特級呪霊と早速遭遇するという、入学したてにしてはかなり刺激的な経験をした悠仁だが、呪術界は常に人手不足…。
甘え等許さんとばかりに高専での授業もそこそこに次々と任務を与えていくのが、呪術界の今の上層部だ。
故に今日も今日とて任務だ。
「の、前に、現場の近くにいいスポットがあったから、校外授業的な感じで今日は川釣りだ!」
「「おー!」」
「……」
長袖長ズボンに長靴、ライフジャケットに帽子。
山の中の川だからな、こういうのはしっかりさせないとな。
野薔薇はダセーと嫌がってはいたが、危険性をこんこんと説明したら渋々納得してくれた。
まったく皆良い子だな。
「釣れた魚は俺が直ぐに焼いてやるからな。釣れたては美味いぞー」
俺は焚き火を育てながら伝えてやる。
よーし、大きく育てよー、美味しく魚を焼いてくれ。
「竿はシンプルに竿と糸のみ。針もかえしがないタイプ。魚がエサを食ったら上手い事力を調整しないと、すぐバレるようになってるからな。ま、エサはたくさんあるから好きに楽しむといいぞ」
エサは練り餌だ。
つけやすいのが良い。
手が臭くなるのが難点だが。
「はーい」
「ハッ…これも訓練の一つなのか…?反射神経を鍛える…?」
「ただの遊びだろ、真面目すぎ」
それぞれが竿を持ち、それぞれに渡した練り餌を針につけていく。
後は放るだけ…というタイミングで、悠仁が口を開く。
「そういえば…気になってたんだけど……なんでいるの?」
そして俺の背後を指し示した。
振り返った俺は、はは、と苦笑を浮かべた。
「ま、気にすんな。応援団みたいなもんだよ」
「「「応援団」」」
三人が声を合わせ、背後のレジャーシートを敷いてくつろぐ四人を見つめた。
元々傑は着いてくる予定だったが、他二人は任務、硝子に至っては高専から出る為の許可取るのとかも一苦労の筈なんだがな…
「一番釣れるの誰が賭けよーよ。負けた奴が今晩高級焼肉驕りで」
「乗った。私は釘崎で。がんばー」
「じゃあ私は悠仁かな。楽しむんだよ」
「うーん、うーん、ボクも釘崎チャンで!がんばってー!」
「野薔薇が二票か、それなら僕はー…恵かな。頑張りなよー」
クーラーボックスから取り出したビールを開ける硝子と傑。
瓶コーラを飲む悟と、瓶ラムネを傾ける空。
四人ともいつも通りの格好で、周りの自然を眺めながら、思い思い楽しそうにしている。
……応援団だな。よし!
「……生徒で賭けしてるよ。焼肉かけて」
「明らかにクソなのに、二票入ってて少し嬉しい自分がいるのがやだ」
「……」(ちょっと嬉しそう
それぞれなんとも言えない反応を見せつつ、三人は川に糸を垂らす。
涼やかな風が吹き、穏やかな木漏れ日が差していて心地良い。
焚き火も良い感じになってきたので、持ってきていた沖漬けイカをタッパーから取り出して炙りはじめる。
すぐに気付いた硝子と傑の目が獲物を狙う目になった事にげんなりしつつ、焚き火に木を足していく。
「……うん、こんなもんだな。おら、これでも食ってろ呑んだくれ」
紙皿に乗せた焼きイカを、二本目のビールに手を掛けた硝子と傑に渡してやる。
カシュッ!
……渡す前に香った匂いだけで、こいつら一本目の半分くらい飲んだな。
まぁ、そりゃ自信作ではあるが…イカが死なないように完璧に調整して完璧なたれの染み具合にしたし、、さっきまで生きてた新鮮なイカだからな。
「ひゃあぁたまんないわこれ、ビールが進むわぁ」
「これは飲まずにはいられないよ」
カシュッ!
一口食べただけで二本目を空にした呑んだくれ共は、躊躇いなく三本目を開ける。
それをカン、とうちつけあった二人はイカを食べ、すかさずゴキュゴキュと音を鳴らし、その銀色の缶を一口で飲み干してしまう。
「「っぷはーっ!」」
「……飲み過ぎんなよ」
「あんたの作る酒のアテが美味すぎんのが悪い!」
「硝子に同感」
カシュッ!
