 僅かな雑念も、その集中力の中へと消えていく。

 

 そんな硝子の姿を、傑が気の毒そうに眺めていた。

これからの話

  • このままストーリー継続
  • もっと飯中心にまったり進行
  • そもそも過去に何が?
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