呪術高専さしすせそ!   作:如月SQ

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渋谷事変③

「やぁ、久し振り」

 

 五条悟の封印された立方体、獄門疆を抱える空へと、真人は親しげに手を挙げた。

 

「ああ、君の助けがあって助かったよ、これで暫くはこの体で好きに出来る」

 

 空……の中に巣食う脳ミソは、そう嬉しそうに笑った。

 

 空の体を現在使っている脳ミソ、その名は羂索という。

 その特異な術式により、千年以上前から人の体を乗っ取り、生き続けている術師である。

 過去、加茂憲紀という名で呪胎九相図を作り出し、最悪の術師の名を欲しいままにした存在である。

 そんな、彼か彼女かすらわからない存在である羂索は、真人と縛りを結んでいた。

 空と接触し、生得領域に取り込まれた時の事だ。

 

 羂索は真人に次に接触した時、空の体内にある呪胎九相図の四番から九番までを無理矢理混ぜ合わせるように、と言い付けていた。

 その代わりに、生得領域から無傷で逃がすと。

 真人はそれを言われた時には頭にハテナマークを浮かべていたものだが、こうして額を露出して飄々とした態度を見せているのを見るに、上手く行ったのだろう、と納得させていた。

 

「ところで……裏梅は?」

 

「裏梅?」

 

「あー……名乗っていないのか。君達に協力していた白髪のおかっぱの子だよ」

 

「あー、あいつね。なんかもう一人の特級を抑えに行ってる筈だよ」

 

「成程ね、確かにそれはアレにしか出来ないか」

 

 納得したように頷く羂索を見て、話の流れを黙って見守っていた漏瑚が、痺れを切らしたように口を挟んだ。

 

「いい加減にしろ真人!そいつはなんだ!?

 それは獄門疆なのか!?五条は封印されたのか!?

 全て説明しろ!貴様も、何のつもりか話して貰うぞ!」

 

 漏瑚は青筋を浮かばせ、親しげに会話する二人に詰め寄った。

 事態の都合の良過ぎる変化に、漏瑚はついていけていなかった。

 先程まで死力を尽くして現代最強の術師とやりあっていたのだ、困惑するのも当然だろう。

 

 真人と羂索はきょとんとした顔でギリギリと歯を鳴らす漏瑚を見て、互いに見つめ合い……同時に漏瑚を見てへらりと笑った。

 

「「めんどくさー」」

 

「ッ……!貴様らァッ!!!」

 

ボンッ!

 

 激昂する漏瑚の頭の火口から、勢い良く火山弾が飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 羂索の()()()は、数年前、空の体を奪い馴染ませた後、空の体を使って引き起こした大騒動、一年前の百鬼夜行の頃に遡る。

 当時の羂索の狙いは二つ、呪霊操術の夏油傑の体を本命としつつ、特級過呪怨霊祈本里香を宿す少年乙骨憂太をフェイクかつ二次目標として多数の呪霊、呪詛師を派遣した。

 五条悟の足止めも成功し、当時は反転術式を会得していなかった禪院誠一を打ち倒し、夏油傑をもう少しの所まで追い詰める事に成功していた。

 しかしながら、いくつかの想定外に見舞われ、空が身体の主導権を取り戻し、空の身体に閉じ込められるという憂き目にあってしまった。

 

 だが、そこでただでは転ばないのが、羂索という術師であった。

 空との主導権の取り合いは、上手くやれば競り勝つ事が出来たのだが、そうした場合相応に消耗してしまう。

 その後、反転術式に目覚めた禪院誠一と戦い退ける必要があるのだが、足止めを振り切った五条悟と対面する可能性が高くなる。

 そうこうしているうちに夏油傑が復活する可能性も、乙骨憂太が合流する可能性すら浮上してくる。

 その場合のリスクを省みて、羂索は『縛り』を設ける事を条件に、空の身体を潔く譲り渡したのだった。

 

「……くそっ……!」

 

 羂索の内側、生得領域で、閉じ込められてしまった空は悪態をつく。

 顔を険しく歪ませ、ギリギリと歯を鳴らした。

 

 見渡す限りの漆黒の空間にポツンと浮かぶ、円柱のステンドグラスの上で、空はただただ悔しそうに呻いていた。

 

「やられた……大人しく俺の体を明け渡していた時点で、その辺りの記憶が曖昧な時点で、疑問に思うべきだった……!」

 

 ガリガリと頭をかく空に、普段のポヤポヤとした態度は微塵もない。

 

「縛りは二つ……身体を大人しく明け渡す事を条件に、今後合計24時間のみ身体を使わせる事、その縛りを忘れること……。

 数年身体がなかったから、その程度で良いならとか考えて……あーっ!もうっ!俺のバカ!バカバカ!」

 

 ダンダン、と足を踏み鳴らし、自分の不甲斐なさに憤る。

 

 当時の空は、身体を奪われた後呪霊のような身体で数年彷徨っていた為に、その辺りの判断が甘くなっていたのだ。

 一日程度なら、自分の身体が戻ってくるなら、その事を忘れたところで、等と気楽に受け取ってしまっていたのだ。

 呪術に携わる者として、致命的な油断であった。

 なお、余談であるが、羂索としても一日などという吹っ掛けた時間を許されるとは思っておらず、そこから詰めていく予定だったそうな。

 

 だがそれがあっても、平時であれば多少の抵抗は出来た。

 しかしながら前日からどうにも頭の中で脳ミソが口うるさく、空は飽き飽きとした状態で、多少寝不足気味でこの日を迎えてしまった。

 ついでに足を踏み入れれば、体内に取り込んでいた呪胎九相図の四番から九番の予期せぬ脈動。

 その負担から、みすみすと身体の主導権を一時的に奪われてしまった。

 更にはそのせいで最強の一角、五条悟が封印された。

 その時を狙っていたのかと、空は歯噛みする。

 

 どうにか、挽回しなければならない。

 羂索の企みを理解している訳ではないが、ろくでもない事だというのだけは確かだ。

 このまま燻り続けるという選択肢はなかった。

 

 空は……はぁ、と深く息を吐き出した。

 

「やだなぁ……」

 

チャキ

 

 空は大きくした鍵をくるりと回して、両手で逆手に持ち、その切っ先を自身の胸に向ける。

 

「でも……皆がやられるのはもっと嫌……」

 

 静寂が流れる生得領域で、空は静かに息を吸って、上を見上げた。

 なにもない漆黒の空間に、一瞬キラリと光が瞬いた。

 

「……僕がやらないと、ね。待っててね……みんな!」

 

どす

 

 空の鍵が、空を貫き……そこから光が溢れ、その空間を照らし出した。

これからの話

  • このままストーリー継続
  • もっと飯中心にまったり進行
  • そもそも過去に何が?
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