……まぁ、楽しそうだからもう何も言わん。
「てか任務はどうしたんだよ」
「あー?京都のほうが近かったから直哉と歌姫に丸投げしてきちゃった。ま、その代わりに北海道の任務貰ってきたから。明日行く予定」
「……等級は?」
「京都近くのは一級、北海道のは二級」
「歌姫は災難だな…」
歌姫には荷が重いだろう。
直哉がいれば大丈夫だろうが…無事を祈るばかりだな。
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「クシュンッ!」
「なんや歌姫ちゃん、風邪かいな。一級案件やで?いくら俺かて歌姫ちゃんの為に常に気ぃ張ってられへんのやからね?」
「五月蝿いわね…わかってるわよ!言われなくても油断はしないわ。あのバカに擦り付けられた任務…絶対ろくな任務じゃないもの」
「良い経験だと思わな。特級の受けた一級任務やで?」
「だから言ってるんでしょうが!」
~~~~~~~~~~
「空は?」
「ここに着いてくるつもりだったから、早朝に終わらせてきたよー。硝子チャンは一段落ついてたみたいだったから連れてきちゃった」
「……それ大丈夫なのか?」
「窓から連れ去ったけど、誠一クンの名前で書き置き残したから大丈夫だよー」
「そうかそれなら……なんで俺の名前使ったお前?」
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「禪院誠一ぃいいいいいいい!!!」
「…筆跡違くね?これ」
「空さんの筆跡だな」
「しゃけ」
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ま、良いか。
「ほれ、味噌田楽。悟と仲良く分けろよ」
「わあい」
こんにゃくに甘い味噌をつけて焼いたのを紙皿に乗せて、空に渡してやる。
来てしまったもんはしゃあない。
むしろまぁ、硝子はいつも大変だからな…気分転換になりゃいいさ。
さて、三人の釣りの成果はどんなもんかね。
事前に仕込みはしてたが…。
まぁ、視界の隅で悟も硝子も傑も歓声あげてたし、まぁ入れ食いだろう。
「っしゃあ!またきたぁ!」
「釘崎ー!いいぞー!私のタダ酒と焼肉の為に釣れ釣れ!ぐびぐびー…」
「いいよー、釘崎チャンー。はぐ…んー、おいしー」
手慣れた様子で釣り上げた魚をバケツに入れ、直ぐ様餌をつけて川に放り込む。
野薔薇調子良いな、グッと親指を硝子と空に向けて笑みを浮かべて。
余裕あるし、楽しそうだ。
さて他二人は…。
「お、伏黒いいデカさじゃん。俺の釣る奴なんか小ぶりなんだよなぁ…」
「いやでもそっちのが脂のってる感じするな…この後が楽しみだな」
仲良さげでほっこりするな。
「恵ー!いいからもっと釣りなよ!野薔薇に負けちゃうよー!」
保護者がうるせーな。
「てかそろそろ良いんじゃねぇか?あんまり一気に釣りすぎると良くないっていうし、釘崎もめっちゃ釣ってるみたいだから、この辺でさ」
「そうか?……そうかもな。終わりにするか」
魚がパチャパチャと泳ぐバケツを見て、恵頷く。
「悠仁はいい子だね…」
「恵ー!諦めないで釣ってよー!」
顔を赤くしながらパチパチと拍手をする傑は…酔ってるなもう。
悟の言葉は無視みたいだな…ま、悟も笑って田楽食ってるし、そこまで必死でもなさそうだが。
さてじゃあ、野薔薇も止めて終わりにするかぁ。
パァンッ!
