呪術高専さしすせそ!   作:如月SQ

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『―呪胎戴天―』



今回は料理なし


ザギンでシースー

「ふふふふーんきょーはみんなで任務だよー」

 

珍しく地に足をつけて歩く空先生は、ご機嫌そうだ。

補助監督、という術師のサポートを主に行うらしい、伊知地さんという人が今回の任務の内容を説明してくれた。

 

「此方の英集少年院にて呪胎が発見されました」

 

「呪胎……?」

 

「呪霊の卵みたいなもんだ。非術師にも目視出来たりするもので…特級呪霊になる可能性を秘めてる」

 

「特級……!」

 

ごくり、と喉が鳴る。

俺の中にいる宿儺や、この間禪院さんと一緒に出会った火山の呪霊…。

宿儺は兎も角、火山とは面と向かったからわかる、あの圧力。

今向かい合えと言われても正直ゴメンだ。

何より禪院さんが言うには、俺がまともに戦えば塵も残らないくらい強い呪霊だったらしい。

今更ながらに背筋に寒気が走る。

 

「まだそうなると確定した訳ではありません。ですが可能性は高いとして、呪胎が発見された時は『特級仮想怨霊』として登録されます。そして基本的には特級が派遣されるのですが…」

 

そこで伊知地さんは言葉を濁して、空先生の方を見る。

視線が集まってる事に気付いたんだろう、空先生はにぱっと笑った。

 

「悟クンも傑クンも忙しいからね!もう一人の特級は海外だし!あと一人は……ボクもよく知らないや。ま、大丈夫大丈夫。ボクも特級は何回か祓った事あるし」

 

「……そういう事です。仮に特級と出会った場合は、夢乃さんに対処を任せて下さい。貴方達には取り残された生存者5名の救出をお願いします」

 

「伊知地クン、他に何か情報ある?」

 

「そうですね…貴方がいてくれてホッとしています」

 

「あははー、やっぱ上かぁ。大変だね、その立場も」

 

「自分に出来る事をしようとしてるだけですから」

 

「そっかあ、偉いねえ伊知地クンは。さ、皆行くよー。あ、でもまずはボクがいないと思って行動してみてね!危なくなったらすぐ助けるから」

 

「……わかりました『玉犬』」

 

伏黒が呼び出したのはお馴染みのもふもふの白い犬。

一吠えしてからお利口にお座りするその犬を、すかさず俺と釘崎でもふもふしてやる。

 

「おー、相変わらずもふもふだなぁお前は」

 

「このもふもふ具合はたまんないわね。ご主人様のツンツンの髪に分けてあげなさい」

 

「余計なお世話だ」

 

パン

 

空先生の拍手に、撫でる手を止める。

…ちょっと、浮わつき過ぎたかな。

立ち上がって空先生を見る。

意外とちゃんと立った空先生は背が高く、170くらいはある筈の俺と同じくらいの目線だった。

 

「それじゃ、そろそろ行こうか?」

 

その言葉に、皆で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年院に入る直前、中に閉じ込められているという生存者の母親が悠仁達に声をかけてきた。

助けて欲しいと頼むその母親に対し、悠仁と野薔薇は真剣な顔で頷き、一方で恵は冷めた表情を浮かべていた。

そして空は、その母親に慈愛の表情を浮かべてその様子を眺めていた。

 

「ん、すごいね、既に生得領域が展開されてるよ」

 

少年院に侵入した四人を待っていた状況は悪い。

辺りは妙に赤く染まり、後ろを振り返れば出口は見えなくなっていた。

気味が悪そうにしつつも、四人は進みだす。

 

「母親かぁ。親ってのはすごいね、情報確認した?救出対象の岡崎正って人は二回無免許運転して、女児をはねたんだって。そんな子でも愛して、心配出来る……愛だよねぇ」

 

「とりあえずは助けるッス。話はそれからで…」

 

「……俺は気が進みませんね。余程の余裕がない限り、俺は助けようとは思いません」

 

「なっ…何言ってんだ伏黒!その人を助けられるのは俺達だけなんだぞ!?」

 

「助けて生かして、その後そいつが改心する確信でもあるのか?そいつがまた人を殺したらお前、責任取れるのか?」

 

「お前っ…!」

 

「ハイハイストップストップ!それ今言い争う事!?まずは探す!見つける!こうしてる間に殺されるかもしんないのよ!」

 

二人が睨みあいを始めた所で、野薔薇がそれの仲裁に入る。

その内容がぐうのねも出ない正論な事もあり、二人は互いに視線を切る。

そうして辺りを警戒しながら歩き始めた。

 

「青春だね。子供らしくて大いに結構…。子供、か。ふふふ……ボクも欲しいなぁ、子供…」

 

