呪術高専さしすせそ!   作:如月SQ

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渋谷事変終幕

「この勝負……貴様の勝ちだ」

 

 そう宣言した宿儺の瞳は……禪院誠一に向いていた。

 

「なっ……」

 

 裏梅は、その言葉を直ぐに理解出来なかった。

 何故主の顔は自分を向いていないのか?

 何故奴に勝利宣言しているのか?

 何故……自分は負けたのか。

 

 主の眼前故に醜く取り乱す事こそなかったが、裏梅の内心は荒れ狂っていた。

 

 何故、何故何故、何故何故何故!

 

 かしずき俯いたまま、内心で自問し続ける裏梅を尻目に、宿儺は腕を組み、ソファに背を預けて目を瞑った。

 それ以上告げる言葉はないとでも言いたげに。

 主のその様子に裏梅は酷く衝撃を受けた。

 見捨てられる……見捨てられた。

 専属の料理人として、そこらの有象無象に負けた自分はもう、主にとって無価値な存在なのか……?

 

ギリィッ

 

 噛み締めた奥歯がメキメキと音をたて、 何処かを噛みきったのか口の端から血が溢れた。

 次の瞬間には自害してもおかしくない雰囲気を醸し出し始めた裏梅へと声をかけたのは……。

 

「……いや、料理自体は、あんたのほうが上だったと思うぜ」

 

 勝者である、禪院誠一だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ッ――慰めなど!」

 

「慰めじゃねぇさ」

 

 俺が見たところ、完成した野菜炒めの完成度は間違いなく、裏梅が上だった。

 野菜への火の通り方といい、味付けひとつとっても満遍なく、むらなく全体に行き渡っているように見えた。

 人肉は……流石によくわからんが、恐らく絶妙なバランスで成り立っていた筈だ。

 宿儺好みの完璧な料理だったのは、間違いない。

 

「……だが、それが仇になったんだよ」

 

「……なんだと?」

 

「お前が『両面宿儺』が好む味付けにしたからこそ、この勝負、俺が勝てたんだ」

 

 裏梅は俺のその言葉に顔をしかめた。

 何を言っているのかわからない、そんな態度で。

 

「言ってる事の……ハッ……!」

 

 苛立ちすら浮かべ始めた裏梅の視線がちら、と宿儺に向けられ……そこで裏梅は目を見開いた。

 自分が見過ごしていた事実に、気付いたんだろう。

 

「……そうだ、今ここにいる『両面宿儺』は千年前の、そのままの宿儺じゃない。

 他人の体に受肉し、千年何も食べていない宿儺なんだ。

 ……感じる味覚が、多少、変わっちまってたんだ」

 

「くぅうう……!」

 

「あんたは、それを考えなかった。

 過去の宿儺が好んだ味付けのまま、味覚がそのままならば絶品として絶賛しただろう味付けで仕上げちまった……。

 その微細な差が、勝敗を分けたんだ」

 

 俺は、宿儺が久々の食事だと聞いた時、脳内のレシピを少し変えた。

 肉をバラ肉じゃなく、脂身の取り除いたロースにして、味付けも多少甘めに、そして、全体をさっぱりとした味付けにしたんだ。

 あまり重くならず、最後まで美味しく食べられるように。

 それが、功を奏したんだろう。

 

 裏梅は悔しそうだったが、同時に納得もしているようだった。

 恐らく……少し舞い上がっていたんだろうな。

 裏梅にとって、宿儺は最高の主なんだろう。

 そんな主に美味しい物を食べて貰いたい……その思いが強くなりすぎて、少しだけ視野狭窄に陥ってしまった……。

 俺には、それを責められねぇな。

 

「……裏梅、お前の敗因は俺にある。気に病むな、いずれ完全に復活した暁には……また頼むぞ」

 

「っ……!宿儺様に責など……!」

 

 目を瞑ったままの宿儺の言葉に、裏梅は更に顔を歪めた。

 そうして、その歪んだ顔のまま、俺を睨み付けてきた。

 

「私の敗因があるとすれば、それは宿儺様が受肉体であった事、それのみ……!

 良いだろう、禪院誠一、今は大人しく私の敗北を認めよう。

 今暫くの間、宿儺様の専属料理人の立場……貴様に譲り渡してやろう」

 

「そうか……………………ん?」

 

 ちょっと待て?

 

「だがその立場、いずれ必ず奪い取ってやるぞ!

