呪術高専さしすせそ!   作:如月SQ

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カツ丼

「悠仁!今日は二人で任務だ!」

 

「オッス!」

 

「験担ぎに今日の昼飯はカツ丼だ!」

 

「オオォッス!」

 

「好きなだけ食え!」

 

「いただきまぁす!」

 

ほっかほかの出来立てカツ丼。

それを差し出すと、悠仁は満面の笑みで食べ始めてくれる。

まずは、とばかりに卵と出汁で綴じたカツを一切摘まみ、口へと運んだ。

 

ザクッ!

 

食堂中に木霊するような小気味良い音が響いた。

 

「こ、これ……!」

 

驚いてこっちを見る悠仁に、俺は親指をたてる。

 

「それが【醤油操術】を使っての調理…そう!カツ丼のカツが出汁を吸ってるのにサックサク!」

 

「すげぇ!なんだこれ!衣を噛み締めると出汁が溢れだすのに、歯応えが揚げたてのままだ!卵も最高の火の通り方で、玉ねぎもしっかり味が染みてるのにシャキシャキ…肉もジューシーで美味い!はぐっ……んー!」

 

半分になったカツを口に放り込み、下の米をかっ込む悠仁。

そこで俺はニヤリと笑った。

米を口一杯に頬張った悠仁の瞳は、みるみるうちに輝きだした。

悠仁は最早言葉もなく、夢中でカツ丼をがっつき出す。

 

くっくっくっ、カツにばかり気をとられてたようだな。

染み具合のコントロールは、カツや卵のみにあらず。

その下の米の染み具合もコントロール出来る!

丁度丼の中層だけに出汁が染み込み、しかも米粒一粒一粒が出汁でコーティングされている!

頬張ってがつんとくるカツの旨さ、そこをただの白米で包み、味が薄れてきた所に再度出汁の旨味!

そして何よりも、だ。

 

ザクッ

 

ザクッ

 

ザクッ

 

最後までザックザクだ!

カツ丼といえば揚げたてを使っても、最後にはザクザクの食感が失われたりするもの…だが、俺の作ったカツ丼にはそんなもんはない!

最後の一切もザクザクと音をたてながら頬張る悠仁は最高に幸せそうだ。

いやぁ、この子は本当に美味そうに食うね、作りがいがあるよ。

 

そんなふうに眺めていると、最強コンビが顔を出す。

カツ丼を頬張る悠仁を見て、悟が口を開いた。

 

「お、カツ丼ー?ロース?ヒレ?」

 

「どっちもあるぞ、ハーフで作るか?」

 

「お、いいねぇ、少し出汁甘めでつゆだくとか頼める?」

 

「任せろ悟!傑はどうする?」

 

そそくさと座った悟に対し、備え付けのサーバーから水をコップに二杯注ぐ傑に問い掛ける。

 

「そうだね、私はヒレで。味付けは誠一に任せるよ」

 

「あいよ!悠仁はおかわりは?」

 

「食べる!またロースで!」

 

あっという間に丼をからにした悠仁は、元気よく返事をしてくれる。

俺はそれらの注文の調理に早速取りかかった。

 

「あいよー!」

 

じゅわわわわわわ

 

ジャー!

 

シャカシャカシャカ

 

じゅわー

 

トンカツを油で揚げる音、出汁が熱される音。

魅惑の音だよなあ。

そして加熱された出汁にぶちこむトンカツと溶き卵。

ついでに味噌汁の味も見て、と。

醤油使わないと流石に自在には出来ないから、意外と味噌汁が気ぃ使うんだよな。

 

「いよし、まずはハーフ&ハーフカツ丼甘め!」

 

「きたきた!傑、お先ぃ!」

 

シャキ、とマイ箸を取り出す悟。

というか皆マイ箸持ってるからな。

悠仁と野薔薇にも後でプレゼントすっかな。

 

「はぐはぐはぐはぐ!」

 

早速カツ丼を嬉しそうにかっ込む悟を眺めつつ、俺は調理を続ける。

 

じょわー

 

ジャク!ジャク!ジャク!

 

カカカカカ

 

じゅわわー

 

揚げあがったトンカツが良い音をたてて切られる。

うーん、小気味いいね。

玉ねぎを放り込んだ出汁、に切ったトンカツをぶちこんで卵とじ…っと。

よし、こっちは完成!

 

「ほい、ヒレカツ丼!お待ち!」

 

「最高の揚げあがりだね。いただくよ」

 

シャオ…

 

ヒレカツを噛んだ傑はいつもの細目を少し開く。

ふふふ、俺もまだまだ発展途上よ。

中身はしっとりとジューシーに揚げあがっているはず。

前は少しだけパサついてたから気になってたんだよなぁ。

 

「また腕をあげたね、誠一」

 

「おいおい、褒めても漬物くらいしか出せねーぞー」

 

「いいね、それも頂こうかな」

 

切り干し大根の漬物を小皿に盛って出してやろう。

 

「んっ、美味しいね。箸休めに最適だ」

 

ポリポリと美味そうに咀嚼してる傑を横目に、よし、と頷き、悠仁の二杯目を仕上げを終える。

 

「いよしっ!と!ロースカツ丼お待ち!」

 

「ざーっす!もっかいいただきまーす!」

 

そうして満面の笑みでカツ丼を頬張り始める悠仁。

いやぁ、良い光景だ。

悟も傑も一時期は食もろくに取れてなかったからなぁ…。

こうやって二人で俺の料理を笑って食ってくれるのは…控え目に言っても最高だな。

さあて、他の腹ペコどもはいつ来るかね。

俺は豚カツを揚げる準備をしながら、三人がカツ丼を頬張る様子を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは山奥の山荘、そこに巣食う呪霊を祓った後の事。