そんな言葉を呟く空に対し、空気を払拭しようと思ったのか、釘崎がその言葉に反応した。

 

「夢乃先生は誰かそういう好きな人とかいないんですか?結婚相手として誰がーとか」

 

「うーん、ボクは天与呪縛で子供を作れないから、ちょっと、尻込みしちゃうなぁ。そもそもそういう器官がボクの体には存在してないから、どれだけ子供を欲しても出来る事はないんだ。それに性別もどっちでもないし」

 

そんな突然重い話をぶっこまれた野薔薇の笑みが固まる。

 

「えと…すみません、でした…」

 

ただ呆然と謝る事しか出来ず、野薔薇はそのまま閉口した。

最後尾を歩く空に、誰も振り向く事も声をかける事も出来なかった。

 

「ま、そのかわりに高専の生徒達がボクの子供みたいなものかな。だから皆気をつけてね?無事に高専に帰ろうねぇ」

 

「「「はい!」」」

 

「いい返事。頑張ろうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

領域内を進んで行った四人は、やがて探していた者達を見つけた。

 

「惨い…」

 

胸糞悪そうに顔をしかめる野薔薇と、目を見開く悠仁。

呪霊に遊ばれたのだろう、一目で死んでいるとわかる有り様、恐らく三人分の死体だが、顔がわかるのは一人しかいない、酷い有り様だった。

その顔の見える一人の所にしゃがみこんだ悠仁は、その死体の胸に『岡崎正』とあるのを確認し、パン、と手を合わせた。

 

「……連れて帰ろう」

 

「え…」

 

「あの人の子供だ…死体もなしに納得出来ないだろ」

 

「でも虎杖…」

 

「ふざけるな、今俺達が何処にいると思ってる。それに他に二人の生死も確かめなきゃいけないんだぞ!」

 

「でも捨て置けないだろ!」

 

「元々救う気もなかった奴の遺体を持って帰る為に、危険は晒せない!お前、そいつ抱えて戦えるのか?逃げれるのか?それで隙晒してみろ、呪霊はそこを嬉々として狙うぞ!」

 

「俺なら大丈夫だ!抱えて逃げ切れる!」

 

「っ……!このバカが!いい加減にしろ!」

 

ぎり、と奥歯を噛み締めた恵は、悠仁の胸ぐらを掴み上げた。

 

「ちょっと!やめな!今はそんな言い争ってる暇なんて―」

 

ギンッ!

 

その瞬間、野薔薇の足元に巨大な鍵が突き刺さる。

一度だけ見た、空の使う鍵。

その鍵の先端が床にめり込み、その先に黒く蠢くものがあった。

それが呪霊だと気付いたのはそれが消滅してからだった。

 

「バカな、呪いの気配は玉犬が…!」

 

振り返る恵の視界に、壁にめり込み、血を流す玉犬の姿があった。

そして、悠仁と恵の間に、その姿はあった。

体は不自然に白い筋肉質な人体。

だがその異形な顔が呪霊である事を示していた。

 

「(間違いない、特級…!まずい、動かなきゃ……ビビりすぎだよ私ぃ!)」

 

「(動け動け!動かないと死ぬ…!)」

 

「(火山より、マシだけど…マシなだけで、強い、こいつも……)あぁあああ!!」

 

その発する圧で恵と野薔薇は威圧されてしまい動けない。

経験から少しだけ動けた悠仁は、がむしゃらに攻撃を繰り出そうとする。

しかしその攻撃も、呪霊が無造作に手を振れば腕ごと切り落とされるだろう。

 

「はぁ……」

 

キィン!

 

だがそれを空は許さない。

ため息を吐いて巨大な鍵を手にし、呆れたようにその呪霊の手を弾く。

そしてその鍵を剣のように構え、そのまま呪霊を左右から強く打ち付け、その腹部に大きく振りかぶった一撃を繰り出し、そのまま弾き飛ばした。

少し離れた柱に背中から衝突し、呪霊はそのコンクリートに体を埋める事となった。

 

「うーん、捜索中止、君達は即刻領域外へ。遺体は好きにしていいよ。この子抑えておけば大丈夫でしょう」

 

空は三人に背を向け、柱に埋もれたままの呪霊に鍵先を向けて続ける。

 

「ここは特級かもしれない呪霊の領域内なんだよ?気を緩めちゃダメだよー。特級の怖さは……少しはわかったみたいだね。よし、それじゃ気を付けて帰ってね。ボクは……」

 

鍵を左手に持ち替え、呪いに向け真っ直ぐ向ける。

そしてその左腕に乗せるように、右手を親指を出して指をゆっくりと小さく折り曲げ、印を作り出す。

 

「こいつを祓っておくから。はい、行動開始!」

 