俺の拍手がその場に響く。
「終了!」
丁度最後に一尾釣り上げた野薔薇に、俺は終わり、と告げる。
残念そうにするその姿に、楽しんで貰えたように思う。
まあ、奴等が賭けをやり始めたのは少し想定外だったが…結果的に楽しんでればいいか。
「そんじゃ釣った魚は俺に任せて、お前らも手を洗ったらシートの所で待ってな。イカ焼きと味噌田楽色々あるけど、魚と一緒に食う塩むすびも用意してあるから、程々になー」
「「「はーい」」」
元気に返事をした三人は、釣りの成果を確認し、野薔薇は得意そうに笑みを浮かべた。
それに二人が賛辞を述べながら歩きだし、事前にタンクに汲んでおいた水道水で手を洗っている。
川でもいいんだけど…まぁ、一応な。
釣りの結果は野薔薇一番、恵二番、悠仁三番だったみたいだが…。
釣った魚を見ると、悠仁の釣った奴は鮎ばかり。
個人的には鮎が一番好きだから、悠仁に花丸送ってやりたいぜ。
「さぁて、仕込みするか」
鮎はそのまま塩焼きかな。
ヤマメは内臓とって塩焼き…ま、それでいいかね。
それらの処理をしつつ、皆の様子を眺める。
頭をかきながら傑に謝る悠仁だが、傑は特に気にした様子なく、ラムネを差し出してる。
「すみません、夏油先生」
「はは、楽しかったかい?それならいいさ。ラムネでも飲むといい」
「うっす。いただきます」
悟はなんかぐちぐち恵に絡んでるようだが、完全にスルーして恵はお茶を飲んでるみたいだ。
「恵ー。もうちょっとなんか色々出来たんじゃないのー?式神使って妨害するとかさー」
「…………」
「あれ?恵ー?無視ー?」
そして勝利した野薔薇だが…。
「よしよしよーし!よくやったねぇ、褒めてあげる」
「よしよしー。釘崎チャン頑張ったねぇ」
「あはは!こんなもんっスよ、あは、あ、ははは……はひ……」
硝子と空に頭と頬を撫でられ、引き倒されて膝枕させられ、撫でまわされ続けている。
野薔薇は最初は純粋に嬉しそうだったが、段々と顔を赤くし、目をグルグルと回し始めていた。
……問題無し。ヨシ!
流石に淫行はしないだろう。
さて、串うちは終わった。
塩もまぶし終わった。
ヒレにしっかりまぶして白くなるようにして焼くと、そこがうめえんだよな。
さて、後は焼くだけ。
新鮮な、うちの可愛い生徒達が頑張って釣り上げた魚だ。
完璧な焼き加減、見極めてやるぜ!
パリッ!
「「「うっまぁ!」」」
我ながら完璧な焼き加減の塩焼きを、いい音をたててかぶりつく三人。
「皮うっまぁ!パリパリで脂がじゅわって、うっめえ!」
「素朴でいい味わいだな…」
「んんー!美味しいー!勝利の味は格別ね!」
笑顔の三人に俺も嬉しくなっちまうな!
「ほれ、塩むすび!この後任務だからな、食え食え!」
俺もつられて笑いながら、塩むすびを渡していく。
はぐはぐと夢中で食べる様子を眺めつつ、次いで焼き上がった魚を教師陣にも渡していく。
「「「「いただきます」」」」
パリパリと音をたててかぶりつく三人、そして一人、串から引き抜いて、頭からかぶりつく傑。
そうそう、それも美味いんだよ。
鮎は内臓も美味しく食えるからなぁ、骨も奥歯で磨り潰せるし、この食い方美味いんだよなぁ。
ぎょっと目を見開く悟と硝子と空を尻目に、既に一尾食いきった悠仁が、手についた塩と脂を舐めとりながら、傑の食べ方におお、と感心したような表情を浮かべた。
それに何を求めているのか即座に理解した俺は、鮎の塩焼きを渡してやる。
「ほれ、鮎の塩焼き」
「あざーっす!」
さっと串を抜いた悠仁は、ばくん、と半分程を一気に口に入れて、パリパリボリボリと咀嚼していく。
そしてばくんと一息に塩むすびを頬張り、幸せそうに咀嚼している。
本当に、美味そうに食うなぁ。
さて、二尾目も焼けたし…俺も食うかな。
イワナの背に歯をたて、俺も食事にするのだった。
「にしてもすごい入れ食いだったなぁ」
「気持ちいいくらい釣れたわね!あれくらい釣れたら楽しいわ流石に」
「少し心配になるくらい釣れてたな」
「ああ、上流に事前に醤油一滴垂らして、あの辺りの魚の警戒心だけ下げてたからな」
「「「????????」」」
「いやだから、川に醤油垂らすだろ?
そしたら川はもう醤油だろ?
なら川に住む魚ももう醤油だ。
醤油なら操れる。
だから魚が釣れやすい状態にしてたんだ」
「「「なんて??????」」」
「ま、縛りで俺は俺が作った醤油しか操れないし、戦闘に醤油一切使えないんだけどな」
「「「????????」」」
「いや、醤油は調味料だからな、勿体無い勿体無い」
【醤油操術】
縛り
・自分が作った醤油しか操れない。
・戦闘に醤油操術で操った醤油を使う事は出来ない。
誠一が作った醤油を混ぜた液体は、どれだけ薄れても醤油扱いにして操る事が出来る。
少なくとも魚の警戒心のみを麻痺させるような使い方が可能らしい。
これからの話
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このままストーリー継続
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もっと飯中心にまったり進行
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そもそも過去に何が?