1:事件発生
少年はゆっくりと目を開ける。太陽の日差しが顔を照らした。
重い体を起こしながら時間を確認する。
時刻は7時50分。
「やばい!寝坊した!」
少年は壁に掛かる制服をハンガーと一緒に勢いよく掴み取る。
その勢いでブレザーの胸ポケットから生徒手帳が落ちる。
「やべ!」
床に落ちた手帳はきれいに開かれた。
手帳には自分の顔と名前が記載されていた。
「霧島戸谷‥‥。キリシマ、トガヤ‥‥。」
自分の名前のはずなのに、なぜか違う気がした。
一瞬だが、誰だ?と
我に返り再び時間を確認すると‥‥‥、
あれから五分が経過していた。
玄関へと向かいドアノブを握る。
「行ってきます‥‥‥。」
誰もいない部屋に向かって寂しそうにつぶやく。
部屋を出ると目の前に広がるのはマンションからの高い光景と。
再び感じた違和感。
(ここはどこだ?)
だが、そんな感情よりも迫りくるのは遅刻の恐怖。
戸谷は全速力で走り出す。
目の前で歩く同じ制服を着た金髪の少年を追い越し、エレベーターに乗る。
ゆくりと降りていくエレベーターの中で戸谷は息を整えていた。
息を整えたことで戸谷はある重大なことに気がついた。
自分と同じ学校なのに、自分より遅く歩いていた金髪の少年。
ポケットからスマートフォンを取り出すと‥‥‥。。
「やられた!!」
デジタルで表示されたのは7:00の数列。
そのとき、戸谷は家の時計が止まっていたことに気がづいたのだ。
教室のドアを開けた
教室は今までに無いほど盛り上がっていた。
戸谷は席に着くなり、隣のそいつにたずねた。
「どうしたの?」
そいつは得意げに話し出す。
「ガッチャマンって知ってる?ちょうど、それで盛り上がってたんだ」
(ガッチャマン??)
戸谷はガッチャマンなどと言う存在を知らなかった。
だから、本心では嫌だったが戸谷はそいつにたずねた。
「ガッチャマンってなに?」
そいつは笑った。笑うだけ笑うと満足したのか戸谷に話しだした。
「ガッチャマンってのは悪の組織から地球を守る正義の味方だよ」
戸谷は初めて聞いたフィクションのような存在に驚愕した。
「そんなのがいるの‥‥‥?」
戸谷の目は輝いていた。その目を見たそいつは慌てて訂正した。
「真剣に受け止めるなよ。ただの都市伝説だって」
都市伝説と聞いた戸谷は内心がっかりした。
ガッチャマンなる存在を見たいと心底、思ったからだ。
昼休み、戸谷が待ちに待った弁当を食べようとした時、隣にいるそいつのスマホが鳴った。そいつのスマホが起動したのはメールとは異なるアプリだった。
「なんだよそれ?」
「え?GALAXだよ。聞いたことぐらいはあるだろ?」
GALAX。ギャッラックスなら知っていた。今、話題のSNSのことだ。
(確か‥‥‥俺も登録だけはしていたけど。)
思い出した戸谷はスマホを確認した。
モニターにはメッセージが表示されていた。
そのメッセージに戸谷は目を疑った。
「これ、やばくない?」
戸谷はそいつにたずねた。そいつは何も答えずに教室を出ていった。
「優馬‥‥‥待てよ!!」
そいつの名前を叫んだ時、脳裏に過ぎった記憶。それは優馬に裏切られた映像。
(俺はあいつを‥‥‥。なんで‥‥。お前が!)
覚えのない記憶が巡り、頭を過ぎる。
だが、それよりも今はGALAXが警告する集団食中毒の危険性だった。
居ても立ってもいられず戸谷も教室を飛び出した。
渡り廊下のすぐ端にある自販機に優馬とその他数名の生徒がいた。
優馬の視線を追うと自販機のコンセントにはいたずら防止のカバーが付けられていた。
「他の自販機はどうしたの?」
戸谷は自販機の前に立つ優馬へと話しかけた。
「ほかの学年の人が鍵を持ってるみたいなんだけど‥‥‥」
この中の一人の女子生徒が鍵を持っているであろう人物と電話をしていた。
「今、中庭前?あ!終わったって。この自販機で最後だよ!」
「どうする?取りに行く?」
女子生徒達が話をしていると会談の方から男の声が聞こえた。
「ウオオオオオオオ!!」
階段から現れたモップを持った金髪の男子生徒はなぜか数名の教師に追いかけられていた。
「先輩!先輩!!」
戸谷の背後で騒ぐ茶髪の女子生徒。一目瞭然、モップ男の知り合いだと分かる。
「ここやちゃって!!ばーさっり!!」
顔を真っ赤にさせながら走る金髪のモップ男‥‥‥。
(金髪!!そう言えば昨日も‥‥)
モップ男は息を切らしながら聞き返した。
「バッサリ!?」
「バッサリっす!!」
(え?なにで‥‥‥まさかモップで?)
「ええい!!どうとでもなれ!!」
モップ男はモップを刀のように構え、自販機のコンセントを真っ二つに切り裂いた。
「すご!!」
戸谷はその男に深く関心した。その思いは感動に近かい。誰が見てもすごい光景だったのだ。
「バッサリいったぞ!!」
モップ男はそう言い残し階段を降りて行った。
帰り道、戸谷はスマホを見ていた優馬に唐突に話しかけた。
「それにしてもGALAXってすごいな!!」
「突然どうした?」
優馬は人を小バカにするような目で戸谷を見た。
戸谷もそれに気が付いたようで‥‥‥。
「いや、俺もだけどGALAXの警告でたくさんの人が動いたじゃん」
話ながら優馬をチラ見すると、戸谷とは真逆の方を向きながら感情の込もってい返事をしていた。だが、それにも関わらず戸谷は話しを続けた。
「それってさ、カナリ凄いことだと思わない??」
数秒の沈黙の後、優馬は初めて口を開いた。
「そうだな‥‥。GALAXは、現時点で人が持てる最大の力だからな」
思いがけない一言に戸谷は固まってしまった。
「あっ!俺、こっちだから。じゃあな!」
交差点の曲がり角を優馬は手を振りながら歩いて行く。
優馬と別れたあと、優馬の言葉が脳裏によぎる。
「力‥‥か‥‥。確かにそうかもな‥‥。」
それと同時に、優馬は昨日の出来事を思い出していた。