その言葉とともに、弾かれたように動き出す三人。

表情に悔しさを浮かばせながら。

悠仁は岡崎正を抱え、恵は新たな式神鵺を呼び出し、野薔薇はそれらに追随して走り出した。

 

『~~~~~!!!』

 

それに気付いたのだろう、柱に埋もれた呪霊が咆哮し、ボコリ、とコンクリートを破壊して体が動き出す。

空はそれを見て、苦笑を浮かべた。

 

「産まれたばかりの赤ちゃんだけど、ごめんねぇ、これも仕事だから」

 

そして、いっそ穏やかな笑みを浮かべて言葉を紡いだ。

 

「領域、展開」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君このままじゃ祓われちゃうよ」

 

領域内で空は四肢を切り取った特級呪霊に話し掛けていた。

 

『……~~』

 

「ねえねえ、君さえ良ければ、ボクの子供にならない?」

 

力なく倒れている呪霊に対し、空は笑みを浮かべる。

 

『~~~?』

 

「うん、そうすれば君はまだ消えないよ」

 

恍惚とした表情で頬を染め、呪霊に手を差し伸べる。

 

『~~~』

 

「あは、契約成立だね」

 

それに対してコク、と頷いた呪霊に、嬉しそうに空は左手で前髪をかきあげ、鍵を呪霊の胸に突き刺し、回す。

すると目の前の呪霊は光となり、空に吸い込まれるように消えていった。

消えたそこに、ころりと指が一本転がった。

 

 

 

空のその露になった額には、横一直線に縫い目があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

ひらひらと手の平にあるものを見せながら、空は少年院から外へと歩いて現れた。

全身黒コートに茶髪の長髪、前髪は眉をほとんど隠してしまっている。

出来る限りの肌の露出が抑えられたその姿。

難しい顔をしたままで空気の悪かった恵、悠仁、野薔薇の三人は顔を上げた、その姿と無事を確認した。

 

「「「夢乃先生!」」」

 

三人はほぼ同時に口に出すと、歩いて此方に向かっている空へと駆け寄る。

そして、その手にある物に顔をしかめた。

 

「っ…!それ!」

 

「うん、そうだね、宿儺の指っぽい。これのせいで発生したのかもね…まだ残穢とかで呪いが出る可能性もあるから…少し様子見かな」

 

「前みたいに夢乃先生が解放とかしちゃダメなんです?」

 

「まだちょっと正しい状況がわからないからねー。下手にやると悪化する事もあるから」

 

「そうなんですか…わかりました」

 

そう言われてしまえば引き下がるしかない。

 

「……今日のはちょっと色々と皆悪かったね。呪術師は死が隣にある事を、もう少し認識しないとダメかもね(後で皆と相談しよう。甘やかしすぎてるかもしれないし)」

 

「はい……」

 

「ウッス……」

 

「……」

 

三人はそれぞれ俯き、元気なく頷いた。

 

「まあ、今日はいいとこナシナシの三人だけど、これからに期待してご飯奢ったげるよー。お寿司とかどうかな?」

 

「いきます!」

 

「……回転?」

 

「ちゃんとした銀座の高級店だよー」

 

「え!マジでザギンでシースーじゃん!やった!」

 

「…さぎんでしー…え?」

 

「……すみません、夢乃先生、俺がもう少し冷静に…」

 

「反省会は後々!お寿司食べながらでも出来るから。まずは腹ごしらえだよ。しょんぼり気味で腹ペコじゃ気持ちはは落ちていく一方だからね」

 

そう言って、空は伊知地に話し掛ける。

 

「って事でいつもの所に予約いれて、車用意して貰っていいかなー?あとこれ、軽く封印して、高専のほうに持ってって欲しいな」

 

「わかりました。……夢乃さん、貴方がいて良かった」

 

「んー…そうだね、今回は本当に誰かがいなきゃヤバかったねー」

 

伊知地と話しつつ、チラ、と悠仁達のほうを見る。

突入する前に話し掛けてきていた『岡崎正』の母親が三人にそれぞれ頭を下げているようだった。

 

「愛、だね……いいなぁ」

 

親ならば、子供がどうなろうと愛し続ける…言うのは簡単、実行はとてもとても難しい。

それを実行してる彼女は、空から見たらとても輝いて見えた。

空は自分のお腹を撫でながら、その光景を笑みを浮かべて眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、四人は銀座の回らない寿司屋で大満足の食事をするのだった。

最高級の大トロを口にした野薔薇と悠仁は、感動にうち震えていた。




夢乃空の天与呪縛
子供を作る事が出来ない。
子供を作る為に必要な器官がなく、性感帯が存在しない。
性欲はある。
母性もある。

これからの話

  • このままストーリー継続
  • もっと飯中心にまったり進行
  • そもそも過去に何が?
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