 精々、首を洗って待っているがいい、禪院誠一!」

 

 ビシィッと勢いよく俺を指差して……いや、まぁ、料理対決するなら別にいつでも構わんが、専属料理人って何?

 

「いや、待て待て、何?何の話?」

 

「それでは宿儺様。もっと腕を磨き、宿儺様に相応しい料理人として、いずれ必ず馳せ参じましょう!……失礼致します」

 

「あ、おい!」

 

 裏梅はもう俺の言葉も姿も見えていないようで、宿儺に一礼してさっさと姿を消してしまった……。

 ……いや、おいおい、なんか色々と聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたんだが……!?

 突然の事態に困惑しきりの俺を正気に戻したのは、宿儺が鼻を鳴らした音だった。

 

「フン」

 

 ちら、と宿儺のほうを見れば、いつの間にか俺をじっと見つめていた。

 腕は組んだまま、静かに口を開いた。

 

「天晴れだ。俺の想定以上に、貴様は面白い」

 

「お、おう……?お気に召したようで……?」

 

 ニヤァ、と頬が裂けたような笑みを浮かべる宿儺に、顔をひきつらせた。

 なんだなんだ……?何が宿儺の罫線に触れた……?

 こいつの態度の意図が掴めん!

 

「いずれまた、俺の飯を作らせてやろう」

 

 そう偉そうに言い放った宿儺の姿が、スゥ、と薄くなる。

 

「ケヒッ貴様の名、覚えておこう……禪院、誠一……」

 

 それだけ言って、宿儺の姿はそのまま消えてしまった。

 先刻の言葉通り、仮の肉体で時間制限ってのはマジだったらしい。

 

 ……いやぁ、最後まで偉そうだったなぁ……。

 色々と思う事はある、いや滅茶苦茶突っ込みしたい所がいくらでもある。

 けどまぁ……一先ずは、あのプレッシャーから解放されて、安心したわ……。

 

「はぁ~~~……マジで生きた心地がしなかった……俺今、本当に生きてるのかぁ……?」

 

 主従揃って自分勝手な奴等だ本当に……。

 専属料理人の立場なんざいらんわ、勝手にやってろ……。

 

「はぁ~~~……ぁ?あー……」

 

 やべ、突然視界がブラックアウトした。

 足から力が抜けて体がぐらりと傾き、そのまま倒れてしまう。

 

バタン

 

 あー、貧血だな、こりゃ駄目だ。

 視界が暗いし体に力が入らん。

 腕斬られた時、血を流しすぎたか……仕方ねえなぁ。

 

 まぁ、一番危険だっただろう宿儺は大人しくしてたし……俺の保険が機能したなら、渋谷はどうにかなんだろ……。

 はぁー、やれやれ、こんなプレッシャー感じながら料理するなんて性に合わねえぜ。

 高専の厨房が、恋しいなぁ……まったく。

 

 内心でそう毒づいて、俺はそのまま気絶しちまった。

 きっとどうにかなっていると、皆を信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 2018年10月31日、渋谷で発生した事件概要。

 

 一般人も巻き込んだ過去最高規模の呪術テロ。

 

 事態の解決には呪術高専東京校が中心となり、在野の呪術師、補助監督を総動員し、事件の解決に当たった。

 

 一般人の死傷者、行方不明者多数。

 

 建築物、道路、並びに地下鉄等公共物の被害甚大。

 

 補助監督並びに事態解決に尽力した呪術師、重軽傷者多数。

 

 植物の特級呪霊、特級術師五条悟によって討伐。

 

 火山の特級呪霊、特級術師夏油傑によって調服。

 

 他、多数の呪霊の討伐報告あり。

 

 特級呪霊真人を虎杖悠仁、吉野順平両名の尽力により追い詰めるも逃走を許したとの事。

 

 真人によると思われる改造人間の多数の殺害報告あり。

 

 多数の呪詛師の殺害報告あり。

 

 また、両面宿儺が復活した疑いあり。

 

 ただし、両面宿儺による物と思われる被害が発生した時刻、両面宿儺の器である虎杖悠仁は特級呪霊真人と戦闘中だったという報告もあり、現在調査中。

 

 虎杖悠仁には経過観察の為、高専敷地内からの外出を禁じる。

 

 そして、特級術師五条悟の封印並びに、一級術師夢乃空の反旗並びに両者の敵側との内通の疑いについて―――

これからの話

  • このままストーリー継続
  • もっと飯中心にまったり進行
  • そもそも過去に何が?
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