呪術高専さしすせそ!   作:如月SQ

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今話より最終章、渋谷事変編開幕です。
料理のほうはお預け……ご了承下さい。


渋谷事変①

 2018年10月31日……ハロウィン。

 その報せは突如として、呪術高専に響き渡った。

 

 正体不明の帳が東京渋谷東急百貨店を中心に下ろされ、多数の一般人が閉じ込められる事態となった。

 それに対して俺達呪術師は、緊急事態として総力をあげて、対処に向かう事になった。

 

 一級術師を中心にいくつかのグループで、それぞれ下ろされている帳をぐるりと囲うように攻めていく。

 ……と言いつつ、俺はサポートに回る訳だが。

 

 今回動員される人員……呪術師と補助監督達には、俺の醤油を持たせている。

 それで全員のバイタルを管理して、何か事が起これば俺が遊撃のような形で向かう事になっている。

 

 似たような事は当然呪霊を操れる傑にも出来るが、傑には悟と共に速やかに事態の解決を目指して貰うと決まった。

 故にこういう些事は俺の役目という訳だ。

 

「一級術師の貴方の使い方として、相応しいかどうかは甚だ疑問ですね」

 

 七海はそう言うが、まぁ、今回の事態は前代未聞、未だかつてない規模の呪術テロだ。

 それこそあの百鬼夜行よりデカいんじゃないか?

 ハロウィンで賑わう渋谷に下ろされた帳……無数の一般人が人質になっているも同然だ、万全を期して臨むのは間違っていない。

 京都からの応援も随時駆け付けてくれるらしい。

 ……何故かじいさん……禪院直毘人が既にいるが、まぁ腕は確かだし心強い。

 

 取り敢えず、だ。

 

 俺達呪術師はまず、悟と傑を突っ込ませる。

 その後詰めとして、それぞれ突入する。

 俺はそのサポートだ。

 

 既に相当な数の一般人に目視なりなんなりされて、帳の中じゃ被害も出てるかもしれない。

 徒党を組んだ特級呪霊に、呪詛師もいるかもしれん。

 それがどれだけいるか、想像もつかん。

 もしかしたら取り返しのつかない事態に発展する可能性もある、先行き不安な状況だが、まぁ、なんとかなるだろう。

 俺の同級生はみんな強いし、教え子達もみんな優秀だ。

 きっと、何事もなく帰ってきてくれるだろ。

 

 まぁ、万が一があれば……そうだな。

 

「最悪全部醤油にして有耶無耶にすっかな……」

 

「今の聞いた?渋谷を醤油の都市にされたくないよね?

 みんな頑張ろうね!いのちだいじに!ガンガンいこうぜ!」

 

「やっぱり禪院先生って一番ヤバイ?」

 

「……ノーコメント」

 

「人によって意見が別れる所ね」

 

「悟に一票」

 

「高専の先生でまともなのはまさみちだけだぜ?」

 

「しゃけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次」

 

 透き通る瞳を見開いた悟がゆるりと振り向いた。

 先程まで悟が相対していた植物の特級呪霊、花御。

 その全てを削り潰され、無惨な骸を晒していた。

 

 そのあんまりな最期に、火山の特級呪霊漏瑚は内心で化け物めと吐き捨てる。

 問答無用で醤油にしてくる奴とまた相対するのと、どちらかマシだっただろうか?

 答えはなく、自分を貫く六眼の眼光に体を震わせた。

 

 悟の術式、無下限により此方の攻撃は届かない……しかしそれを領域展延という技術にて中和して無効化に成功はしていた。

 しかし、その単純なスペックで二体一にも関わらず圧倒されてしまった。

 術式が効かないなら、と悟が術式に回していた呪力を戦闘力に回した結果起きた事だった。

 ならばと対抗策だった領域展延、それを思わず解いた花御を襲ったのは暴力的な無限の力。

 哀れ、壁と無限に挟まれた花御は、漏瑚の援護も間に合わずその身の全てを削られ、悟によって祓われたのだった。

 

 数の理を失った漏瑚には、悟に対して明確に勝てるというビジョンを持てなかった。

 手傷を負わせられれば上等か。

 自身の力に相応の自信を持っていた漏瑚からすれば、あまりにも弱気な考えだったが……元より目的さえ果たせれば自分の生死にそこまで頓着はない。

 まだ仲間がいる、めきめきと力を伸ばし続けているリーダー真人に、未だ呪胎の陀艮。

 そして―――。

 

キィイイイイイイイ!