 

一級にも届かない、強くて二級、殆どが三級の実に楽な任務。

ただ、数だけはいたので悠仁には良い経験になったと思う。

四方八方から襲い掛かってくる呪霊に、どう対処していくか…この業界は万年人手不足、一対多なんて常だからな。

二級だけは俺がぶん殴って祓ってたが、最期には丁度よく残った二級と、悠仁がタイマンを張った。

そして見事、悠仁は二級呪霊を打ち破ったのだった。

しっかし凄まじい身体能力だったな、こりゃ鍛えれば化けるぞ。

後で傑にでも話しておくか。

ま、後は麓に止めてある窓の人が乗ってる車に戻るだけ。

そんな風に気楽に考えていた時だった。

 

「騒がしいと思えば…呪術師か」

 

面倒な事になったな…。

道を塞ぐように現れた人間大の呪霊。

だがその目は大きな一つしかなく、人間なら髪があるべき場所はまるで火山の火口のようになってる。

服を着こなし、言葉を話し、此方を値踏みするように見つめてくる視線。

けど一番やばいのは、こいつが現れた瞬間周囲の温度が上昇し続けてる事だな。

こいつから発せられる圧と暑さもあって、悠仁は固まってしまった上に呼吸が荒い。

……まあ仕方ない、さっきまで全力で任務だったしな。

 

「騒がせたみたいで悪かったな。もう俺達用は済んだし、帰るよ」

 

推定特級…中の上ってところか。

悟や傑なら瞬殺、空でもいけそうだが…。

ちら、と俺は隣で固まっている悠仁に視線を向ける。

悠仁を抱えながらは…俺じゃ祓うのは難しいかもな。

 

「まぁ、待て」

 

一歩踏み出そうとする俺の足元に…そうだな火山とでも呼ぶか。

火山が炎弾を放ってきた。

足元から立ち上る強い熱気が顔を煽り、命中したら火だるまになったであろう事が容易く想像が出来るな。

 

「なんだい呪霊さん、俺らは疲れてんのさ。敵同士とはいえ、言葉が通じるなら、見逃してくれない?」

 

俺の素の実力を見切り、避けれるか対処出来る程度に抑えてあるし、会話も出来る。

その目から理性を感じるが…。

 

「そうさな…貴様達は山荘の呪霊を祓ったのだろう?あれは儂の…そうだな、仲間、いや配下と言える者達。その敵討ちという事にして…呪いあおうではないか?」

 

同時に此方を痛め付けたいという、残虐性も強く感じる。

山荘の呪霊云々は明らかに出任せだ。

ここで会ったのが意図的が偶然かはわからんが、俺達を殺したくて仕方ないらしい。

呪霊らしいっちゃらしいがな…。

火山の両の手から立ち上る、景色が歪む程の熱気と、いやらしく歪んだ瞳と、つり上がった口元。

もしも背後を見せれば一瞬で焼き付くされるな。

……逃げるのは無理か。

 

「ぜ、禪院さん……」

 

どうするか、と悩んでいると、隣の悠仁が声を震わす。

……ま、答えは決まってるか。

 

「大丈夫だ悠仁。お前は俺が守るよ。心配すんな」

 

わしわしと少し雑に頭を撫でてから、俺は一歩火山のほうへと踏み出す。

たった一歩踏み出しただけで、火傷しそうな程の熱気を感じる。

…長期戦は間違いなく不利、近接しか出来ない今のままだと近づいただけで燃えるかもなぁ。

なら…方法は一つ、か。

 

「はぁ……」

 

「浮かない顔ではないか、貴様ら呪術師は我ら呪いを祓うのを生業としているのだろう?ほら、また一つ祓えるぞ?」

 

ニヤニヤと笑う呪霊はわかっているのだろう、俺が火山を害せる程の実力を持たないと。

まぁ、物事の一側面としてはあってるかな…。

俺はそっと柔らかく両の手を軽く合わせる。

そこから、指先だけを交差して、掌印を結ぶ。

その意味に気付いたのだろう、火山はニヤニヤとした笑みを引っ込め、直ぐ様掌印を結ぶ。

まぁだろうな、そのステージの呪霊だよな。

さあ、あとは俺とお前の根比べだ。

 

「……悪く思うなよ。領域展開【黒天天ヶ原】」

 

「嘗めるな!領域展開!【蓋棺鉄囲山】!」

 

俺の黒と、全てを焼き付くす赤がぶつかり合う。

 

 

 

―そして、決着はついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシャッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー、色々報告する事が増えたな……キナ臭い話だ。なあ、悠仁?」

 

「は、はい、そう、ですね……」

 

「そうビビるなって…さっきの火山、頭だけ残して抱えさせたのは悪かったって」

 

「い、いやそうじゃ…」

 

「あー、あのなんか木みたいな呪霊に火山の頭奪われた事か?気にすんなよ、俺もボーッとしちまってたからな」

 

「そ、そうでもなくて……その…禪院さん、めっちゃくちゃ強いんスね……」

 

「ははは、んなこたねえよ、同期じゃ硝子にゃ流石に勝てるが、最弱だぜ?」

 

「はははは……」

 

「ま、帰るとしようぜ。傑にお土産もあるしな」

 

誠一の手の瓶の中で、黒い液体がちゃぽ、と揺れた。




禪院誠一
領域名【黒天天ヶ原】(こくてんあまがはら)
火山(仮)の呪霊に競り勝った、黒い領域。

これからの話

  • このままストーリー継続
  • もっと飯中心にまったり進行
  • そもそも過去に何が?
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