 

 その時、けたたましいブレーキ音と共に、地下鉄がホームへと停車した。

 開く扉、溢れる逃げ惑う人々……それを追う明らかな異形。

 空になった電車から気楽な様子でスキップしながら顔を出したのは……ツギハギの呪霊だった。

 

「漏瑚~」

 

 気楽な様子で漏瑚へと駆け寄るツギハギの特級呪霊真人。

 それと、人を追う異形の姿を視認した悟は納得する。

 あれが話に聞いていた改造人間か、と

 そうなると、あれらは自分には救えない。

 ならばせめて、今逃げ惑う人々の命は助け、改造人間はこれ以上苦しませない為に殺し、これ以上の被害者が出ないように特級呪霊を速やかに祓う。

 

 先程もそうだが、悟にとってすぐそばに守る対象がいる……いや、敵以外のものが傍らないる状況での戦闘は得意ではない。

 こういう時の対処は傑が得意なのだが、無い物ねだりは出来ない。

 覚悟を決め……悟はゆるりと身構えた。

 

「第二ラウンドってところか」

 

 真人はその言葉に、不敵な笑みを浮かべて悟へと殴りかかるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五条悟、一か八かの0.2秒の領域展開。

 目論見は成功し、一般人の被害は最小限に、改造人間の処理を終えた悟は299秒の全力での鏖殺により、流石に息を乱していた。

 そんな悟の視線の先で、呆然としていた特級呪霊達がゆるゆると再起動を果たす。

 ……領域展開の後遺症で術式が焼き切れ、隠しきれない疲労が悟の体を満たしている。

 負ける気は更々ないが、ここまで消耗したのは久々だと内心で呟いた。

 

 それでもなお一切衰えぬ眼光が、特級呪霊達を貫き、正気に戻った彼らをその場に縫い止めていた。

 

 暫し、僅かな時間硬直した場に、新たな闖入者が現れる。

 

「悟クン!」

 

「ハァ……空……!」

 

 それは、悟の同僚、一級術師の夢乃空だった。

 余程急いでいたのが、いつもはしっかりと隠している額を完全に露出しながら、悟の側に駆け寄ってきた。

 

「わっ悟クンが息を切らしてる……珍しい。

 間に合って良かった、手助けするよ」

 

「ああ……悪ィ……」

 

 チャキ、と大きくした鍵を手にした空が自身に並び立つのを見て、悟は珍しく素直な礼を口にした。

 このままでも勝てただろうが、空が来たのならば危ない橋を渡る必要もない。

 頭に伸ばしていた手を下ろし、特級呪霊へと向き直る。

 隣に立った、心強い同僚の気配を感じて、悟は自然と笑みを浮かべていた。

 

「ハッ……終わりだな」

 

「そうだね」

 

 思わず呟いたその言葉に、空が肯定するように小さく頷いた。

 

チャキ

 

「……は?」

 

 悟の胸元に、鍵を向けて。

 

「術式反転【LOCK】」

 

ガチッ

 

「ぐっ!?空……!?」

 

「あは、獄門疆、開門」

 

コロンッ

 

ピシッ

 

 額を露出したまま、空は手から何かを落とすとニヤリと頬を吊り上げて笑った。

 いつものポヤポヤとした笑みではない……どこか恍惚とした、妖艶な笑みに、悟は即座に()()の正体に思い至った。

 

ドキュ ドキュ

 

「てめえ!脳ミソか!ふざけた真似、しやがって!」

 

 悟は、術式を完全に封じ込められたことに気付いていた。

 空の術式反転、【LOCK】は対象の何かを施錠、使えなくしてしまう術式であることを知っていたから。

 自分の中で封じ込める物といえば無下限であると理解しているから。

 それでも、まだ悟には余力があった。

 せめて、目の前の同僚の中に潜む寄生虫に、忌々しい脳ミソにこれ以上好き勝手はさせないと、拳を振りかぶった。

 

 空は、脳ミソは、避ける素振りも見せず、その笑みを消して……。

 

「……また俺を見捨てるのか、五条?」

 

 光の無い瞳の薄ら笑い……高専時代の表情を浮かべた空に、その拳は当たる直前で止まってしまっていた。

 悟の脳内に溢れる、かつての記憶、高専時代の、懐かしく、青く、苦々しい、そんな記憶が悟の脳内を埋めつくし……。

 

「……時間だ」

 

ドキュ!ドキュ!ドキュ!ドキュ!

 

 空が放った何か、立方体だったそれが展開され、肉のようなものが悟を四方から貫いた。

 封印具獄門疆、それに捕らわれ、術式も封印された悟に、そこから脱出する手段は、なかった。

 

「くっ……そ……!てめぇえええええええ!」

 

 体を震わせ激昂する悟を、空……脳ミソは楽しそうに笑みを浮かべて眺めていた。

 大きくしていた鍵を肩に担ぎ、けらけら、けらけらと。

 

「お疲れ様、五条悟。こんな機会を、ずっと待っていたよ。

 それじゃ……新しい世界でまた会おう」

 

 多く語る事なく、夢乃空の体を使い、脳ミソは笑う。

 

「ふざけんじゃねえ!空の体、返しやが―――」

 

「閉門」

 

フッ

 

 その言葉と共に悟の姿は消え、そこに残るは不気味な立方体、獄門疆。

 ことん、とその場に落ちたそれを拾い上げて、脳ミソは笑いながら振り返った。

 

「やぁ、随分苦労かけたね」

 

 そう言って特級呪霊に振り返る脳ミソを怪訝な表情で見返す漏瑚。

 一方で真人は……。

 

「はは、久し振り」

 

 壮絶な笑みを浮かべて、脳ミソを見つめ返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 21:20……五条悟、封印。

これからの話

  • このままストーリー継続
  • もっと飯中心にまったり進行
  • そもそも過去に何が?
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